石綿セメント管の水道工事と撤去で知る必須の法規制

石綿セメント管の水道工事と撤去で知る必須の法規制

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石綿セメント管と水道工事で知っておくべき法規制と撤去の正しい手順

切断禁止のはずの石綿セメント管を、実は今日も全国でそのまま切っている現場がある。


この記事のポイント
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石綿セメント管とは何か

高度経済成長期に全国で普及した水道管。昭和60年に製造中止後も今なお全国に多数残存し、建築・土木工事の現場で遭遇するリスクがある。

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違反すると30万〜50万円の罰金リスク

事前調査の報告を怠ると30万円以下の罰金、作業基準違反は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるケースも。2026年義務化で規制はさらに強化。

🛠️
撤去時に守るべき9つの措置

石綿障害予防規則に基づく事前調査・作業主任者の選任・湿潤化・産廃処理など、撤去作業で必ず守るべき措置を網羅的に解説。


石綿セメント管とは何か|水道に使われた背景と現在の残存状況


石綿セメント管とは、アスベスト(石綿)の繊維とセメントを混合して円筒状に成形した水道管です。戦後の高度経済成長期、昭和20年代後半から昭和40年代にかけて、「鉄管より安くて錆びない」という特性から全国の上水道に広く普及しました。耐食性と柔軟性に優れ、コストが低かったことから、当時の水道普及を支えた主力管材の一つでした。


しかし、石綿繊維を長期間吸引すると悪性中皮腫や石綿肺、肺がんなどの重篤な健康被害を引き起こすことが判明し、需要は急速に低下。全国的な需要減により、昭和60年(1985年)には製造が完全に中止されています。


耐用年数は一般的に約50年とされていますが、問題はその後です。製造中止から40年近くが経過した今も、全国の水道インフラには一定量の石綿セメント管が残存しています。公益財団法人 水道技術研究センターが定期的に公表している調査データによると、令和4年度(2022年度)時点で配水支管が全体の約79%を占める形で残存が確認されています。特に埼玉県の加須市のように、単独の自治体で約43.8kmもの石綿セメント管が残っているケースもあります。


つまり、水道工事や地中埋設物を伴う土木・建築工事の現場で、石綿セメント管に遭遇するリスクは今日においても決して低くはないということです。「もう使われていない古い話」ではなく、現役の工事現場で今まさに向き合うべきリアルな問題です。



水道管の老朽化問題に関する公的な詳細データはこちら:

(公益財団法人)水道技術研究センター「石綿セメント管残存延長」の調査結果(石綿セメント管の残存延長の推移など詳細な統計データが確認できます)

https://www.jwrc-net.or.jp/publication-outreach/hotnews/index_3.html


石綿セメント管の水道水は安全か|経口リスクと吸引リスクの違い

「石綿セメント管が今もどこかで使われている」と聞けば、水道水への不安を抱くのは自然なことです。ここでは、建築業従事者として施主や住民から質問されたときに正確に答えられるよう、公的機関の見解を整理しておきます。


まず重要なのは、石綿の「吸引リスク」と「経口摂取リスク」は明確に区別されるという点です。石綿が引き起こす深刻な健康被害——悪性中皮腫、石綿肺、肺がん——は、いずれも石綿繊維を空気中から吸引し、肺や胸膜に繊維が蓄積することで発症します。これが主要な発症経路です。


一方、石綿セメント管を通過した水道水を飲む、つまり経口摂取した場合のリスクについては、日本の厚生労働省が1992年の水質基準見直しの際に「経口毒性は極めて低い」と判断しています。世界保健機関(WHO)も「飲料水質ガイドライン(2004年第3版)」の中で、飲料水を介した健康リスクの証拠はないという見解を示しており、日本の公的機関と同じ結論です。


水道管の交換工事が推進されている理由は、飲料水を通じた健康被害のリスクが高いからではありません。主な理由は、管の老朽化による漏水・破損リスク、耐震性の低さ、そして撤去・工事時の粉じん飛散リスクにあります。


この区別は施工現場でも重要です。水道水そのものの安全性についての心配は不要ですが、撤去作業時の粉じん飛散対策は絶対に手を抜けない——この2つを明確に伝えられるようにしておきましょう。



厚生労働省による水道とアスベストに関する公式見解(経口摂取のリスク評価などが確認できます):

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/topics/tp050729-1.html


石綿セメント管の水道工事で必須の事前調査と報告義務|違反すると30万円の罰金

石綿セメント管を含む可能性のある水道管の工事では、事前調査が法律で義務付けられています。これを「やっていればいい」程度に考えていると、会社ごと罰則の対象になりかねません。


2022年4月の大気汚染防止法改正により、工事着工前に発注者・施工者が石綿含有建材の有無を事前調査し、その結果を報告することが義務化されました。調査対象は、解体工事であれば解体部分の延べ床面積が80㎡以上の場合、改修工事であれば請負金額が100万円以上の場合です。条件に該当する工事では、電子システム(石綿事前調査結果報告システム)を通じた行政への報告が必須となります。


この報告を怠ったり虚偽の内容を報告したりした場合、大気汚染防止法に基づき30万円以下の罰金が科されます。さらに作業基準違反(散水なしの切断など)があれば、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が適用されるケースもあります。数字だけで終わりません。刑事罰は会社としての信用問題に直結し、入札資格の停止や取引先との関係悪化など、金銭以上のダメージを生む可能性があります。


事前調査は「目視だけすればいい」ものではなく、設計図書の確認と現地目視をセットで実施することが求められます。それで判断できない場合は試料を採取して分析機関へ委託する、いわゆる分析調査まで必要になることがあります。


また、2026年1月1日以降は規制がさらに強化されます。水道管などの「工作物」を含む解体・改修工事の事前調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した有資格者が実施することが義務化されます。現時点で社内に有資格者がいない場合は、早急に資格取得か外部委託の体制を整えておく必要があります。資格の準備には時間がかかります。今から動くのが鉄則です。



厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト(事前調査報告の詳細と電子システムの案内があります):

https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/business/prime-contractor/


石綿セメント管の撤去作業で守るべき9つの義務的措置|石綿障害予防規則の要点

石綿セメント管を撤去する際は、石綿障害予防規則に基づく措置を確実に講じることが求められます。以下の9つが現場で押さえるべき核心です。


まず「①事前調査」は先述のとおり、書類確認と目視による確認が必須です。②作業主任者の選任については、石綿作業主任者の技能講習を修了した有資格者を現場に置き、作業方法の決定と指揮監督にあたらせる義務があります。資格を持つ人間が「書類上いる」だけでは不十分で、実際に現場を指揮・監督できる体制が求められます。


③作業計画の策定と周知については、作業の方法・順序、粉じんの発散防止・抑制の方法、従業員のばく露防止方法をあらかじめ文書化し、全作業員に周知させることが義務です。計画書を作って終わりではありません。


④については、関係者以外の立入禁止措置としてバリケードと警告看板の設置が必要です。夜間工事であれば照明と反射材の設置まで義務に含まれます。⑤の掲示義務については、作業開始前に飛散防止策の内容・作業期間・作業主任者氏名・施工事業者名などを記載した掲示物を見やすい場所に貼り出すことが求められます。


⑥切断に関するルールは特に注意が必要です。石綿セメント管は「可能な限り切断しない方法で撤去する」ことが原則とされています。継手部で取り外すのが基本です。やむを得ず切断が必要な場合は、散水などによる湿潤化と除じん性能のある電動工具の使用が必須で、切断後も粉じんが舞わないよう即座に対処しなければなりません。乾いたままグラインダーをあてるのは厳禁です。


⑦は保護具の着用で、適切な防じんマスクと保護衣の着用が必須です。使用後の保護具は他の衣服と隔離して保管し、石綿を除去した後でなければ作業場外へ持ち出してはなりません。⑧については洗眼・洗身・更衣のための設備を作業場所に設置することが求められます。


最後の⑨は廃棄物処理です。撤去した石綿セメント管は「産業廃棄物(石綿含有産業廃棄物)」として扱わなければなりません。残土と一緒に埋め戻したり、普通の産業廃棄物として処理したりするのは違法です。運搬前に湿潤化を行い、粉じんが飛散しないよう適切に梱包し、許可を受けた廃棄物処理業者へ委託します。一般廃棄物と混載することも禁じられています。


9つすべてが「やらなくていい理由のない」義務措置です。一つでも欠けると、違反として行政処分や罰則の対象となりえます。


石綿セメント管を水道工事で見つけたらどう判断するか|現場での識別ポイント

では実際の現場で、目の前の管が石綿セメント管かどうかをどう判断するのか。これは建築・土木の現場担当者にとって非常に実践的な問題です。


まず基本として、石綿セメント管の使用時期を把握しておくことが出発点です。主に昭和20年代後半(1950年代)から昭和60年(1985年)製造中止までの間に布設されたものが対象となります。建物や道路の竣工年が1985年以前であれば、地中に石綿セメント管が埋まっている可能性を疑うべきです。


外観の特徴としては、灰色がかった色のコンクリート状の円筒形の管で、金属管とは明らかに見た目が異なります。断面を見ると、コンクリートのような均質な層状構造が確認できます。ただし、老朽化によって見た目だけでは確実に判断できないことも多く、竣工図書(設計図書)や工事台帳の確認が基本です。


現場で図書が入手できず視認だけでは判断が難しい場合、またはビジュアルで石綿セメント管らしい特徴が見られる場合には、分析機関へサンプルを持ち込む分析調査を行うことが推奨されます。「多分違うだろう」という判断で処理を進め、後から石綿セメント管と判明した場合、適切な処理をしなかったとして法的責任を問われるリスクがあります。これは痛いですね。


また、既存の水道管布設図では「ACパイプ」「AC管」「石綿管」「アスベスト管」などの表記で石綿セメント管が識別されていることがあります。水道事業者(自治体)の工事担当課に問い合わせることで、布設管種の情報が確認できる場合も多いです。疑わしければ確認する——これが原則です。


石綿セメント管の布設替えに使われるダクタイル鋳鉄管との比較と工法の選択

ここからは、石綿セメント管の布設替え工事を受注・施工する立場で知っておくべき独自視点のトピックに触れておきます。石綿セメント管の更新工事で採用される代替管材の選定と施工上の注意点は、工事品質と安全性に直結するにもかかわらず、見落とされがちです。


石綿セメント管の更新工事では、現在のほとんどのケースでダクタイル鋳鉄管(球状黒鉛鋳鉄管)への布設替えが採用されています。ダクタイル鋳鉄管は引張強度が高く、耐震性に優れており、地震の多い日本の水道インフラに適した管材として、国土交通省が主導する老朽管更新事業でも積極的に採用が推進されています。例えば、深谷市(埼玉県)では約140kmの石綿セメント管をダクタイル鋳鉄管へ順次更新する計画が進められています。


施工上で特に注意が必要なのは、石綿セメント管の撤去と新管の布設が同一区間で行われる場合です。撤去時の粉じん飛散リスク管理と、新管布設の施工品質管理を同時に行う必要があり、作業員の分業と安全管理を明確にした施工計画が求められます。


また、石綿セメント管は既存管のまま残置して新管をさや管として内側に挿入する「管内挿入工法(ライニング工法)」が採用されるケースもあります。この場合、石綿セメント管を切断・撤去するリスクを低減できるため、市街地や交通量の多い道路での工事では有利な場合があります。ただしこの工法でも、既存管への切断・穿孔が発生する場合は石綿障害予防規則の対象となるため、油断は禁物です。


更新工事の発注前に、施工条件に適した工法が選択されているかを確認することが大切です。現場条件によって最適解は異なります。自治体の水道担当課や設計コンサルタントとの十分な事前協議を経て施工計画を固めることで、工事の安全性と品質を同時に確保できます。



国土交通省「水道用石綿セメント管の撤去作業等における石綿対策の手引き」(水道用石綿セメント管撤去作業の指針と法的根拠が確認できます):

https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply/topics_bukyoku_kenkou_suido_topics_sekimen.html




ユニット 石綿標識 石綿セメント管の撤去等の作業… 324-65A