

JIS規格に適合していると思っていた材料が、実は耐熱試験をクリアしておらず、竣工後の検査で指摘を受けて工事のやり直しになったケースが年間数百件報告されています。
耐熱試験に関連するJIS規格は、建築材料だけを対象としているわけではありません。電気・機械・化学分野にまたがる規格が数十種類存在し、建築業で使用する材料ごとに参照すべき規格番号が異なります。この点を理解していないと、誤った規格で適合確認をしてしまうことになります。
建築用途で特に重要なのは以下の規格群です。
「耐熱試験」と一口に言っても、試験温度・加熱時間・判定基準はそれぞれ大きく異なります。たとえばJIS A 1304では、標準加熱曲線(ISO834準拠)に従って最大で1,000℃を超える温度帯での加熱試験が行われます。一方でJIS A 1321における試験は、200〜300℃程度の中温域での燃焼性評価が中心です。つまり同じ「耐熱」という言葉でも、温度条件だけで5倍以上の開きがあります。
重要なのは、材料の種類と使用部位を先に確認してから、適用規格を特定する順序です。これが基本です。
現場では「このシート材は不燃材です」と言われても、JIS A 1311の試験を経ているかどうか、試験成績書で番号を確認しないと適合の根拠になりません。材料メーカーから受け取る仕様書には規格番号が記載されていることがほとんどですが、複数の規格が並記されている場合は、用途に合ったものを選んで確認する必要があります。
JIS規格番号検索(日本産業標準調査会公式):規格番号から詳細な試験方法・判定基準を無料で検索できます。
建築材料の耐熱試験では、「試験体をどの温度でどれだけ加熱し、何をもって合格とするか」が規格ごとに厳密に定められています。この判定基準を正確に理解していないと、試験成績書を読み誤るリスクがあります。
JIS A 1304(耐火試験)では、加熱炉の中に実物大または縮小モデルの試験体を設置し、標準加熱曲線に従って加熱します。判定基準は「遮炎性」「遮熱性」「構造耐力」の3つで、それぞれ独立した基準を満たす必要があります。遮熱性では、非加熱面の温度上昇が140K以下(平均値)かつ最高180K以下であることが条件です。つまり「燃えなかった」だけでは合格にならないということです。
JIS A 1321(難燃性試験)では、試験体の表面にガスバーナーの炎を60秒間当て、その後の残炎時間・残じん時間・炭化長さを測定します。
炭化面積30cm²とは、だいたい名刺1枚分(91mm×55mm≒約50cm²)よりも小さい面積です。このわずかな差が「難燃1級か否か」を決める分岐点になります。
JIS A 1311(不燃性試験)では、電気管状炉を使い、750℃±10℃の条件で20分間加熱を行います。合格基準は「最高発熱量が試験体の加熱前重量1g当たり8MJ以下」かつ「加熱後の質量減少率30%以内」です。不燃材と準不燃材では試験条件そのものが変わるため、混同は禁物です。
これが条件です。規格番号と試験条件をセットで確認することが、適合確認の第一歩になります。
国土技術政策総合研究所の技術資料:建築材料の防火性能評価に関する詳細な試験方法と判定基準が掲載されています。
「JISマーク付きの材料を使っていれば問題ない」という考え方は、建築現場で非常によく見られる誤解の一つです。これが落とし穴です。
JISマークの認証は、あくまでも「その製品が特定の規格を満たしている」ことを示すものに過ぎません。建築基準法が求める防火・耐火性能は、使用部位・建物用途・床面積などによって要求レベルが変わるため、JISマーク付きの材料であっても、その建物の設計仕様に適合しているかどうかは別の話です。
実際に多いのは以下のようなケースです。
特に防火区画の貫通部処理は要注意です。建築基準法施行令第129条の2の5に基づく「大臣認定工法」が義務付けられている箇所では、JIS規格への適合だけでは法的根拠として不十分です。これを見落とすと、検査機関から「不適合」の指摘を受け、貫通部の再施工が必要になります。再施工費用は部位や規模にもよりますが、1箇所あたり数万円〜数十万円になることもあります。痛いですね。
また、JIS規格は定期的に改定されます。古い版の試験成績書が手元にあっても、現行版の要求事項を満たしているとは限りません。試験成績書の発行日と現行規格の改定日を照合する習慣が重要です。
国土交通省:防火材料の認定・評価制度の概要ページ。大臣認定番号の確認方法も掲載されています。
耐熱試験に関するJIS適合確認は、書類の確認作業が中心になりますが、手順を体系化しておくことで見落としを大幅に減らせます。これは使えそうです。
ステップ1:使用部位と建物用途から要求性能を特定する
まず、建築基準法および施行令の規定に基づき、その部位に必要な防火・耐火性能を確認します。設計図書の特記仕様書や確認申請書類に記載された要求グレード(不燃・準不燃・難燃・耐火◯時間など)を起点にします。
ステップ2:材料に適用されるJIS規格番号を特定する
材料の種類(断熱材・内装仕上げ材・シール材・配線材など)ごとに、対応するJIS規格番号を確認します。メーカーのカタログ・仕様書・試験成績書に記載されている規格番号を、上述の規格一覧と照合してください。
ステップ3:試験成績書の内容を確認する
試験成績書では以下の項目を必ず確認します。
ステップ4:大臣認定番号の確認(防火措置工法の場合)
防火区画貫通部など大臣認定工法が必要な箇所では、国土交通省の「防火材料等データベース」で認定番号を照合します。この確認を1件怠るだけで、検査指摘→再施工というコストが発生します。確認は無料です。
ステップ5:確認内容を書面で記録・保存する
確認した内容は、社内の材料承認記録に残します。施工後に問題が発生した場合の証跡にもなるため、試験成績書のコピーとともに整理しておくことが重要です。適合確認が条件です。
JIS規格は一度制定されて終わりではなく、技術の進歩や国際規格との整合化に合わせて定期的に改定されます。ここが意外と見落とされているポイントです。
近年の大きな動きとして、ISO規格との整合化が進んでいます。JIS A 1304はISO 834シリーズと整合が図られており、試験体の設置方法や加熱炉の仕様に関する要求が国際水準に引き上げられました。海外製の建築材料を輸入して使用する場合、ISO試験成績書があればJIS試験を省略できるケースと、国内での追加試験が必要なケースとが存在します。この判断を誤ると、大臣認定取得の手続きに数ヶ月単位の遅延が生じることもあります。
また、近年普及が進む木質建築(CLT構造・大断面木造)に関連して、木材の耐火被覆材に関するJIS適合要求が従来の鉄骨造・RC造とは異なる形で整理されつつあります。CLT造の防耐火設計は、2019年の建築基準法改正以降に制度化が本格化したため、適用する試験規格の解釈に迷うケースが現場でも増えています。
さらに、2021年以降に改定されたJIS A 1321では、試験に使用するガスバーナーの仕様が一部変更されています。旧版の試験成績書と新版の試験成績書では、試験条件が微妙に異なるため、厳密には同列に比較できない場合があります。発行年を確認するだけで対応できます。
JIS規格の改定情報は、日本産業標準調査会(JISC)のウェブサイトで無料で閲覧できます。主要な建築用耐熱試験規格を定期的に確認する習慣をつけることが、現場でのトラブル予防に直結します。これが原則です。
改定情報を把握していないことで生じる実務上のリスクは「使えると思っていた試験成績書が無効になること」です。竣工検査の直前でこの問題が発覚すると、代替材料の手配と再施工で工期と費用の両方に影響します。工程管理の段階で材料適合確認を組み込んでおくことが、こうしたリスクを回避する最も確実な方法です。
日本産業標準調査会(JISC):JIS規格の新規制定・改定・廃止の最新情報を確認できます。
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