

クランプオン型の超音波流量計は、配管を切断しなくても設置できるのに、誤った位置に取り付けると測定値が±20%以上ずれて、省エネ対策が逆効果になることがあります。
超音波流量計とは、配管内を流れる流体に対して超音波を発信し、その伝わり方の変化から流速・流量を算出する計測機器です。一般的なイメージとして「特殊な機器を配管に組み込む大工事が必要」と思われがちですが、実際にはセンサーを配管の外側に貼り付けるだけで計測できるタイプも多く存在します。
超音波とは、人の耳では聞き取れない2万Hz以上の周波数の音波です。この超音波には、物質の内部を透過して伝わる性質と、異なる物質の境界で反射する性質があります。超音波流量計はこの2つの特性を組み合わせることで、配管を傷つけることなく内部の流れを把握できます。
測定の仕組みは大きく2種類に分かれます。1つ目は「伝搬時間差方式(トランジットタイム式)」、2つ目は「ドップラー方式」です。どちらも超音波を使いますが、アプローチが根本的に異なるため、流体の種類によって使い分けが必要です。つまり、流体に合わせた方式の選択が基本です。
たとえば建築設備では、空調の冷温水ライン・給水管・排水処理設備など、扱う流体の状態はさまざまです。冷温水のような清澄な液体と、排水のような濁りや粒子を含む液体では、適切な方式がそれぞれ異なります。これが正しく理解できているかどうかで、計測精度に大きな差が生じます。
超音波は気体にも適用できますが、液体に比べて音の伝わり方が異なるため、気体専用の構造を持つ機器が必要です。対象が何であるか確認が条件です。
参考:超音波式流量計の原理・特徴を詳しく解説するHORIBAの技術ページ
超音波式流量計とは?(原理・特徴・用途を徹底解説!) - HORIBA
建築現場で超音波流量計を選ぶとき、最初に確認すべきなのが「流体の状態」です。この判断を誤ると、機器を設置しても正確な数値が出ない、あるいはまったく計測できないという事態になります。
伝搬時間差方式は、配管の上流側と下流側に2つのセンサーを設置し、超音波を交互に送受信します。流れに乗って伝わる方向(下流向き)は速く届き、流れに逆らう方向(上流向き)は遅れて届く、この時間差から流速を算出します。イメージとしては、流れる川を渡るボートを思い浮かべてください。流れに乗れば早く対岸に着き、逆らえば時間がかかります。その差が「流速」の情報になります。
この方式の特徴は、清澄な液体(気泡・固形物が少ない)に対して高精度な測定が可能な点です。建築設備でいえば、空調冷温水ライン・給水管・冷却水配管などに向いています。精度は機種によりますが、フルスケールに対して±1〜3%程度の製品が多く見られます。これは使えそうです。
ドップラー方式は、流体中に含まれる微細な粒子や気泡に超音波を当て、反射して戻ってくる波の周波数変化(ドップラー効果)から流速を計算します。救急車が近づくと音が高く聞こえ、遠ざかると低く聞こえる現象と同じ原理です。粒子や気泡が「反射体」として機能するため、排水・汚泥水・スラリーなど濁りを含む流体の計測に適しています。反面、精度は伝搬時間差方式より劣り、±3%程度になることがあります。
以下の表で両方式の使い分けをまとめました。
| 比較項目 | 伝搬時間差方式 | ドップラー方式 |
|---|---|---|
| 適した流体 | 清澄な液体・気体 | 粒子・気泡を含む流体 |
| 測定精度 | ±1〜3%(高精度) | ±3%程度 |
| 建築設備での用途例 | 空調冷温水・給水管・冷却水 | 排水処理・汚泥配管 |
| 気泡・濁りへの対応 | ❌ 精度低下・測定停止 | ✅ 反射体として活用 |
方式の選択で迷う場合は、測定対象の流体が「透明に近い液体か、濁りのある液体か」を基準にすれば判断できます。清澄な液体なら伝搬時間差方式が原則です。
参考:ドップラー式と伝搬時間差方式の違いを詳細に解説したOMEGAの技術コラム
超音波流量計の原理 (ドップラー式と伝搬時間差方式の違い) - OMEGA
建築設備の維持管理や省エネ改修の現場で、超音波式流量計の中でも特に「クランプオン型」が注目されています。その最大の理由は、既設配管を一切加工しなくても流量計測ができる点です。
通常、配管に流量計を後付けしようとすれば、一度設備を停止して配管を切断し、フランジを溶接し直す工事が必要になります。大型ビルや工場の設備ではこの停止コストが非常に大きく、場合によっては数十万円規模の工事費が発生することもあります。厳しいところですね。
クランプオン型はこの問題を解消します。配管外側にセンサーをベルトやバンドで固定するだけで計測が始まるため、配管工事費を大幅に節減できます。稼働中の設備を止める必要もなく、取り付け時間も機種によっては1分以内で完了します。東京計器のUC-1などの製品は、電池駆動のため電源工事も不要で、工事レスでの導入が可能です。
また、クランプオン型は流体と接触しないため「圧力損失ゼロ」という特徴もあります。一般的な差圧式流量計や機械式流量計を挿入すると、流体の流れを邪魔する抵抗が生まれ、ポンプの動力ロスにつながります。これが積み重なると年間のエネルギーコスト増加につながるため、省エネの観点でも見過ごせません。
建築設備での主な活用シーンをまとめると次の通りです。
流量データを継続的に収集する場合、機器によってはBluetooth・Wi-Fiなどの無線出力に対応しているものもあり、タブレットやPCでリアルタイムモニタリングができます。データが手元に集まれば、省エネ対策の根拠にもなります。これは使えそうです。
参考:クランプオン型超音波流量計UC-1の仕様と特長(オーバル社)
液体用電池駆動式クランプオン形超音波流量計UC-1 - 株式会社オーバル
超音波流量計は「貼るだけで計れる便利な機器」というイメージがある分、設置を甘く見て誤差を招くケースが建築現場でも少なくありません。以下の3つのポイントは特に注意が必要です。
① 直管長の不足
超音波流量計を正確に機能させるためには、センサー取り付け位置の上流側と下流側に「直管部(曲がりや絞りのない真っ直ぐな配管)」が一定長さ必要です。一般的な目安として、上流側は呼び口径Dの5〜10倍以上の直管長が必要とされています。たとえば口径が100mmの配管なら、上流側に500mm〜1,000mm以上の直管部が必要ということになります。はがきの短辺が10cmなので、5枚から10枚を横に並べた長さをイメージしてください。
エルボ(曲がり)、バルブ、ティー継手、縮小管などの下流側には乱流が生じており、そこにセンサーを設置すると流速分布が均一でなくなり、大きな誤差が出ます。建築設備の配管はスペースの都合で継手が多用されているため、適切な直管部を確保できる場所を慎重に探すことが重要です。直管長の確認が先決です。
② 配管内スケール(水垢)の付着
クランプオン型は配管の外側からセンサーを当てて超音波を透過させる仕組みですが、配管の内壁に水垢(スケール)や腐食層が堆積していると、超音波が管内に届きにくくなります。
特に硬水地域や長期間使用された古い配管では、スケールが数mm単位で付着していることがあります。この状態だと測定値のばらつきが大きくなるか、最悪の場合は計測不能になることもあります。実際に、配管内ライナーが施されている場合はクランプオン型の精度が大幅に低下し、誤差が±20%以上に達するケースも報告されています。痛いですね。
これを回避するには、スケール確認機能(エコーサーチ機能)を搭載した機種を選ぶか、管の肉厚・材質・スケール状況を事前に調査したうえで設置位置を決めることが有効です。
③ 気泡の混入
伝搬時間差方式の超音波流量計は、気泡に非常に弱いです。配管内に気泡が混入すると超音波が気泡に遮断されてしまい、計測不能や大きな誤差を生じます。建築設備の配管では、ポンプ起動直後・バルブ開閉時・高所配管などで気泡が発生しやすい状況があります。
対策としては、気液分離機(エアセパレーター)を上流側に設置するか、気泡が滞留しやすい高所や曲がり部分を避けて設置場所を選ぶことが基本です。また、水平配管よりも「下から上に流れる垂直上昇管」に設置すると気泡が溜まりにくく、安定した計測が期待できます。気泡対策が条件です。
参考:配管と流量計の設置位置に関する技術解説(キーエンス)
正確な流量管理を行うための配管テクニック - KEYENCE
超音波流量計は「購入して常設する設備」というイメージが強いですが、建築設備の現場では「レンタルで一時的に使う」という運用が実は非常に合理的です。この視点を持っているかどうかで、コストとデータの質が大きく変わります。
たとえば、省エネ診断や設備改修の提案を行う際、既存の空調システムの冷温水流量を実測したいケースがあります。しかし、そのためだけに数十万円の流量計を購入するのは割に合いません。ソーキやレックス・オリックスレンテックなど複数のレンタル会社が超音波流量計(クランプオン型)のレンタルサービスを提供しており、1〜2週間の短期レンタルで対応できます。
期間限定の計測であればレンタルが有利です。
実際、省エネ法に基づくエネルギー管理の実地調査や、ESCO事業・建物再生診断の場面では、数日〜数週間の流量ロギングで十分な根拠データが得られます。レンタル機器でも多くの場合、校正証明書の発行が可能なため、報告書の信頼性も担保できます。
また、近年では熱量計測機能(カロリー計算)を内蔵した超音波流量計も登場しています。流量と温度差の2つのデータから熱エネルギー量を自動算出できるため、冷温水ラインの省エネ効果をデータとして記録・提示することが可能です。UFP-20(東京計器)など、1台で2測点を同時計測できる機種も存在し、往き・還りを同時に把握する使い方もできます。これは使えそうです。
購入か、レンタルか。判断の基準は「計測頻度と期間」です。年に複数回・継続的に計測するなら購入が合理的、年1〜2回の診断や短期調査ならレンタルが圧倒的にコスト効率が高い。この使い分けが、建築設備管理の現場での賢い選択になります。
参考:超音波流量計のレンタルサービス(計測器・ソーキ)
超音波流量計のレンタル一覧 - ソーキ
建築設備の担当者が超音波流量計を導入する際、機種の選定を間違えると「計れない」「数値がずれる」という問題が起きやすくなります。ここでは現場で迷わないための選定の流れを整理します。
まず確認すべきは「どんな流体を計るか」です。清澄な液体(空調冷温水・給水・冷却水など)であれば伝搬時間差方式、排水・汚水・固形物を含む流体であればドップラー方式が基本選択です。両者を自動で切り替える機種も市場には存在し、流体の状態が不明確なケースに対応できます。
次に確認するのが「配管の口径・材質・肉厚」です。超音波はステンレス・鋼・銅・樹脂など多くの材質に対応していますが、ライニング材の種類や肉厚によっては超音波が透過しにくい場合があります。機器メーカーの対応口径表・材質表を事前に照合することが必要です。キーエンスのFD-Rシリーズは呼び口径13〜200Aまで対応し、ドライバー1本で取り付けできる設計が評価されています。これが条件です。
以下に、現場で使える選定チェックリストをまとめました。
導入の流れとしては、①現地の配管調査(口径・材質・直管長の確認)→ ②流体の性状確認(清澄・濁り・気泡含有)→ ③機種の選定(方式・口径・出力方式)→ ④取り付け位置の決定→ ⑤設置・ゼロ調整→ ⑥計測データの確認、という手順が標準的です。
迷ったときはメーカーや専門商社に配管仕様と計測目的を伝えると、最適機種を提案してもらえます。特に富士電機・東京計器・キーエンス・オーバルなど主要メーカーは技術サポートが充実しており、現地確認のうえで提案してくれるケースもあります。問い合わせを一本入れるだけで解決することも少なくありません。
参考:流量計の設置・配管テクニックと種類を網羅的に解説するキーエンスの流量知識.COM
流量計の種類 | 流量知識.COM - KEYENCE

超音波流量計ケーブル 長さ10m と クランプオン超音波流量計 TUF-2000M TUF-2000S TUF-2000B TUF-2000F 超音波式液体流量計用