

試験結果を計算式に当てはめるだけでは、実際の地耐力を30%以上過大評価してしまうケースがあります。
平板載荷試験(へいばんさいかしけん)とは、実際の地盤に載荷板を置き、段階的に荷重をかけながら沈下量を測定する地盤調査の方法です。JIS A 1215「道路の平板載荷試験方法」およびJIS A 1215に準拠した建築用の方法があり、建築基準法施行令第93条で定める地盤の許容応力度を求める試験として広く使われています。
試験の原理はシンプルです。直径30cmの鋼製載荷板を地盤面に設置し、ジャッキで荷重を段階的に増やしながら、荷重ごとの沈下量を計測します。この荷重と沈下量の関係をグラフ化したものが「荷重−沈下曲線」で、この曲線から地盤の支持力特性を読み取ります。
試験は3種類の沈下基準で終了判定が行われます。
建築実務では、この試験を「地盤の現場実測データ」として位置づけ、標準貫入試験やスウェーデン式サウンディング試験と組み合わせて使います。つまり単独使用よりも複合評価が基本です。
平板載荷試験の最大の特徴は「現地の実際の地盤を直接試験する」点にあります。土質試験室での供試体試験とは異なり、施工後に近い条件で測定できるため、設計値との整合性確認にも使われます。実務では、1回の試験に要する時間は準備・試験・撤収を含めて半日〜1日程度です。
試験結果から地耐力を計算する際、まず「極限支持力(qu)」を荷重−沈下曲線から読み取ります。極限支持力とは、地盤が破壊に至る直前の最大荷重強度で、荷重−沈下曲線が急激に折れ曲がる点(降伏荷重)をもとに決定します。
極限支持力の読み取り方には主に2つの方法があります。
降伏荷重が読み取れたら、長期許容支持力度(qa)を次の式で計算します。
qa=qu/3(安全率3を使用する場合)
建築基準法施行令第93条に基づく長期許容応力度は、極限支持力の1/3を超えてはならないと定めています。つまり安全率は3が原則です。
具体的な数値例を示します。仮に試験から得られた降伏荷重が150kN/m²であった場合、長期許容支持力度は次のように計算されます。
qa=150kN/m²÷3=50kN/m²
これは「1平方メートルあたり約5トン(50kN≒5,090kgf)」に相当する支持力です。一般的な木造2階建て住宅の基礎底面に作用する接地圧は20〜30kN/m²程度ですから、この例では十分な支持力があることになります。
短期許容支持力度は長期の1.5倍とすることが多く、上の例では50×1.5=75kN/m²になります。これが計算の原則です。
なお、降伏荷重が明確に読み取れない「緩やかな荷重−沈下曲線」の場合は、沈下量が載荷板直径の1/10(30mm)に達した時点の荷重を最大試験荷重として扱い、その1/3を長期許容支持力度とする方法が用いられます。
見落とされやすいのが「スケール効果」の問題です。
平板載荷試験は直径30cmの載荷板を使いますが、実際の基礎は幅1m・2m・それ以上と、載荷板よりはるかに大きい面積を持ちます。砂地盤では、基礎幅が広いほど支持力が大きくなる傾向があるため、30cm板の試験結果をそのまま実基礎に適用すると「過小評価」になります。
一方で粘性土地盤では、基礎幅が広くなっても支持力はほとんど変わりません。つまり地盤の種類によってスケール効果の方向が逆転するのです。意外ですね。
スケール効果を考慮した補正式として、テルツァギーの支持力式を使う方法があります。
砂質地盤における基礎幅Bでの補正。
qu(B)=qu(0.3)×(B/0.3)
※B:実際の基礎幅(m)、0.3:載荷板直径(m)
粘性土地盤では基礎幅による補正はほぼ不要ですが、砂質地盤では基礎幅が1.5mの場合、30cm板の試験値の約5倍、3mでは約10倍の支持力になる計算になります。この差は無視できません。
実務でスケール効果の補正を省略している事例は少なくなく、それが設計上の過小評価または過大評価につながるリスクがあります。特に「補正なしで計算した数値をそのまま設計に使う」ことが、後の不同沈下や基礎損傷の遠因になるケースもあります。
補正計算は複雑に見えますが、地盤種別(砂質・粘性土)を地質調査報告書で確認し、必要な補正係数を掛けるだけです。確認する手間は5分程度で済みます。
公益社団法人 地盤工学会(地盤調査・試験の技術基準・解説を提供)
建築基準法施行令第93条は、地盤の許容応力度を求める方法として「実地試験」を認めており、平板載荷試験はその代表格です。国土交通省告示第1113号(平成13年)では、地盤調査の方法と許容支持力の算定方法が詳しく規定されています。
告示では、平板載荷試験により求めた長期許容支持力度は「降伏荷重の1/2」または「最大荷重の1/3」のいずれか小さいほうを採用するよう規定しています。
いずれか小さい方が条件です。
具体的には、降伏荷重が120kN/m²、最大試験荷重が180kN/m²の場合。
この例では両方が60kN/m²で一致しています。実際には一致しないケースが多く、小さい方を採用することで安全側の設計が担保されます。
また、試験深度(根入れ深さ)についても注意が必要です。平板載荷試験は基礎底面の深さで行うことが原則で、地表面ではなく「設計基礎底面レベル」で実施しなければなりません。地表面で試験して得た値を基礎設計に使うことは、法的根拠を欠くことになります。
試験を依頼する際は「GL-○mの位置での試験実施」を試験業者に明示することが、後のトラブルを防ぐ一番の確認事項です。
国土交通省告示第1113号(地盤の許容応力度の算定方法に関する告示・原文PDF)
平板載荷試験の費用は、1試験点あたり一般的に8万〜15万円程度(準備・機材・報告書作成含む)です。スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)の1点あたり5,000〜1万円程度と比べると、コストは10倍以上の差があります。この差は大きいですね。
ただし、設計に直接使える許容支持力を実測値として得られる信頼性は、SWS試験の推定値とは根本的に異なります。どちらが「正しい」のではなく、建物規模・地盤状況・設計精度の要求水準によって使い分けることが合理的です。
実務上の使い分けの目安は次のとおりです。
試験結果の報告書には「P-S曲線(荷重−沈下曲線)」「K値(地盤反力係数)」「降伏荷重」「長期・短期許容支持力度」が明記されているかを必ず確認します。これらが揃っていない報告書は、設計根拠として使えません。
K値(地盤反力係数)は地盤の剛性を示す値で、杭設計や液状化判定にも使われます。K値の計算式は次のとおりです。
K=ΔP/ΔS(kN/m³)
ΔP:荷重増分(kN/m²)、ΔS:対応する沈下量増分(m)
K値が大きいほど地盤剛性が高く、沈下しにくい地盤といえます。一般的な砂質地盤では10,000〜50,000kN/m³、軟弱粘性土では1,000〜5,000kN/m³程度が目安です。
試験費用を節約したい場合は、同一の地層が確認されている範囲での試験点数を最小化し、複数棟・複数区画の場合でも代表地点での試験結果を合理的に適用する「試験点の集約」が有効です。ただしその場合でも、地質的な均一性を地盤柱状図で確認することが前提です。
一般社団法人 日本建築・防災・環境認証機構(建築に関わる地盤評価・認証情報)
現場担当者が計算段階で起こしやすいミスには、パターンがあります。これは経験値に依存しないため、手順を固定することでほぼ防げます。
最も多いのが「降伏荷重の読み取りミス」です。荷重−沈下曲線の折れ点が明確でない場合、担当者によって読み取り値が20〜30%異なることが研究でも報告されています。この誤差が安全率の計算に直接影響するため、複数人でのグラフ確認が推奨されます。
次に多いのが「試験深度と基礎底面レベルのズレ」です。先述のとおり、試験は基礎底面レベルで行う必要がありますが、掘削作業の都合で「少し浅い位置」で試験が実施されるケースがあります。50cmのズレでも、地層が変わっていれば支持力は数倍異なる可能性があります。
以下のチェックリストを現場担当者向けに示します。
このチェックリストを試験報告書の受領時に使うだけで、計算ミスによる設計変更・手戻りのリスクを大幅に減らせます。手戻りは1件あたり数十万円規模のコストになることもあるため、確認作業に5分かける価値は十分あります。
また、設計者と現場担当者が試験結果を共有する際は、「生データ(P-S曲線の生グラフ)」と「計算結果(許容支持力度)」の両方を確認することが望ましいです。計算結果のみを受け取り、根拠グラフを確認しないままでは、報告書の数値の妥当性を判断できません。計算結果の確認だけでは不十分です。
地盤調査の全体フローを一元管理したい場合は、「Geo-Station」などの地盤データ管理ソフトウェアや、国土交通省が提供する「国土地盤情報検索サイト(KuniJiban)」で周辺地盤データとの比較確認を行うことも、計算値の妥当性検証に役立ちます。
国土地盤情報検索サイト KuniJiban(国交省・周辺地盤のボーリングデータを無料で確認できる)
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