K型ブレースの特徴と施工事例|耐震性能と現場活用法

K型ブレースの特徴と施工事例|耐震性能と現場活用法

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K型ブレース特徴と施工事例

K型ブレース工法の概要
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高耐力構造システム

K型フレームを使用した鉄骨ブレース構造で、従来工法より耐力壁を削減可能

制震性能の向上

地震エネルギーを熱エネルギーに変換し、建物の揺れを効果的に抑制

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狭小地対応工法

大型クレーン不要で1階ずつ施工可能、都市部の限られた敷地でも対応

K型ブレースの基本特徴と構造原理

K型ブレースは、鉛直ブレース壁として機能する高耐力な構造要素です。この工法では、H-200×100の鋼材を土台に使用し、建物の荷重を基礎に分散して伝える仕組みを採用しています。

 

従来の木造軸組構造や一般的な鉄骨造と比較して、K型ブレース構造には以下の特徴があります。

  • 耐力壁の削減効果:高耐力であるK型フレームをバランスよく配置することで、必要な耐力壁の数を大幅に減らすことができます
  • 柱型の最適化:柱サイズが一定のため、不要な柱型が出ず、住空間を圧迫しません
  • 軽量化の実現:従来の鉄骨造に比べて建物重量を軽くすることが可能です

構造的には、鉛直ブレース壁で横から加わる力に抵抗する工法で、地震や風荷重などの水平力を効率的に処理します。梁のジョイントは柱接合部にて金物で接合しており、梁や土台の天端がフラットとなるため、床材に構造用合板やALCを選択しても施工しやすい構造となっています。

 

この構造により、天井高を最大限に確保できることも大きなメリットの一つです。建物が軽くなることで地盤への影響も軽減され、軟弱地盤でもベタ基礎での対応が可能になります(地耐力30KN以上が必要)。

 

K型ブレース施工事例と現場での活用法

実際の施工事例として、京都府での耐震補強工事があります。この事例では、既存建物の耐震性能向上を目的としてKブレースの設置が行われました。

 

工場で製作されたK型フレームを現場に搬入し、1階ずつ建てる工法により、以下のような現場での活用が実現されています。

  • 大型クレーン不要の施工:狭小地や機械の搬入が困難な現場でも対応可能
  • 段階的な組み立て:各階ごとに順次施工することで、工期の調整が柔軟
  • 特殊技術不要:製作・建方に特殊性がなく、一般的な施工技術で対応可能

実建物への適用事例では、外観や機能面が優先されブレースを少量しか配置できない建物でも、同等性能の純ラーメン構造に比べて総鋼材量を約20%削減できることが確認されています。

 

施工手順

  1. 基礎工事でのアンカー設置
  2. H-200×100鋼材土台の設置
  3. K型フレームの現場搬入
  4. 各階ごとの組み立て作業
  5. 金物による梁と柱の接合

この工法により、従来の鉄骨造より基礎が小さくなることから、基礎サイズや残土も軽減でき、大幅なコストメリットを実現しています。

 

K型ブレースの耐震性能と制震効果

K型ブレースの制震性能は、特にブレースリー®K型などの制震ダンパーシステムで実証されています。このシステムでは、減衰性能が高いアルミデバイスが地震エネルギーを熱エネルギーに変換し、建物の揺れを効果的に抑制します。

 

制震メカニズムの詳細。

  • エネルギー変換システム:地震発生時、ブレースリー®K型が地震エネルギーをアルミデバイスに高効率で伝達
  • 温度安定性:使用するアルミは温度の影響をほとんど受けないため、暑い夏や寒い冬でも制震性能を維持
  • 高品質材料:新幹線にも採用されている品質のアルミを使用
  • 調整機能:スライド式に高さ調整できるため、構造材を切断・加工することなく施工可能

実証実験では、兵庫県南部地震の125%の揺れが発生する振動台実験において、6回連続で発生しても制震性能が保持されることが実証されました。

 

さらに、折返しブレース技術では、断面の異なる3本の鋼材(内側から芯材・中鋼管・外鋼管)を一筆書きの要領で折り返し接合することで、実際の部材長さが見付け長さの約2.5倍となるブレース材を実現。これにより。

  • 軸降伏変位の増大効果:R=1/200rad程度まで降伏しない特性
  • 座屈拘束効果:引張耐力と同等の圧縮耐力を発揮
  • 種別BAの耐震ブレース:高い安全性基準をクリア

狭小地でのK型ブレース施工メリット

都市部の狭小地における建設工事では、K型ブレース工法が特に威力を発揮します。従来工法では困難だった条件下でも、効率的な施工が可能になります。

 

狭小地での具体的なメリット。

  • 敷地制約の克服:大型クレーンが入らない狭小地でも施工可能
  • 隣地への影響軽減:基礎が小さくなることで、隣地への掘方の影響を最小限に抑制
  • 工期短縮:工場製作品の現場組み立てにより、現場作業時間を大幅短縮
  • 騒音・振動の低減:大型重機を使用しないため、住宅密集地でも近隣への影響を抑制

建物重量の軽量化により、地盤への負荷も軽減されるため、軟弱地盤の多い都市部でもベタ基礎での対応が可能です。これにより、杭基礎などの大規模な地盤改良工事を避けることができ、工事費用の大幅な削減を実現します。

 

また、残土の量も従来工法と比較して大幅に減少するため、狭小地での残土処理問題も解決します。搬出トラックの台数削減により、交通渋滞への影響も最小限に抑えることができます。

 

梁がフラットな構造のため、各種設備配管の施工も容易になり、狭小住宅で重要な天井高の確保も実現できます。

 

K型ブレース工法の将来性と技術革新

K型ブレース工法は、建築業界の技術革新とともに進化を続けています。特に、デジタル技術との融合により、さらなる効率化と性能向上が期待されています。

 

今後の技術開発動向。

  • BIM連携設計:3次元モデリングによる精密な設計と施工計画の最適化
  • IoTセンサー統合:リアルタイムでの構造モニタリングシステムの導入
  • AI活用診断:機械学習による最適なブレース配置の自動計算
  • 材料技術革新:より軽量で高強度な新素材の開発と実用化

環境面での優位性も注目されています。建物の軽量化により、建設時のCO2排出量削減に貢献し、循環型社会の実現にも寄与します。また、解体時のリサイクル性も高く、持続可能な建設工法として評価が高まっています。

 

法規制の動向としては、建築基準法の改正により、より高い耐震性能が求められる中で、K型ブレース工法の優位性がさらに明確になると予想されます。特に、既存建物の耐震補強需要の増加に伴い、施工性に優れたK型ブレース工法の需要拡大が見込まれています。

 

国際展開も進んでおり、地震国である日本の技術として、海外での普及も期待されています。特に東南アジア諸国での都市開発プロジェクトにおいて、日本のK型ブレース技術が注目されており、技術輸出の可能性も高まっています。

 

研修・教育体制の充実により、施工技術者のスキルアップも図られており、より安全で確実な施工が実現されています。これらの総合的な取り組みにより、K型ブレース工法は建築業界の標準工法の一つとしての地位を確立していくものと考えられます。