耐湿試験JISの種類と建築業での正しい試験方法

耐湿試験JISの種類と建築業での正しい試験方法

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耐湿試験JISの種類と建築業での正しい試験方法

JIS A1437の耐湿性試験は、試験前に7日間の養生が必須なのに、製品到着直後に試験を開始すると結果がすべて無効になります。


この記事の3つのポイント
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建築用耐湿試験JISは用途別に複数ある

内装ボードはJIS A1437、塗料はJIS K5600-7-2など、材料ごとに適用規格が異なります。誤った規格で試験すると、試験結果が製品規格に適合しない場合があります。

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試験前の養生条件を見落としやすい

JIS A1437では試験片を「温度20±2℃・湿度60±5%で7日間」養生することが必須です。この手順を省略すると試験結果が無効となるリスクがあります。

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A法・B法の選択が品質評価の精度を決める

繰り返し試験(A法)と一定条件試験(B法)では評価できる性能が異なります。実際の使用環境に合わせて正しい試験種類を選択することが、材料選定の失敗を防ぐ鍵です。


耐湿試験JISの基本概要と建築業での位置づけ

建築業において「耐湿試験」は、内装材・外装材・塗料・ガラスなど、あらゆる建築材料の品質保証の根幹を担う試験です。日本産業規格(JIS)では、材料の種類や使用部位に応じて複数の耐湿試験規格が制定されており、それぞれの目的と試験方法が細かく定められています。


耐湿性とは、大気中における吸湿または吸湿・放湿の繰り返しに伴う建材の物理的な性能変化に対する抵抗性を指します。高温多湿な日本の気候では、この性能が建物の長期耐久性に直結します。


建築業で特に関わりの深い耐湿試験JISは、主に以下の4つです。


- JIS A1437(建築用内装ボード類の耐湿性試験方法):石膏ボード、繊維板など内装ボードが対象
- JIS K5600-7-2(塗膜の耐湿性・連続結露法):建築用塗料の塗膜性能が対象
- JIS K5600-7-3(塗膜の耐湿性・不連続結露法):連続結露法と条件が異なる塗膜試験
- JIS R3209(複層ガラス):複層ガラスの封止耐久性評価で露点試験を用いる


つまり「耐湿試験JIS」と一口にいっても、対象材料と目的で規格が変わります。


現場で扱う材料が変わるたびに、適切な規格番号を確認することが原則です。誤った規格で試験してしまうと、得られたデータが製品規格の要求を満たさず、JIS認証の審査でやり直しになるケースがあります。


なお、2019年7月の法改正により、従来「日本工業規格」と呼ばれていたJISは「日本産業規格」に名称が変わりました。規格番号自体は変わっていませんが、仕様書や社内文書に「日本工業規格」と記載されている場合は読み替えが必要です。これは意外に見落とされがちなポイントです。


建材試験センター(JTCCM)は耐湿試験を含む建築材料の試験を受け付けており、初めて試験を依頼する際はまず試験実施の可否と空き状況の問い合わせが推奨されています。


参考:建築材料の耐湿性試験を含む各種試験の概要について、建材試験センター公式サイトで確認できます。


建材試験センター|建築材料の湿気性能試験一覧


耐湿試験JIS A1437の試験方法とA法・B法の使い分け

JIS A1437は、内装ボード類の耐湿性を評価するための試験方法です。建築の現場で最も頻繁に登場する規格のひとつです。この規格には「A法」と「B法」の2種類があり、どちらを使うかによって評価できる性能の範囲が変わります。


A法は「高温・高湿条件と常温・低湿条件を繰り返す」方式です。具体的には次のサイクルを連続して繰り返します。


- 常温・低湿工程:温度20±2℃ / 湿度30±5%RH で6時間以上保持(合計12時間)
- 高温・高湿工程:温度60±2℃ / 湿度90±5%RH で8時間以上保持(合計12時間)


この2工程で24時間が1サイクルとなります。日本の夏冬のような温湿度の変化を模擬するイメージで、キッチンや浴室周辺など温湿度が変動しやすい箇所に使われる内装材に適した試験法です。


B法は「高温・高湿条件を一定に保つ」方式です。温度40±2℃・湿度90±5%RHの環境に7日間静置するだけのシンプルな方法です。変動のない高湿度環境への耐性を調べる場合に用います。


どちらを選ぶかは、製品規格や受渡当事者間の協定によって決まります。ただし、規格には「試験の種類、繰返し数などについては材料規格・製品規格などの指定による。指定のないものは受渡当事者間の協定による」と明記されています。


つまり、試験条件の最終決定権は発注者と受注者の合意にある、ということです。


試験片の採取・養生にも厳密な手順があります。試験前にはまず、温度20±2℃・湿度60±5%の環境で7日間養生することが必須です。この養生を省略した状態で試験を開始しても、得られる結果はJIS A1437に準拠したものとは言えません。製品到着直後にすぐ試験台に乗せることは、規格上認められていないのです。


評価項目は外観観察(き裂・はく離・かびの有無など)、厚さ変化、質量変化、長さ変化、曲げ破壊荷重およびたわみ、反りの6種類です。試験片の大きさは評価項目によって異なり、例えば外観観察と厚さ変化の試験片は100×400mmのサイズで3個採取します。


参考:JIS A1437の全文は kikakurui.com で確認できます。


kikakurui.com|JIS A1437:2008 建築用内装ボード類の耐湿性試験方法


塗料の耐湿試験JIS K5600-7-2における連続結露法の実務ポイント

外壁塗料や内装塗料に使われる耐湿試験は、JIS K5600-7-2「塗膜の耐湿性(連続結露法)」が主軸となります。建築業の中でも塗装工事に関わる方は、この規格をしっかり把握しておく必要があります。


この試験の目的は、塗膜・塗装系および類似製品が高湿度条件に対してどれだけ耐久性を持つかを測定することです。木材・石膏・石膏ボードのような多孔性素地にも、金属のような非多孔性素地にも適用できます。


試験方法は「温度差固定式」と「回転式」の2種類があります。


温度差固定式は、40±2℃に保たれた電熱水槽の上に試験板を配置し、23±2℃に保たれた環境の中で塗膜上に結露を生じさせます。水槽の蓋部分に試験板を水平から15±5度の角度で設置することで、凝結した水が排水されます。


回転式(日本塗料検査協会の基準では「湿潤箱回転式」とも呼ばれる)は、温度50±1℃・相対湿度95%以上の湿潤箱の中に試験板をつるして毎分約1/3回転させる方法です。試験終了後、直ちに塗膜のしわ・膨れ・割れ・さび・はがれなどの有無を観察し、2時間静置した後にくもり・白化・変色を確認します。


塗膜に異常がない場合のみ「耐湿性に異常がない」と評価されます。厳しいところですね。


実務上の注意点として、JIS K5400(旧規格)は2002年に廃止され、現在はJIS K5600に置き換わっています。古い仕様書にJIS K5400と記載されていても、現在の試験はK5600で実施することになります。発注者が古い書類を参照している場合、確認なしに試験を進めると後のトラブルの原因になります。これは知っていると損を避けられる情報です。


また、試験板の素地厚さによって結果が著しく変わる場合があるため、規格では「試験板の寸法が使用目的に合致していることを確認することが重要」と明示されています。実際の施工素地と試験板の条件をできるだけ近づけることが、信頼性の高いデータを得るポイントです。


参考:日本塗料検査協会の耐湿性試験ページでは試験条件の詳細が確認できます。


日本塗料検査協会|耐湿性(連続結露法:回転式)の試験条件


複層ガラスの耐湿試験JIS R3209と露点試験の見方

複層ガラスに関わる建築業従事者にとって、耐湿性能の評価基準として重要なのがJIS R3209「複層ガラス」です。この規格では「露点試験」と「耐湿耐候試験」を組み合わせた「封止の加速耐久性試験」が定められています。


複層ガラスの耐湿性において評価する核心は、ガラスとガラスの間にある「中空層」内部の乾燥状態が維持されているかどうかです。封止材が湿気によって劣化すると、中空層内部に結露が生じ、視界の妨げや断熱性能の低下につながります。


露点試験の手順はこうです。銅板製の容器にエタノールを入れ、ドライアイスを加えながら液温を-35℃まで下げます。この容器に複層ガラスを密着させ、一定時間後にガラス内面の結露の有無を確認します。密着時間は材料板ガラスの厚さによって変わり、3mm厚なら3分間、10mm以上なら10分間です。


封止の加速耐久性試験は「1類・2類・3類」の3水準で構成されています。


| 試験水準 | 耐湿耐光試験 | 冷熱繰返し試験 |
|---|---|---|
| 1類 | 7日間(温度55±3℃ / 相対湿度95%以上) | 12サイクル |
| 2類 | 1類に引き続き7日間追加 | 12サイクル追加 |
| 3類 | 2類に引き続き28日間追加 | 48サイクル追加 |


3類まで合格することが、最も耐久性の高い複層ガラスの証明となります。


ここで業界内でもあまり知られていない事実があります。JIS R3209では本来、暴露前後で同一の試験体を使って放射率(Low-Eガラスの性能指標)を測定するよう規定しています。しかし、350×500mmの試験体を測定できる分光測光器は市販されていないため、実際には同一ロットの別サンプルを使用することが認められています。規格通りに試験するのが物理的に難しい項目が存在するというのは、現場に近い立場でないとわからない現実です。


試験は製作後2週間以上経過した試料に対して行うことが義務づけられています。製作直後の複層ガラスを試験に持ち込んでも、規格上は試験対象として認められません。これは内装ボード類の養生期間と同様に、「落とし穴」になりやすい条件です。


参考:建材試験センターでは複層ガラスの加速耐久性試験の依頼が可能です。


建材試験センター|複層ガラスの加速耐久性試験の詳細手順


建築業が耐湿試験JISで失敗しないための独自チェックポイント

JIS規格に準拠した材料を使っているから大丈夫」と思っていても、試験手順や書類の管理で失点するケースは少なくありません。ここでは、検索上位の記事では語られにくい実務的な視点から、建築業従事者が見落としやすいチェックポイントを整理します。


① 規格名称の読み替えを忘れていないか


2019年7月の工業標準化法改正により、すべてのJIS規格文書で「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替える義務が生じています。規格番号はそのままですが、古い仕様書や社内基準書を引用する場合は注意が必要です。官庁工事の仕様書確認時にこの点を忘れると、提出書類の表記が誤りとして指摘されるケースもあります。


② 試験依頼のタイミングが早すぎないか


JIS A1437では試験前に7日間の養生が必要で、JIS R3209では製作後2週間以上の経過が条件です。試験機関への依頼時期は逆算して計画する必要があります。工期が迫っているからといって養生期間を短縮すれば、得られたデータはJIS適合を証明する根拠にはなりません。


③ 試験の種類を誰が決めるかを確認しているか


JIS A1437のA法・B法の選択、あるいは繰り返し回数は、製品規格または受渡当事者間の協定によって定まります。「メーカーが自社試験でA法を選んでいたから」という理由だけでは、発注者が要求するB法での試験データとは別物になります。試験条件の合意は必ず書面で残すことが原則です。


④ 旧規格番号を混在させていないか


JIS K5600シリーズが主流になった現在も、古い工事仕様書では「JIS K5400」と記載されているケースがあります。JIS K5400は2002年4月に廃止されており、現在はJIS K5600での試験が求められます。廃止規格による試験で提出しても、認証審査では認められません。これが原則です。


⑤ 試験片の素地条件を実際の施工条件に近づけているか


JIS K5600-7-2では「素地の厚さによって結果が著しく影響されることがある」と規格本文に記載されています。試験板のサイズや素地材料が実際の施工条件と大きくかけ離れていると、試験で合格しても現場で同等の性能が発揮されない場合があります。


まとめると、耐湿試験JISの実務では「適用規格の選択 → 養生・前処理条件の遵守 → 試験条件の合意 → 試験後の評価記録」の4ステップを正確に踏むことが大切です。これだけ押さえておけば、試験に関わるトラブルの大半は回避できます。


試験機関への依頼を初めて行う場合は、建材試験センター(埼玉県草加市・TEL 048-935-1991)またはJIS認証も扱う一般財団法人日本建築総合試験所(GBRC)への問い合わせが確実です。試験装置の空き状況や、試験実施の可否を事前確認してから試験片を準備するのが、無駄のないスムーズな流れです。


参考:建材試験センター公式サイトで試験依頼の流れが確認できます。


建材試験センター|初めての方へ(試験依頼の流れ・予約方法)