ショットブラスト玉サイズの選び方と種類ガイド

ショットブラスト玉サイズの選び方と種類ガイド

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ショットブラスト玉のサイズと種類・選び方を徹底解説

玉を大きくすれば仕上がりが良くなるとは限らず、サイズ違いで塗装が5年以上短命になることもあります。


この記事のポイント
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玉サイズの基本構造

ショットブラストの玉(投射材)は0.3mm〜2.8mmまで規格化されており、用途ごとに最適な粒径が異なります。

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サイズ選定で品質が変わる

粒径が大きすぎると表面が粗くなりすぎ、小さすぎると処理時間が増加してランニングコストが膨らみます。

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建築鉄骨ではJASS6基準が必須

H形鋼の接合摩擦面処理はJASS6にてすべり係数0.45以上が義務づけられており、投射材の粒径選定が直接関係します。


ショットブラストの玉(投射材)とは何か:基本と役割


ショットブラストは、小さな粒子(投射材)を高速でワークに打ち付けて表面処理を行う技術です。この投射材のことを現場では「玉」「ショット玉」「メディア」などと呼びます。


投射材の役割は主に4つあります。錆・スケール・砂などを「はがす」、バリやカエリを「とる」、塗装・溶射の前の下地として表面を「あらす」、そして耐久性を高めるために表面を「たたく」(ピーニング)という機能です。つまり玉の役割は一種類ではありません。


建築業では特に「あらす」と「はがす」の用途が多く、鉄骨鋼材のミルスケール(鉄の酸化物)除去や、H形鋼接合部の摩擦面処理に使われています。プロの現場で「塗装する前に必ずブラスト処理」と言われる理由がここにあります。


投射材は材質でも大きく分かれます。主な分類は鉄系(スチールショット・スチールグリット・ステンレス系)、非鉄系(アルミナ・ガラスビーズ・セラミック・樹脂系など)です。建築・鉄骨分野では鉄系のスチールショットとスチールグリットが主役になります。


玉の「形状」もサイズと同じくらい重要です。球状のショットは表面を滑らかに整え、角ばったグリット系は強い食いつきで短時間に塗膜を除去します。形状選びを間違えると、どれだけサイズが正しくても仕上がりがばらつきます。


投射材の種類 形状 主な用途
スチールショット 球状 鋳造品の砂落とし・スケール除去・塗装前下地
スチールグリット 角ばった多角形 塗装・溶射前の粗化処理、アンカーパターン形成
ステンレスショット 球状 アルミ・ステンレス・銅製品の処理(鉄分混入NG品向け)
ガラスビーズ 球状 光沢仕上げ・金型クリーニング・精密部品


形状の選択が先、サイズの選択が後というのが正しい順序です。建築現場で使われるものはほぼスチールショットかスチールグリットに絞られます。覚えておけば選定の判断が格段に速くなります。


ショットブラスト玉のサイズ規格:JIS・SAE記号と粒径一覧

投射材の玉サイズは、日本産業規格(JIS)や米国規格(SAE)で標準化されています。現場の発注書や仕様書でよく見る記号の意味を把握しておくことが実務では欠かせません。


JIS規格ではスチールショットは「S-s〇〇」という記号で表され、後ろの数字が粒径(mm)の10倍になっています。たとえば「S-s140」であれば粒径1.4mmのショットです。対応するSAE記号は「S460」となります。


以下が建築・鉄骨分野でよく使われるスチールショットの規格一覧です。


粒径(mm) JIS記号 SAE記号 主な用途
2.8mm S-s280 S930 重厚なスケール除去・大型鋳物
2.0mm S-s200 S660 大型鋳鍛造品のスケール落とし
1.4mm S-s140 S460 建築鉄骨・塗装前下地処理(JASS6対応)
1.2mm S-s120 S390 鋼板形鋼の一般的な下地処理
1.0mm S-s100 S330 コンクリート床の目荒らし・標準的な下地処理
0.8mm S-s80 S280 比較的薄い板・精度が必要な部材
0.6mm S-s60 S170 精密部品・薄板素材


建築現場でよく登場するのはS-s100(1.0mm)〜S-s140(1.4mm)の範囲です。新東工業株式会社が公表している処理事例では、H形鋼のJASS6接合摩擦面処理にφ1.4mmのスチールショット(SB-14)を使用し、送り速度0.5m/minで粗さRz50μm以上を達成しています。


スチールグリット(角ばった形状)もサイズ規格があります。


粒径(mm) JIS記号 SAE記号 主な用途
1.0mm G-100 G25 塗装・溶射前の粗化(建築鉄骨の塗装下地)
0.7mm G-70 G40 塗装前粗化・アンカーパターン形成
0.5mm G-50 G50 薄板への粗化・精密部品の前処理


スチールグリットはショットに比べて研削力が高く、塗装の密着に必要な「アンカーパターン」をより深く・鋭く作れます。ただし加工時のワークへの負荷も大きく、薄板や変形しやすい素材には向きません。建築では厚板や形鋼に使われることが多いです。


不二製作所によれば、ショット・グリットの粒度番号は「粒径(mm)の100倍」という目安があります。1.0mmなら100番、0.7mmなら70番という読み方です。発注ミスや種類の取り違えを防ぐために、JIS記号と粒径mmを必ずセットで確認するのが原則です。


不二製作所:研磨材の粒度・番手の基礎知識(スチールショットの粒度番号の読み方)


ショットブラスト玉サイズと表面粗さの関係:塗装密着への影響

玉サイズは「表面粗さ」に直結します。そしてこの表面粗さが、塗装や溶射の密着性を決定づけます。


大きい玉(例:1.4〜2.0mm)を使うと、1回の衝突で削れる量が多くなり、表面に深く大きな凹凸が生まれます。これをアンカーパターンといいます。アンカーパターンが深いほど塗料が食い込む面積が増え、物理的な密着力が高まります。重防食塗装ステムを採用する橋梁や海洋構造物では、この深い凹凸が必要です。


一方、小さい玉(例:0.6〜0.8mm)は1回あたりの衝撃は弱いものの、細部や複雑な形状にも入り込みやすく、均一な粗さを作れます。精密部品や薄板への加工に向きます。


表面粗さの単位は「Ra(算術平均粗さ)」や「Rz(最大高さ粗さ)」で表されます。建築分野ではRzが重要で、JASS6ではRz50μm以上が求められています。Rz50μmというのは約0.05mmです。指の腹では感じにくい微細な凹凸ですが、塗膜の長期密着に大きく影響します。


ブラスト処理後の表面粗さの目安を以下にまとめます。


玉サイズの分類 代表粒径 表面粗さの目安(Rz) 主な用途
大粒 1.4〜2.0mm Rz 70〜100μm 鉄骨接合摩擦面処理・橋梁・船体
中粒 0.8〜1.2mm Rz 40〜70μm 建築鋼材の塗装前処理・コンクリート目荒らし
小粒 0.3〜0.7mm Rz 25〜40μm 精密部品・薄板・ショットピーニング


「大きい玉で強く処理する方が確実」と思いがちですが、それは正確ではありません。粗さが必要以上に大きくなると、塗料が凹部に完全に充填されず「エア溜まり」が生じて、逆に密着不良の原因になることもあります。


塗装の密着性に関しては「ちょうどいい凹凸」が重要です。スウェーデン規格SISのSa2.5(近完全除錆)を達成しつつ、用途に合った粗さに仕上げることが、長期防食の出発点になります。


浜新商会:JASS6摩擦面処理基準・ブラスト規格の詳細(すべり係数0.45の確保方法)


ショットブラスト玉サイズの選定方法:用途別・材質別の具体例

玉サイズは「ワークの材質」「処理の目的」「求める表面粗さ」の3要素を整理してから決めます。これが選定の基本です。


建築鉄骨(H形鋼・プレートの接合摩擦面処理)


建築工事標準仕様書(JASS6)では、鉄骨接合部のすべり係数0.45以上の確保が義務づけられています。新東工業の実績では、φ1.4mm(SB-14)のスチールショットを使用し、送り速度0.5m/minでRz50μm以上を安定して達成できています。この処理はサンダー処理の1/10以下の時間で完了でき、作業効率が大幅に向上します。


コンクリート・床面の目荒らし


床面への合成樹脂塗床材の密着や、打継ぎ面の処理には粒径0.8〜1.2mmが多く使われます。コンクリートは鉄骨より柔らかいため、大粒すぎると骨材が露出しすぎてしまいます。投射密度は100〜800kg/m²、投射速度は60〜80m/秒が標準的な施工条件です。


塗装・溶射前の鋼板下地処理


一般的な鋼板への塗装前処理には、スチールグリット G-40(0.7mm)〜G-18(1.2mm)が選ばれます。グリットは角ばった形状のため、ショットより深くシャープなアンカーパターンを形成でき、エポキシ系重防食塗料との相性が良いです。


ダイカスト・非鉄金属のバリ取り


アルミダイカスト製品には、鉄分混入を避けるため亜鉛系投射材(アドバンスショット・AD-40〜AD-80)やアルミナビーズが使われます。粒径は0.4〜0.8mmが一般的です。ガスや粉塵の爆発リスクが鉄系投射材より大幅に低いという安全面のメリットもあります。


選定表としてまとめると次の通りです。


処理目的 推奨投射材 代表粒径
鉄骨接合摩擦面処理(JASS6) スチールショット 1.4mm(SB-14)
塗装前の鋼板下地・粗化処理 スチールグリット 0.7〜1.2mm(G-40〜G-18)
コンクリート・床面の目荒らし スチールショット 0.8〜1.2mm
アルミ・ダイカスト製品のバリ取り 亜鉛系・セラミック系 AD-40〜AD-80
ショットピーニング(疲労強度向上) マイクロショット・ステンレス 0.1〜0.6mm


コスト面で注意すべきことがあります。単価が安い投射材を選んでも、投射時間が長くなったり、寿命が短かったりすると、トータルランニングコストが増大します。安さだけで選ぶのは禁物です。


処理品質が上がれば塗装の再施工間隔も伸びます。ランニングコストは「投射材費」だけでなく「塗装の長寿命化による工事コスト削減」まで含めて考えることが建築業の実務では求められます。


マシンテック川上:投射材の用途別選定表と粒径の目安(処理品質の決まり方)


サイズ選定の失敗パターンと建築現場での注意点

玉サイズの選定を誤ると、現場での手直しや再処理が発生します。これは時間とコストの両面でダメージが大きいです。以下に代表的な失敗パターンを整理します。


パターン①:玉が大きすぎて薄板が変形した


粒径2.0mm以上の大粒ショットを薄板(板厚3mm以下)に使用すると、衝撃が強すぎて板が変形・歪みを起こすことがあります。これは修正が困難なケースも多く、最悪の場合は部材の廃棄・再製作になります。薄板には必ず0.6〜0.8mm程度の小粒を選びます。


パターン②:玉が小さすぎてスケールが取り切れなかった


重度に錆びた鋼材や、厚いミルスケールが付着した素材に0.6mm以下の小粒を使っても、十分な衝撃が出せません。処理時間を長くしてもスケールが残ることがあります。後工程の塗装の下に錆が残ってしまうことにもなります。重度のスケール除去には1.2〜1.7mmの中〜大粒が必要です。


パターン③:オペレーティングミックスの管理不足


これはあまり知られていないポイントです。ショットブラスト機の中で実際に循環している投射材の粒度分布を「オペレーティングミックス」と言います。新品の投射材を補給しないまま使い続けると、破砕・細粒化が進んで粒度が小さい方に偏ります。すると研掃速度が落ち、処理品質が下がってもなかなか気づきません。定期的に粒度の確認と補給が必要です。


パターン④:用途に合わない材質の投射材を使ってしまった


アルミや非鉄金属のワークにスチールショットを使うと、鉄粉がワーク表面に刺さり込んで腐食の原因になります。これを「鉄コンタミ(異物混入)」と呼びます。医療機器・食品機械・精密電子部品では絶対に避けるべき事態です。材質の選定は「ワーク材質への鉄分混入が問題ないか」という観点で必ず確認します。


サイズ選定の3チェックポイント


- 🔲 ワークの板厚・形状から「変形リスク」を確認する
- 🔲 錆・スケールの程度(グレードA〜D)に対して処理能力が十分か確認する
- 🔲 投射材の材質がワーク素材と相性問題を起こさないか確認する


失敗の多くは「前回と同じだから大丈夫」という思い込みから始まります。ワークや条件が少しでも変わったら、選定を一から見直す習慣が重要です。セパレーター機構の定期清掃も合わせて実施することで、常に適正な粒度を保てます。


ショットブラスト玉の長寿命化とコスト管理の実践的知識

投射材は消耗品ですが、正しく管理すれば寿命を最大化しランニングコストを抑えることができます。この視点は建築業の現場管理として意外と見落とされがちです。


玉の寿命に影響する要因


投射材の寿命は「硬度」「内部品質(欠陥の有無)」「投射エネルギー」「ワーク材質」の組み合わせで決まります。ISOやJISでは鋳鋼ショットの硬度はHV390〜530が標準規定されています。高硬度のSB-PM(HRC51〜55)やSB-PH(HRC58〜62)は衝撃に強く、繰り返し使用に耐えます。


ただし内部にブローホール(気泡)やクラックがある粗悪品は、数回の投射で破砕します。破砕すると細粒が急増し、オペレーティングミックスが崩れ、処理品質が低下します。玉の「見た目の安さ」に騙されるのが最も多い失敗です。


品質管理の指標:ライフテスター(寿命試験)


新東工業・浜新商会などのメーカーでは、ライフテスターという専用機器でショットの寿命を評価しています。繰り返し投射して一定期間の破砕度を測定し、寿命曲線を算出します。安価な輸入品と国内大手品では、寿命が2〜3倍以上異なるケースもあります。


トータルコストで計算すると、単価が2倍でも寿命が3倍であれば国内大手品の方が安くなります。これが「単価だけで選ぶのは損」という根拠です。


セパレーターの管理が処理品質の要


ショットブラスト機内にはセパレーターという機構があり、使用できる投射材と破砕粒・粉塵を分離して循環させています。このセパレーターのスクリーンが目詰まりしたり、吸引バランスが崩れたりすると、細粒が増えて処理品質が悪化します。


スクリーンの清掃は「毎日作業後」が基本です。合わせて集塵機の定期自主検査(労働安全衛生法に基づき年1回以上の実施が義務)も忘れずに実施してください。集塵機の目詰まりはセパレーター機能の低下に直結し、作業環境の悪化にもつながります。


使用済み投射材(廃ショット)の処理


使い終わった廃ショットは産業廃棄物として適切に処理する必要があります。新東工業では廃ショットの回収・リサイクルを実施しており、鉄源として再資源化するシステムを持っています(同社製スチールショット・スチールグリットに限定)。廃棄コストの削減という観点でもメーカーの回収システムを確認しておくことをおすすめします。


投射材の管理は「買って使い捨て」ではなく、補給・分離・点検・廃棄のサイクルを回していくものです。このサイクルをきちんと管理している現場は、処理品質が安定し、結果として塗装や防食工事のやり直しが激減します。


浜新商会:投射材のオペレーティングミックス・硬度・寿命管理の詳細(廃ショットの扱い方も解説)


新東工業:スチールショット・スチールグリットの規格・特長・選定基準(建築・橋梁対応品のラインナップ)




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