耐圧防爆構造の規格と危険場所での正しい選び方

耐圧防爆構造の規格と危険場所での正しい選び方

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耐圧防爆構造の規格と危険場所での正しい選び方

「Exマーク付きの海外製防爆機器でも、日本の国内検定なしに使うと違法になります。」


この記事の3つのポイント
耐圧防爆構造(記号d)の基本

容器内部で爆発が起きても外部に火炎を伝えない全閉構造。8〜10kg/cm²の内部圧力に耐えられる強度が必須条件。

📋
規格は「構造規格」と「整合指針」の2種類

日本には昭和44年制定の「電気機械器具防爆構造規格」と、IEC国際規格に準拠した「国際整合防爆指針」が並存している。使える危険場所(Zone)が規格によって異なるので注意が必要。

⚠️
型式検定なしは違法・施工不良は事故に直結

海外の「Ex」マーク品でも国内型式検定が必要。施工時のシーリングやボルト締め精度が防爆性能に直結するため、現場での点検・管理が欠かせない。


耐圧防爆構造とは何か——規格上の定義と仕組み


耐圧防爆構造(記号:d)とは、電気機器を収める容器の内部に可燃性ガスが侵入して爆発が起きたとしても、その容器が損傷せず、爆発の火炎や高温ガスを外部に漏らさない構造のことです。つまり、爆発そのものを防ぐのではなく、「爆発しても外には影響を出さない」という発想で設計されています。


「電気機械器具防爆構造規格」(昭和44年労働省告示第16号)では、耐圧防爆構造を「全閉構造であって、可燃性ガスまたは引火性物質の蒸気が容器の内部に侵入して爆発を生じた場合に、容器がその圧力に耐え、かつ外部の爆発性雰囲気に引火するおそれのない構造」と定義しています。容器内容積に応じて、8〜10kg/cm²という非常に高い内部圧力に耐えられる強度が条件となります。これはおよそ水深80〜100mに相当する圧力であり、決して「頑丈なケース」程度のイメージでは済まない水準です。


着火源となる電気機器をそのまま容器で覆う構造のため、防爆化の設計が比較的シンプルで、小型・中型の電気機器の防爆化に向いています。他の防爆構造と組み合わせやすいことも特長です。ただし、容器自体の強度を確保しなければならないため、同スペックの非防爆機器と比べると機器の重量・サイズが大きくなるという点は現場で意識しておく必要があります。


大切なポイントを整理するとこうなります。耐圧防爆構造は「爆発自体を抑制する」ものではなく、「爆発を内部に封じ込める」構造です。そのため、爆発が起きれば内蔵する電気機器自体が破損することも想定されています。これは、他の防爆構造との大きな違いのひとつです。


耐圧防爆構造の定義・点検項目について詳しく解説(防爆工事.com)


耐圧防爆構造の規格——構造規格と整合指針の2系統を理解する

日本の防爆規格には大きく2つの体系があります。この2つを混同してしまうと、機器選定や現場施工でのミスにつながりかねないため、それぞれの特徴をしっかり把握しておくことが重要です。


1つ目は「電気機械器具防爆構造規格」、一般に「構造規格」と呼ばれるものです。昭和44年(1969年)に制定された国内の従来規格であり、現在も多くの国内製品がこの規格に基づいています。耐圧防爆構造の記号は「d」で表され、危険場所の種別・爆発等級・発火温度等級を組み合わせて「d2G4」のような表記になります。構造規格では耐圧防爆構造(d)は第一類危険箇所(Zone1)および第二類危険箇所(Zone2)で使用可能ですが、最も危険度の高い特別危険箇所(Zone0)では使えません。


2つ目は「国際整合防爆指針」、通称「整合指針」です。1988年にIEC(国際電気標準会議)規格との整合を目的として制定されました。表記は「Ex da IIC T6 Ga」のような形式になります。整合指針では耐圧防爆構造のサブカテゴリが「da」「db」「dc」の3種類に細分化されており、特に「da」に該当する機器はZone0(特別危険箇所)でも使用できる点が構造規格と異なります。


| 項目 | 構造規格 | 整合指針(国際整合防爆指針) |
|------|----------|------------------------------|
| 制定年 | 昭和44年(1969年) | 1988年 |
| 耐圧防爆記号 | d | da・db・dc |
| Zone0での使用 | ❌ 不可 | ✅ daは可能 |
| 対象となるゾーン | Zone1・Zone2 | Zone0〜Zone2(種類による) |
| 国際規格との整合 | なし | IEC60079に準拠 |


これは意外と見落とされがちです。同じ耐圧防爆構造でも、どちらの規格に基づくかによって適用できる危険場所の範囲が変わります。古い工場設備を更新する際などに、構造規格品と整合指針品が混在するケースが生じやすく、危険場所のゾーン分類との整合確認を怠ると重大な法令違反になるリスクがあります。


構造規格と整合指針の適用場所の違いを表で確認できる(カナデン)


危険場所のゾーン分類と耐圧防爆構造の適用範囲

耐圧防爆構造の規格を正しく運用するには、「危険場所」の分類を理解することが前提になります。危険場所とは、可燃性ガスや可燃性液体の蒸気が空気中に一定濃度で存在し、爆発・火災のリスクがある場所のことです。その危険度の高さによって、次の3段階に分類されます。


- Zone0(特別危険箇所・0種場所) :爆発性雰囲気が常時または長時間にわたって存在する場所。例:ガスタンクや反応槽の内部。


- Zone1(第一類危険箇所・1種場所) :通常の操業中に爆発性雰囲気が発生する可能性がある場所。例:タンク周辺、ポンプ室の内部。


- Zone2(第二類危険箇所・2種場所) :通常状態では爆発性雰囲気が存在しないが、異常時に一時的に発生する可能性がある場所。例:屋外の配管周辺、換気口近傍。


構造規格による耐圧防爆構造(d)はZone1とZone2に対応しています。Zone0のような最高危険箇所では、構造規格の耐圧防爆構造は使用できません。これが原則です。一方、整合指針のdaカテゴリであればZone0でも使用が認められるため、高危険度エリアへの設置が必要な場合は規格の選択が重要になります。


建築業に従事する方が特に関係するのは、プラントや化学工場の新設・改修工事、あるいは排水処理施設やガス管理設備などでの電気工事です。設計や施工の段階でゾーン分類を確認せずに機器を選定してしまうと、後からやり直しになるケースがあります。ゾーン分類の確認は最初が肝心です。


粉じん爆発のリスクがある現場も対象になります。小麦粉・砂糖・合成樹脂などの可燃性粉じんが舞う環境では、ガスとは別に「粉じん危険場所」(Zone20〜Zone22)の区分が適用され、粉じん用の防爆構造(DPまたはSDPなど)の機器が必要になります。ガス用の耐圧防爆構造をそのまま流用しても対応できない場合があるため、注意が必要です。


危険場所の分類と防爆構造の適用範囲について(カナデン)


型式検定と海外規格品の落とし穴——Exマークがあっても国内では使えない

日本国内で防爆機器を使用する際には、労働安全衛生法第44条の2に基づく「型式検定」の合格が必須です。これは、厚生労働大臣が認定した登録型式検定機関(代表的なのはTIIS:産業安全技術協会)が行う検定であり、合格した機器にのみ合格証が交付されます。


ここで注意が必要なのは、海外の防爆認証だけでは日本国内での使用が認められないという点です。欧州のATEX認証や国際規格のIECEx認証を取得した機器に「Ex」マークが付いていても、日本の国内型式検定を通過していない機器は法的に使用できません。これは労働安全衛生法の明確な規制です。


つまり、「Exマークがついているから大丈夫」という判断は誤りです。外国製の防爆機器を国内で使いたい場合は、同製品が国内の登録型式検定機関による検定を受け、合格証を取得しているかどうかを必ず確認する必要があります。


型式検定合格証には有効期間があり、その期間は原則3年間です。期限切れの合格証のまま使用を続けることも違法となります。現場では古い設備が長期間稼働し続けることも多いため、合格証の有効期限の定期的な確認が欠かせません。


防爆機器の調達・納入時には、製造元または販売元から「型式検定合格証」のコピーを必ず入手し、危険場所のゾーン分類と記号が一致しているかを照合するのが基本的な確認手順です。合格証番号と機器に刻印された番号が一致しているかどうかの確認も忘れてはなりません。


海外防爆認定品の国内使用に関する法的見解(システムギア)


耐圧防爆構造の施工と点検——見落とされがちな現場での注意点

耐圧防爆構造の機器は、設置後の施工品質がそのまま防爆性能に直結します。これは他の防爆構造と比べても特に顕著な特徴です。施工時に気をつけるべきポイントは複数ありますが、最も重要なのはケーブル引込部(シーリング部)の処理です。


シーリングが不完全だと、容器内部で爆発が発生した際に外部へ火炎が伝わる経路ができてしまいます。シーリングコンパウンドは規定量を正確に充填し、完全に硬化するまで養生期間を確保することが必要です。電線管(コンジット)配線方式の場合、呼び径54mm以上では隔壁貫通部だけでなく管路長が15mを超えるごとに1箇所のシーリングが必要と定められています。


ボルト締め付けトルクの管理も欠かせません。容器の接合面を構成するボルト・ナットは、規定トルクで均等に締め付けなければ容器の耐圧性能が維持できません。「目視で確認したから大丈夫」という感覚的な管理ではなく、トルクレンチを使った数値管理が求められます。


施工後だけでなく、運用中の定期点検も法令上の義務です。耐圧防爆構造の機器に対する主な点検項目は以下のとおりです。


- 📋 容器外面の腐食・損傷・亀裂の有無
- 📋 締付ボルト類の腐食・緩み・欠落
- 📋 ガラス窓・透光性部品の損傷・ひび割れ
- 📋 操作軸や可動部分の摩耗状況
- 📋 固着材やパッキンのひび割れ・変形・損傷


容器外面に小さな亀裂やひび割れが見つかった場合、補修せずに使い続けることは防爆認証が実質無効になる状態で機器を運転していることを意味します。損傷が確認されたら補修または交換を即座に行うことが原則です。


独自の視点として注目したいのは「活線作業の絶対禁止」という点です。耐圧防爆機器の保守・点検では、必ず電源を遮断し残留電荷がないことを確認してから作業に入ることが求められます。非防爆エリアの感覚で「ちょっとカバーを開けるだけ」と活線のまま作業してしまうと、その瞬間に容器内への着火源が生まれます。防爆エリアの保守作業では「開ける前に必ず遮断」が絶対的な原則です。


防爆電気機器の構造と点検に関する解説(危険物保安技術協会)


耐圧防爆構造を他の防爆構造と比較して選ぶ視点

耐圧防爆構造の規格を正しく活用するためには、他の防爆構造との違いを理解した上で、現場条件に合った選択をすることが重要です。各防爆構造には得意な用途と苦手な場面があります。


まず、最もよく比較される「安全増防爆構造(記号e)」との違いです。安全増防爆構造は、通常運転中に着火源とならない電気機器に対して、温度上昇やアーク・火花の発生を防ぐよう安全度を高めた構造です。軽量で製作しやすいメリットがある一方、容器自体に爆発圧力に耐える耐久性の基準がないため、万一容器内で発火が起きると外部に引火するリスクがあります。原則としてZone1での使用には慎重な判断が必要です。これが安全増防爆と耐圧防爆の根本的な差です。


本質安全防爆構造(記号i)」は、電気回路のエネルギー自体を着火源とならないほど小さくする構造で、軽量かつゾーン0にも対応できる最も高いレベルの防爆方式です。ただし、許容できる電力が小さいため、大型モーターや大容量照明器具には適用できません。計装・センサ回路向けです。


内圧防爆構造(記号f)」は、容器内に保護ガスを注入して内圧を高めることで外部ガスの侵入を防ぐ構造で、大型制御盤や分析装置に向いています。ただし、保護ガスの供給源・圧力検知装置・掃気時間の確保が必要になるため、設備の初期コストと維持管理の手間が耐圧防爆よりも増えます。


それぞれの特長を整理すると次のようになります。


| 防爆構造 | 記号 | 主な用途 | メリット | デメリット |
|----------|------|----------|----------|------------|
| 耐圧防爆 | d | モーター・照明・高出力機器 | 設計シンプル、組み合わせ容易 | 重量増加、内部機器が破損しうる |
| 安全増防爆 | e | 端子箱・照明・制御機器 | 軽量、安価 | Zone0・Zone1での適用制限あり |
| 本質安全防爆 | i | センサ・信号回路・計装機器 | 軽量小型、Zone0対応可 | 大電力機器には不可 |
| 内圧防爆 | f | 大型制御盤・分析装置 | 大型機器に対応可 | 保護ガス設備が必要、コスト高 |


選定の基本は、危険場所のゾーン分類に合った規格・防爆構造を選び、型式検定合格証が取得されている機器を使うことです。現場では一つひとつの機器について合格証の確認と保管をルーティン化することで、法令違反リスクを大幅に低減できます。機器調達の段階から確認する習慣が大切です。


各防爆構造の特徴と記号の比較一覧(日本電熱)




島田電機 耐圧防爆構造レジューサー SR16-22