
座ぐり穴の寸法設計において、JIS B 1001:1985「ボルト穴径及びざぐり径」が基準となります。この規格では、M3からM30まで各ねじ径に対応する標準的な座ぐり径が規定されています。
標準座ぐり径寸法表(JIS B 1001:1985準拠)
ねじ径 | 通し穴径(mm) | 座ぐり径(mm) | 面取り(mm) |
---|---|---|---|
M3 | 3.4 | 9 | 0.3 |
M4 | 4.5 | 11 | 0.4 |
M5 | 5.5 | 13 | 0.4 |
M6 | 6.6 | 15 | 0.4 |
M8 | 9 | 20 | 0.6 |
M10 | 11 | 24 | 0.6 |
M12 | 13.5 | 28 | 1.1 |
M14 | 15.5 | 32 | 1.1 |
M16 | 17.5 | 35 | 1.1 |
M20 | 22 | 43 | 1.2 |
M24 | 26 | 50 | 1.2 |
JIS規格では座ぐり面は穴の中心線に対して直角となるよう規定されており、座ぐりの深さについては「一般に黒皮がとれる程度」とされています。この表現は実務では非常に重要で、表面処理の観点から最低限必要な座ぐり深さを示しています。
実際の設計では、ボルト穴径の等級も考慮する必要があります。1級から4級まで設定されており、ねじ外径と穴径のすきまによって分類されます。建築現場では一般的に2級または3級が多用されており、現場での施工誤差を考慮した適切なクリアランスが確保されています。
座ぐり深さの設計は、使用するボルトの種類によって大きく異なります。六角穴付きボルト(キャップスクリュー)の場合、ボルト頭部を完全に隠すための深ザグリ寸法が重要になります。
六角穴付きボルト用深ザグリ寸法表
ねじ径 | キリ穴径(mm) | ザグリ径(mm) | 深さ(mm) |
---|---|---|---|
M3 | 3.4 | 6.5 | 3.3 |
M4 | 4.5 | 8.0 | 4.4 |
M5 | 5.5 | 9.5 | 5.4 |
M6 | 6.6 | 11 | 6.5 |
M8 | 9.0 | 14 | 8.6 |
M10 | 11 | 17.5 | 10.8 |
M12 | 13.5 | 20 | 13 |
M14 | 15.5 | 23 | 15.2 |
M16 | 17.5 | 26 | 17.5 |
M20 | 22 | 32 | 21.5 |
M24 | 26 | 39 | 25.5 |
深ザグリの深さ計算では、ボルト頭部の高さに加えて適切な余裕代を考慮します。一般的に、六角穴付きボルトの頭部高さはねじ径と同等ですが、製造公差や座面の平面度を考慮して0.2〜0.5mm程度の余裕を持たせることが実務では重要です。
加工精度の観点から、座ぐり加工は一般的にエンドミルやカウンターボアを使用します。加工時の注意点として、座ぐり底面の平面度は±0.05mm以内に収めることが推奨されており、特に高強度ボルトを使用する場合は座面の品質が締付けトルクに直接影響します。
実務での座ぐり設計では、メーカー推奨値と現場での実際の加工条件を総合的に判断する必要があります。以下は主要メーカーの推奨寸法をまとめた実用的な寸法表です。
実用座ぐり寸法一覧(メーカー推奨値)
ねじ径 | 通し穴径 | 座ぐり径 | 座ぐり深さ | 皿もみ径 |
---|---|---|---|---|
M3 | 3.4 | 6.5 | 3.5 | 7 |
M4 | 4.5 | 8 | 4.5 | 9 |
M5 | 5.5 | 9.5 | 5.5 | 11 |
M6 | 6.6 | 11 | 6.5 | 14 |
M8 | 9 | 14 | 9 | 18 |
M10 | 11 | 17.5 | 11 | 22 |
M12 | 14 | 20 | 14 | - |
M14 | 16 | 23 | 16 | - |
M16 | 18 | 26 | 18 | - |
M18 | 20 | 29 | 20 | - |
M20 | 22 | 32 | 22 | - |
M22 | 24 | 35 | 24 | - |
M24 | 26 | 39 | 26 | - |
通し穴径の選定では、ボルトの挿入性と位置決め精度のバランスが重要です。建築現場では施工誤差を考慮して、JIS規格の2級または3級を選択することが一般的です。特に鉄骨建築では、現場での位置調整を考慮して3級の使用が推奨されています。
座ぐり径の設計では、ワッシャーやスプリングワッシャーの使用も考慮する必要があります。標準的なワッシャー外径は座ぐり径より小さく設定されていますが、特殊ワッシャーを使用する場合は個別に寸法確認が必要です。
機械製図における座ぐり穴の正確な表記は、加工ミスを防ぐために極めて重要です。JIS B 0001に基づく製図規則では、座ぐり穴の寸法指示に特定の記号と表記方法が規定されています。
座ぐり穴の図面表記規則
表記例。
図面上での座ぐり穴の断面表記では、座ぐり部分を明確に区別して表示します。特に複数の座ぐり穴がある場合は、各穴に個別の寸法指示を行うか、代表穴の寸法を示して「4-φ9 ⌴14 深さ8.6」のように表記します。
座ぐり底面の位置指示では、反対側の面からの寸法で指示する場合があります。これは加工基準面が明確でない場合や、部品の組み立て関係で座ぐり深さを厳密に管理する必要がある場合に使用されます。
図面表記での注意事項
実際の建築・機械設計において、座ぐり穴の設計では理論値だけでは対応できない実務的な考慮事項が多数存在します。現場での加工性、コスト、メンテナンス性を総合的に判断した設計ノウハウが重要になります。
材料別加工特性の考慮
鋼材での座ぐり加工では、材質硬度によって加工条件を調整する必要があります。SS400材では標準的な加工条件で問題ありませんが、高張力鋼や焼入れ材では工具選択と切削条件の最適化が重要です。特にSM490材以上では、座ぐり底面の仕上げ精度確保のため、仕上げ加工を2段階に分けることが推奨されます。
アルミニウム合金での座ぐり加工では、材料の軟らかさによる加工変形に注意が必要です。座ぐり径の公差を±0.05mm程度に厳しく管理し、加工時のバリ発生を最小限に抑える工具選択が重要になります。
現場施工を考慮した寸法調整
建築現場での実際の施工では、理論的な寸法値に対して現実的な調整が必要になります。特に大型鉄骨建築では、製作誤差と建て方誤差が累積するため、座ぐり径を標準値より0.5〜1.0mm大きく設定することが一般的です。
また、高所作業での座ぐり加工では、作業性を考慮した深さ設定が重要です。標準深さより1〜2mm浅く設定し、現場でのボルト調整余裕を確保することで、施工効率の向上と品質確保を両立できます。
維持管理を考慮した設計
座ぐり穴内部の防錆処理は、長期間の構造物健全性に直接影響します。座ぐり深さを標準値より1mm程度深く設定し、防錆塗料の十分な塗布厚さを確保することが重要です。特に外部鉄骨では、座ぐり底面に0.5mm程度の防錆プライマーを塗布するため、この厚さ分を考慮した深さ設定が必要になります。
コスト最適化の観点
座ぐり加工のコスト削減では、加工径と深さの標準化が効果的です。設計段階で使用するボルト径を限定し、座ぐり寸法を標準化することで、工具費用と加工時間の削減が可能になります。特にM8、M12、M16の3サイズに集約することで、工具管理コストの大幅削減が実現できます。
大量生産品では、座ぐり加工の専用治具製作も検討価値があります。位置決め精度の向上と加工時間短縮により、総合的なコスト削減効果が期待できます。
NBK鍋屋バイテック会社の技術資料では、六角穴付きボルト用座ぐり寸法の詳細な参考値が提供されています
https://www.nbk1560.com/resources/other/article/technical-22-dimensions-of-holes-for-hexagon-socket-cap-screws/
JIS規格の正式な座ぐり径規定については、日本産業規格の公式サイトで確認できます
https://kikakurui.com/b1/B1001-1985-01.html