
ヘルールのISO規格は、日本のサニタリー配管において最も広く採用されている規格です。IDF(国際酪農連盟)規格とも呼ばれ、食品・製薬・化学工業分野で標準的に使用されています13。
ISO規格溶接式ヘルール寸法表
呼径 | A(フランジ径) | PCD | C(内径) | D(外径) | E(長さ) | F(厚み) |
---|---|---|---|---|---|---|
1S | 50.5mm | 43.5mm | 23.0mm | 25.4mm | 21mm | 2.85mm |
1.25S | 50.5mm | 43.5mm | 29.4mm | 31.8mm | 17mm | 2.85mm |
1.5S | 50.5mm | 43.5mm | 35.7mm | 38.1mm | 21mm | 2.85mm |
2S | 64.0mm | 56.5mm | 47.8mm | 50.8mm | 21mm | 2.85mm |
2.5S | 77.5mm | 70.5mm | 59.5mm | 63.5mm | 21mm | 2.85mm |
3S | 91.0mm | 83.5mm | 72.3mm | 76.3mm | 21mm | 2.85mm |
ISO規格の特徴として、1S~3.5Sまでは厚み2.85mmで統一されており、4S以上では段階的に厚みが増加します。また、5S以上では厚み5.6mmとなり、より高圧用途に対応可能です。
ガス管サイズ対応表
配管用ステンレス鋼管(JIS G3459)に対応したガス管サイズのヘルールも製造されています。
ガス管サイズは管厚が厚いため、高圧配管に適用されることが多く、クランプはISO規格と共通使用が可能です。
3A規格は、アメリカの食品医薬品関連設備で広く採用されている規格で、特に衛生面での要求が厳しい分野で重宝されています。日本国内でも輸入設備との接続や、より高い衛生基準が要求される場合に使用されます。
3A規格標準寸法表
サイズ | 内径φA | 外径φB | L寸法 | 用途 |
---|---|---|---|---|
1/4″ | 4.4mm | 6.35mm | 17mm | 小流量配管 |
3/8″ | 7.5mm | 9.5mm | 17mm | 計測配管 |
1/2″ | 9.4mm | 12.7mm | 17mm | 標準用途 |
3/4″ | 15.7mm | 19.05mm | 17mm | 中流量配管 |
1″ | 22.1mm | 25.4mm | 12.7-44.5mm | 大流量用途 |
3A規格の大きな特徴は、インチサイズ表記であることと、同一サイズでも複数の長さ(L寸法)が選択可能な点です。特に1/2″サイズでは、内径9.4mmと10.2mmの2種類が用意されており、用途に応じた選択が可能です。
3A×ISO変換ヘルール
異なる規格間の接続を可能にする変換ヘルールも製造されています。
これにより、既存のISO規格配管に3A機器を接続する際の互換性を確保できます。
製薬・食品工場では、FDA承認材料を使用した3A規格ヘルールが品質保証の観点から重要視されており、トレーサビリティ確保のため材料証明書付きでの調達が一般的です。
DIN規格(DIN11850)は、ドイツ工業規格に基づくヨーロッパ系の規格で、特にヨーロッパメーカーの設備導入時に必要となります。近年、グローバル化に伴い日本国内でも取り扱いが増加している規格です。
DIN-FS規格寸法表
サイズ | A(フランジ径) | D(外径) | C(内径) | L(長さ) |
---|---|---|---|---|
10A | 34.0mm | 13.0mm | 10.0mm | 18.0mm |
15A | 34.0mm | 19.0mm | 16.0mm | 18.0mm |
20A | 34.0mm | 23.0mm | 20.0mm | 18.0mm |
25A | 50.5mm | 29.0mm | 26.0mm | 21.5mm |
32A | 50.5mm | 35.0mm | 32.0mm | 21.5mm |
50A | 64.0mm | 53.0mm | 50.0mm | 21.5mm |
100A | 119.0mm | 104.0mm | 100.0mm | 28.0mm |
DIN規格の特徴は、小口径(10A~20A)でフランジ径34.0mmを共通使用し、25A~32AではISO規格の1.5S相当の50.5mmフランジを採用している点です。これにより、一部サイズではISO規格クランプとの互換性を持ちます。
DIN規格とISO規格の相違点
ヨーロッパ製醸造設備や化学プラント設備では、DIN規格が標準採用されることが多く、設備更新時の規格統一が重要な検討事項となります。
ヘルールの材質選定は、使用環境の腐食性、温度、圧力条件を総合的に判断して決定する必要があります。適切な材質選定により、メンテナンス周期の延長とトータルコストの削減が実現可能です。
主要材質の特性比較
材質 | 耐食性 | 耐熱性 | 磁性 | 主用途 |
---|---|---|---|---|
SUS304 | 一般的 | 800℃ | 非磁性 | 一般工業用途 |
SUS316L | 優秀 | 900℃ | 非磁性 | 食品・医薬品 |
SUS316Ti | 極めて優秀 | 900℃ | 非磁性 | 高腐食環境 |
SUS316Lが選ばれる理由
食品・医薬品業界でSUS316Lが標準採用される理由は以下の通りです。
表面処理の種類と効果
ヘルールの表面処理により、用途に応じた性能向上が図れます。
特に医薬品製造設備では、表面粗さRa0.8μm以下が要求されることが多く、電解研磨処理が必須となります。
耐久性向上のポイント
材料証明書(ミルシート)の保管により、トレーサビリティ確保と品質管理の向上が図れます。
実際の現場でヘルール規格を選択する際は、初期コストだけでなく、メンテナンス性、部品調達性、将来の拡張性を総合的に検討することが重要です13。
規格選択の判断基準
コスト比較分析
項目 | ISO規格 | 3A規格 | DIN規格 |
---|---|---|---|
部品単価 | 100% | 150-200% | 120-180% |
調達期間 | 3-4日 | 2-3週間 | 1-2週間 |
在庫リスク | 低 | 中 | 中 |
ISO規格は国内製造が多く、部品単価と調達期間の面で優位性があります。一方、3A規格は輸入依存度が高く、為替変動の影響を受けやすい特徴があります。
設計段階での配慮事項
配管設計時に考慮すべき重要ポイント。
特殊用途での注意点
高温用途(150℃以上)では、熱膨張によるシール性能低下を考慮し、専用高温対応O-リングの選定が必要です。また、真空用途では、ガス放出量の少ない材質選定と、特殊な表面処理が要求される場合があります。
食品業界では、HACCP対応として洗浄バリデーション(洗浄検証)が必要であり、ヘルール形状が洗浄性に与える影響を事前検討することが重要です。
建設プロジェクトにおいては、各規格の調達リードタイムを工程計画に反映させ、特に3A規格やDIN規格を採用する場合は、十分な調達期間を確保することが工期遵守の鍵となります。