

平座金の規格は現在、主に3つの体系が市場に流通しています。最も古い「通称旧JIS規格」(JIS B 1256:1963)、その後改定された「通称ISO規格」(JIS B 1256:1978)、そして現行の「新JIS規格」(JIS B 1256:2008)です。ただし実務では、現行のJIS規格座金はほとんど流通しておらず、旧JIS規格とISO規格が主流となっています。
参考)https://tomitarashi.com/maruwassya.html
旧JIS規格とISO規格の最大の違いは外径と厚みにあります。例えばM6サイズの場合、旧JIS規格のみがき丸では内径6.5mm・外径13mm・厚さ1mmですが、ISO規格みがき丸では内径6.4mm・外径12.5mm・厚さ1.6mmと異なります。この寸法差により、同じボルトサイズでも座面の接触面積や強度特性が変わるため、設計段階での規格選定が重要です。
参考)https://neji-samurai.com/%E3%81%AD%E3%81%98%E3%81%BE%E3%82%8B%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8Abook/%E5%BA%A7%E9%87%91%E3%81%AE%E8%A6%8F%E6%A0%BC/
平座金の各規格別サイズ比較表(URK株式会社)
新JIS規格(2008年版)には、従来規格にない特徴として硬度規定が追加されています。部品等級Aでは200HVまたは300HV、部品等級Cでは100HVと明確に区分され、用途に応じた硬度選択が可能になりました。さらに小形・並形・大形・特大形の4つの形状系列があり、同じねじ径でも外径サイズを選択できる点が特徴です。
参考)https://www.nbk1560.com/resources/other/article/technical-18-plain-washers/
規格別の代表的なサイズを以下の表にまとめました。
| 呼び径 | 旧JISみがき丸(内径×外径×厚さmm) | ISOみがき丸(内径×外径×厚さmm) | 新JIS並形(内径×外径×厚さmm) |
|---|---|---|---|
| M3 | 3.3×8×0.5 | 3.2×7×0.5 | 3.2×7×0.5 |
| M4 | 4.5×10×0.8 | 4.3×9×0.8 | 4.3×9×0.8 |
| M5 | 5.5×12×0.8 | 5.3×10×1 | 5.3×10×1 |
| M6 | 6.5×13×1 | 6.4×12.5×1.6 | 6.4×12×1.6 |
| M8 | 8.5×18×1.6 | 8.4×17×1.6 | 8.4×16×1.6 |
| M10 | 10.5×22×1.6 | 10.5×21×2 | 10.5×20×2 |
| M12 | 12.5×26×2.3 | 13×24×2.5 | 13×24×2.5 |
| M16 | 17×32×2.6 | 17×30×3 | 17×30×3 |
| M20 | 21×40×3.2 | 21×37×3 | 21×37×3 |
旧JIS規格を使用している業界の方が多いのが現状ですが、業界や用途によって使い分けられています。発注時には規格名称と具体的な寸法を明示することで、誤発注を防ぐことができます。
参考)https://www.urk.co.jp/contents/elements/element11.html
新JIS規格では、小形・並形・大形・特大形の4つの形状系列が規定されています。小形系列は省スペース設計向けで、M1.6からM36まで対応します。並形系列は最も汎用的で、標準的な締結作業に適しています。大形系列は接触面積が大きく、軟質材料や薄板への締結で面圧を分散させる必要がある場合に選択します。
参考)https://tomitarashi.com/washer2008.html
JIS B 1256:2008平座金の詳細規格(日本産業標準調査会)
特大形系列はM5からM36に対応し、特に大きな荷重分散が必要な箇所で使用されます。例えば木材やアルミニウム、樹脂など柔らかい被締結物では、通常の並形では座面が陥没しやすいため、大形や特大形を選定することで座面破損を防ぎます。
参考)https://www.tsurugacorp.co.jp/dictionary/washer/washer_plain.html
平座金の主な材質は鉄(スチール)、ステンレス、黄銅、アルミニウム、チタンなどがあります。鉄製は最も一般的でコストパフォーマンスに優れますが、耐食性が低いため表面処理が必須です。ユニクロめっき、三価クロメート、溶融亜鉛めっき(ドブメッキ)などが施されます。
参考)https://www.kurukuruwave.co.jp/item.php?b=W0amp;h=0010
ステンレス製は耐食性が高く、屋外や湿気の多い環境での使用に適しています。SUS304が一般的で、より高い耐食性が求められる場合はSUS316やSUS316Lが選択されます。黄銅製は電気的な導電性が求められる箇所や、ステンレスとの異種金属接触を避けたい場合に使用されます。
参考)https://www.kaneso.co.jp/onepoint/44_siryo/2006/P061127.htm
JIS規格平座金の詳細技術資料(鍋屋バイテック会社)
新JIS規格では硬度区分が明確に規定されており、部品等級A・200HVは主にSPCC(冷間圧延鋼板)やS45C~S55Cの熱処理品で製造されます。300HV区分はS45C~S55Cの熱処理品が使用され、高い締結力が必要な箇所に適用されます。旧JIS品の鉄生地の硬度は約200HV程度であり、新JIS規格の200HV区分と同等です。
JIS規格品では対応できない特殊な寸法や材質が必要な場合、規格外の特寸平座金が使用されます。従来の平座金に対し、外径や厚さを幅広く選択できるように開発されたシリーズで、締め付ける相手材の穴径がねじに比べて大きい場合や、特殊な荷重分散が必要な箇所で活用されます。
参考)https://wilco.jp/products/washer/washer09.html
特寸平座金にはサイズや材質の制約がなく、オーダーメイドでの製作も可能です。例えば通常のJIS規格では対応できない中間サイズや、特定の厚みが必要な設計において、特寸品を選定することで最適な締結性能が得られます。建築現場では既存の穴径に合わせた特寸ワッシャーの需要が高く、現場での加工を省略できるメリットがあります。
参考)https://kikaikumitate.com/post-14468/
実際の建築現場では、図面上の指定規格と実際の流通品が異なるケースが多く見られます。特に古い図面では旧JIS規格で指定されていても、現在はISO規格品しか入手できない場合があります。このような状況では、単に代替品を使用するのではなく、外径と厚さの違いが締結強度に与える影響を検証する必要があります。
参考)https://www.nbk1560.com/resources/specialscrew/article/nedzicom-topics-04-washer/
規格平座金サイズ一覧表の詳細PDF(なにわねじ)
また平座金にはプレス加工の特性上、片面に丸みがあり反対側にバリが発生します。バリ側を下にすると面圧分散の観点では有利ですが、被締結物の表面を傷つける可能性があります。化粧面や塗装面ではバリによるメッキ剥がれを避けるため、丸側を下にする配慮が必要です。この向きの選択は規格書には記載されていない実務的な判断ポイントとなります。
参考)https://www.handscraft.jp/news/washer-type-role-how-to-use-directions/
建築現場での平座金使用において、最も多い失敗は適合サイズの誤選定です。M8ボルトにM6用の平座金を使用すると、偏心や座り不良が発生し、締結力が著しく低下します。必ず呼び径に合致したサイズを選定し、特に大量発注時には一枚ごとに内径を確認することが重要です。
参考)https://mirix.co.jp/column/washer-types-usage-selection/
平ワッシャーの規格別サイズ早見表(アルマニア)
ばね座金(スプリングワッシャー)との併用時には、必ず平座金を母材側に配置し、その上にばね座金を重ねます。この順序を逆にすると、ばね座金の突起部分が母材表面を傷つけ、特に化粧仕上げ面では致命的な欠陥となります。また過度な締め付けトルクは平座金を変形させ、特に石膏ボードや木材などの軟質材料では食い込みによる破損を引き起こします。適正トルクの管理とトルクレンチの使用が推奨されます。
参考)https://media.kanameta.jp/washer-role-design-beginners-guide/
湿気や水分の多い環境では材質選定が重要で、鉄製にめっきを施したタイプではなく、ステンレス製の採用が推奨されます。屋外や浴室などの高湿度環境で鉄製を使用すると、短期間で赤錆が発生し、締結部の強度低下や美観の悪化を招きます。特に天井インサートやあと施工アンカーでの使用では、長期的な耐久性を考慮した材質選定が不可欠です。
参考)https://special-spacer-collar.com/column/%E4%BD%BF%E7%94%A8%E7%94%A8%E9%80%94%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%BF%E3%81%9F%E3%80%80%E3%83%AF%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%9D%90%E8%B3%AA%E3%81%AE%E9%81%B8%E3%81%B3%E6%96%B9%EF%BC%81/
薄板金属や穴径が大きい箇所では、標準的な並形ではなく大形やワイド型の平座金を選択することで座面抜けを防止できます。これは規格選定の段階で検討すべき事項であり、施工後の追加対策では対応が困難となります。設計段階から相手材の材質・厚さ・穴径を考慮した平座金規格の選定が、施工品質と長期信頼性を確保する鍵となります。
参考)https://mecha-basic.com/washer/

プロスパー洸洋 ドブメッキ 平座金(平ワッシャーW)旧JIS M20(21×40×3.2)