鍛接鋼管とは何か製造方法と用途を徹底解説

鍛接鋼管とは何か製造方法と用途を徹底解説

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鍛接鋼管とは何かを製造・規格・用途から徹底解説

鍛接鋼管の継目(シーム)部は、電縫管より溝状腐食がずっと軽微で、建築現場の配管寿命を大きく左右します。


🔩 鍛接鋼管 3つのポイント
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製造方法

熱延コイルを約1200℃まで加熱し、成形ロールで円筒状に整形。シーム部を圧力で圧着(鍛接)して製造する溶接鋼管の一種。

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対応サイズ・規格

主に呼び径15A〜100Aの小口径に対応。JIS G 3452(SGP)など複数のJIS規格に使用される炭素鋼専用の製法。

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主な用途

亜鉛めっき処理を施した白管・黒管として、ガス管・空調・消火配管などの建築設備工事に広く採用されている。


鍛接鋼管とは何か:基本の定義と読み方

鍛接鋼管(たんせつこうかん)は、英語では「Forge Welding Pipe」または「Blacksmith Welding Pipe」と表記される鋼管の一種です。鋼管全体の製造体系の中では「溶接鋼管」のカテゴリに分類され、継目無鋼管(シームレス管)や電縫鋼管と並ぶ代表的な鋼管製造方法の一つです。


名前に「溶接」が入っていないので別物に聞こえますが、広義の意味では溶接の一種です。正確には「圧接(加圧溶接)」の一種に分類されます。金属を溶かさずに固相のまま接合する「固相接合法」であり、接合面を溶融させることなく、高温と高圧力によって継目を一体化させる点が最大の特徴です。


つまり、電気を使わず熱と圧力だけで管にするということですね。


建築業に従事していれば、「SGP白管」や「ガス管」と呼ばれる配管を現場で見かけることが多いはずです。呼び径15A(1/2インチ)〜100A(4インチ)程度の小口径配管として、空調設備・消火設備・ガス配管・給水配管などの用途に鍛接鋼管は広く利用されています。


JIS規格上では、製造方法を示す記号として「B(Blacksmith Welding)」が付記されます。例えば「配管用炭素鋼管-B」のように表記されることを覚えておくと、仕様書や図面を読む際に役立ちます。


参考:JFEスチール株式会社による鍛接鋼管の製品情報(製造可能範囲・規格記号など)
JFEスチール 配管用炭素鋼鋼管・水配管用亜鉛めっき鋼管カタログ(PDF)


鍛接鋼管の製造工程:約1200℃の熱間成形とは

鍛接鋼管の製造に使用される素材は「熱延コイル(熱間圧延コイル)」です。一定幅にスリットされた帯鋼(フープ)を複数本つなぎ合わせ、連続的に長い加熱炉へ装入します。加熱炉の中でコイル全体が約1200℃まで均一に加熱される点が、電縫鋼管の製造との大きな違いです。


加熱炉から取り出されたフープは、電磁誘導式エッジヒーターによって継目となるエッジ部分のみを約1450℃まで追加加熱されます。この温度は、まるで刀鍛冶が炉で鉄を真っ赤を超えて白く輝くほど熱する様子に近いイメージです。十分に加熱された帯鋼は成形ロールを通過して円筒形に整形され、高温のエッジ同士が強力に圧着されます。これが「鍛接」の核心部分です。


鍛接が完了ということですね。


接合後のパイプは「ストレッチレジューサー」と呼ばれる機械で製品の最終寸法に仕上げられ、走行切断機によって所定の長さに切断されます。その後、矯正・面取り・ねじ切り・めっきや塗装といった後処理工程を経て、製品として出荷されます。一連の工程がすべて連続した生産ラインで行われるため、大量生産に非常に適した製造方法といえます。


ただし、管全体を高温で成形するため、パイプの内面・外面に酸化鉄の皮膜(スケール)が生成されやすく、電縫鋼管と比較すると表面性状がやや粗くなります。これは鍛接鋼管の構造的なデメリットの一つとして把握しておく必要があります。


参考:日本機械学会による「鍛接」の圧接メカニズム解説(固相接合の原理)
日本機械学会 機械工学事典「鍛接」


鍛接鋼管の規格と建築設備での用途一覧

鍛接鋼管が適用されるJIS規格は非常に幅広く、建築設備工事に関係する主なものだけでも以下が挙げられます。


JIS規格番号 名称 主な用途
JIS G 3452 配管用炭素鋼管(SGP) ガス・蒸気・油・空気などの低圧配管
JIS G 3442 水配管用亜鉛めっき鋼管(SGPW 上水以外の給水配管
JIS G 3454 圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG) 350℃以下の比較的高い圧力配管
JIS G 3475 建築構造用炭素鋼管(STKN 建築物の構造部材
JIS G 3460 低温配管用鋼管(STPL) 低温流体の輸送配管


中でも建築設備工事で最も頻繁に登場するのが「JIS G 3452 配管用炭素鋼管(SGP)」です。SGPは、350℃以下・比較的低い圧力の蒸気・水(上水道用を除く)・油・ガス・空気などの配管用として広く使用されています。黒管(無処理)と白管(溶融亜鉛めっき処理済み)の2種類があります。


鍛接法によるSGPの製造可能範囲は呼び径15A〜100Aと定められており、JFEスチールなど主要メーカーのカタログにもこの範囲が明記されています。呼び径125A以上になると電縫管が使われるのが原則です。


これは基本として押さえておきたいところですね。


また、防衛省の施設共通仕様書では「呼び径100以下は鍛接鋼管とし、呼び径125以上は耐溝状腐食電縫鋼管とする」という選定基準が明記されているほど、鍛接鋼管は小口径配管の標準的な選択肢として位置づけられています。


参考:JFEスチール 鋼管製造方法による分類と主要規格の解説
JFEスチール 製品情報|製造法による分類(鍛接鋼管・電気抵抗溶接鋼管)


鍛接鋼管と電縫管・シームレス管の違いと選び方

建築設備の現場では「鍛接管・電縫管・シームレス管」の3種類を使い分ける場面が多くあります。それぞれの特性を正確に理解することが、適切な材料選定につながります。


まず鍛接鋼管は、コイル全体を高温に加熱して圧着するため、成形時の残留ひずみの影響をほとんど受けません。これは電縫管が冷間成形であるため材料特性の変化が生じやすいのとは対照的な特徴です。また、鍛接鋼管は接合部が溶融されないため、電縫管で問題になりやすい「溝状腐食(電縫部の選択的腐食)」がほとんど発生しないことが研究で示されています。鉄と鋼の学術誌に掲載された研究によれば、「鍛接鋼管の溝食は電縫管よりずっと軽微であり、幅が広くて浅い」とされています。


溝状腐食対策という点では鍛接管の方が有利ということですね。


一方、シームレス管(継目無鋼管)は、円柱状のビレットを穿孔・圧延して作る継目のない鋼管です。周方向の均質性に優れており、内圧やねじれに強いため、高圧・高温環境や信頼性を特に重視する用途(ボイラ配管・油井管など)に使われます。ただし、製造コストが溶接鋼管より高い点と、大径品の製造が難しい点がデメリットです。


種類 製造方法 主な用途 溝状腐食リスク
鍛接鋼管 熱間成形+圧着 小口径配管(15〜100A) ほとんどなし
電縫鋼管(ERW) 冷間成形+高周波溶接 中〜大口径配管(25〜500A) 発生リスクあり
シームレス管(SML) ビレット穿孔・圧延 高圧・高温配管 なし(継目なし)


建築設備工事の場面では、呼び径100A以下の低圧配管に鍛接鋼管、125A以上には電縫管(または耐溝状腐食電縫鋼管)を選ぶのが標準的な使い分けのルールです。この基準を仕様書作成時の判断軸として持っておくと、材料選定でのミスを未然に防げます。


参考:鍛接鋼管の耐溝食性に関する学術研究(鉄と鋼・論文)
「鍛接鋼管の耐溝食性について」(鉄と鋼 Vol.63)


鍛接鋼管を選定する際に知っておくべき注意点と独自視点

鍛接鋼管を実際の建築設備工事で扱う際、「SGP白管=水道管に使える」という思い込みで施工すると、法的リスクや品質不良の原因になります。重要な点が1997年のJIS改正にあります。


1997年10月1日に施行された「給水装置の構造および材質の基準に関する政令」により、亜鉛めっき鋼管(SGP白管・SGPW)は上水道用配管として使用できなくなりました。理由は、亜鉛の浸出性能試験の基準を満たさないことが明らかになったためです。現在、飲料水を通す上水道配管には、水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管などが使用されるのが標準です。


白管だからといって上水道に使うと法令違反になります。


さらに見落とされがちなのが、表面スケールへの対応です。鍛接鋼管は全体を高温加熱して製造するため、管の内外面に酸化鉄(スケール)の皮膜が付着しています。施工後に内部流体でスケールが剥離すると、バルブや機器のフィルター詰まりを引き起こすことがあります。フラッシング(管内洗浄)の実施を計画段階で盛り込んでおくことが重要です。


また、鍛接鋼管は基本的に「炭素鋼」専用の製造方法です。ステンレス鋼や高合金鋼への適用は技術的に難しく、腐食環境や高温・高圧ラインへの転用には不向きです。素材を問わず「小口径=鍛接管」と思い込まずに、用途と環境条件を確認してから選定する習慣をつけましょう。


なお、建築設備の材料選定基準として国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」が参考になります。鍛接鋼管の使用可否や規格別の適用条件が具体的に記載されており、現場判断の拠り所となります。


参考:国土交通省が定める公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編・最新版)
国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」(PDF)