外面ポリエチレン被覆鋼管の種類と規格・施工の注意点

外面ポリエチレン被覆鋼管の種類と規格・施工の注意点

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外面ポリエチレン被覆鋼管の種類・規格・施工注意点

被覆鋼管は「埋めれば終わり」ではなく、継手部を補修しないと数年で腐食が始まります。


この記事でわかること
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JIS規格とP1H・P2Sなど種類の使い分け

JIS G 3469に基づく4種類の記号と、埋設環境・用途別の選定基準をわかりやすく整理します。

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施工時に見落としがちな防食処理の落とし穴

ピンホール検査・継手部補修・マクロセル腐食など、現場でよく起きるミスと具体的な対策を解説します。

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保管・取り扱いの注意点

紫外線劣化・積み重ね方法など、現場搬入から埋設前までの管理で押さえておくべきポイントをまとめます。


外面ポリエチレン被覆鋼管とはなにか・基本構造と目的


外面ポリエチレン被覆鋼管とは、鋼管の外面にアンダーコート(接着剤または粘着剤)を塗布し、その上からポリエチレン樹脂を押出成形によって被覆した埋設用防食鋼管です。通称「PLP管」「PLS管」とも呼ばれ、ガス・油・水などの輸送配管として主に地中に埋設されます。


鋼管単体を土中に埋設すると、土壌中の水分・酸素・塩分・迷走電流などの影響を受けて腐食が進行します。ポリエチレン被覆は、これらの腐食因子と鋼管の金属面を物理的に遮断する役割を担っています。つまり防食が主目的です。


被覆の構造は大きく2層に分かれています。内側の「防食層(ポリエチレン)」が腐食を防ぎ、外側の「包装層(保護層)」が施工時の物理的な衝撃から防食層を守る仕組みです。この二重構造が、長期埋設環境での安定した防食性能を支えています。


ポリエチレンには高密度ポリエチレン(HDPE)が使われ、JIS G 3469の附属書Aには「引張強さ11.8 N/mm²以上」「引張破壊ひずみ300%以上」「吸水率0.04%以下」「耐電圧30 kV/mm以上」といった物性基準が規定されています。数値が示すとおり、非常に高い防水性・耐電性を誇る素材です。


適用される管径は外径15mmから2,000mmと幅広く、小口径の給水管から大径の基幹水道管・ガス幹線まで幅広い用途をカバーします。外径2,000mmといえば、成人男性が余裕で立てるほどの大きさです。スケールの大きさが実感できます。


JIS G 3469:2016 ポリエチレン被覆鋼管(日本産業規格全文)|きまぐれJIS – kikakurui.com


外面ポリエチレン被覆鋼管のJIS規格・P1H・P2S・P1Fの種類と使い分け

JIS G 3469では、外面ポリエチレン被覆鋼管の種類を4種類に区分し、それぞれ記号で区別しています。現場での選定ミスを防ぐためにも、各記号の意味と違いをしっかり理解しておくことが重要です。


まずP1Hは、接着剤(厚さ0.05〜0.3mm)を塗布した後にポリエチレンを1層被覆した「密着一層型」です。管と被覆が強固に密着しており、ピール強度は35 N/10mm幅以上が必要とされています。ガス配管や給水配管の埋設用途で最も広く採用されているタイプです。


次にP2Sは、粘着剤の上にポリエチレン防食層を被覆し、さらにその外側に包装用材料(保護層)を1層重ねた「二層型」です。内側の防食層と外側の保護層は溶着しないように製造され、施工時に保護層だけをめくって継手処理できる設計になっています。耐衝撃性が高く、岩盤地帯など厳しい地盤条件の現場に向いています。


P1Tは、P2Sから包装用材料(保護層)を省いたタイプです。被覆厚さはP2SのP1H相当です。P1Fは粉体浸漬や散布法でポリエチレン粉末を融着させる製法で、エルボやチーズなど異形管への適用に特化しています。異形管のみに使えるのがP1Fの特徴です。


| 記号 | 被覆構造 | アンダーコート | 主な適用 |
|------|----------|--------------|--------|
| P1H | ポリエチレン1層 | 接着剤 | 直管 |
| P2S | ポリエチレン1層+包装材 | 粘着剤 | 直管 |
| P1T | ポリエチレン1層 | 粘着剤 | 直管 |
| P1F | 粉体溶着1層 | なし | 異形管・直管 |


被覆厚さは呼び径によって異なります。例えばP1Hの場合、呼び径15Aから90Aまでは1.5mm、呼び径100A以上125A以下は2.0mm、呼び径200A以上で2.5mm、呼び径1,100A以上で3.0mmというように段階的に増します。これが条件です。


なお、P1HとP2Sのアンダーコートは「受渡当事者間の協定」によって入れ替えることが可能で、接着剤仕様のP2SはP2H、粘着剤仕様のP1HはP1Sという記号になります。仕様書確認のとき注意が必要な点です。


PLP・PLS ポリエチレン被覆鋼管 JIS G 3469の規格・サイズ・厚さ一覧|jts-tokyo.com


外面ポリエチレン被覆鋼管の施工前検査・ピンホール試験の重要性

外面ポリエチレン被覆鋼管は出荷前に全数ピンホール試験(ホリデー試験)が実施されていますが、それだけで安心してはいけません。現場搬入後から埋設前までの間に、被覆が損傷するリスクが実は高いのです。


JIS G 3469の規定では、ホリデーディテクターを用いて全被覆面を1本ずつ検査し、接触形は10,000〜12,000V、非接触形は20,000〜40,000Vの電圧をかけて火花の有無を確認します。この試験でピンホールがあれば、その箇所から土中の水分や酸素が直接鋼面に侵入し、腐食が急速に進行します。


特に問題になるのが、揚重(クレーンによる吊り荷)・トラック荷台への積み降ろし・搬送時の接触・掘削溝への降管などの作業です。これらの過程で被覆が石や工具に当たって傷つくことがあります。大林組の技術報告では、「施工時の物理的な衝撃によって防食被覆層が損傷し、本来の防食効果が発揮されていない例がある」と明記されています。


現場での対策として有効なのは、埋設前の現場受入時に再度ホリデーテストを実施することです。これが原則です。自治体の水道工事標準仕様書でも、施工前に管体の内外面に「亀裂その他の欠陥がないことを確認すること」と義務付けているケースが多く見られます。


損傷が見つかった場合は、損傷部を清掃・脱脂したうえで防食テープ(プラスチック粘着テープ)を半幅重ねで2周以上巻き付けて補修します。補修テープにはアンダーコートを先に塗布するのが正しい手順です。補修を省略したまま埋設すると、ピンホール付近だけ異常に腐食が加速する「局部腐食」が起き、数年以内に漏水事故につながることもあります。痛いですね。


外面ポリエチレン被覆鋼管の継手部防食処理・現場溶接後の補修手順

現場での施工において最も見落とされやすいのが、継手部・溶接部の防食処理です。外面ポリエチレン被覆鋼管は工場段階で被覆が完成していますが、現場での溶接接合や管端のねじ込み接合をすると、必ず被覆されていない「裸」の鋼面が生じます。


管端の被覆位置はJIS G 3469の箇条5に規定されており、ねじ付きの場合はねじ部が露出した状態で出荷されます。また溶接接続では、熱影響によって被覆端部が収縮・剥離することもあります。これらの露出部をそのまま埋設してしまうと、当然ながら腐食が始まります。


JFEスチールのPLP技術資料によれば、継手・接続部の現場防食処理には主に次の2方式があります。まず「防食テープ巻き工法」で、アンダーコートを塗布後、プラスチック粘着テープを半幅重ねで管軸方向に巻き付けて被覆層を再形成します。もう一つは「熱収縮スリーブ工法」で、加熱すると収縮して管に密着する熱収縮チューブ型のスリーブを使う方法です。


防食テープ巻きの際に重要なのは「前処理」です。溶接部のスパッタ(溶接飛散物)を完全に除去し、清掃・脱脂をしっかり行わないとテープとの密着不良が起きます。接続後すぐに埋戻しを急ぐ現場では、この前処理が省略されがちです。しかしこれが原因で数年後に漏水事故が起きた事例は少なくありません。


補修後は、可能であれば再度ホリデーテストで補修部のピンホールがないことを確認するのが理想です。このプロセスが防食品質の最終担保になります。なお、現場で発生した溶接熱によって母材被覆が熱影響を受ける範囲は一般に溶接端部から150mm程度とされており、この範囲を含めて補修するのがメーカー標準の推奨です。


防食鋼管 製品情報(PLP・PLS)|JFEスチール株式会社


外面ポリエチレン被覆鋼管が関わるマクロセル腐食のリスクと対策

建築業の現場では意外と知られていないのが「マクロセル腐食」のリスクです。外面ポリエチレン被覆鋼管を採用していても、配管ルートの選定や施工方法を誤ると、このマクロセル腐食によって局部的な腐食が急激に進む可能性があります。


マクロセル腐食とは、異なる腐食環境(例えば土壌とコンクリート)にまたがって配管された金属管が、電位差によって巨大な腐食電池(マクロセル)を形成し、電位の低い部分(土壌側)に集中的に腐食が生じる現象です。日本製鉄のWSP資料によると、コンクリート構造物中の鋼管の電位は約-200mV、土壌中は約-450〜-650mVと、大きな電位差があります。


具体的なリスク事例として、建築物の基礎コンクリートを貫通して埋設される引込み配管が挙げられます。コンクリートと土壌の境界部で電位差が生じ、土壌側の被覆に少しでも損傷があれば、そこに腐食電流が集中して急速に肉薄になります。意外ですね。


対策は以下の3点が基本です。まず「被覆の完全性の確保」で、コンクリート貫通部の前後では特念入りに被覆損傷がないかを確認します。次に「絶縁継手の使用」で、コンクリートと土壌の境界付近に電気的絶縁継手を設け、腐食電流の流れを物理的に遮断します。3点目は「埋戻し材の管理」で、コンクリート構造物からの埋戻し時に砕石等で被覆を傷つけないよう細心の注意を払います。


迷走電流の影響も見逃せません。直流電気鉄道の変電所から概ね1km以内のエリアでは、迷走電流が地中に流れ込み、外面ポリエチレン被覆の損傷部から鋼管へ集中的に侵食します。


こうしたリスクを総合的に把握するには、農業水利施設の腐食対策マニュアル(農林水産省)も参考になります。


埋設鋼管のマクロセル腐食とは|日本製鉄株式会社(WSP資料引用)


外面ポリエチレン被覆鋼管の保管方法と現場搬入時の取り扱い注意

外面ポリエチレン被覆鋼管の品質は、工場出荷後の保管・輸送・取り扱いに大きく左右されます。「工場でJIS適合品を購入したからOK」と思いがちですが、現場管理が不適切だと性能が劣化します。


まず屋外保管時の最大の敵は紫外線です。JFEスチールの鋼管カタログには「ポリエチレンは直射日光を受けると紫外線の影響を受けて劣化することがある」と明記されています。確かにポリエチレンにはカーボンブラックや紫外線吸収剤(UVA)が配合されていますが、それでも長期露出は避けるべきです。屋外保管するときは必ず遮光シートを掛け、雨水が内部に溜まらないよう一端を持ち上げた状態で保管します。


積み重ね管理も重要です。JIS関連の参考資料では積み高さは1.5m以下が推奨されています。これはポリエチレン被覆が受ける圧力を最小限に抑えるためです。下積みになった管の被覆が変形・損傷するリスクを防ぎます。現場でよく見かける「高く積めば省スペース」という対応は逆効果です。


温度変化への注意も必要です。ポリエチレンは温度によって膨張・収縮するため、気温の激しい現場(夏の炎天下や冬の氷点下)では鋼管との膨張差が生じ、管端部の被覆剥離が起きやすくなります。搬入後は速やかに埋設するか、温度変化の少ない場所に保管するのが理想です。


荷降ろし作業では、スリングによる玉掛けが被覆を傷つけやすいポイントです。金属製ワイヤーロープの使用は厳禁で、被覆管専用の布製スリング(ソフトスリング)またはゴムスリーブを使用します。コロ転がしによる降管も、着地面に石や突起物がないことを確認してから行います。これが条件です。


供内管腐食対策ガイドライン(ガス配管の腐食対策に関する詳細指針)|経済産業省




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