

呼び径50A(約50mm径)以上のブッシング継手にシールテープだけ巻いて締め込むと、漏水リスクが一気に上がります。
ブッシング継手(ブッシュ)とは、径が異なる配管同士を接続するために使うねじ込み式の管継手です。構造はシンプルで、大きい側がオスねじ(おねじ)、小さい側がメスねじ(めねじ)になっています。たとえば25Aの配管に15Aの分岐器具を取り付けたいとき、間にブッシング継手を噛ませることで、サイズの違いをその場で解消できます。
一般的な配管では「異径ソケット(レジューサ)」も同じく径違い接続に使われます。ブッシング継手との使い分けポイントは「スペース」です。異径ソケットは両端がメスねじなのに対し、ブッシング継手は外側がオスねじのため、全体の長さ(L寸法)をコンパクトに収められます。既存の配管を外せない現場や、収まり寸法が厳しい改修工事では、ブッシング継手が特に有効です。
つまり、径変換の手段として最もコンパクトな継手がブッシングということです。
また、ブッシング継手は「1段落ち」と「2段落ち」のサイズ展開があります。1段落ちとは32A→25Aのように1サイズ下げる接続のこと、2段落ちとは32A→20Aのように2サイズ下げる接続のことを指します。現場では用途に応じて使い分けが必要で、サイズ選定の段階でこの点を事前に確認しておくことが、施工ミスの予防につながります。
| 継手の種類 | おねじ/めねじ | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| ブッシング(Bu) | 外側:おねじ/内側:めねじ | コンパクト・L寸法が短い | 既存ソケットへの組み込み・改修工事 |
| 異径ソケット(RS) | 両端:めねじ | スペースが必要だが安定感がある | 新設配管の径変換 |
| レジューサ | 両端:めねじ(溶接式も有) | 大口径対応・圧力損失が少ない | 大径配管の径変換 |
参考:配管工事でのブッシングの用途とサイズについて詳しく解説されています。
三興バルブ継手|配管工事で使用するブッシングの用途とサイズについて解説
ブッシング継手に関係する主なJIS規格は、大きく2つに分かれます。それが「JIS B 2301」と「JIS B 2308」です。どちらもねじ込み式ですが、材質が異なります。これが基本です。
JIS B 2301は「ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手」の規格です。材料には黒心可鍛鋳鉄(FCMB275-5・JIS G 5705準拠)が使われており、普通鋳鉄の約2倍の強度を持ちます。表面処理の違いにより「黒継手(鋳放し)」「白継手(溶融亜鉛メッキ)」「コーティング品(エポキシ樹脂)」の3タイプに分かれます。この規格は水・油・蒸気・空気・ガスなどの一般配管に広く適用され、サイズ展開は呼び径6A(1/8インチ)から150A(6インチ)まであります。
JIS B 2308は「ステンレス鋼製ねじ込み式管継手」の規格です。鋳造品にはSCS13A(SUS304相当)またはSCS16A(SUS316相当)が用いられます。耐食性・耐熱性に優れており、食品・薬品・海水が関わる設備や、屋外露出配管での使用に適しています。ねじはJIS B 0203の管用テーパねじ(Rねじ・Rcねじ)が基本です。
規格が違っても、おねじとめねじの規格(JIS B 0203)は共通なので、ブッシング継手自体の接続互換性はあります。ただし、材質・耐圧・表面処理が異なるため、使用する流体や環境に合わせて正しい規格品を選ぶことが必須です。
| 規格番号 | 材質 | 表面処理 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| JIS B 2301 | 可鍛鋳鉄(FCMB275-5) | 鋳放し(黒)・溶融亜鉛メッキ(白)・エポキシコート | 水・油・蒸気・ガス・空気の一般配管 |
| JIS B 2308 | ステンレス鋼(SCS13A/SCS16A) | なし(素材の耐食性を活用) | 食品・薬液・海水・腐食性流体・屋外露出配管 |
参考:JIS B 2301の全文・条文構成はこちらで確認できます。
kikakurui.com|JISB2301:2013 ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手
参考:JIS B 2308の全文・条文構成はこちらで確認できます。
kikakurui.com|JISB2308:2013 ステンレス鋼製ねじ込み式管継手
ブッシング継手のサイズ表記には「A呼称(ミリ系)」と「B呼称(インチ系)」の2種類があります。たとえば「15A」は「1/2インチ」に対応します。現場では「いちぶ」「にぶ」といった通称が使われることも多く、A呼称に不慣れな方は変換を確認しながら作業することが重要です。
JIS B 2301規格品のブッシング継手は、サイズごとに全長(L)・おねじ部長さ(ℓ1)・めねじ部長さ(ℓ2)が規定されています。実際の寸法例として、8A×6A(全長17mm)から65A×50A(全長39mm)まで幅広いバリエーションがあります。全長39mmはちょうど消しゴム1個分ほどの長さです。施工スペースが限られる場面では、この寸法を事前に把握しておくことで、配管ルートの検討がスムーズになります。
| 呼び(A呼称) | B呼称(インチ) | 全長 L(mm) | おねじ長 ℓ1(mm) | めねじ長 ℓ2(mm) |
|---|---|---|---|---|
| 8A × 6A | 1/4 × 1/8 | 17 | 8 | 6 |
| 15A × 6A | 1/2 × 1/8 | 21 | 11 | 6 |
| 15A × 10A | 1/2 × 3/8 | 21 | 11 | 9 |
| 20A × 15A | 3/4 × 1/2 | 24 | 13 | 11 |
| 25A × 20A | 1 × 3/4 | 27 | 15 | 13 |
| 32A × 25A | 1-1/4 × 1 | 30 | 17 | 15 |
| 40A × 32A | 1-1/2 × 1-1/4 | 32 | 18 | 17 |
| 50A × 40A | 2 × 1-1/2 | 36 | 20 | 18 |
| 65A × 50A | 2-1/2 × 2 | 39 | 28 | 20 |
寸法表の数値はあくまでJIS規格品の参考値です。メーカーによってわずかな差異がある場合があるため、施工前に実物または各メーカーのカタログで確認することをおすすめします。
A呼称とB呼称の対応だけ覚えておけばOKです。
参考:白・黒ねじ込みブッシングの寸法表(JIS B 2301規格品)が一覧で確認できます。
ブッシング継手を選ぶときに最初に決めるべきことは「何の流体が流れるか」と「どんな環境に置かれるか」の2点です。これが材質・表面処理の選定基準になります。
黒継手(鋳放し)は表面処理なしの可鍛鋳鉄製です。水・蒸気・ガス・油・空気などの一般配管に使われます。コストが低く、蒸気配管や工業用ガス配管によく使われます。ただし、外面の錆び止め処理は現場での防食補修剤による施工が前提です。
白継手(溶融亜鉛メッキ)は黒継手に溶融亜鉛メッキを施したものです。カドミウム・鉛を使わない安全性の高いめっき処理が施されており、耐食性が向上しています。工業用水・冷温水・冷却水・消火用水・ガス・空気・油に使用できます。白継手が適しています。ただし、高温環境(蒸気配管の高温部分)や強酸性・強アルカリ性の流体には不向きです。
ステンレス製(JIS B 2308)は食品工場・薬品設備・海沿いの屋外配管など、腐食リスクが高い環境に適しています。SUS316相当のSCS16Aを選べば塩化物環境(海水・塩素含有水)にも対応できます。価格は可鍛鋳鉄製の数倍になりますが、長期的なメンテナンスコスト削減につながります。
厳しいところですね。材質を間違えると、数年後に腐食・漏水が発生し、補修工事費が発生するリスクがあります。そのリスクを初期選定で回避できるのが、規格・材質の正確な知識です。
| 種類 | 主な使用流体 | 不向きな用途 | コスト目安 |
|---|---|---|---|
| 黒継手(鋳放し) | 蒸気・ガス・工業用水・油 | 外面露出・湿潤環境 | 低 |
| 白継手(亜鉛メッキ) | 冷温水・冷却水・消火水・空気 | 高温蒸気・強酸・強アルカリ | 中 |
| ステンレス(SCS13A) | 食品・薬品・一般腐食環境 | 塩化物多量環境 | 高 |
| ステンレス(SCS16A) | 海水・塩素含有水・薬液 | 特になし(高価格がネック) | 最高 |
ブッシング継手の施工で最も多いトラブルが「シール不良による漏水」です。規格品を正しく選んでいても、施工手順を誤ると漏れが発生します。これは防げるミスです。
施工の基本的な流れは以下のとおりです。まず配管を切断し、管軸に対して直角になるよう丁寧に切ります。続いてねじ切り機でJIS B 0203(管用テーパねじ)に準じたおねじを切削します。ねじ切り後は切り粉・油・ゴミを洗浄剤とウエスで完全に除去することが必須です。
シール剤の使用にはルールがあります。呼び径40A(1-1/2インチ)以下ではシールテープの使用が一般的ですが、呼び径50A(2インチ)以上では液状シール剤を使用することが推奨されています。大口径へのシールテープ単独使用は、テープが破れたり浮き上がったりして確実なシールができないためです。シールテープと液状シール剤を同時に使うと「ねじかじり」が起きるリスクがあるため、どちらかに統一します。
手締め後にパイプレンチで規定トルクまで締め込みます。締め込みは一気に行わず、隣の管を手締めで仮組みしてから最終的な角度と向きを合わせて締め付けるのが現場のコツです。施工後は外面のキズ・ねじ露出部に防食剤を塗布して補修し、水圧試験で漏れがないことを確認して完了です。
シールテープは大口径では使えません。これだけ覚えておけばOKです。
参考:ねじ込み管継手の接合手順と注意点が詳しくまとめられています。
配管工事の現場では、ブッシング継手の規格・サイズを「なんとなく」で選んでいるケースが一定数あります。しかし、規格を誤ると施工後に漏水や腐食が発生し、最悪の場合は工事のやり直しが必要になります。やり直し工事は当然コストが発生します。事前に防ぐことが大切です。
以下のチェック項目を選定段階で確認することで、現場でのミスを防ぎやすくなります。
① 流体と環境の確認
使用する流体が水・油・蒸気・ガス・薬品・食品などのいずれかを確認します。飲料水には白継手は使えません(JIS B 2301の適用範囲外)。食品・薬品環境ではJIS B 2308のステンレス製が必要です。
② サイズ(呼び径)の確認
A呼称・B呼称の両方を確認し、ブッシング継手の「大きい側(おねじ)×小さい側(めねじ)」の組み合わせを正確に記録します。誤発注は施工現場で判明することが多く、工程のロスにつながります。A呼称とB呼称の換算は必ず確認します。
③ 最高使用圧力の確認
JIS B 2301のブッシング継手(可鍛鋳鉄製)は、一般的な使用条件での最高使用圧力がおおむね1.0〜2.0MPa程度です。高圧配管には使用できません。高圧用継手(JIS B 2316など)と混同しないよう注意が必要です。
④ JIS規格品か規格準拠品かの確認
市場には「JIS規格品」と「JIS規格準拠品(メーカー規格品)」の両方が流通しています。一部のサイズ・品種はJIS規格の対象外のためメーカー規格になっている場合があります。発注時にどちらを選んでいるかを意識することが重要です。
これが条件です。規格を確認する習慣をつければ、現場での選定ミスは大幅に減らせます。
ミスが多い選定パターンをまとめると次のようになります。
参考:ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手の規格・種類の詳細はこちらで確認できます。
関東継手株式会社|ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手 製品ラインナップ