山形とは建築構造補強で使われる鋼材

山形とは建築構造補強で使われる鋼材

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山形とは建築における鋼材の種類

山形鋼(アングル)の特徴
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L字型断面構造

断面がアルファベットの「L」の形をしており、軽量でありながら高い剛性を持つ鋼材です。

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幅広い用途展開

建築構造物の補強材、接合金物の部材、工場施設や機械類の骨組みとして活用されています。

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加工性と強度

抗張力や強度に優れ、歪みがなく加工がしやすい特性を持ち、様々な建築現場で重宝されています。

山形鋼の基本的な定義と形状

山形鋼アングル)とは、建築業界で広く使用されている鋼材の一種で、断面がアルファベットの「L」字型をしている形鋼です。正式名称は山形鋼といい、英語では「アングル」と呼ばれることから、現場では両方の呼び方が使われています。この鋼材は、ビレット材などの金属塊を圧延機によって山形に成形して製造されます。
参考)https://www.sekoukyujin-yumeshin.com/learn/22137/

断面のL字型構造において、縦の直線部分を「フランジ」、横の直線部分を「ウェブ」と呼びます。このフランジとウェブの寸法や形状、厚さなどで様々な種類があり、建築現場のシチュエーションに合わせて使い分けが行われます。材質は一般構造用圧延鋼材のSS400が基本ですが、強度や剛性を必要とする構造材用には高張力鋼も使用されます。
参考)https://www.jisf.or.jp/kids/shiraberu/katakou.html

山形鋼の最大の特徴は、軽量でありながら高い剛性を持つ点です。この形状により、構造体の補強やフレームの支えなどに広く使用され、機械設計や建築など多岐にわたる分野で活用されています。抗張力や強度に優れており、歪みもないため加工がしやすく、工場施設や機械類の部材、建物の補強、船舶など様々な用途に対応できる汎用性の高い鋼材です。
参考)https://mecha-basic.com/angle/

山形鋼の種類と規格サイズ

山形鋼は、二辺の長さの関係によって主に「等辺山形鋼」と「不等辺山形鋼」の2種類に分類されます。等辺山形鋼は、L字型の両辺が同じ幅であることが特徴で、サイズは25×25mmから250×250mmまで豊富なラインナップがあります。両辺が同じ長さのため、均等な強度特性を持ち、工場施設や機械類の部材、建物の補強、船舶などに使用されます。
参考)https://www.taga-p.jp/l_type

不等辺山形鋼は、L字型の両辺の長さが異なり、等辺山形鋼と比較すると肉厚であることが特徴です。サイズは90×75mmから150×100mmなどがあり、鉄塔や立体駐車場などに活用すると便利です。さらに、不等辺不等厚山形鋼という種類もあり、こちらは両辺の長さだけでなく厚さも異なる特殊な形状をしています。​
JIS G 3192に準拠した等辺山形鋼の代表的なサイズと重量は以下の通りです:​

呼び名(mm) 肉厚(mm) 単位重量(kg/m)
25×25 3.0 1.12
50×50 5.0 3.77
75×75 6.0 6.85
100×100 10.0 14.9
150×150 15.0 33.6
200×200 20.0 59.7

このように、山形鋼は用途や必要な強度に応じて多様なサイズが規格化されており、建築現場のニーズに柔軟に対応できる設計となっています。
参考)https://techno-rise.co.jp/design_support/jis-stn-sizetable/shape-steel-size/

山形鋼の建築における主な用途

山形鋼は建築分野において、その構造的特性を活かした様々な用途で使用されています。最も一般的な用途は、建築構造物の骨組みや橋梁の構造材、屋根や壁面の支持材としての役割です。断面性能が他の形鋼と比較して高くないため、梁や柱などの主要な構造材としてではなく、開口補強や下地材補強など、簡易な骨組みを作る際に使用されることが多くなっています。
参考)https://media.suke-dachi.jp/glossary/material/equal-angle-steel/

鉄骨造建築においては、工場内のデッキや架台などの土台の固定に活用され、その軽量性と扱いやすさが評価されています。重量は0.885kg/mから128kg/mと比較的軽量で、2枚の鋼板を使用して製造されるため、他の形鋼と比較して使用されている部材数が少ないという特徴があります。これにより、施工現場での取り扱いが容易になり、作業効率の向上にもつながります。​
建設分野以外でも、山形鋼は幅広く利用されています。船舶の構造材や、橋梁、鉄塔の部材として使用されるほか、クレーンを支える梁やブルドーザー・トラクターなどの台車の構造材、さらには門や柵の枠にも採用されています。この多様な用途展開は、山形鋼が持つ強度と加工性のバランスの良さを示しています。​

山形プレートと接合金物の役割

山形プレートは、建築で用いられる補強のための板で、特にV字型になっている金物を指します。VPプレートとも呼ばれ、木造建築において引抜き力を受ける柱と横架材(土台・梁)などの接合部に用いる重要な構造金物です。このV字型の形状により、柱や横架材の接合部に効果的に取り付けることができ、引き抜きの力に対抗させる役割を果たします。
参考)https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016amp;wid=30564amp;wdid=01

山形プレートの取り付けには、正しい方向性が重要です。開いているほうを横架材に取り付ける必要があり、接合面を表すラインと矢印が付けられているため、取り付け位置が明確になっています。柱の背割り面に取り付ける場合には、逆にして付けることもでき、材が割れてしまうことを防ぐことができます。施工時には、材の接合面に山形プレートの線を合わせて使用し、必ず指定された釘(太め釘ZN90など)を使用しなければなりません。
参考)https://www.genba007.com/category/67/111_101.html?__pc_site_mode=pc

山形プレートは安価で使用することができる金物であり、通常は釘もセットになっています。柱と横架材、隅柱と横架材、通し柱と横架材の接合など、木造建築の重要な接合部分に幅広く使用されています。建築基準法の告示1460号第2号に対応した製品も多く、N値1.0以下で5.1kNの耐力を持つものが標準的に使用されています。
参考)https://www.tanakanet.co.jp/housing/products/notice/%E5%91%8A%E7%A4%BA1460%E5%8F%B7%E7%AC%AC2%E5%8F%B7/

山形鋼の施工上の注意点とコスト考察

山形鋼を建築に使用する際には、いくつかの重要な注意点があります。最大の課題は、断面が非対称であるため、外力の向きによって耐久性が弱くなったり強くなったりする点です。特に弱軸まわりの曲げ抵抗性能が非常に貧弱であることが知られており、構造設計時にはこの特性を十分に考慮する必要があります。
参考)https://uni-kon.jp/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E7%9F%A5%E8%AD%98/%E3%81%86%E3%81%A1%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%B1%B1%E5%BD%A2%E9%8B%BC%EF%BC%88%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%EF%BC%89%E6%9F%B1-2/

コスト面においても、山形鋼にはいくつかの課題があります。鋼材の材料コストは重量に比例するのが一般的ですが、支払わなければならないもう一つの大きなコストが鋼材加工費であり、これも重量と比例します。そのため、弱軸まわりの性能が貧弱であるにもかかわらず、余計にコストが高くなってしまうという課題があります。​
一方で、山形鋼には多くのメリットも存在します。開放的な材料断面のおかげで、外側からの上下・左右連結がやりやすく、装飾カバーも付けやすい、基礎アンカーボルトとの締結もやりやすいという施工性の高さがあります。また、規格品を使用する限り、資材単価を抑えることができますが、特注対応となると資材単価が高騰するため、できるだけ規格品の範囲で設計することが推奨されます。
参考)https://uni-kon.jp/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E7%9F%A5%E8%AD%98/%E3%81%86%E3%81%A1%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%8A%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AA%E3%81%9C%E5%B1%B1%E5%BD%A2%E9%8B%BC%EF%BC%88%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AB%EF%BC%89%E6%9F%B1-3/

山形鋼メンテナンスと長期使用の実践知識

山形鋼を長期的に使用する際には、適切なメンテナンスと性能維持が重要となります。鋼材は経年劣化により性能低下が避けられないため、定期的な点検と必要に応じた補強が求められます。特に鉄塔や送電施設、第5世代移動通信設備など、社会インフラとして機能する構造物では、荷重設計基準の更新や長期使用要求に対応するための改修が必要となります。
参考)https://www.mdpi.com/2076-3417/13/16/9280/pdf?version=1692179380

補強方法としては、既存の山形鋼を補強板と固定具で連結する非破壊補強法が注目されています。この方法では、標準化された固定具を使用して補強板と山形鋼を接続することで、不必要な新規建設や複雑な補強手順を避けることができます。固定具の間隔、補強する山形鋼部材のサイズ、部材の細長比、補助鋼管のサイズなどのパラメータが補強効果に影響を与えるため、適切な設計が必要です。
参考)https://downloads.hindawi.com/journals/ace/2022/9592069.pdf

防錆対策も重要なメンテナンス項目です。等辺山形鋼には防錆塗装を施したカラーアングルも製品化されており、屋外使用や腐食環境下での長期使用に対応しています。山形プレートなどの接合金物についても、耐食性に優れる「スーパーダイマ」などの素材を使用した製品が開発されており、長期的な耐久性向上に貢献しています。建築物の寿命を延ばすためには、このような防錆性能の高い材料を選定することが効果的です。
参考)https://www.kyoeisteel.co.jp/ja/business/steel/equal.html

山形鋼の建築における一般的な用途と特徴について詳しく解説した参考情報
JFE建材株式会社の山形鋼製品情報ページ
山形プレートなど構造金物の接合方法について解説した技術資料
金進産業株式会社の柱頭・柱脚の仕口接合方法解説
等辺山形鋼の規格サイズと断面性能の詳細データ
JIS規格に準拠した等辺山形鋼のサイズ規格表