かね折り金物接合の施工方法と性能

かね折り金物接合の施工方法と性能

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かね折り金物接合の基本知識と施工手順

かね折り金物接合の重要ポイント
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基本構造と用途

出隅の通し柱と2方向の胴差を確実に接合補強

施工効率

ビスのみの施工で作業時間を大幅短縮

🛡️
高性能材質

スーパーダイマ採用で優れた耐食性を実現

かね折り金物接合の基本構造と用途

かね折り金物は、木造軸組工法において最も重要な接合部材の一つです。この金物は中央部分で90度に折り曲げられた形状が特徴的で、建物の出隅部分において通し柱と2方向の胴差を同時に接合する役割を担います。

 

通し柱は基礎から屋根まで貫く構造上極めて重要な部材であり、この柱と横架材である胴差との接合部は建物全体の構造安定性を左右します。かね折り金物による接合は、以下の重要な機能を果たします。

  • 構造耐力の確保: 地震や風圧による水平力に対抗する十分な接合強度を提供
  • 引き抜き防止: 上部構造からの荷重による柱の引き抜きを防止
  • 剛性向上: 接合部の変形を抑制し、建物全体の剛性を高める

建築基準法においても、出隅部分の通し柱と胴差の取り合いは構造上重要な接合部として位置づけられており、適切な金物による補強が義務付けられています。

 

かね折り金物接合の施工方法とビス選択

現代のかね折り金物は施工効率を重視した設計となっており、主にビスのみでの施工が可能です。従来のボルト接合と比較して、大幅な作業時間短縮を実現しています。

 

施工手順の詳細:

  1. 位置決めと仮固定: 金物本体を接合部に位置合わせし、切り起こし爪またはツメで仮止め
  2. 専用ビスでの本固定: 専用角ビットビス(TBA-45など)を3番四角ビットで締付け
  3. 施工確認: 各接合部の締付けトルクと取付け状態を点検

ビス選択のポイント:

  • 専用ビスの使用: 一般的なビスではなく、金物メーカー指定の専用ビスを必ず使用
  • 適切な本数: 通常は胴差1本あたり10本程度のビスで接合
  • 締付けトルク管理: 過度な締付けによる木材の割れを防止

一部の製品では六角ボルト(M12)2本とスクリューくぎ(ZS50)3本を組み合わせた接合方法も採用されており、設計要求に応じて適切な施工方法を選択する必要があります。

 

木造軸組工法住宅の構造設計においては、異なる金物の併用時の注意点も重要です。複数の金物を組み合わせた場合、接合部耐力は個々の金物耐力の単純な和とはならないため、設計者による詳細な検討が必要です。

 

かね折り金物の材質と性能試験について

かね折り金物の性能を左右する重要な要素が材質選択です。現在主流となっているのは、日本製鉄株式会社が開発した「スーパーダイマ」と呼ばれる合金めっき鋼板です。

 

スーパーダイマの特徴:

  • 成分構成: Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si合金めっき
  • 優れた耐食性: 従来の溶融亜鉛めっき鋼板比で約10倍の耐食性能
  • 薄板仕様: 0.6mm厚でありながら十分な強度を確保
  • 環境対応: クロメートフリー処理による環境負荷軽減

性能試験については、一般財団法人建材試験センターによる品質性能試験が実施されており、短期基準引張耐力8.6kNという具体的な数値が確認されています。

 

エンボス加工による施工メリット:
従来の金物では接合具(ビスや釘)の頭部が表面に突出し、構造用合板や面材の直張りが困難でした。しかし、現在のかね折り金物では精密なエンボス加工により、ビス頭が金物表面から突出しない設計となっています。これにより。

  • 構造用合板の直張りが可能
  • 施工工程の簡略化
  • 外装材の平滑な仕上がり確保

建材試験センターの性能試験結果(試験番号:05A0205号)では、実際の建築現場での使用を想定した厳格な条件下での試験が実施されており、設計時の信頼性データとして活用されています。

 

かね折り金物接合と他金物との使い分け

木造軸組工法では多様な接合金物が使用されており、それぞれの用途と特徴を正確に理解することが適切な構造設計につながります。

 

主要な接合金物の比較:

金物名 用途 接合方法 特徴
かね折り金物 出隅通し柱と胴差 ビス・ボルト L字形状、2方向接合
かど金物 柱頭柱脚接合 ボルト 引張耐力重視
短冊金物 梁継手補強 ボルト・釘 直線形状
ひねり金物 垂木と軒桁 ねじれ形状

使い分けのポイント:

  1. 接合部位の特定: 柱と梁の取り合い、梁同士の継手など、接合箇所に応じた金物選択
  2. 荷重条件の評価: 引張力、圧縮力、せん断力など、作用する力の種類と大きさ
  3. 施工条件の考慮: 作業空間、施工順序、工期などの現場条件

建築士試験においても、これらの金物の適切な選択は重要な出題ポイントとなっており、実務においても正確な知識が求められます。

 

設計上の注意点:
かね折り金物は柱の断面寸法に対して2倍以上の長さが必要とされており、製品は5種類の長さが用意されています。これは接合部の応力分散と十分な接合長さ確保のためです。

 

また、構造計算においては、かね折り金物の引張耐力だけでなく、木材のめり込み、せん断破壊なども総合的に検討する必要があります。特に横架材接合部では、水平力による引き抜き力の算定と、それに対応した金物の選定が重要です。

 

かね折り金物接合の施工効率向上のポイント

建築現場における施工効率向上は、工期短縮とコスト削減に直結する重要な要素です。かね折り金物の施工において、効率性を最大化するための実践的なポイントを解説します。

 

事前準備による効率化:

  • 金物の事前仕分け: 施工箇所別に金物を仕分けし、作業手順を最適化
  • 専用工具の準備: 3番四角ビットと電動ドライバーの事前点検と予備準備
  • 施工図面の現場配布: 各職人が接合部詳細を事前確認できる体制構築

施工順序の最適化:
従来のボルト接合では、穴あけ→ボルト挿入→ナット締めという複数工程が必要でしたが、ビス施工では大幅な工程短縮が可能です。効率的な施工順序として。

  1. 通し柱の建込み完了後: 金物取付け位置のマーキング
  2. 胴差の組み付け前: 金物の仮固定(切り起こし爪使用)
  3. 胴差組み付け後: 専用ビスによる本固定

品質管理と効率の両立:

  • 締付けトルクの標準化: 作業者による品質のばらつき防止
  • 施工チェックリスト活用: 見落とし防止と作業の標準化
  • 材料の一括発注: 専用ビス等の欠品による作業中断防止

新技術の活用:
最新のかね折り金物では、IoT技術を活用した施工管理システムの導入も始まっています。電動ドライバーと連携した締付けトルク管理や、施工完了箇所のデジタル記録により、品質確保と効率向上を同時に実現する取り組みが注目されています。

 

コスト効率の向上:
エンボス加工により構造用合板を直張りできることで、従来必要だった金物回避のための合板加工や追加部材が不要となり、材料費と施工費の両方でコスト削減効果が期待できます。

 

また、施工効率向上による工期短縮は、現場管理費や人件費の削減にもつながり、プロジェクト全体の収益性向上に貢献します。特に住宅建築においては、1棟あたりの金物接合箇所が多いため、1箇所あたりの小さな効率改善も全体では大きな効果となります。

 

金物メーカー各社では、施工効率向上のための技術開発を継続的に行っており、今後もより施工性に優れた製品の登場が期待されます。建築従事者としては、最新の製品情報と施工技術の習得により、競争力の高い施工体制の構築が可能となります。