鍛接溶接違いと接合方法の基本特徴

鍛接溶接違いと接合方法の基本特徴

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鍛接と溶接の違い

この記事のポイント
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接合原理の違い

鍛接は母材を溶かさず圧力で接合、溶接は母材を溶融させて接合する方法です

強度と品質の特徴

鍛接は接合部の組織が緻密になり、溶接は母材と同等以上の強度が得られます

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建築分野での使い分け

鍛接は鋼管製造に、溶接は建築構造物の接合に広く使用されています

鍛接の基本原理と特徴

鍛接は、金属を高温(約1000℃~1300℃)に加熱した状態で、叩いたり加圧をして接合部を溶接する高温圧接の一種です。接合面を溶融させずに接合部に機械的圧力を加えることで溶接する圧接法に分類され、固相接合法として知られています。
参考)鍛接とはどのような溶接方法なのか?

この技術は紀元前15世紀頃に小アジアで鉄が発明されて以来、世界中に広まりました。日本では紀元前3世紀ころから鉄器が見つかっており、平安時代末期には中国地方のたたら製鉄が盛んになり、鉄製の農具や刀剣の製造とともに鍛接技術も発達しました。
参考)鍛接の技術

鍛接の接合プロセスでは、2つ以上の金属をぴったりと密着させ、鍛接剤を利用しながら熱と圧力で貼り付ける方法を用います。この方法は「沸かし付け」とも呼ばれ、刃物の製造で用いられることが多く、刀鍛冶職人の間で長く継承されてきた伝統技術です。
参考)鍛接(沸かし付け)の可能性 - 職業、鍛冶手伝い。

接合部を溶かさないため、点ではなく面で接合することができ、塑性流動によって母材よりも緻密な組織を形成します。また、非溶融接合であるため最高加熱温度が比較的低く、熱影響部が小さいという利点があります。
参考)https://www.daido.co.jp/common/pdf/pages/technology/journal/backno/2009/12_technical_review.pdf

鍛接剤の役割と使い方

鍛接には硼砂(ほうしゃ)と呼ばれる鍛接剤が使われ、これは四ホウ酸ナトリウムの結晶です。主な役割は、金属の間に入り込む余分な空気を防ぎ、酸化被膜の形成を抑制することです。
参考)機関車の構造及理論:上巻(その75)鍛接法: 地上にある銀河…

硼砂は約900℃で融解して酸性の液体となり、接合面の隙間で酸化皮膜を溶かすと同時に、溶けた硼砂が表面を覆うことで新たな酸化皮膜の発生を防ぎます。空気があると酸化被膜ができてしまい、スムーズな接合が難しくなるため、接合面に硼砂をまぶして皮膜を防ぐ必要があります。
参考)https://monomaniya.web.fc2.com/blabo/smith5/smith5.htm

鍛接剤としての硼砂は、人間が冶金を始めた当初から融剤として使われてきた歴史があります。硼砂の場合は単独で使われ、硼酸には鉄粉や酸化鉄を混ぜて使うなど、鍛冶職人によって鍛接剤の使用方法や量にはさまざまな手法があります。​
ハンマーで叩くと液状の硼砂は衝撃で追い出され、表面を一皮剥かれた無垢の素材同士がぶつかってくっつく仕組みとなっています。高いクオリティの鍛接を行うには、接合面に硼砂をまぶし、適切な温度管理と均一な圧力が必要です。​

溶接の基本原理と種類

溶接とは、金属やプラスチックなどの材料を接合するための加工技術であり、熱や圧力、あるいはその両方を利用して材料を一体化させる手法です。溶接は融接、圧接、ろう接の3種類に大きく分類されます。
参考)溶接とは?種類や方法、メリット・デメリットを説明!

融接は、母材と溶加材、またはどちらか一方を溶かして溶接する最も一般的な方法です。代表的な工法としてアーク溶接やガス溶接、レーザー溶接などがあり、ロボットアームでの自動溶接にも多用されています。融接では高温で母材の一部を溶かすため、接合部を物理的・化学的に一体化させ、母材とほぼ同等の強度や耐久性を持つ結晶構造を形成します。
参考)溶接とは?製造業の基盤を支える接合技術の全貌|株式会社アスク

圧接は、材料を溶かすことなく、加圧や熱処理、あるいは摩擦や爆発などのエネルギーを用いて金属を密着させて接合します。摩擦圧接法、ガス圧接法、抵抗スポット溶接などがあり、自動化・無人化が可能であることからFA(ファクトリオートメーション)の現場において広く用いられています。
参考)圧接とは?原理や種類、メリット・デメリットを解説

ろう接は、接合する材料よりも低い融点を持つろう材を溶かして、材料間に流し込んで接合する方法です。母材を溶かさないため、熱による変形や強度低下のリスクが少ないという特徴があります。
参考)溶接の種類とは?方法やメリットについて - 株式会社影山鉄工…

鍛接と溶接の強度品質の比較

鍛接と溶接では、接合部の強度品質に明確な違いがあります。鍛接は接合部の結晶粒が塑性流動によって母材よりも緻密になり、機械的性質が向上します。また、非溶融接合であるため最高加熱温度が比較的低く、熱影響部が小さいという利点があります。​
ただし、鍛接はいかに上手に施工しても接合内部にいくらかの残滓(スラグ)を含むため、原材料に比し85~90%以上の強度を期待することは難しいとされています。接合温度が適当で均等であること、接合圧力が全部に対し一様であること、接合面間に溶滓や鍛接剤を残存させないことが重要な品質条件となります。​
一方、溶接継手の強度は、一部の特殊な母材を除き「溶接継手の強度は母材と同じとみなす」とされています。構造用鋼の突合せ継手では、溶接金属と熱影響部の強度は母材よりも高くなり、継手効率は100%以上と考えることができます。
参考)溶接に求められる品質

継手効率と溶接継手の強度・母材の強度の関係は、「継手効率=溶接継手の強度÷母材の強度」という式で表されます。高張力鋼やアルミ合金の大入熱溶接では、溶接時に熱の影響を受けた部分が軟化し、継手効率は80~70%またはそれ以下となる場合もあります。​
溶接は高い強度や多様な材料に対応できる点が大きな利点ですが、母材を融解することで流動的になり、寸法精度の維持が難しい、独特の欠陥が発生する、加工後の解体が難しいというデメリットもあります。
参考)溶接とは?溶接の種類とほかの接合方法との比較 href="https://www.coretec.co.jp/premium/column10916/" target="_blank">https://www.coretec.co.jp/premium/column10916/amp;#8211;…

建築分野における鍛接の応用事例

鍛接技術は建築分野において、鉄鋼業における鍛接鋼管の製造法として古い歴史を有しています。素材の帯板を1200℃以上に加熱し管状に成形した後、純酸素を接合面に吹きつけて酸化スケールを吹き飛ばすと同時に、接合面の温度上昇を利用して圧接する方法です。
参考)https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0080060100

この方法では圧接部の盛り上がりが少ないため、高速連続製管が可能で、高い生産性とコストを抑えることができます。鍛接は鋼管のほか、鎖などの製造にも使われており、接合面を溶かさずに貼り付ける方法として注目されています。​
建築鉄骨においては、強度の異なる鋼材の溶接に関して、低強度側の鋼材に適合した溶接材料を使用するのが一般的です。例えば、通しダイアフラム(490N/mm²級鋼)と梁(H形鋼、400N/mm²級鋼)の溶接では、低強度側の400N/mm²級鋼材の条件を適用して施工管理を行います。
参考)https://sasst.jp/qa/q4/q4-23.html

溶接構造用圧延鋼材は、溶接接合に使う鋼材として溶接性に優れています。建築物の梁や柱などの部材に使用され、近年では建築構造用圧延鋼材(SN材)も利用されることが多くなっています。SN材は降伏比などの規定があり、塑性変形能力に優れた鋼材として評価されています。
参考)溶接構造用圧延鋼材とは?1分でわかる意味、規格、用途、ヤング…

現代建築では、伝統技法と現代技術を効果的に組み合わせた事例が増えており、伝統的な木組み技法に制震装置や免震技術を組み合わせることで、高い耐震性能を実現しています。京都の寺院改修工事では、伝統的な木組みに現代の耐震補強を組み合わせることで、文化財としての価値を保ちながら十分な耐震性能を確保することに成功しました。
参考)2025年最新【大工の伝統技法】現代に活きる伝統工法の継承と…

鍛接の歴史と技術の詳細について解説されています - 鍛接技術の変遷と現代への応用
鍛接とはどのような溶接方法なのか、具体的な工法と用途の説明があります - 鍛接の基礎知識と圧接による接合

鍛接と溶接の使い分けポイント

鍛接と溶接の使い分けは、対象となる材料、求められる強度、作業環境、コストなどの要素を総合的に判断して決定します。鍛接は主に日本の伝統的な刀鍛冶における鋼(はがね)を軟鉄に接合する技法として活用されており、「鋼付け」「割り込み」などと呼ばれる刀鍛冶職人秘伝の技として受け継がれてきました。
参考)https://www.touken-world.jp/tips/11767/

鍛接は材料を効率よく使うために開発された技術で、柔らかい鉄と硬い鋼を重ねて一つの材料を作り上げることができます。玉鋼と呼ばれる鉄と炭素以外の元素をほとんど含まない素材は鍛接性に優れ、このことが刀剣製造における下鍛えや上鍛えの技術を可能にしてきました。
参考)玉鋼と日本刀 - 鉄の道文化圏

溶接は建築、造船、鉄道、建築機械など、さまざまな構造物に使われており、大型で強い構造物を造ることができる、製品重量を軽減できる、作業工程が少なく製作期間を短くできる、水密・気密性を保つ構造物を容易に造れるという利点があります。​
建築分野では、小~中口径は電縫管、大口径はスパイラル溶接管という使い分けが一般的です。スパイラル溶接管は溶接線が螺旋状なので全体で見た時に強度は高くなります。
参考)まずはここから!鋼管製造方法の種類と特徴(溶接配管)

炭素含有量も接合方法の選択に影響を与えます。炭素0.13%以上あれば鍛接性が悪くなり、炭素0.3%~0.5%の鋼でも鍛接できる場合はありますが、鋼の表面の含有炭素分が脱出するため、鍛接部の強度が減少する可能性があります。クロム、ニッケル、タングステンなども鉄の鍛接性を害する元素です。​
現代では、ロボット溶接が人による溶接と使い分けられており、数ある金属接合の種類の中でも比較的簡単に行うことが可能で、強度が高く錆に強いという特徴があります。溶接は近代的な製造技術の一つとして、建築事業における重要な基盤技術となっています。
参考)人とロボット、溶接が得意なのはどっち?メリット・デメリットを…

融接、圧接、ろう接の接合原理と各工法の詳細説明があります - 溶接の原理と仕組み
圧接の原理、種類、メリット・デメリットの詳細解説があります - 圧接と融接の違い