

「水性塗料にアルミニウム顔料を混ぜると、缶が膨らんで破裂する危険があります。」
アルミニウム顔料とは、アルミニウムを薄いうろこ状(りん片状)に加工した粉末顔料のことです。建築現場では「アルミペースト」という名称でも知られており、橋梁・鉄骨構造物・タンク・外壁など幅広い部位の塗料に配合されています。
この顔料の最大の特徴は、「リーフィング現象」にあります。
りん片状のアルミニウム粒子が塗膜の表面に向かって浮き上がり、水平に並ぶことで、まるでよろいのような層を形成します。この層が雨水や酸素の浸入経路を大幅に延ばすため、優れた防錆力と隠ぺい力が生まれます。下地まで水が届くルートが、粒子のない塗膜と比べて数倍長くなるというデータもあります。イメージとしては、迷路状の壁が何十枚も重なっているようなものです。
アルミニウム顔料には大きく2つの種類があります。
| タイプ | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| リーフィング型 | 粒子が塗膜表面に浮き上がり層を形成。銀白色の強い光沢。赤外線・紫外線の反射性が高い | 鉄骨・タンク・橋梁など防錆・遮熱用途 |
| ノンリーフィング型 | 粒子が塗膜中に均一分散。他の顔料と混ぜやすく、着色メタリック塗膜が容易 | 建築外壁のメタリック仕上げ、意匠性塗料 |
リーフィング型は、粒子表面にステアリン酸(長鎖飽和脂肪酸)が吸着していることで、塗膜表面に浮き上がる性質を持ちます。一方、ノンリーフィング型はオレイン酸などの不飽和脂肪酸が吸着しており、表面張力の関係で粒子が塗膜中に均一に分散します。つまり、顔料表面の脂肪酸の種類1つで、仕上がりや機能が大きく変わるということですね。
建築の現場では、防錆や遮熱を重視するならリーフィング型、外壁のメタリック意匠仕上げにはノンリーフィング型という使い分けが基本です。
旭化成アルミペースト 種類・グレード一覧(リーフィング型・ノンリーフィング型・樹脂コートの違いを詳しく解説)
建築従事者にとって特に重要なのが、アルミニウム顔料が持つ防錆・遮熱の2つの性能です。
まず防錆性能について説明します。
旭化成の技術資料によると、最密充填されたりん片状アルミニウム顔料は、粒状顔料に比べて水や酸素の拡散行程(塗膜を通り抜ける距離)が大幅に延びます。粒子の厚みが薄いほど、単位重量あたりの粒子数が増え、この迷路はさらに複雑になります。研究によれば、水面被覆面積が約18,000〜19,000 cm²/g(1gあたり)のとき、塗膜の耐候性が最も高くなるというデータがあります。この数値は、A4用紙1枚(約600 cm²)の約30枚分の面積に相当します。たった1gの顔料がその広さをカバーしているわけです。意外ですね。
次に遮熱性能についてです。
リーフィング型のアルミニウム顔料は塗膜表面に銀色の金属層を形成するため、赤外線・可視光線・紫外線のすべてにわたって高い反射特性を示します。これは屋根や鉄骨などの遮熱塗装においても有効で、夏場の構造物内部の温度上昇を抑える効果があります。
建築鉄骨・橋梁などの防錆塗料として有名な製品「カーボマスチック15(ジャパンカーボライン)」も、層状アルミニウム顔料が優れたバリア性能を発揮する製品として知られています。鉄骨塗装の錆止め下塗りには1㎡あたり700〜1,800円が相場ですが、適切なアルミニウム顔料系塗料を選ぶことで塗り替えサイクルを延ばし、長期的な維持コストを下げることが可能です。
防錆力が高い塗料ほど塗り替え頻度が下がります。結論は「初期投資でコスト削減」が原則です。
カーボマスチック15 製品詳細(アルミニウム顔料配合の重防食塗料として建築鉄骨への採用事例が豊富)
ここが建築現場で特に見落とされやすいポイントです。
アルミニウムは水やアルカリと反応し、水素ガスを発生する性質を持ちます。これは化学的に避けられない事実で、東消防庁のデータでは「アルミ1gをアルカリ性洗剤で完全反応させると約1,336mlの水素ガスが発生する」とされています。これは、500mlのペットボトル約2.7本分に相当します。
水性塗料のpHは通常7〜10(中性〜弱アルカリ性)に調整されています。
この環境下に通常のアルミニウム顔料を配合すると、貯蔵中にアルミと水が徐々に反応し、容器内で水素ガスが発生して塗料缶が膨らみ、最悪の場合は破裂・飛散するリスクがあります。東洋アルミニウムの技術資料でも「水性塗料用のアルミニウム顔料における最大の課題は、水とアルミニウム顔料の反応抑制(安定化)である」と明記されています。これは使えそうな知識ですね。
このリスクへの対策として、現在は顔料粒子の表面をシリカやモリブデン、樹脂などでコーティングした「水性塗料専用アルミニウム顔料」が開発されています。一般の溶剤型アルミ顔料をそのまま水性塗料に混ぜることは厳禁です。水性塗料で意匠性や防錆性を求める場合は、必ず「水性対応」の表記がある顔料を選ぶことが条件です。
旭化成のアルミペースト取り扱い注意事項では「水・酸・アルカリ・酸化剤・金属酸化物・ハロゲン化合物と反応して水素ガスが発生する恐れがある」と明記されています。万一着火した場合も、注水は水素ガス発生を招くため絶対に禁止とされています。
取り扱い方法を間違えると、健康・安全リスクに直結します。水性対応品かどうかの確認が必須です。
旭化成アルミペーストの取扱いおよび貯蔵上の注意(消防法危険物の取り扱い・水素ガスリスクについて詳細に記載)
アルミニウム顔料を含む塗料を選ぶ際は、用途・下地・環境の3つで整理するのが基本です。
🏗️ 鉄骨・橋梁・タンク(防錆重視)
この用途には、リーフィング型アルミニウム顔料を配合した「アルミニウムペイント(錆止め塗料)」が最適です。溶剤型が主流で、下塗り材として使用します。塗膜の拡散行程が長く、水や塩分が下地に到達しにくいため、海沿いの建築物や工場設備にも有効です。塗り替えサイクルは概ね5〜10年が目安で、定期点検を欠かさないことが重要です。
🏠 外壁仕上げ・メタリック意匠(耐候性・意匠重視)
ノンリーフィング型のアルミニウム顔料が適しています。他の色顔料と組み合わせることで、鮮やかな着色メタリック仕上げが可能です。近年では東洋アルミニウムが開発した「着色アルミニウム顔料」のように、顔料表面に有色顔料を樹脂コーティングした製品も登場しており、従来の混合型より色鮮やかな発色が得られます。
⚠️ 下地処理との相性に注意
亜鉛めっきやジンクリッチペイント(ローバルなど亜鉛系)との組み合わせには注意が必要です。ローバルの技術資料では「亜鉛はアルミニウムと相性が悪く、腐食を促進させる可能性がある」と明記されています。アルミニウム素材の上にアルミニウム顔料入り塗料を使う場合は問題ありませんが、異種金属の組み合わせになる場合は塗料メーカーへ事前確認が必要です。
粒子サイズにも目を向けると、粒径が大きいほど金属感(ギラギラ感)が強く、細かいほどキラキラとした輝きになります。国内大手のアルミペーストサプライヤーでは、シルバーだけで1,000品番以上が存在するとされています。現場の仕上がりイメージをメーカーにしっかり共有することで、最適な品番を絞り込むことができます。
松尾産業 光輝顔料アルミニウムペーストの解説(品番選定のポイントや粒子感・明度の違いについてわかりやすく紹介)
アルミニウム顔料・アルミペーストは塗料配合物の中でも消防法上の危険物に該当する場合があり、保管・廃棄に法的なルールが存在します。これを知らないと、現場での法令違反につながるリスクがあります。
まず保管についてです。
アルミペーストは、直射日光・雨水・過度の湿気を避け、40℃以下の屋内(望ましくは15〜25℃)で密封状態で保管する必要があります。夏場の倉庫内や車のトランクなど、温度が上がりやすい場所に放置するのは厳禁です。高温によって容器内部の溶剤が揮発し、内圧が上がって容器が膨張することがあります。
万一、容器が異常に膨らんでいた場合は開缶を焦ってはいけません。ガス抜きビスがあれば徐々に緩めて内圧を下げてから開けること、ない場合は上蓋を押さえながらハンドレバーを緩めてゆっくり内圧を逃がすことが必要です。発生したガスは水素ガスの可能性が高いため、火気厳禁・換気が条件です。
廃棄についても注意が必要です。
使用済みや余剰のアルミペースト・アルミニウム顔料含有塗料は、産業廃棄物として適正処理が義務付けられています。一般ゴミへの混入や、排水への流出は廃棄物処理法に抵触します。廃棄の際は産業廃棄物処理業者または塗料メーカーの担当窓口へ相談するのが原則です。
乾燥してパウダー状になったアルミニウム粉末は、爆発下限界以上の濃度の粉塵雲が形成された状態で火花があると粉塵爆発の危険性があります。厳しいところですね。施工後の清掃時や廃棄時にも、乾燥粉末を飛散させないよう注意が必要です。
また、アルミニウム粉塵の慢性的な吸入は塵肺症(アルミノーシス)の原因になり得るとされています。施工中は有機溶剤用マスクや適切な保護具の着用が安全衛生規則上の義務です。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト アルミニウム粉(危険有害反応・法規制・応急処置など詳細情報を掲載)

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