
配管工事において、uバンド(Uボルト)は配管を構造物に固定する重要な部材です21。適切な寸法選択は施工品質に直結するため、正確な規格表の理解が不可欠です。現在、uバンドのJIS規格は廃止されており、各メーカーが独自規格で製造しているため、寸法表の詳細な把握が重要になっています。
一般鋼管用uバンドの寸法表では、呼び径と管外径の関係を正確に理解することが重要です。8A(管外径13.2mm)から650A(管外径660.4mm)まで幅広いサイズが規格化されています。
主要寸法パラメータ:
M6(W1/4)サイズでは、8Aから50Aまでの配管に対応し、それぞれP寸法が21mm(8A)から70mm(50A)まで段階的に設定されています。M8(W5/16)では10Aから80Aまでカバーし、より大径配管に対応可能です。
特に注意すべき点として、管外径の表記方法があります。15Aの配管は実際の外径が21.2mmですが、これはJIS G 3452等の規格に基づく呼び方であり、単純に15mmの配管ではありません。この理解不足により、現場で不適合品を選定してしまうケースが散見されます。
ねじ径別対応表:
実際の締付可能ねじ部長さ(H-ΦD)も重要な指標で、これにより実際の固定力を算出できます。例えば、M8×25Aの場合、H-ΦDは20.3mmとなり、この値から適切な締付トルクを計算することが可能です。
船舶用uバンドは、海洋環境での使用を想定した特殊規格です。A形、B形、C形の3タイプが存在し、それぞれ異なる取付条件に対応しています。
船舶用uバンドの形状別特徴:
15Aから80Aまでの配管径に対応し、全てM10またはM12ねじを使用します。海洋環境では塩害対策が必須のため、SUS-304またはSUS-316Lの使用が推奨されています。特にSUS-316Lは、モリブデンを含有することで優れた耐孔食性を発揮し、海水配管や化学プラントでの使用に適しています。
興味深い点として、船舶用規格では管外径の設定が一般用と若干異なります。例えば15Aの場合、一般用は21.2mmですが、船舶用は21.7mmと0.5mm大きく設定されています。これは船舶特有の振動や温度変化を考慮した設計思想によるものです。
船舶用uバンドの選定では、使用環境の塩分濃度も重要な要素です。外洋航行船舶では塩分濃度3.5%の海水に長期間曝露されるため、より高い耐食性が求められます。
uバンドの材質選定は、使用環境と要求性能により決定されます。各材質の特性を理解し、適切な選択を行うことが重要です。
主要材質の特性比較:
生地(無処理鋼材) 🔹
ユニクロメッキ 🔹
SUS-304 🔹
SUS-316L 🔹
材質選定で見落とされがちな要素として、電食の問題があります。異種金属接触による電位差腐食は、配管寿命を大幅に短縮させる要因となります。アルミニウム配管にはアルミニウム製uバンド、銅配管には銅合金製uバンドの使用が理想的ですが、コスト面から妥協案として絶縁材の挿入が行われることもあります。
表面処理の選択では、三価クロメートも注目される材質です。従来の六価クロメートに比べ環境負荷が低く、RoHS指令にも適合しているため、欧州向け輸出機械での採用が増加しています。
配管径とuバンドの適合性確保は、施工品質の根幹をなします21。単純な径の一致だけでなく、荷重条件や設置環境を総合的に判断する必要があります。
小径配管(8A-25A)の選定ポイント:
中径配管(32A-100A)の選定指針:
大径配管(125A以上)の特別な考慮事項:
実務で頻繁に発生する問題として、配管の熱膨張によるuバンド部での応力集中があります。特に蒸気配管や温水配管では、線膨張係数を考慮した余裕設計が必要です。鋼管の線膨張係数は約12×10⁻⁶/℃であり、100℃の温度上昇で10m配管は約12mm伸長します。
配管径が大きくなるほど、uバンドの設置角度も重要になります。垂直配管では重力方向の荷重が集中するため、uバンドの下端部により高い応力が発生します。水平配管では配管自重による曲げモーメントを考慮し、適切な支持間隔を設定する必要があります。
設置間隔の目安(水平配管):
uバンドの施工品質は、配管システム全体の信頼性に直結するため、厳格な品質管理が求められます21。特に重要インフラや危険物配管では、より高い精度が必要です。
施工前の確認事項:
施工中の管理ポイント:
締付トルクの設定は材質とねじ径により決定されます。一般的な目安として、M8では8-12N・m、M10では15-20N・m、M12では25-35N・mが推奨値です。ただし、配管材質や設置条件により調整が必要な場合があります。
施工後の検査項目:
特に見落とされがちな検査項目として、uバンド設置後の配管アライメントがあります。不適切な締付により配管が変形し、流体抵抗の増加や内面腐食の促進を招く場合があります。直管部での許容偏差は、一般的に配管径の1/500以下とされています。
品質記録の管理も重要な要素です。使用したuバンドの材質、寸法、設置位置、締付トルク値を詳細に記録し、将来のメンテナンス時の参考資料として保管することが推奨されます。
長期的な品質維持のため、定期的な点検計画の策定も必要です。特に屋外設置のuバンドは、年1回程度の外観点検と締付確認を実施し、腐食や緩みの早期発見に努めることが重要です。
海洋環境や化学プラントなど腐食性環境では、より短い間隔での点検が必要となります。塩害地域では3-6ヶ月、化学プラントでは1-3ヶ月程度の点検間隔が一般的です。