ヘルール規格寸法一覧と選択基準

ヘルール規格寸法一覧と選択基準

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ヘルール規格寸法一覧

ヘルール規格の全体像
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ISO規格(JIS準拠)

日本で最も普及している規格で1S~8Sサイズを展開

🇺🇸
3A規格(アメリカ)

食品医薬品分野で高い信頼性を持つアメリカ発祥の規格

🇩🇪
DIN規格(ドイツ)

ヨーロッパ圏で採用されるドイツ工業規格準拠の寸法体系

ヘルールISO規格寸法表と特徴

ヘルールのISO規格は、日本のサニタリー配管において最も広く採用されている規格です。IDF(国際酪農連盟)規格とも呼ばれ、食品・製薬・化学工業分野で標準的に使用されています13。

 

ISO規格溶接式ヘルール寸法表

呼径 A(フランジ径) PCD C(内径) D(外径) E(長さ) F(厚み)
1S 50.5mm 43.5mm 23.0mm 25.4mm 21mm 2.85mm
1.25S 50.5mm 43.5mm 29.4mm 31.8mm 17mm 2.85mm
1.5S 50.5mm 43.5mm 35.7mm 38.1mm 21mm 2.85mm
2S 64.0mm 56.5mm 47.8mm 50.8mm 21mm 2.85mm
2.5S 77.5mm 70.5mm 59.5mm 63.5mm 21mm 2.85mm
3S 91.0mm 83.5mm 72.3mm 76.3mm 21mm 2.85mm

ISO規格の特徴として、1S~3.5Sまでは厚み2.85mmで統一されており、4S以上では段階的に厚みが増加します。また、5S以上では厚み5.6mmとなり、より高圧用途に対応可能です。

 

ガス管サイズ対応表
配管用ステンレス鋼管(JIS G3459)に対応したガス管サイズのヘルールも製造されています。

  • 20A:外径27.2mm、内径23.0mm
  • 25A:外径34.0mm、内径28.0mm
  • 32A:外径42.7mm、内径36.7mm
  • 40A:外径48.6mm、内径42.6mm

ガス管サイズは管厚が厚いため、高圧配管に適用されることが多く、クランプはISO規格と共通使用が可能です。

 

ヘルール3A規格寸法仕様

3A規格は、アメリカの食品医薬品関連設備で広く採用されている規格で、特に衛生面での要求が厳しい分野で重宝されています。日本国内でも輸入設備との接続や、より高い衛生基準が要求される場合に使用されます。

 

3A規格標準寸法表

サイズ 内径φA 外径φB L寸法 用途
1/4″ 4.4mm 6.35mm 17mm 小流量配管
3/8″ 7.5mm 9.5mm 17mm 計測配管
1/2″ 9.4mm 12.7mm 17mm 標準用途
3/4″ 15.7mm 19.05mm 17mm 中流量配管
1″ 22.1mm 25.4mm 12.7-44.5mm 大流量用途

3A規格の大きな特徴は、インチサイズ表記であることと、同一サイズでも複数の長さ(L寸法)が選択可能な点です。特に1/2″サイズでは、内径9.4mmと10.2mmの2種類が用意されており、用途に応じた選択が可能です。

 

3A×ISO変換ヘルール
異なる規格間の接続を可能にする変換ヘルールも製造されています。

  • 3A-1/2″→8A変換:内径9.4mm→10.5mm
  • 3A-3/4″→15A変換:内径15.7mm→17.5mm

これにより、既存のISO規格配管に3A機器を接続する際の互換性を確保できます。

 

製薬・食品工場では、FDA承認材料を使用した3A規格ヘルールが品質保証の観点から重要視されており、トレーサビリティ確保のため材料証明書付きでの調達が一般的です。

 

ヘルールDIN規格寸法対照表

DIN規格(DIN11850)は、ドイツ工業規格に基づくヨーロッパ系の規格で、特にヨーロッパメーカーの設備導入時に必要となります。近年、グローバル化に伴い日本国内でも取り扱いが増加している規格です。

 

DIN-FS規格寸法表

サイズ A(フランジ径) D(外径) C(内径) L(長さ)
10A 34.0mm 13.0mm 10.0mm 18.0mm
15A 34.0mm 19.0mm 16.0mm 18.0mm
20A 34.0mm 23.0mm 20.0mm 18.0mm
25A 50.5mm 29.0mm 26.0mm 21.5mm
32A 50.5mm 35.0mm 32.0mm 21.5mm
50A 64.0mm 53.0mm 50.0mm 21.5mm
100A 119.0mm 104.0mm 100.0mm 28.0mm

DIN規格の特徴は、小口径(10A~20A)でフランジ径34.0mmを共通使用し、25A~32AではISO規格の1.5S相当の50.5mmフランジを採用している点です。これにより、一部サイズではISO規格クランプとの互換性を持ちます。

 

DIN規格とISO規格の相違点

  • 寸法体系:DINは実際の配管径により近い表記
  • フランジ設計:より厚肉設計で機械的強度が高い
  • 表面処理:ドイツ規格特有の表面粗さ基準

ヨーロッパ製醸造設備や化学プラント設備では、DIN規格が標準採用されることが多く、設備更新時の規格統一が重要な検討事項となります。

 

ヘルール材質選定基準と耐久性

ヘルールの材質選定は、使用環境の腐食性、温度、圧力条件を総合的に判断して決定する必要があります。適切な材質選定により、メンテナンス周期の延長とトータルコストの削減が実現可能です。

 

主要材質の特性比較

材質 耐食性 耐熱性 磁性 主用途
SUS304 一般的 800℃ 非磁性 一般工業用途
SUS316L 優秀 900℃ 非磁性 食品・医薬品
SUS316Ti 極めて優秀 900℃ 非磁性 高腐食環境

SUS316Lが選ばれる理由
食品・医薬品業界でSUS316Lが標準採用される理由は以下の通りです。

  • 低炭素仕様により粒界腐食を防止
  • モリブデン添加による塩化物環境耐性向上
  • 電解研磨処理による表面清浄性確保
  • 洗浄性に優れた表面仕上げ

表面処理の種類と効果
ヘルールの表面処理により、用途に応じた性能向上が図れます。

  • 電解研磨:鏡面仕上げによる洗浄性向上、細菌付着防止
  • バフ研磨#400:中程度の表面粗さ、コストパフォーマンス重視
  • 梨地仕上げ防止:医薬品用途での特殊要求対応

特に医薬品製造設備では、表面粗さRa0.8μm以下が要求されることが多く、電解研磨処理が必須となります。

 

耐久性向上のポイント

  • 定期的なO-リング交換(推奨6ヶ月周期)
  • 適切なトルク管理によるシール面保護
  • 化学洗浄時の材質適合性確認

材料証明書(ミルシート)の保管により、トレーサビリティ確保と品質管理の向上が図れます。

 

ヘルール規格選択時の注意点とコスト比較

実際の現場でヘルール規格を選択する際は、初期コストだけでなく、メンテナンス性、部品調達性、将来の拡張性を総合的に検討することが重要です13。

 

規格選択の判断基準

  • 既設設備との整合性:既存配管との接続互換性を最優先
  • 調達性:国内流通量と納期の安定性
  • コスト:初期投資とランニングコストの総合評価
  • 技術基準:業界標準や顧客要求仕様への適合

コスト比較分析

項目 ISO規格 3A規格 DIN規格
部品単価 100% 150-200% 120-180%
調達期間 3-4日 2-3週間 1-2週間
在庫リスク

ISO規格は国内製造が多く、部品単価と調達期間の面で優位性があります。一方、3A規格は輸入依存度が高く、為替変動の影響を受けやすい特徴があります。

 

設計段階での配慮事項
配管設計時に考慮すべき重要ポイント。

  • 規格統一:混在による管理複雑化の回避
  • サイズ選定:圧力損失と初期コストのバランス
  • 将来拡張:増設時の規格整合性確保
  • メンテナンス空間:クランプ脱着に必要な作業空間確保

特殊用途での注意点
高温用途(150℃以上)では、熱膨張によるシール性能低下を考慮し、専用高温対応O-リングの選定が必要です。また、真空用途では、ガス放出量の少ない材質選定と、特殊な表面処理が要求される場合があります。

 

食品業界では、HACCP対応として洗浄バリデーション(洗浄検証)が必要であり、ヘルール形状が洗浄性に与える影響を事前検討することが重要です。

 

建設プロジェクトにおいては、各規格の調達リードタイムを工程計画に反映させ、特に3A規格やDIN規格を採用する場合は、十分な調達期間を確保することが工期遵守の鍵となります。