吸油量JISの基準と建築塗装への影響を徹底解説

吸油量JISの基準と建築塗装への影響を徹底解説

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吸油量JISの基準と建築塗装の品質管理

吸油量の数値が高い顔料を使うほど、塗膜が丈夫になると思っていませんか?実は逆で、吸油量が高すぎる顔料を適切な配合量計算なしに使うと、塗膜がひび割れやすくなり、補修コストが数万円単位で増える危険があります。


📋 この記事の3つのポイント
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JIS K 5101-13とは

顔料・体質顔料の吸油量を「精製あまに油法」または「煮あまに油法」で測定するJIS規格。建築塗料の品質評価に直結する基準です。

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吸油量が塗膜品質に与える影響

吸油量の数値が35ml/100gを超える顔料は塗料の粘度を過剰に上昇させ、ひび割れや艶ムラなど多様な塗膜欠陥につながります。

現場で使える正しい活用法

CPVC(臨界顔料体積濃度)と吸油量の関係を理解することが、外壁塗装の長期耐久性と施工コスト削減の鍵になります。


吸油量JISとは何か:JIS K 5101-13の概要と測定方法


建築業に携わる方ならば、外壁塗装や屋根塗装で使われる塗料に「顔料」が配合されていることはご存知でしょう。しかし、その顔料の品質を評価する重要な指標のひとつである「吸油量」については、案外知らない方も多いのではないでしょうか。


吸油量(Oil absorption value)とは、一定の条件のもとで顔料または体質顔料によって吸収される油の量を指します。簡単に言うと、「ある顔料100gをペースト状にするために、油が何ml必要か」を示す数値です。この値が大きいほど顔料は多くの油を必要とし、塗料の配合設計に大きな影響を与えます。


JIS規格においては、この吸油量を測定する方法として JIS K 5101-13(顔料試験方法 第13部:吸油量)が制定されています。この規格には2つの測定方法が存在します。


| 規格番号 | 方法 | 使用する油 |
|---|---|---|
| JIS K 5101-13-1:2004 | 精製あまに油法 | 酸価5.0〜7.0 mgKOH/gの精製あまに油 |
| JIS K 5101-13-2:2004 | 煮あまに油法 | JIS K 5421に規定する煮あまに油 |


測定手順はシンプルですが、再現性を確保するために細かい条件が定められています。測定板(ガラス板または大理石板、最低300×400mm)の上に顔料を置き、ビュレットから精製あまに油を一度に4〜5滴ずつ徐々に滴下します。その都度パレットナイフで練り込み、ペーストが「滑らかな硬さ」になった時点を終点とします。この操作にかかる時間は20〜25分というのも規格に定められており、それより早く終わった場合や遅すぎた場合は正確な測定結果とみなされません。意外ですね。


結果は以下の計算式で表されます。


$$O_1 = \frac{V \times 100}{m}$$ (単位:ml/100g)


$$O_2 = \frac{V \times 93}{m}$$ (単位:g/100g)


ここでVは消費したあまに油の容量(ml)、mは試料の質量(g)です。測定は2回繰り返し、平均値を採用するのが原則です。


また、予想される吸油量によって試料の採取量が変わる点も見逃せません。吸油量が10ml/100g以下の場合は試料20g、80ml/100g以上の場合はわずか1gと、最大で20倍の差があります。この試料量の設定を間違えると測定精度が大きく下がるため、建築現場での品質管理においても確認が必要な部分です。


なお、この規格はISO 787-5:1980を翻訳・整合したもので、国際的な試験方法とも対応しています。2019年7月の法改正により、「日本工業規格」から「日本産業規格」へと名称が変わった点も押さえておきましょう。


JIS K 5101-13-1:2004(顔料試験方法 第13部:吸油量 第1節:精製あまに油法)全文 — kikakurui.com


吸油量JISが建築塗料の品質に与える影響:顔料の種類と数値の違い

建築用塗料に使われる顔料は、大きく「着色顔料」と「体質顔料」に分けられます。着色顔料は塗膜に色を与えるもので、酸化チタン(白色)やカーボンブラック(黒色)などが代表例です。体質顔料は透明性が高く単独では隠ぺい力が弱いものの、炭酸カルシウム・タルク・硫酸バリウム・クレーなどが使われ、塗料の粘度調整や塗膜強度の改善に貢献しています。


吸油量が重要なのは、この数値が塗料中のバインダー(樹脂)の必要量に直結するからです。吸油量が高い顔料を使う場合、それだけ多くの樹脂が顔料に吸い込まれるため、塗膜を形成するために使えるバインダー量が相対的に減ります。これが塗膜の強度・耐久性・光沢に影響します。


代表的な顔料・体質顔料の吸油量の目安は以下の通りです。


| 顔料・体質顔料の種類 | 吸油量の目安(ml/100g) |
|---|---|
| 沈降硫酸バリウム | 約10〜15 |
| 炭酸カルシウム(重質) | 約15〜25 |
| 酸化チタン(ルチル型) | 約18〜22 |
| タルク | 約28〜40 |
| カーボンブラック | 約100〜300 |
| カオリン(クレー) | 約35〜50 |


数字を見ると差が大きいですね。カーボンブラックはタルクの約7倍以上の吸油量を持つことがあり、黒色塗料の配合設計が特に難しい理由がここにあります。実際に特許文献では、「顔料の吸油量が35g/100gを超えると塗料の粘度が高くなりすぎる場合がある」(JIS K 5101-13-2:2004に基づく測定)と記載されており、建築物のコンクリート剥落防止工法においても吸油量の数値管理が明文化されています。


建築現場でよく使われる外壁塗料には複数の体質顔料がブレンドされているため、各顔料の吸油量を加重平均した「ブレンド吸油量」を把握しておくことが、塗装品質の安定につながります。これが基本です。


吸油量を適切に管理せずに顔料の種類や配合量を現場の感覚だけで変えてしまうと、意図せず塗料粘度が上昇してしまいます。粘度が高すぎると「ゆず肌(オレンジピール)」と呼ばれる凹凸状の塗膜欠陥が発生しやすく、最悪の場合は塗膜全体を剥がして下地調整からやり直す必要が出ます。一棟分の外壁再塗装となれば、数十万円規模の追加コストになりかねません。


吸油量とCPVC(臨界顔料体積濃度)の関係:建築塗装の耐久性を左右する計算

建築塗装の耐久性を深く理解するには、吸油量と切り離せない概念として「CPVC(臨界顔料体積濃度:Critical Pigment Volume Concentration)」を知っておく必要があります。CPVCとは、塗料中の顔料とバインダーのバランスが最も微妙に変化する境界点のことで、この点を超えると塗膜性能が急激に低下することが知られています。


CPVCは吸油量から以下のように計算されます。


$$CPVC = \frac{顔料分(B)の体積 \times 100}{顔料分(B)の吸油量 + 顔料分(B)の体積}$$


この計算式から分かるとおり、吸油量が高くなるほどCPVCは低い値になります。CPVCが低いということは、より少ない顔料量でも「顔料が多すぎる状態(バインダー不足)」に陥りやすいことを意味します。


建築用塗料では、実際の顔料体積濃度(PVC)がCPVC以下に収まるよう配合を設計するのが鉄則です。PVCがCPVCを超えると次のような問題が発生します。


- 🔴 白亜化チョーキング)の加速:樹脂が不足し、顔料分が表面に露出する
- 🔴 透水性の増大:塗膜に微細な空隙が生まれ、水が浸透しやすくなる
- 🔴 光沢の著しい低下:艶有り塗料が艶無しのような仕上がりになる
- 🔴 塗膜強度の低下:摩擦や衝撃に弱くなり、耐用年数が短くなる


実際の遮熱性艶消し水性塗料に関する特許文献(JP2014196401A)でも、吸油量をJIS K 5101-13-2:2004で測定し、CPVCを計算したうえで配合を決定するプロセスが明記されています。つまり、吸油量のJIS測定はメーカーの研究室だけの話ではなく、現場で使われる塗料の品質を保証するための根拠になっているのです。これは使えそうです。


建築現場でも塗料の仕様書に記載されているPVC値やCPVC値を確認する習慣を持つことで、塗替えサイクルの延長につながります。10年耐久を15年に伸ばすことができれば、一般的な住宅1棟の塗装コストを約30〜50万円削減できる計算になります。


日本塗装技術協会 実用塗装・塗料用語辞典「か行」:堅練ペイントや吸油量の用語解説あり — jcot.or.jp


吸油量JISの測定から分かる体質顔料の選び方:建築現場での実践的な活用

建築現場で塗料を選んだり管理したりする立場にある方にとって、吸油量の知識は単なる規格の話ではなく、実際の施工品質と工事費用に直結します。では、体質顔料の吸油量をどのように活用すればよいのでしょうか。


まず、外壁塗料の下塗りと上塗りで求められる吸油量の目安が異なることを知っておきましょう。下塗り塗料では、素地への密着性を高めつつ上塗り塗料のための平滑な下地を作ることが目的です。そのため、吸油量が比較的低く安定した硫酸バリウム(10〜15ml/100g程度)や重質炭酸カルシウムがよく使われます。上塗り塗料では、求める艶や色の均一性に応じてタルクやシリカなどが加えられます。


体質顔料の選び方を整理すると、以下のような観点があります。


- 💡 低吸油量(〜20ml/100g程度):沈降硫酸バリウム・炭酸カルシウムなど。粘度への影響が小さく、配合設計がしやすい。耐薬品性・耐水性を重視する下塗りに向く。


- 💡 中吸油量(20〜40ml/100g程度):タルク・酸化チタンなど。増粘効果や顔料の分散安定性に貢献し、上塗り塗料に多用される。


- 💡 高吸油量(40ml/100g超):カオリン・一部のシリカなど。艶消し効果が高いが、バインダー量を増やす必要があり、コスト増につながりやすい。


吸油量が高い体質顔料を使うほど樹脂(バインダー)の必要量が増え、材料コストが上がります。吸油量が条件です。一方で、適切な吸油量の顔料を選べば、同じ艶消し効果や色相を維持しながら樹脂の使用量を削減できるため、製品コストを5〜15%程度削減できたケースも業界では報告されています。


また、建築用塗料の品質確認でもう一点重要なのが、メーカーから受け取る技術資料に「JIS K 5101-13準拠」の記載があるかどうかを確認することです。この表記があれば、吸油量の測定が国際規格(ISO 787-5)とも整合した方法で行われていることを意味します。吸油量の規格を無視したまま顔料を代替品に変えると、後から塗膜の艶ムラや色ムラが発生し、クレーム対応で時間とコストを失うリスクがあります。


NITE(製品評価技術基盤機構)「家庭用塗料」:顔料の種類と役割について詳しく解説されています — nite.go.jp


吸油量JIS測定の落とし穴:建築塗装現場で起きやすいミスと対策

JIS K 5101-13の測定方法はシンプルに見えますが、現場や品質管理の場面ではいくつかのミスが起きやすいポイントがあります。これを知らずにいると、塗料の品質評価が大きくずれてしまうことがあります。


最も多いのが「終点の判断ミス」です。規格ではペーストが「滑らかな硬さ」になった時点を終点と定めていますが、この判断は測定者の主観に依存する部分があります。練り込みが不足した状態で終点と判断してしまうと吸油量が低く、練り込みすぎると高く出る傾向があります。正確には、ペーストが「割れたりぼろぼろになったりせず広げることができ、かつ測定板に軽く付着する程度」の状態が終点です。厳しいところですね。


次に多いのが「操作時間の無視」です。規格では終点までの操作時間を20〜25分と明示しています。これは、油と顔料が十分に馴染むための時間として設定されているため、これより短時間で測定を終えると正確な吸油量が得られません。現場での急ぎの確認測定では、この時間が省略されがちなので要注意です。


「試料量の取り間違い」も見落とされやすいポイントです。前述の通り、予想される吸油量によって試料の質量が1gから20gまで変わります。例えば吸油量が50ml/100g前後の顔料に対して誤って20gの試料を使ってしまうと、計算で得られる吸油量の精度が著しく下がります。これが原因で塗料配合を誤り、塗膜不良につながるケースは決してゼロではありません。


対策として有効なのは、測定前に顔料メーカーのデータシートで吸油量の概算値を確認し、適切な試料量と試薬を準備するという手順を標準化することです。手順が1つで完結します。大規模な塗装改修工事の場合、施工前に使用顔料・体質顔料のJIS K 5101-13測定値を書面で確認するプロセスを工程管理に組み込むことで、後から発生する塗膜不良リスクを大幅に下げることができます。


また、顔料の種類が変更されたり、メーカーが代替品を使用したりした場合に吸油量が変わることがあります。見た目や色が同じでも吸油量が異なるケースは業界で報告されており、「同じ顔料名だから大丈夫」という思い込みは禁物です。吸油量に注意すれば大丈夫です。


日本塗料工業会「塗料原料」:塗料の各成分(樹脂・顔料・溶剤等)の役割と特性を詳解 — toryo.or.jp


【建築塗装の視点から】吸油量JIS規格の確認が省エネ・長寿命化につながる理由

ここまで吸油量とJIS規格の技術的な話を中心に解説してきましたが、最後に「なぜ建築業従事者がこれを知っておくべきか」という実務上の意味を整理します。


近年、建物の長寿命化や省エネ化が国の政策としても推進されており、外壁塗装や屋根塗装の品質基準は以前よりも厳しくなっています。国土交通省が定める公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)でも塗料の品質管理に関する基準が年々更新されており、JIS規格への準拠が前提条件として明記されています。


吸油量を軸とした顔料の品質管理が長寿命塗膜につながる理由は、次のように整理できます。


- 🏠 適切な吸油量管理 → バインダー量の最適化 → CPVC超過を防ぐ → 白亜化・剥がれの遅延 → 塗替えサイクルの延長


この連鎖を逆向きに見ると、吸油量管理を怠るだけで「5〜10年で塗替えが必要になる外壁」を作ってしまうリスクがあることが分かります。一般的な外壁塗装の費用は住宅1棟あたり80〜120万円程度とされているため、塗替えサイクルが1回多くなるだけで施主に100万円近い余計な出費を強いることになります。痛いですね。


また、遮熱性艶消し塗料などの機能性塗料においては、吸油量を基準にしたCPVC計算が製品開発段階で行われており、これが製品のJIS認証や工事採用の前提条件になっています。建築会社や施工管理者が塗料メーカーに「JIS K 5101-13に基づく吸油量データを提出してください」と要求できるようになると、品質の客観的な比較が可能になります。


さらに、吸油量の知識はSDSs(安全データシート)や技術資料の読み解きにも役立ちます。塗料の配合変更やメーカー変更が生じた際に、吸油量データの変化を追うことで「塗膜性能が変化していないか」を数字で確認できるようになります。結論は「吸油量を知る人が、品質を守れる」です。


建築業に携わるすべての人にとって、JIS K 5101-13が規定する吸油量の知識は、塗装工事の品質を守り、施主へのクレームリスクを下げ、長期的なコストを抑えるための実践的な武器になります。ぜひ日々の現場管理や塗料選定の場面で活用してみてください。


国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」:官公庁の塗装品質基準の根拠資料 — mlit.go.jp




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