ザグリ寸法一覧で分かる六角穴付きボルト規格

ザグリ寸法一覧で分かる六角穴付きボルト規格

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ザグリ寸法一覧と加工規格

ザグリ加工の基本知識
🔧
標準寸法一覧

M3からM30まで対応した正確な穴径・深さ寸法表

📐
JIS規格対応

JISB1017準拠の皿ザグリ規格と図面指示方法

⚙️
加工工具選定

効率的なザグリ加工のための最適工具と加工手順

ザグリ寸法一覧表の見方と基本規格

ザグリ穴加工は六角穴付きボルト(キャップボルト)の頭部を隠すための重要な加工技術です。建築現場では美観性と機能性を両立するため、正確な寸法での加工が求められます11。

 

標準的なザグリ寸法一覧は以下の通りです。

ねじの呼び径 キリ穴径(mm) ザグリ径(mm) ザグリ深さ(mm)
M3 3.4 6.5 3.3
M4 4.5 8.0 4.4
M5 5.5 9.5 5.4
M6 6.6 11.0 6.5
M8 9.0 14.0 8.6
M10 11.0 17.5 10.8
M12 14.0 20.0 13.0
M16 18.0 26.0 17.5
M20 22.0 32.0 21.5
M24 26.0 39.0 25.5

この寸法表は日本工業規格(JIS)に基づいて作成されており、各メーカーの六角穴付きボルトに対応しています。

 

ザグリ穴の構造は三つの要素から成り立っています。

  • キリ穴径:ボルトの軸部が通る穴の直径
  • ザグリ径:ボルト頭部を収容する部分の直径
  • ザグリ深さ:ボルト頭部が完全に隠れる深さ

特に重要なのは、この寸法を守ることでボルト頭部が表面から突出せず、安全で美しい仕上がりが実現できることです。

 

ザグリ穴加工の工具選定と加工方法

効率的なザグリ加工には適切な工具選択が不可欠です。現場で使用される主要な工具は以下の通りです。
専用ザグリカッター 🔧

  • スローアウェイドリル感覚で使用可能
  • 一工程でキリ穴とザグリ穴を同時加工
  • M3からM24まで各サイズに対応したラインナップ

段付きドリル

  • 下穴加工後にザグリ径を加工
  • 高精度な寸法管理が可能
  • コストパフォーマンスに優れる

エンドミル加工 🎯

  • CNC加工機での自動化に対応
  • 複数穴の一括加工が可能
  • 高い寸法精度を実現

加工手順は以下のステップで行います。

  1. 下穴加工:指定されたキリ穴径でストレート穴を加工
  2. ザグリ加工:専用工具でザグリ径・深さを加工
  3. 寸法確認:ノギスやピンゲージで寸法チェック
  4. バリ取り:穴周辺のバリを除去して仕上げ

加工時の注意点として、切削速度と送り速度の適切な設定が重要です。材質がアルミの場合は切削速度を上げ、ステンレスの場合は送り速度を重視することで、工具寿命を延ばしながら高品質な加工が可能になります。

 

ザグリ図面指示の書き方と注意点

図面でのザグリ指示は、JISB0001:2019機械製図規格に基づいて記載する必要があります。2019年の改訂により新JISが制定されましたが、現場では旧JIS表記も併用されているのが実情です。

 

新JIS記載方法 📋

⌴ 17.5 ⌣ 10.8

↓11 THRU

旧JIS記載方法 📝

C'BORE φ17.5 ⌣ 10.8

↓φ11 THRU

図面指示で重要なポイント。

  • 穴数の明記:「6-φ11 ザグリφ17.5 深10.8」のように穴数を明示
  • 貫通・止まり穴の区別:「THRU」または「↓深さ寸法」で明確化
  • 公差指示:ザグリ径は±0.1〜±0.2、深さは+0.2/-0の公差が一般的
  • 面粗度指示:Ra6.3以下が標準、精密部品はRa3.2以下を指定

「M10 ザグリ」とだけ記載されている場合は、標準寸法表の数値(φ11貫通、ザグリφ17.5深10.8)で加工することが業界の慣例となっています。

 

図面チェック時の確認項目。

  • ザグリ径がボルト頭径より大きいか
  • ザグリ深さがボルト頭高さより深いか
  • 隣接する穴との干渉がないか
  • 材料厚さに対してザグリ深さが適切か

皿ザグリと通常ザグリの使い分け

建築現場では用途に応じて皿ザグリと通常ザグリを使い分ける必要があります。それぞれの特徴と適用場面を理解することで、適切な選択ができます。

 

通常ザグリ(キャップボルト用) 🔩

  • 六角穴付きボルトの頭部を完全に隠す
  • ザグリ部分は円筒形状
  • 構造部材の接合に多用
  • 高い締付け力が得られる

皿ザグリ(皿ねじ用) 🔧

  • 皿頭ねじの頭部をフラットに仕上げ
  • ザグリ部分はテーパ形状(通常90°)
  • 装飾面や薄板の固定に使用
  • JISB1017:2008で規格化

皿ザグリの標準寸法例。

ねじ径 皿穴径(mm) 皿穴深さ(mm) キリ穴径(mm)
M3 6.72 1.86 3.4
M4 8.96 2.48 4.5
M5 11.2 3.1 5.5
M6 13.44 3.72 6.6

使い分けの判断基準。

  • 外観重視:皿ザグリで完全フラット仕上げ
  • 強度重視:通常ザグリで六角穴付きボルト使用
  • 板厚制限:薄板には皿ザグリが適している
  • メンテナンス性:六角レンチでの作業性を考慮

皿ザグリ加工では、リーディングドリルや90°面取りカッターを使用します。加工角度の精度が仕上がりに直結するため、工具の刃先角度確認が重要です。

 

ザグリ加工でよくある失敗と対策

現場で発生しやすいザグリ加工の問題点と効果的な対策について解説します。長年の経験から得られた実践的なノウハウを紹介します。

 

寸法不良の主な原因と対策 ⚠️

  • ザグリ径の過大加工
  • 原因:工具の摩耗、切削条件の不適切
  • 対策:定期的な工具径測定、適正な切削速度設定
  • ザグリ深さの不足
  • 原因:測定不備、工具のたわみ
  • 対策:深さゲージでの確実な測定、剛性の高い工具選択
  • 穴位置のずれ
  • 原因:クランプ不良、基準面の不正確
  • 対策:専用治具の使用、基準面の平面度確認

材質別の加工トラブル対策 🛠️
ステンレス鋼の場合

  • 加工硬化しやすく工具摩耗が早い
  • 対策:コバルトハイス工具の使用、切削油の十分な供給
  • 送り速度を下げて切削熱の発生を抑制

アルミニウム合金の場合

  • 切りくずの詰まりが発生しやすい
  • 対策:切りくず排出を考慮した工具形状選択
  • 高速加工で切りくずの細分化を図る

鋳鉄の場合

  • 硬質部分で工具欠損のリスク
  • 対策:超硬工具の使用、断続切削に適した刃先処理

品質管理のポイント 📊
検査項目と許容範囲。

  • ザグリ径:±0.1mm以内
  • ザグリ深さ:+0.2/-0mm
  • 穴位置度:φ0.2以内
  • 表面粗さ:Ra6.3以下

不良発生時の対応手順。

  1. immediate stop:加工を即座に停止
  2. 原因調査:工具状態、切削条件の確認
  3. 工具交換:摩耗工具の交換と刃先確認
  4. 試し加工:端材での加工条件確認
  5. 本加工再開:品質確認後の作業再開

これらの対策により、ザグリ加工の品質向上と作業効率化が実現できます。定期的な工具メンテナンスと適切な加工条件設定が、長期的な品質安定の鍵となります。