アクリルエマルション塗料の特徴と正しい選び方

アクリルエマルション塗料の特徴と正しい選び方

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アクリルエマルション塗料の特徴と現場での正しい選び方

安価だからと外壁全面にアクリルエマルション塗料を使うと、5年以内に足場代込みで30万円超の再工事になることがあります。


🎯 この記事のポイント3つ
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AEPは「内装専用」が基本

アクリルエマルション塗料は内壁・軒天向けに設計されており、屋外外壁に使うと耐用年数が著しく短くなる。適切な用途を知ることがコスト削減の第一歩。

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トータルコストで塗料を選ぶ

初期費用はシリコン塗料の約2倍だが、耐用年数が倍以上のためライフサイクルコストで見ると大幅に経済的。塗料グレードの選び方が長期収支を左右する。

🔧
施工環境と下地処理が仕上がりを決める

気温5℃以下での施工は凍結リスクあり。水性塗料の上への油性重ね塗りも剥離の原因になる。正しい施工知識が品質クレームを防ぐ。


アクリルエマルション塗料の基本と種類を現場目線で理解する


アクリルエマルション塗料(AEP:Acrylic Emulsion Paint)とは、アクリル樹脂を水中に乳化・分散させた水性塗料のことです。「乳化(エマルション)」とは、本来混ざり合わない水と油を、界面活性剤などの力で安定した状態に保つ技術を指します。塗料を塗布すると水分が蒸発し、残ったアクリル樹脂粒子が結合して均一な塗膜を形成します。これが基本の仕組みです。


現場ではいくつかのタイプに分かれています。代表的なのは以下の4種類です。









種類 希釈剤 施工性 主な用途
水性1液型アクリル ◎(扱いやすい) 内壁・天井・軒天
ターペン可溶1液型 塗料シンナー 屋内外・コンクリート面
強溶剤2液型アクリル 専用シンナー △(臭気強い) 床・工業用途
艶有りアクリルエマルション 内壁・軒天(艶仕上げ)


内装現場で最も出番が多いのは「水性1液型」です。シンナーを使わないため臭いが少なく、換気設備が限られた病院・学校・オフィスの改修現場でも採用しやすいという強みがあります。


つや(光沢)のバリエーションも豊富で、つや消し・3分つや・5分つや・つや有りの中から空間の用途に合わせて選べます。つや消しは天井面や不陸の目立つ壁に向いており、3〜5分つやは手垢がつきやすい廊下・スイッチ周りに適しています。つや有りは拭き取り清掃が楽になる一方、下地のムラを拾いやすい点に注意が必要です。


代表的なメーカー製品としては、日本ペイントの「水性ケンエース」「エコフラット100」、エスケー化研の「水性エコファイン」「サニービルドシリーズ」、関西ペイントの「ビニデラックスシリーズ」などがあります。これら大手4社の製品は技術資料が充実しており、現場での仕様確認がしやすいのも選ばれる理由のひとつです。


つまり、AEP=内装用水性塗料の標準形、という認識が実務上の基本です。


参考:大日本塗料株式会社によるアクリル樹脂塗料の種類と特徴(溶剤型・エマルション型の分類解説)
https://www.dnt.co.jp/products/kind/6.html


アクリルエマルション塗料の耐用年数と外壁使用の落とし穴

アクリルエマルション塗料の耐用年数は、施工環境によって大きく変わります。これが重要なポイントです。


室内環境では7〜8年程度の耐久性が期待できますが、外壁(屋外)に使用した場合は5〜6年、条件の悪い南面などでは4年程度まで縮まることがあります。紫外線・酸性雨・気温変化の三重苦が塗膜を急速に劣化させるためです。屋外の耐用年数は室内の半分以下になることも珍しくありません。


塗料グレード別の耐用年数と単価を比較すると、コスト構造の落とし穴が見えてきます。









塗料種類 耐用年数 単価(㎡)
アクリル塗料 5〜8年 1,000〜1,500円
ウレタン塗料 7〜10年 1,800〜2,500円
シリコン塗料 10〜13年 2,500〜3,500円
フッ素塗料 15〜20年 3,500〜5,000円


たとえば外壁面積150㎡の建物を例に取ると、アクリル塗料(㎡1,200円)での施工費は約18万円です。しかし耐用年数5年で塗り替えると、10年間で足場代(約20万円)込みで2回の工事が必要になり、トータル76万円前後になります。一方、シリコン塗料(㎡3,000円)なら初回45万円+足場代で65万円程度で済み、10年以上持ちます。初期費用が安くても、再工事のたびに足場代がかかる構造が見えてきます。


劣化のサインはチョーキング(白亜化現象)です。壁面を手でなでて白い粉がつくようになったら、塗膜の樹脂が分解され顔料だけが残っている状態です。これが出始めたら塗り替えのタイミングと判断してください。放置すると防水性が失われ、外壁材そのものへのダメージに進行します。


アクリルエマルション塗料が外壁に向かない本質的な理由は耐候性の低さにあります。アクリル樹脂は紫外線によってラジカル(活性酸素)を発生させやすく、これが塗膜の分子構造を破壊します。日射量の多い南面や西面では特に劣化が加速します。耐候性が条件です。


外壁塗装でAEPを検討している場合は、耐候性グレードの高い「ピュアアクリル」や「水性シリコン」への切り替えを先に検討するのが、長期的なコスト削減につながります。


参考:国土交通省 公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)における塗付け場所の気温条件と施工規定
https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001879403.pdf


アクリルエマルション塗料の下地処理と施工手順の実践ポイント

水性アクリルは扱いやすい塗料ですが、下地処理を手抜きすると後からクレームに直結します。これが原則です。


AEP(水性アクリルエマルション)は溶剤系塗料と比べて接着力が弱い性質を持ちます。水が溶媒のため、分子レベルでの密着力が油性よりも劣るためです。つまり下地の状態が仕上がり品質を直接左右します。


📋 施工前チェックリスト


- ✅ 下地面の油分・ホコリ・カビ・旧塗膜の浮きを完全に除去しているか
- ✅ コンクリート・モルタル面は十分に乾燥しているか(含水率10%以下が目安)
- ✅ ヤニ・シミが強い箇所にシミ止め下塗りを施しているか
- ✅ シーラー(下塗り)を塗布して吸い込みを均一化しているか
- ✅ 気温と湿度が施工条件内か(気温5℃以上・湿度85%以下)


標準施工手順は「素地調整→下塗り(シーラー)→上塗り1回目→上塗り2回目」の4工程が基本です。新設の石膏ボード壁なら、パテ処理で段差を消してからフィラー(下地調整材)を塗り、上塗り2回で仕上げます。改修現場では、既存塗膜の種類を必ず確認してからプライマーを選定してください。


🚨 塗り重ね時の相性トラブルに注意


- 油性塗料の上に水性AEPを塗る場合:基本的に可能だが、旧塗膜を十分乾燥させ、#240のサンドペーパーで表面を荒らしてから施工する
- 水性AEPの上に油性塗料を塗る場合:溶剤が水性塗膜を侵食し、剥離・チヂミが発生するリスクが高い。この組み合わせは避けるのが基本
- フッ素・シリコン系の旧塗膜の上:密着プライマーが必須。テスト塗りとテープ剥離試験で実地確認を行う


希釈率は製品ごとの仕様書の範囲内(多くは清水で0〜10%程度)を守ってください。希釈しすぎると隠ぺい力が落ち、タレやすくなります。逆に粘度が高すぎるとローラー目(ローラーの跡)が残りやすくなります。粘度管理が条件です。


乾燥時間のルールも重要です。指触乾燥(触っても手につかない状態)は30〜60分程度ですが、上塗り可能な乾燥時間は製品によって2〜4時間が目安です。この時間を守らず重ね塗りすると、塗膜が軟化して剥離の原因になります。完全乾燥(24時間以上)前に擦ったり、強く触れたりするとツヤムラが発生するため注意してください。


参考:日本ペイント公式サポートページ(外壁用の水性塗料と溶剤形塗料の塗り重ね相性について)
https://www.nipponpaint.co.jp/support/faq/6/


気温・湿度・季節ごとのアクリルエマルション塗料の施工禁止条件

これは見落としがちです。水性アクリルエマルション塗料には、明確な「施工禁止条件」があります。


最も重要なのが気温です。気温5℃以下での施工は禁止されています。水性塗料は水を溶媒としているため、気温が低下すると塗料が凍結し、分子構造が破壊されます。一度凍結した塗料は性状が変化し、再び溶かしても正常な塗膜を形成できません。使用禁止です。


また、施工後に気温が5℃以下になると予想される場合も施工を中止しなければなりません。国土交通省の「公共建築改修工事標準仕様書」にも「気温5℃以下及び施工後5℃以下になると予想される場合は施工を行わない」と明記されています。


⚠️ 施工禁止・中止の環境条件


- ❌ 気温5℃以下(または施工後に5℃以下になる予報)
- ❌ 湿度85%以上
- ❌ 気温35℃以上(乾燥が速すぎてムラになる)
- ❌ 降雨・降雪中または直後
- ❌ 直射日光が強く当たる高温面への塗布


冬場の建築現場で「急ぎだから」と5℃以下で施工してしまうケースは少なくありません。しかし、この場合の塗膜は白濁・密着不良・早期剥離のリスクが非常に高く、後から補修工事が必要になります。痛いですね。


冬季の施工が避けられない場合は、室内に暖房を入れて温度管理を行い、送風で換気しながら湿気を逃がす対応が必要です。製品仕様書に記載された最低施工温度を必ず確認してください。


乾燥時間は温度・湿度・風速の影響を大きく受けます。低温・高湿・無風の条件では乾燥が著しく遅くなり、工程の組み方も変わります。現場の環境条件を朝のうちに確認してから作業計画を立てることが、品質を守るための基本習慣です。施工環境の確認が基本です。


夏場の高温環境では逆に乾燥が速すぎる問題が出ます。ローラーの塗り継ぎ目が乾いて段差になったり、ムラが発生しやすくなります。この場合は「遅乾剤」に対応した製品を選ぶか、朝方の比較的涼しい時間帯に上塗り工程を集中させるのが実践的な対策です。


参考:建築用仕上塗材の劣化区分と耐用年数推定に関する建築研究所の公開資料
https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/data/145/2.pdf


建築業従事者が見落としやすいアクリルエマルション塗料のVOCとシックハウス対応

「水性だから安全」という認識は、半分正しくて半分誤解です。意外ですね。


水性アクリルエマルション塗料はVOC(揮発性有機化合物)の含有量が溶剤型と比べて少ないのは事実です。しかし「ゼロ」ではありません。現在でも樹脂の安定剤・防腐剤・造膜助剤などの添加物に微量のVOCが含まれる製品があります。塗装工事中の換気は水性塗料であっても必須です。


建築基準法のシックハウス対策規制(平成15年7月施行)では、ホルムアルデヒドとクロルピリホスが規制対象化学物質として指定されています。現場で使用する塗料は「ホルムアルデヒド放散等級」の確認が必要です。


🔍 シックハウス対策で確認すべき事項


- ✅ 使用する塗料のJISマーク・ホルムアルデヒド放散等級(F☆☆☆☆が最高)を確認
- ✅ 居住中建物や稼働中施設での施工は換気計画を事前に立てる
- ✅ 低VOCタイプのAEP製品(エスケー化研「水性エコファイン」など)を優先検討
- ✅ 廃塗料は固化させてから産業廃棄物の区分に従い処理(排水への直接廃棄は禁止)


施工後の塗膜からVOCが放散し続ける期間は、製品や室温によって異なります。一般的には施工後24〜72時間の換気が推奨されます。特に学校・病院・保育施設などの建物では、引き渡し前の換気時間の確保が施主からも強く求められます。換気が条件です。


廃塗料の処理も要注意です。使い残したアクリルエマルション塗料を排水溝や側溝に流すことは、水質汚染防止法に抵触します。塗料を容器の中で固化させるか、乾燥した布や砂で吸収させてから産業廃棄物として処理するのが正しい方法です。


作業前には製品の安全データシート(SDS)を必ず確認してください。SDSにはVOC含有量・最低施工温度・廃棄方法・保護具の着用基準が記載されています。低VOC・低ホルムアルデヒド製品は材料費が若干高くなりますが、居住者・施工者の健康リスク低減と法令遵守の観点から、長期的には適切な選択です。


参考:国土交通省によるシックハウス対策の法規制内容(建築基準法改正の詳細)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/sickhouse-R4.pdf




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