酸化還元電位の一覧と水!水道水や水素水の数値の比較と測定

酸化還元電位の一覧と水!水道水や水素水の数値の比較と測定

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酸化還元電位の一覧と水

酸化還元電位と水の重要ポイント
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数値の目安と一覧

水道水は+500mV以上の酸化力、水素水は-400mV等の還元力を持つ

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建築設備への影響

高い酸化還元電位は給水管の腐食(赤水)を加速させる要因になる

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現場での応用

コンクリート練混ぜ水の電位管理は六価クロム溶出抑制にも効果あり

[基礎] 酸化還元電位の数値と測定の仕組み

 

建築設備や水処理の現場で耳にすることのある「酸化還元電位(ORP)」ですが、その本質を正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。まずは、この数値が何を意味し、どのように測定されるのか、その基礎的な仕組みについて深掘りしていきます。


  • 酸化と還元の定義


    • 酸化(Oxidation): 物質が酸素と化合する、水素を失う、または電子を失う反応です。鉄が錆びる現象が最も身近な例です。

    • 還元(Reduction): 物質が酸素を失う、水素と化合する、または電子を受け取る反応です。錆びた鉄から酸素を取り除き、元の鉄に戻すような作用を指します。

酸化還元電位(Oxidation-Reduction Potential、略してORP)とは、ある物質が他の物質を「酸化させる力」を持っているか、それとも「還元させる力」を持っているかを数値化したものです。単位はミリボルト(mV)で表されます。


  • プラス(+)の数値: 酸化させる力が強いことを示します。数値が高いほど、相手(鉄管や生体など)から電子を奪い、錆びさせたり劣化させたりする力が強くなります。

  • マイナス(-)の数値: 還元させる力が強いことを示します。数値が低い(マイナスが大きい)ほど、相手に電子を与え、酸化を防ぐ力が強くなります。

測定の仕組みとしては、水中に白金電極(プラス極)と銀・塩化銀電極(比較電極)を浸し、その間に生じる電位差を計測します。
水の中に溶存している酸素や塩素などの酸化性物質が多いと、白金電極側で電子が奪われる反応が起き、電位はプラスに振れます。逆に、水素などの還元性物質が多いと、電極に電子が与えられ、電位はマイナスを示します。
建築現場において、なぜこの測定が重要かというと、水が「配管を錆びさせる水」なのか、それとも「現状を維持する水」なのかを客観的な数値として判断できるからです。pH(酸性・アルカリ性)だけでは見えない、水の「電子レベルでの挙動」を知るための重要な指標となります。
参考リンク:酸化還元電位(ORP)とは? - 単位mVの意味と測定原理についての詳細な解説

[一覧] 水道水と水素水の酸化還元電位の比較

私たちが普段現場で飲んでいる水や、施工に使用する水には、それぞれ固有の酸化還元電位があります。ここでは、一般的な水の数値を一覧で比較し、なぜそのような数値になるのか、その背景にある理由を解説します。
以下の表は、一般的な水の酸化還元電位の目安一覧です。

水の種類 酸化還元電位 (mV) 特徴 理由
水道水 +500 ~ +900 強い酸化力 殺菌のために塩素が含まれており、これが強力な酸化剤として働くため。
ミネラルウォーター +200 ~ +500 弱~中の酸化力 加熱殺菌処理されているものが多く、還元性物質が失われている場合が多い。
井戸水 -200 ~ +200 変動が大きい 地下深層水などは外気に触れておらず、還元状態にあることが多い。
人間の体液 -100 ~ +100 還元~平衡状態 生体恒常性により、体内はやや還元状態に保たれている。
水素水 -200 ~ -600 強い還元力 水素ガス(還元剤)を人工的に溶存させているため、極めて低い値を示す。
市販のアルカリイオン水 -100 ~ +50 弱い還元力 電気分解により陰極側に生成され、水素を含むため還元傾向を示す。


  • 水道水の数値が高い理由
    水道水は、法律によって塩素消毒が義務付けられています。塩素は強力な酸化作用によって細菌を死滅させますが、同時に水の酸化還元電位を大きくプラスに引き上げます。つまり、水道水は衛生面では安全ですが、物質(鉄管など)を錆びさせる力は非常に強い水と言えます。都市部の水ほど、塩素濃度管理が徹底されているため、+700mVを超える高い数値を示すことがあります。

  • 水素水の数値が低い理由
    水素水は、酸化還元電位を意図的にマイナスにするために製造された水です。溶存水素が電子を与える役割を果たすため、-400mVや-600mVといった強力な還元力を持ちます。ただし、水素は非常に抜けやすい気体であるため、開封後数時間で数値がプラス(酸化側)に戻ってしまう特性があります。

  • 井戸水の意外性
    現場で井戸水を利用する場合、汲み上げた直後はマイナスの数値を示すことがあります。これは地下環境が酸素の少ない「還元環境」であるためです。しかし、バケツに汲んで空気に触れさせると、急速に酸素が溶け込み、数値はプラスへと上昇します。これは、地下埋設管の腐食環境を考える上で非常に重要なヒントになります。

参考リンク:いろいろな水の酸化還元電位計測データ - ペットボトル水と水道水の具体的な数値比較

[腐食] 酸化還元電位が建築設備の配管に及ぼす効果

建築設備のプロとして最も注目すべきなのは、「酸化還元電位と配管腐食」の関係です。給水管の寿命や赤水の発生は、単に管の材質だけでなく、中を流れる水の「電位」に大きく支配されています。


  • 腐食のメカニズムと電位の関係
    鉄が錆びる(腐食する)反応は、鉄(Fe)が電子(e-)を放出してイオン化(Fe2+)する酸化反応です。
    Fe → Fe2+ + 2e-
    この時、水側の酸化還元電位が高い(プラスが大きい)ということは、水が「電子を欲しがっている状態」であると言えます。つまり、電位の高い水は、鉄管から電子を強引に引き抜き、腐食反応を猛烈に加速させるのです。逆に、電位が低い水の中では、鉄は電子を奪われにくく、腐食の進行は遅くなります。

  • 給水管の「赤水」問題
    古いビルやマンションで問題になる「赤水」は、給水管内部の錆が剥離して流れ出る現象です。これは、残留塩素濃度の高い(=酸化還元電位が高い)水道水が常に供給され続けることで、管内面の酸化が止まらないことが一因です。
    近年では、配管の延命措置として、特殊な装置を用いて水の酸化還元電位を下げる、あるいは酸化皮膜(黒錆)を形成させるような水処理装置が導入されるケースが増えています。これは、水の「酸化させる力」そのものをコントロールしようというアプローチです。

  • 異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)
    配管施工でやってはいけない「異種金属の接続」。例えば、銅管と鋼管を直接接続すると、電位差によって鋼管側が急速に腐食します。これは金属ごとの「標準電極電位」の違いによるものですが、流れる水の導電率や酸化還元電位も、この腐食速度に影響を与えます。
    水質が酸化傾向にあると、腐食電流が流れやすくなり、接続部の劣化トラブルを早める原因となります。現場では絶縁継手(絶縁フランジ)の使用が鉄則ですが、水質側からの視点を持つこともトラブルシューティングには有効です。

  • 土壌の酸化還元電位と埋設管
    地中に埋設された配管の腐食診断でも、ORP計が使われます。
    土壌の酸化還元電位が極端に低い(マイナスの値)場所は、酸素が欠乏した嫌気性環境です。一見、酸化しないので良さそうに見えますが、実はここでは「硫酸塩還元細菌」という特殊な菌が繁殖しやすくなります。この菌は金属を腐食させる硫化物を生成するため、電位が低すぎる土壌もまた、埋設管にとっては危険地帯なのです。

参考リンク:建築設備用水配管システムの腐食対策 - アニオン交換処理水による腐食抑制の研究

[裏話] コンクリートの練混ぜ水と酸化還元電位の関係

ここで、一般のウェブ検索ではなかなか出てこない、建設業界ならではの少しマニアックな話題を提供します。それは、コンクリートを製造する際の「練混ぜ水(ミキシングウォーター)」の酸化還元電位についてです。


  • 六価クロムの溶出抑制効果
    セメントには、微量ながら「六価クロム」という有害物質が含まれていることがあります。これは発がん性があり、土壌汚染対策法でも厳しく規制されている物質です。コンクリート施工時や、地盤改良工事において、この六価クロムが土壌や地下水へ溶け出すことが懸念事項となります。
    実は、練混ぜ水の酸化還元電位を低く(還元側に)コントロールすることで、有害な「六価クロム(Cr6+)」を、無害な「三価クロム(Cr3+)」に還元・不溶化できることが研究で分かっています。
    Cr6+ (有害・酸化状態) + 電子 → Cr3+ (無害・還元状態)
    特殊な還元剤や、還元電位の低い水を使用することで、環境リスクを低減できる技術は、環境配慮型の現場では知っておくべき知識です。

  • コンクリートの耐久性への影響
    練混ぜ水の質は、コンクリートの強度や耐久性にも影響します。
    酸化還元電位が極端に高い酸性水などは、鉄筋の不動態皮膜を破壊しやすく、RC造鉄筋コンクリート造)の寿命を縮める可能性があります。逆に、海水を練混ぜ水に使った場合(通常は禁止ですが、非常時や特殊コンクリートの場合)、塩分による鉄筋腐食が問題になりますが、この際の腐食反応も電位の移動が鍵を握っています。

  • スラッジ水の再利用
    生コン工場から出る洗浄排水(スラッジ水)を再利用する際も、その水質管理は重要です。スラッジ水はアルカリ性が高く、電位の状態も上水とは異なります。これを再利用する際に、ORP計を用いて水質をモニタリングすることは、品質の安定化を図る一つの指標となり得ます。

現場監督や施工管理者は、単に「水道水を使えばいい」と考えがちですが、大規模な土木工事や環境配慮が求められる現場では、水の「化学的なポテンシャル」が工事の品質や環境安全性に関わってくるのです。
参考リンク:練混ぜ水の酸化還元電位がセメントから溶出する六価クロムに及ぼす影響 - 論文要旨

[健康] 現場で飲むアルカリイオン水の還元力

最後に、記事のテーマである「酸化還元電位」を、私たち建設従事者の「体」に向けて考えてみましょう。夏の酷暑や冬の寒さ、そして激しい肉体労働を行う現場では、体のケアは安全管理の基本です。


  • 活性酸素と肉体疲労
    激しい運動や肉体労働を行うと、体内では呼吸量が通常の何倍にもなり、大量の酸素が消費されます。この過程で、取り込んだ酸素の一部が「活性酸素」という、非常に酸化力の強い物質に変化します。
    活性酸素は、体内の細胞や血管を「錆びさせる(酸化させる)」原因となり、疲労の蓄積、老化、炎症などを引き起こすと言われています。現場作業後に感じる「どっとくる疲れ」の正体の一つは、この酸化ストレスです。

  • アルカリイオン水・還元水の可能性
    そこで注目されるのが、酸化還元電位がマイナスを示す「還元水」や「アルカリイオン水」の摂取です。
    理論上、マイナスの電位を持つ水は、体内の過剰な活性酸素(プラスの電位を持つ酸化剤)に電子を与え、その毒性を中和(還元)する効果が期待されています。これを「スカベンジャー効果(活性酸素除去効果)」と呼びます。
    現場の休憩所に設置されているウォーターサーバーや、自動販売機で売られているアルカリイオン水を選ぶことは、単なる水分補給以上に、酸化した体を「リセット」する意味があるかもしれません。

  • 「水素水」ブームの注意点
    ただし、注意も必要です。市販の「水素水」の中には、工場出荷時は電位が低くても、手元に届くころには水素が抜けてしまい、ただの水(酸化還元電位がプラス)に戻っているものも少なくありません。
    「還元力が強いから万能薬だ」と過信するのは危険です。あくまで、バランスの取れた食事と十分な睡眠が基本であり、機能性のある水は「コンディションを整える補助ツール」として捉えるのが賢明な現場監督の判断です。

  • 現場での測定のススメ
    もし興味があれば、携帯型のORP計(数千円から購入可能)を使って、現場の水道水と、自分が持ってきた水筒の水の数値を比較してみるのも面白いでしょう。「お、この現場の水道水は塩素がきついな(数値が高い)」、「このお茶は意外と還元力があるな」といった発見は、見えない水質への意識を高め、結果としてより良い施工管理や体調管理につながります。

参考リンク:酸化還元電位と還元水の健康メリット - 活性酸素との関係性を解説

 

 


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