EPライニング管の種類と施工で知っておきたい選び方と注意点

EPライニング管の種類と施工で知っておきたい選び方と注意点

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EPライニング管の種類と配管工事の正しい施工知識

EPライニング管を正しく施工しているのに、継手部から赤水が出て施主クレームになった事例が後を絶ちません。


この記事でわかること
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EPライニング管の基本と種類

EPライニング管(エポキシ樹脂系)を含むライニング鋼管の種類・規格・使い分けの基準を整理します。

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施工時のよくある失敗と管端防食

管端防食継手(コア継手)を使わないと起こる赤水・腐食トラブルと、その防止策を解説します。

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EPライニング管の選び方と寿命

用途・設置環境・温度条件ごとの選定基準と、耐用年数20〜40年を最大化するメンテナンスのポイントを紹介します。


EPライニング管とは何か:エポキシ系を含むライニング鋼管の基本

EPライニング管とは、配管用炭素鋼鋼管(SGP)の内面にエポキシ系樹脂塗料を塗布・焼付けした複合管のことです。「EP」はエポキシ(Epoxy)の略で、代表的なものに排水用ノンタールエポキシ塗装鋼管(記号:SGP-NTA、WSP032規格)があります。鋼管本来の強度を持ちながら、内面の腐食を防ぐ防食層を設けた点が最大の特徴です。


ライニング鋼管という大きなカテゴリの中には、いくつかの種類があります。現場でよく混同されるのが「塗装(ペインティング)」「コーティング」「ライニング」の3つですが、国土交通省監修の公共建築工事標準仕様書では塗膜厚が0.3mm未満を「コーティング」、0.3mm以上を「ライニング」と定義しています。EPライニング管(SGP-NTA)の内面塗装は薄膜ですが、優れた密着性と耐薬品性を発揮します。


つまり、EPライニング管はエポキシ樹脂による防食が目的です。


主な用途は、住宅・ビル・工場などの汚水および雑排水配管です。給水管に使われる硬質塩化ビニルライニング鋼管(SGP-VAなど)とは用途が異なるため、現場での管種選定ミスに注意が必要です。「鋼管にライニングしてある管なら何でも給水に使える」と思い込むと、取り返しのつかない施工不良につながります。














































管の記号 ライニング材 主な用途 使用可能温度
SGP-NTA(EPライニング管) ノンタールエポキシ樹脂 汚水・雑排水 常温
SGP-VA 硬質塩化ビニル(内面)+防錆塗装(外面) 給水・雑用水(屋内) −5℃〜40℃
SGP-VB 硬質塩化ビニル(内面)+亜鉛メッキ(外面) 給水・雑用水(屋外露出可) −5℃〜40℃
SGP-VD 硬質塩化ビニル(内外面) 給水・雑用水(地中埋設・屋外) −5℃〜40℃
SGP-HVA 耐熱性硬質塩化ビニル(内面) 給水・雑用水(給湯対応) 〜85℃
SGP-PA/PB/PD ポリエチレン粉体(内面) 給水(地中埋設など) −30℃〜60℃


上表でわかるように、EPライニング管(SGP-NTA)は排水専用であり、給水には使用しません。これが原則です。


参考:排水用ノンタールエポキシ塗装鋼管の規格・用途の詳細(日本製鉄)
https://www.nipponsteel.com/product/construction/handbook/pdf/4-16.pdf


EPライニング管の施工で見落としがちな管端防食の仕組み

EPライニング管をはじめとするライニング鋼管の最大の弱点は、直管部分の内面ではなく「管端部(ねじ切り切断面)」にあります。配管を現場でねじ切りすると、その切断面は内面のライニング層が露出してしまい、金属(鉄)が直接水に触れる状態になります。この箇所から腐食が進行し、赤水の原因になるのです。


昭和50年代にライニング鋼管が普及してから、「管そのものは腐食しなくなったのに赤水が止まらない」という事例が多発しました。問題は管端部でした。その後、継手側にポリエチレン製のコア(管端防食コア)を内蔵した「管端防食継手(コア継手)」が開発され、ねじ部を水から遮断する構造が確立されました。


コア継手が重要です。


具体的な構造としては、コア継手のめねじ部にポリエチレン製のコアが組み込まれており、ライニング鋼管のねじ部を囲むように接続されます。これにより、鉄が露出したねじ部に水が直接触れにくくなり、腐食と赤水発生を防止できます。日本水道鋼管協会(WSP)も、給水・給湯用ライニング鋼管には「コアを内蔵した管端防食継手を使用することが良好な防食の条件」と明示しています。


コア継手を使わずに通常の継手でねじ接合した場合、管端部の腐食が進み、朝一番の蛇口から赤みがかった水が出るようになります。これはマンションや集合住宅の施主クレームで非常に多い事例のひとつです。対処が遅れると配管交換が必要になり、修繕費用が100万円を超えるケースも珍しくありません。


施工でもう一つ注意したいのが、異種金属接触腐食です。EPライニング管(排水用)や塩ビライニング鋼管を青銅製バルブや銅管に直接接続すると、電位差による腐食が急速に進みます。特にバルブ・水栓類の接続部分は要注意で、使い始めに赤水が出やすい傾向があります。絶縁継手や防食テープで絶縁することが対策の基本です。


参考:ライニング鋼管と管端防食継手・コア継手の仕組みについて(日本水道鋼管協会)
https://www.wsp.gr.jp/syoukei/products/feature.html


参考:コア継手が赤水防止に必要な理由の解説
https://www.best-parts-media.jp/f-post/25533


EPライニング管を含むライニング鋼管の耐用年数と劣化サイン

ライニング鋼管の耐用年数は、ライニング材の種類や設置環境によって幅がありますが、一般的な目安は20年〜40年とされています。この数値は「管そのものが物理的に崩壊するまでの期間」ではなく、「継手部を含む配管システム全体として、赤水・漏水リスクが許容範囲内に収まる期間」のことです。


EPライニング管(SGP-NTA)の場合、内面のエポキシ樹脂塗装が劣化・剥離すると鋼管本体の腐食が進行します。表面には見えなくても内部が腐食している場合があり、内視鏡(内管カメラ)による調査が重要な診断手段になります。実際に築40年超のマンションを内視鏡で調査したデータでは、管端コア処理をした配管でも40年を超えると漏水リスクが大幅に高まることが確認されています。


劣化サインは早めに把握できます。


現場で把握しておくべき劣化サインを整理すると、以下の通りです。



  • 🔴 朝一番の通水時に赤みがかった水が出る(鉄イオン混入=管端腐食の進行)

  • 🟡 流量・水圧の低下(内面腐食物・スケール堆積による閉塞が疑われる)

  • 🟤 継手周辺のサビ染み・水染み(外面腐食または継手部からの漏水)

  • 💧 断続的な水漏れ(ねじ継手部の腐食が進行したサイン)


ライニング鋼管の外面腐食も見落とせないポイントです。地中に埋設された配管は、土壌中の水分を媒介とした電気化学反応によって外面が腐食します。特に酸性土壌では腐食スピードが速く、15〜20年で問題が出るケースもあります。建物周辺の土壌条件をあらかじめ確認することが重要です。


耐用年数を最大化するために、施工後10年を目安に内視鏡調査を実施し、問題がなければ更にプラス5〜10年延命を検討するという管理サイクルが合理的です。また、ライニング工事(更生工事)は配管が著しく劣化する前でないと施工できないため、早め早めの診断が結果的にコスト削減につながります。


参考:築40年超マンション給水管の内視鏡による劣化調査レポート
https://haikan-hozen.co.jp/2021/03/07/over-40-years-pipe-status/


EPライニング管の選定ミスを防ぐ:用途・設置場所・温度条件の確認ポイント

EPライニング管(SGP-NTA)を含むライニング鋼管の選定で最も多いミスは、「給水か排水か」「設置場所が屋内か屋外か地中か」「温度条件は常温か給湯か」の3点を確認せずに管種を決定してしまうことです。管種を誤ると、後から全て交換するリスクが生じます。


意外ですね。


具体的な確認ポイントを整理します。


① 用途の確認(給水・給湯・排水)
EPライニング管(SGP-NTA)は汚水・雑排水専用です。給水配管には使用しません。給水には硬質塩化ビニルライニング鋼管(SGP-VA/VB/VD)を、給湯には耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管(SGP-HVA)を選択します。SGP-VAを給湯配管に使ってしまうと、40℃超の温水でビニルライニングが軟化・変形するリスクがあります。これは現場での施工ミスとして実際に多い例です。


② 設置場所の確認(屋内・屋外露出・地中埋設)
SGP-VAは外面が防錆塗装のため屋内限定です。屋外露出には外面亜鉛メッキのSGP-VBを、地中埋設には外面も硬質塩化ビニルで被覆されたSGP-VDを使います。外面仕様の違いを無視して「内面さえライニングしてあればいい」と判断すると、外面腐食から漏水につながります。


③ 温度条件の確認
硬質塩化ビニルライニング鋼管(SGP-VA/VB/VD)の使用可能温度は−5℃〜40℃です。太陽熱温水器や給湯器のお湯(60〜85℃)が通る配管には使えません。この場合は使用温度85℃まで対応したSGP-HVA(水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管)を選びます。


選定確認は着工前が条件です。


現場では設計図書に管種記号(SGP-NTA、SGP-VAなど)が記載されていても、施工担当者がその意味を正確に理解していないケースが少なくありません。特に若手担当者への引き継ぎ時には「記号の意味と用途」を合わせて説明することで、選定ミスによる手戻りコストを大幅に削減できます。選定に迷う場合は、日本水道鋼管協会(WSP)の製品カタログや各メーカーの技術資料を確認することを習慣にするといいでしょう。


参考:ライニング鋼管の種類と規格の詳細(日本水道鋼管協会 小径管部会)
https://www.wsp.gr.jp/syoukei/products/manufacturer.html


参考:SGP-VA・VB・VDの特徴と使い分けの詳細解説
https://akisho-workshop.com/archives/10105


EPライニング管の施工現場で実践すべき品質管理と検査のポイント

EPライニング管(SGP-NTA)を含むライニング鋼管の工事では、材料の選定だけでなく施工中・施工後の品質管理が最終的な品質を左右します。丁寧に施工したつもりでも、確認すべき手順を省略すると後から深刻な不具合が生じることがあります。


まず施工前の確認として、受け入れた管材にWSPや日本水道鋼管協会の認定マーキング(例:SGP-VAなどの規格記号)が表示されているかを必ず目視確認します。このマーキングがある管材は規格に基づいた品質検査を通過した証明であり、無マーキング品と混在させないことが鉄則です。見た目だけでは区別できないため、受け入れ時の確認が必須です。


ねじ切り作業にも注意が必要です。


ねじ切りを行う際は、専用のパイプカッタまたはバンドソー(帯のこ)を使用します。グラインダーや砥石による切断は摩擦熱でライニング材が溶融・変形するため禁止です。切断後は切断面のバリを除去し、切り口をきれいに整えてから管端防食コアを確実に装着します。コアを付けずに継手に接合することは、前述のとおり赤水トラブルの直接原因になります。


施工後の検査として最低限実施すべき項目は下記の3つです。



  • 🔍 外観検査:接続部の位置ズレ・締め付け不足・管のキズの有無を目視確認

  • 💧 水圧試験(耐圧試験):施工完了後、所定の圧力(給水配管は通常1.0MPa程度)で一定時間保持し、漏水がないかを確認

  • 📹 内視鏡検査(更生工事時):既存配管のライニング更生工事の場合は、施工前後に内視鏡で内部状態を記録


現場では「水圧試験まで省略する」という事例も残念ながらあります。しかし水圧試験を省略して壁に埋め込んでしまった配管から漏水が発生した場合、壁・床・天井の解体工事が追加で必要になり、修繕費用は数十万〜数百万円に膨れ上がります。水圧試験は確実に実施することが大原則です。


また、ライニング鋼管の工事が完了した後は施工記録(管種・継手種類・施工日・担当者)をきちんと残しておくことが大切です。建物の長期メンテナンス計画を立てる際に、施工記録があるかどうかで後の調査コストが大きく変わります。記録を残す習慣が、将来の修繕コスト削減につながることを覚えておきましょう。


記録を残すことが原則です。


参考:配管腐食のメカニズムと対策の詳細解説
https://www.meisho-tech.jp/column/292/