内圧防爆構造の検定を正しく理解し現場リスクを回避する方法

内圧防爆構造の検定を正しく理解し現場リスクを回避する方法

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内圧防爆構造の検定で知っておくべき基礎から実務まで

海外の防爆認証(IECExやATEX)を取得している機器でも、国内で使うと労働安全衛生法違反になります。


この記事の3つのポイント
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内圧防爆構造とは?

容器内に保護ガス(空気・窒素など)を圧入して内部を外気より高圧に保ち、可燃性ガスの侵入を防ぐ防爆構造。大型制御盤や分析装置の防爆化に適しています。

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型式検定の有効期間は3年

防爆構造電気機械器具の型式検定合格証は有効期間が3年です。期限切れのまま製造・輸入・設置を続けると労働安全衛生法違反となり罰則の対象になります。

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違反すると最大50万円の罰金

検定合格標章なしの機器を防爆エリアで使用すると、民事・刑事の両方の責任を問われます。事故発生時は業務上過失致死罪に発展するケースもあります。


内圧防爆構造の検定が必要な場所と対象機器の基本

化学プラントや石油精製施設、ガス取扱い設備など、可燃性ガスや引火性液体の蒸気が空気中に漂う可能性がある場所を「危険場所」と呼びます。建築・設備工事に携わる方がこれらの施設で電気機器を設置・使用する場合、防爆構造に関する型式検定(以下「防爆検定」)に合格した機器でなければなりません。


内圧防爆構造(記号:f)は、その中でも大型の制御盤や分析装置など「耐圧防爆構造では防爆化が難しい機器」に使われる構造です。容器の内部に清浄な空気や窒素などの保護ガスを圧入し、外部より高い内圧を保つことで可燃性ガスの侵入を防ぎます。


危険場所は次の3区分に分類されています。


| 区分 | 内容 |
|------|------|
| 特別危険箇所(Zone0) | 可燃性ガスが連続・長時間・頻繁に存在 |
| 第一類危険箇所(Zone1) | 可燃性ガスが時々放出される |
| 第二類危険箇所(Zone2) | 可燃性ガスが異常時のみ短時間放出 |


内圧防爆構造(構造規格:f)は、第一類・第二類の危険箇所で使用できます。Zone0(特別危険箇所)には使用できないため、設置場所の区分の確認が最初の一歩です。


内圧防爆構造で防爆化された主な機器には、以下のようなものがあります。


- 大型の電気制御盤・操作盤
- 分析計(ガスアナライザーなど)
- インバーターを含む電動機駆動装置
- 特殊な計測・監視装置


つまり「容積が大きすぎて耐圧防爆では厚い鉄壁が必要になる機器」に最適な構造、ということですね。


防爆検定を実施している主な機関は公益社団法人産業安全技術協会(TIIS)です。国から認可を受けた登録検定機関として、防爆電気機器の新規検定・更新検定を担っています。建築業の現場担当者としては、設置する機器に「型式検定合格標章(通称:労検マーク)」が貼られているか確認することが、まず求められる実務上の基本です。


防爆構造の種類と各構造の詳細な解説(日本電熱)


内圧防爆構造の検定に関する型式検定の仕組みと合格証の有効期間

防爆検定の正式名称は「防爆構造電気機械器具に係る型式検定」といいます。労働安全衛生法第44条の2に基づき、防爆電気機器の製造者または輸入者が厚生労働省の指定する規格に適合しているかを確認し、「型式検定合格証」が発行される手続きです。


型式検定には「新規検定」と「更新検定」の2種類があります。新規検定は新たな型式の防爆機器に対して行う検定で、合格後に型式検定合格証が交付されます。更新検定は既存の合格証の有効期間が切れる前に継続使用を認めるための手続きです。


ここで多くの現場担当者が見落としがちなポイントがあります。合格証の有効期間は原則3年間です。この3年は「機器を製造・輸入してよい期間」であり、「現場で使用できる期間」とは別物です。


区分 内容
合格証の有効期間 3年(マスク関係は5年)
更新申請の受付開始 有効期限の3か月前から
有効期限切れ後の更新 不可(新規申請が必要になる)
更新検定の処理期間 有効期間の更新のみの場合、概ね受付後10営業日


有効期間が切れた後の更新は認められていません。これは要注意です。更新できなかった場合、同じ内容の合格証を再取得するには新規申請をやり直すことになります。


また、合格証の発行には検定(試験・検査)後から約2か月かかります。「期限が近づいてから慌てて申請する」では間に合わないケースがある、ということですね。更新手続きは有効期限の3か月以上前から計画的に動くことが原則です。


更新検定の申請に必要な書類は以下の7点です。


- ① 更新検定申請書(1通)
- ② 合格証(1式)
- ③ 製造検査設備等の概要書(1通)
- ④ 検定実施者への連絡先
- ⑤ ルーチン試験の結果(該当する場合)
- ⑥ 申請書控えの返送用封筒(希望する場合)
- ⑦ 手数料を確認できる書面(振込み明細書のコピーなど)


申請先はTIIS(公益社団法人産業安全技術協会)の試験認証部です。住所変更や会社名変更がある場合、合格証と申請書の記載が一致しないと受理されないため、合格証の記載事項の変更申請も並行して進めておく必要があります。


防爆型式検定の更新検定フローと申請書類の詳細(TIIS公式)


海外認証だけでは使えない!内圧防爆構造の検定と国内規格の壁

建築・設備工事の現場で輸入機器を扱う機会は珍しくありません。国際規格IECExや欧州規格ATEXの認証を取得した機器を見て、「これなら防爆エリアで使えるだろう」と判断する担当者が少なくないのが実情です。


これは大きな誤りです。


日本国内の防爆エリアで電気機器を使用するには、国内の登録検定機関(TIISなど)による型式検定に合格した機器でなければならないと、労働安全衛生法で明確に定められています。IECEx、ATEX、UL(米国規格)など、どの海外認証を持っていても、日本国内の型式検定を別途受けていなければ使用できません。


| 規格名 | 適用地域 | 日本での使用可否 |
|--------|----------|-----------------|
| IECEx | 国際(36カ国参加) | 国内検定が別途必要 |
| ATEX | 欧州 | 国内検定が別途必要 |
| UL | 米国 | 国内検定が別途必要 |
| TIIS検定(構造規格/整合指針) | 日本国内 | ✅ 使用可能 |


海外認証品を「IECExマーク付きだから問題ない」と思って防爆エリアに設置した場合、労働安全衛生法違反となります。これは輸入機器に限らず、日本企業が海外工場で製造した製品も同様です。国内検定を受けていなければ国内使用は認められません。


内圧防爆構造の機器を輸入・導入する際には、必ず販売元・製造元から「型式検定合格証のコピー」と「型式検定合格標章(労検マーク)の貼付確認」を求めることが実務上のポイントです。機器の仕様書に「ExfG4」のような防爆記号が記載されていても、それが国内のTIIS検定に合格したものかを確認する手間は省いてはなりません。


海外認証だけなら国内使用不可、が条件です。


ATEXと日本防爆規格の相違点と国内検定の必要性の詳細(KSC JAPAN)


内圧防爆構造の検定違反が招く法的リスクと50万円以下の罰金

防爆検定に関連する法律は、主に3つの法律にまたがっています。建築・設備工事に関わる事業者として、それぞれの内容を正確に把握しておくことが重要です。


(1)労働安全衛生法(厚生労働省所管)


防爆エリアでは国内の型式検定に合格した防爆機器を使用するよう事業者に義務付けています。違反した場合、民事責任「安全配慮義務違反」と刑事責任「労働安全衛生法違反」の両方が問われます。


(2)電気事業法経済産業省所管)


危険場所(Zone0〜2)に適用する電気機器は国内防爆認定品でなければならないと定めています。違反すると「電気事業法違反」として罰金の対象となります。


(3)消防法(総務省所管)


危険物を取り扱う施設の建設や設備改造には事前に設置許可申請が必要で、消防署による使用前検査をクリアしなければ操業開始ができません。


罰則の具体的な内容は次のとおりです。


| 違反内容 | 罰則 |
|--------|------|
| 防爆検定合格品以外に合格標章を表示した場合など | 50万円以下の罰金 |
| 労働安全衛生法の安全基準違反(一般) | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 重大な安全規定違反(危険物・有害物関連) | 最大3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |


さらに深刻なのは、事故が発生した場合です。検定未取得の機器が原因で死傷事故が起きた場合、「業務上過失致死罪」に問われることがあります。罰金だけでは済まない刑事事件に発展するリスクがある、ということですね。


工事の発注側・施工側を問わず、防爆エリアへの機器設置に関わるすべての関係者が責任を問われる可能性があります。「指示されたから取り付けた」という言い訳が通らない場面もあるため、現場担当者一人ひとりが基礎的な知識を持つことが法的リスクを回避する最初の一歩です。


具体的な対策として、防爆エリアへの機器設置前には次の2点を必ず確認することを習慣化してください。まず、機器に労検マーク(型式検定合格標章)が貼付されているか目視確認すること。次に、合格証のコピーを入手し有効期限が切れていないことを確認することです。この2点の確認を行動の1セットとして定着させれば、法的リスクを大幅に低減できます。


防爆における法的責任と民事・刑事責任の詳細(システムギア)


内圧防爆構造の検定で見落とされがちな掃気操作と運用リスク

内圧防爆構造の機器は検定に合格して設置すれば終わり、ではありません。正しく運用しなければ防爆性能を維持できず、事故につながるリスクがあります。現場担当者が特に意識すべき運用上の注意点を整理します。


内圧防爆構造の大きな特徴は「電源を入れる前に掃気(そうき)が必要」という点です。掃気とは、機器内部に残っている可燃性ガスや外気を保護ガスで追い出す作業を指します。


労働安全衛生総合研究所の工場電気設備防爆指針によると、通風式・封入式の内圧防爆構造では、電源投入前に「容器および通風路を含む内容積の5倍以上の保護気体で掃気する」ことが必要とされています。


掃気が必要です。これは省略できません。


電源を入れる前に保護ガスで容器内を置換→内圧が設定値以上になったことを圧力計で確認→ここで初めて電源投入、という順序が定められています。停電復旧後や点検後に慌てて再起動しようとした際、この手順を飛ばすことで事故が起きたケースが実際に報告されています。


内圧防爆構造の機器を運用する上での確認ポイントは次のとおりです。


| 項目 | 内容 |
|------|------|
| 保護ガス供給源 | 清浄な空気または窒素などの供給源が確保されているか |
| 掃気操作 | 電源投入前に容器内容積の5倍以上の保護ガスで掃気しているか |
| 内圧監視装置 | 内圧が低下した際に自動で電源を遮断する保護装置が機能しているか |
| パッキン・シール部 | 損傷がないか定期的に確認しているか |


パッキンの損傷は見落とされがちです。


内圧防爆構造は、容器や透光部(のぞき窓)などのシール性能が命綱です。パッキンが劣化・損傷すると内圧が保てなくなり、外部の可燃性ガスが容器内に侵入します。外観上の変化が分かりにくいため、定期点検の際にパッキン状態の確認を点検項目として明示的に組み込んでおく必要があります。


また、耐圧防爆構造との大きな違いも整理しておきます。耐圧防爆構造は「内部で爆発が起きても外に広がらない頑丈な容器」ですが、内圧防爆構造は「そもそも爆発性ガスを容器内に入れない」アプローチです。コンセプトが根本から異なるため、点検・維持管理の視点も変わります。内圧防爆では「ガスが入らないこと」を維持することが最重要課題、という認識が実務の基本です。


防爆電気機器の構造と点検(内圧防爆構造の掃気・パッキン点検ポイント)(危険物保安技術協会)