
K型ブレースは、鉛直ブレース壁として機能する高耐力な構造要素です。この工法では、H-200×100の鋼材を土台に使用し、建物の荷重を基礎に分散して伝える仕組みを採用しています。
従来の木造軸組構造や一般的な鉄骨造と比較して、K型ブレース構造には以下の特徴があります。
構造的には、鉛直ブレース壁で横から加わる力に抵抗する工法で、地震や風荷重などの水平力を効率的に処理します。梁のジョイントは柱接合部にて金物で接合しており、梁や土台の天端がフラットとなるため、床材に構造用合板やALCを選択しても施工しやすい構造となっています。
この構造により、天井高を最大限に確保できることも大きなメリットの一つです。建物が軽くなることで地盤への影響も軽減され、軟弱地盤でもベタ基礎での対応が可能になります(地耐力30KN以上が必要)。
実際の施工事例として、京都府での耐震補強工事があります。この事例では、既存建物の耐震性能向上を目的としてKブレースの設置が行われました。
工場で製作されたK型フレームを現場に搬入し、1階ずつ建てる工法により、以下のような現場での活用が実現されています。
実建物への適用事例では、外観や機能面が優先されブレースを少量しか配置できない建物でも、同等性能の純ラーメン構造に比べて総鋼材量を約20%削減できることが確認されています。
施工手順
この工法により、従来の鉄骨造より基礎が小さくなることから、基礎サイズや残土も軽減でき、大幅なコストメリットを実現しています。
K型ブレースの制震性能は、特にブレースリー®K型などの制震ダンパーシステムで実証されています。このシステムでは、減衰性能が高いアルミデバイスが地震エネルギーを熱エネルギーに変換し、建物の揺れを効果的に抑制します。
制震メカニズムの詳細。
実証実験では、兵庫県南部地震の125%の揺れが発生する振動台実験において、6回連続で発生しても制震性能が保持されることが実証されました。
さらに、折返しブレース技術では、断面の異なる3本の鋼材(内側から芯材・中鋼管・外鋼管)を一筆書きの要領で折り返し接合することで、実際の部材長さが見付け長さの約2.5倍となるブレース材を実現。これにより。
都市部の狭小地における建設工事では、K型ブレース工法が特に威力を発揮します。従来工法では困難だった条件下でも、効率的な施工が可能になります。
狭小地での具体的なメリット。
建物重量の軽量化により、地盤への負荷も軽減されるため、軟弱地盤の多い都市部でもベタ基礎での対応が可能です。これにより、杭基礎などの大規模な地盤改良工事を避けることができ、工事費用の大幅な削減を実現します。
また、残土の量も従来工法と比較して大幅に減少するため、狭小地での残土処理問題も解決します。搬出トラックの台数削減により、交通渋滞への影響も最小限に抑えることができます。
梁がフラットな構造のため、各種設備配管の施工も容易になり、狭小住宅で重要な天井高の確保も実現できます。
K型ブレース工法は、建築業界の技術革新とともに進化を続けています。特に、デジタル技術との融合により、さらなる効率化と性能向上が期待されています。
今後の技術開発動向。
環境面での優位性も注目されています。建物の軽量化により、建設時のCO2排出量削減に貢献し、循環型社会の実現にも寄与します。また、解体時のリサイクル性も高く、持続可能な建設工法として評価が高まっています。
法規制の動向としては、建築基準法の改正により、より高い耐震性能が求められる中で、K型ブレース工法の優位性がさらに明確になると予想されます。特に、既存建物の耐震補強需要の増加に伴い、施工性に優れたK型ブレース工法の需要拡大が見込まれています。
国際展開も進んでおり、地震国である日本の技術として、海外での普及も期待されています。特に東南アジア諸国での都市開発プロジェクトにおいて、日本のK型ブレース技術が注目されており、技術輸出の可能性も高まっています。
研修・教育体制の充実により、施工技術者のスキルアップも図られており、より安全で確実な施工が実現されています。これらの総合的な取り組みにより、K型ブレース工法は建築業界の標準工法の一つとしての地位を確立していくものと考えられます。