次亜塩素酸ナトリウム消毒の作り方と濃度!希釈のコツと注意点

次亜塩素酸ナトリウム消毒の作り方と濃度!希釈のコツと注意点

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次亜塩素酸ナトリウム消毒の作り方

この記事の重要ポイント
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家庭用漂白剤で自作可能

ハイターやブリーチなど、身近な製品を希釈して安価に大量の消毒液が作れます。

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金属の腐食に要注意

強力な酸化作用で鉄がサビます。工具への使用後は必ず水拭きと乾燥が必要です。

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手指消毒には使わない

皮膚のタンパク質を溶かすため、手指には厳禁。物品の消毒専用として使い分けます。

[基礎] 次亜塩素酸ナトリウム消毒の作り方と目的別の濃度

 

建築現場や事務所の衛生管理において、最もコストパフォーマンスが高く、確実なウイルス対策ができるのが「次亜塩素酸ナトリウム」を用いた消毒です。特にノロウイルスのようにアルコール消毒が効きにくい強力なウイルスに対しても、次亜塩素酸ナトリウムは高い不活化効果を発揮します。しかし、この消毒液は原液のまま使用することはなく、目的に応じて適切な濃度に希釈(薄めること)する必要があります。濃度を間違えると、効果が不十分だったり、人体や設備に危険を及ぼしたりするため、正しい数値の理解が不可欠です。
参考)ノロウイルス対策用消毒液の作り方

一般的に、建築現場や事務所で使用する濃度は以下の2種類に大別されます。

     

  • 0.05%(500ppm):日常的な消毒用

    ドアノブ、手すり、テーブル、スイッチ類、共用工具の持ち手など、頻繁に手が触れる場所の消毒に使用します。多くの自治体や厚生労働省が推奨する標準的な濃度です。
  • [2][3]

     

  • 0.1%(1000ppm):緊急時・汚染箇所の消毒用

    嘔吐物や排泄物が付着した床や便器、あるいは感染者が使用した直後のトイレなど、高濃度のウイルス汚染が疑われる場所に使用します。現場の仮設トイレの清掃時などにはこちらの濃度が推奨されます。
  • [4]

参考リンク:厚生労働省 - 新型コロナウイルス対策(消毒・除菌方法について)
厚生労働省による公式の消毒・除菌方法のガイダンスです。界面活性剤や次亜塩素酸ナトリウムの有効性について科学的根拠に基づいた解説があります。
市販されている家庭用塩素系漂白剤(ハイターやブリーチなど)は、製品によって異なりますが、一般的に**「濃度5%~6%」**で販売されています。これを水で薄めて使用します。「キッチン用」と書かれているものや「衣類用」と書かれているものがありますが、成分表示に「次亜塩素酸ナトリウム」と記載があり、界面活性剤(洗剤成分)が含まれていない、または少ないものであれば消毒用として転用可能です。ただし、香料が含まれているものは残留臭の原因になるため、現場での使用には無香料のタイプが適しています。
参考)http://www.kansen-wakayama.jp/pdf/20150930_3.pdf

作り方の計算式は厳密には複雑ですが、現場ですぐに実践できるよう、以下の目安を覚えておくと便利です。
※原液濃度が5%の場合の計算例です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作りたい濃度 用途 水(ペットボトル) 原液の量(キャップ杯数)
0.05% 手すり・工具・ドアノブ 500ml 約5ml(キャップ1杯)
0.05% 手すり・工具・ドアノブ 2リットル 約20ml(キャップ4杯)
0.1% 吐しゃ物・トイレ 500ml 約10ml(キャップ2杯)
0.1% 吐しゃ物・トイレ 2リットル 約40ml(キャップ8杯)

このように、日常使いであれば**「500mlの水にペットボトルキャップ1杯」**と覚えておけば、おおよそ0.05%の消毒液が完成します。厳密な測定器具がない現場でも、空きのペットボトルを活用することで誰でも均一な質の消毒液を作成できる点がメリットです。youtube​
参考)https://www.vill.miho.lg.jp/data/doc/1446019585_doc_1_2.pdf

[実践] 次亜塩素酸ナトリウム消毒液をペットボトルで作る手順

ここでは、現場で最も入手しやすい「500mlの空きペットボトル」を使用した、具体的な作成手順を解説します。単純に混ぜるだけと思われるかもしれませんが、安全に作るためには手順(入れる順番)が非常に重要です。
準備するもの

     

  • 500mlの空きペットボトル(炭酸用など少し厚手のものが望ましいですが、通常のものでも可)
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  • 家庭用塩素系漂白剤(成分:次亜塩素酸ナトリウム)
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  • 水道水
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  • ビニール手袋(必ず着用してください)
  • [8]

     

  • キッチンペーパーまたは清潔な雑巾

作成手順


  1. 換気を行う
    まず、作業場所の窓を開けるか、換気扇を回します。原液特有の塩素臭で気分が悪くなるのを防ぐためです。閉め切った詰所や車内での作業は避けてください。

  2. ペットボトルに水を半分ほど入れる
    ここがポイントです。最初に原液を入れないでください。 原液を先に入れると、後から水を注いだ際に勢いで原液が跳ね返り、目や皮膚に付着する危険があります。必ず「水が先」です。

  3. 原液をキャップで計量して投入する
    日常消毒用(0.05%)を作る場合、ペットボトルのキャップ(一般的な規格で約5ml)すりきり1杯分の原液を、ペットボトルにゆっくり注ぎ入れます。youtube​
    ※キャップの内側に原液が残るため、少し水をすくってゆすぐようにすると無駄がありません。

  4. 残りの水を足す
    ペットボトルの口元近くまで水道水を足します。

  5. 静かに撹拌(かくはん)する
    キャップをしっかりと閉め、ペットボトルを上下にゆっくり逆さにして混ぜ合わせます。激しく振ると泡立ってしまい、使用時に扱いにくくなるため、ゆっくりと混ざり合うのを確認してください。

  6. 誤飲防止の表示をする
    これが最も重要です。完成したペットボトルには、必ず油性マジックで大きく「消毒液」「飲めない」と書いてください。 水と見分けがつかないため、現場の職人さんが間違えて飲んでしまう事故を防ぐための絶対的なルールです。

参考リンク:広島市 - 消毒液の作り方と使用上の注意
広島市保健所による詳細な作成ガイドです。濃度計算の根拠や、使用期限についての注意書きがあり、プリントアウトして現場に掲示するのに適しています。
保存期間について
作った消毒液は、時間の経過とともに分解が進み、効果が薄れていきます。特に紫外線(日光)や高温に弱いため、透明なペットボトルの場合は以下の点に注意してください。
参考)消毒液の作り方と使用上の注意(次亜塩素酸ナトリウム)|広島市…

     

  • 直射日光の当たらない、涼しい場所(ロッカーの中や流しの下など)に保管する。
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  • できるだけ**「その日のうちに使い切る」**ことを原則とする。長くても作り置きは翌日までとし、古くなったものはトイレ掃除などに使って廃棄し、新しく作り直してください。

[安全] 次亜塩素酸ナトリウム消毒を使う際の重大な注意点

次亜塩素酸ナトリウムは、非常に安価で効果が高い反面、取り扱いを間違えると重大な事故につながる化学物質です。現場監督や安全衛生責任者は、以下の注意点を朝礼などで周知徹底する必要があります。
1. 酸性タイプの製品と絶対に混ぜない
「混ぜるな危険」の表記通り、サンポールなどの酸性洗剤や、クエン酸、食酢などと混ざると、有毒な塩素ガスが発生します。これは命に関わる危険性があります。トイレ掃除などで酸性洗剤を使った直後に、次亜塩素酸ナトリウムで消毒するといった手順は避けてください。
参考)次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違い

2. 手指の消毒には絶対に使わない
アルコール消毒液と混同されがちですが、次亜塩素酸ナトリウムは「強アルカリ性」であり、皮膚のタンパク質を溶かす性質があります。手指にかかるとヌルヌルとした感触がありますが、これは汚れが落ちているのではなく、皮膚が溶けている証拠です。ひどい手荒れや化学熱傷(やけど)を引き起こすため、人体には絶対に使用しないでください。万が一手に付いた場合は、すぐに大量の水で洗い流してください。
参考)次亜塩素酸水で手荒れは起こる?次亜塩素酸による人体への影響と…

3. スプレー噴霧は推奨されない
空間除菌としてスプレーで空中に撒くことは、目に入ったり吸い込んだりして呼吸器にダメージを与えるリスクがあるため、厚生労働省も推奨していません。必ず「クロスやペーパーに含ませて拭く」という清拭(せいしき)消毒を行ってください。
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/140304-s.pdf

4. 繊維製品の変色(漂白作用)
作業着やタオル、カーペットなどに付着すると、その部分の色が抜けてしまいます(漂白作用)。現場事務所のソファや、車のファブリックシートを消毒する際は注意が必要です。漂白を避けたい場所には、次亜塩素酸ナトリウムではなく、アルコール消毒や界面活性剤含有の洗浄剤を使用するなど、使い分けが必要です。

[現場] 建築現場の工具や重機における次亜塩素酸ナトリウム消毒活用法

ここからは、一般的な衛生マニュアルにはあまり書かれていない、建築・建設現場特有の事情に合わせた活用法と注意点を深掘りします。特に注意すべきは「金属への腐食性(サビ)」です。
工具・機械への影響と対策
次亜塩素酸ナトリウムは強力な酸化剤であるため、鉄や銅などの金属を急速に腐食(サビ)させます。インパクトドライバー、電動丸ノコ、レンチ、ハンマーなどの工具に消毒液をかけたまま放置すると、翌日には赤錆が発生し、工具の寿命を縮めたり、可動部の固着を招いたりします。
参考)錆びない?消毒液とステンレス容器の相性とは

【現場推奨の工具消毒フロー】


  1. 水拭き準備
    消毒液を含ませた雑巾とは別に、「水だけで濡らして絞った雑巾」と「乾いた雑巾(ウエス)」を必ずセットで用意します。

  2. 清拭(消毒)
    0.05%消毒液を含ませたペーパータオルや雑巾で、工具の持ち手(グリップ)やスイッチ部分を拭き上げます。
    モーターの通気口やバッテリー端子部分には液が入らないように避けてください。

  3. 待機(重要)
    拭いてすぐに乾拭きすると、ウイルスが死滅する前に消毒液がなくなってしまいます。1分程度置いて、液を作用させます。

  4. 水拭き(最重要)
    ここが工具を守る鍵です。 残留した塩素成分を完全に除去するため、水雑巾で丁寧に二度拭きします。
    参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/394019.pdf


  5. 乾拭き・注油
    最後に乾いたウエスで水分を拭き取ります。鉄製の手工具(ハンマーやバール)の場合は、最後に防錆油(CRCなど)を薄く塗布してメンテナンス完了とするのが理想的です。

重機・車両のキャビン消毒
バックホウやクレーン、ダンプなどの重機は、オペレーターが交代する際に接触感染のリスクが高まります。


  • ハンドル・シフトノブ・レバー: 樹脂やゴム製が多いため、次亜塩素酸ナトリウム使用後は必ず水拭きしてください。長期間残留すると、ゴムが劣化してベタつく原因になります。

  • シートベルト・座席: 布製の場合、漂白されてしまう可能性があります。ここは次亜塩素酸ナトリウムではなく、アルコール製剤を使用するか、界面活性剤(家庭用洗剤を薄めたもの)で拭き取る方法を推奨します。

仮設トイレと休憩所


  • 仮設トイレ: ドアノブやペーパーホルダーだけでなく、床面も0.1%の濃い消毒液で定期的に清掃することで、現場全体への感染拡大を強力に防げます。

  • ヘルメット: 外側(樹脂部)は消毒可能ですが、あご紐(繊維)は色落ちします。また、内装の発泡スチロールやハンモック部分は肌に直接触れるため、次亜塩素酸ナトリウムで拭いた場合は、念入りな水拭きが必要です。汗と反応して肌荒れの原因になるため、内側はアルコール消毒の方が無難です。

[比較] 次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水の違いと使い分け

「次亜塩素酸ナトリウム」と名前がよく似ているものに「次亜塩素酸水」がありますが、これらは性質が全く異なる別の物質です。現場で購入・使用する際に混同しないよう、明確な違いを理解しておきましょう。
参考)次亜塩素酸ナトリウム水溶液と次亜塩素酸水の違いとは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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項目 次亜塩素酸ナトリウム 次亜塩素酸水
主成分・液性 強アルカリ性 酸性~弱酸性
主な製品 ハイター、ブリーチ(漂白剤) 専用の生成装置で作る水、専用ボトル製品
人体への影響 皮膚を溶かす(手荒れ・危険) 皮膚への刺激が少ない(手荒れしにくい)
手指消毒 不可(絶対ダメ) 製品によっては可(※1)
保存期間 冷暗所で数ヶ月(希釈後は即日) 非常に短い(有機物に触れると即水に戻る)
漂白作用 あり(強力) ほとんどなし
現場での適性 物品・床・トイレの強力消毒 空間噴霧(※2)や消臭、食材洗浄

参考リンク:NITE(製品評価技術基盤機構) - 次亜塩素酸水等の販売実態について
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの混同による事故を防ぐための啓発資料です。正しい選び方と使い方の区別について公的な見解が得られます。
(※1)次亜塩素酸水は、一定の基準を満たしたものは手指に使われることもありますが、製品ごとに濃度やpHが異なるため、必ず「手指消毒用」として認可・販売されているものを確認する必要があります。
(※2)有人空間での噴霧については、厚生労働省や専門家会議でも議論が分かれており、推奨しないとする見解も多いため、現場事務所での導入は慎重に行う必要があります。
現場での使い分けの結論


  • 「モノ(工具・設備・床)」の徹底的な消毒には、安価で強力な「次亜塩素酸ナトリウム」(本記事で解説した作り方)を使用する。

  • **「人(手指)」の消毒には、「消毒用アルコール」**または手洗いを使用する。

このように明確に用途を分けることが、コストを抑えつつ、作業員の健康と安全を守る最適な運用となります。現場の衛生担当者は、ペットボトルで作った消毒液には必ずラベルを貼り、間違って手指に使わないよう、ボトルの色を変える(消毒液は赤いテープを巻くなど)といった工夫も効果的です。正しい知識とちょっとした工夫で、安全な現場環境を作りましょう。

 

 


基礎から学ぶ統計学