構造安定とは 耐震等級 構造計算 基礎工事 耐力壁と評価方法

構造安定とは 耐震等級 構造計算 基礎工事 耐力壁と評価方法

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構造安定とは

この記事で分かること
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構造安定の基本概念

建築基準法における構造の安定性と住宅性能表示制度での評価方法を理解

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耐震等級の仕組み

等級1から3までの違いと、倒壊防止・損傷防止の評価基準

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構造計算と基礎工事

木造住宅における構造計算の重要性と基礎設計のポイント

構造安定とは、建築物が地震・風・積雪などの外力に対して、倒壊や損傷を防ぐために必要な強度を持つことを意味する概念です。建築基準法では、構造の安定性が建築物の基本性能として位置づけられており、2000年に施行された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって、消費者が客観的に住宅性能を判断できる基準として整備されました。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/070725gijyutukaisetu.pdf

不動産従事者にとって構造安定の理解は、物件の安全性評価や資産価値の判断において不可欠な知識となります。特に中古住宅の取引や建物調査においては、構造安定に関する評価能力が求められます。住宅性能表示制度における「構造の安定に関すること」は、耐震等級・耐風等級・耐積雪等級の3つの性能表示事項で構成されています。
参考)http://www.sksekkei.com/build/structure.html

建築基準法では、極めて稀に発生する数百年に一度程度の大地震に対しても倒壊しないことを前提とした新耐震設計基準が定められています。この基準は、1978年の宮城県沖地震後に抜本的に見直され、1981年以降の建物は「新耐震基準による建物」として、それ以前の建物と区別されるようになりました。
参考)https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/shintiku/05-01.html

構造安定における耐震等級の位置づけ

 

 

 

耐震等級は、住宅性能評価書における「構造の安定」の評価項目の一つで、建物の耐震性能を1から3の等級で表す指標です。この等級制度は、倒壊防止と損傷防止の2種類に分かれており、倒壊防止は震度6強から7の揺れに対する倒壊のしにくさ、損傷防止は震度5強の揺れに対する損傷の生じにくさを評価します。
参考)https://www.livable.co.jp/l-note/question/s16812/

住宅性能表示制度では、評価項目を必須項目と選択項目に分けており、耐震等級は倒壊防止が必須項目、損傷防止が選択項目として設定されています。これは、人命保護の観点から倒壊防止がより重要と判断されているためです。住宅ローンのフラット35や地震保険の割引基準となっているのも、倒壊防止の耐震等級となります。
参考)https://dfar.jp/blog_and_column/taishin20210124/

耐震等級1は建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たすレベル、等級2はその1.25倍、等級3は1.5倍の耐震性能を有することを示します。実際には、等級1でも法的には問題ありませんが、長期優良住宅の認定には等級2以上が必要とされるケースが多く、災害時の避難所となる学校や病院は等級3相当の強度が求められています。
参考)https://manabou.homeskun.com/kouzou/kanren/hinkaku-hikaku/

興味深い点として、建築基準法の壁量計算でギリギリ合格する建物を改めて構造計算にかけると、強度が7割程度しか出ないという現実があります。これは法律上は違法ではありませんが、真に安全な住宅を提供するためには、より厳密な構造計算の実施が推奨されています。
参考)https://www.sumirin-at.co.jp/contents/structural_calculation.html

構造安定を支える構造計算の重要性

構造計算とは、建築構造物が固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重などに対して、どのように変形し、どのような応力が発生するのかを計算する「許容応力度計算」のことを指します。この計算により、耐震・耐風・構造バランスを綿密に定めるだけでなく、地震時の建物の傾き・ねじれ・揺れやすさについても十分耐えうる設計を行います。
参考)https://book.st-hakky.com/industry/difference-between-structural-analysis-and-stability-analysis

現在の建築基準法では、木造2階建てまでの住宅について高度な構造計算は義務付けられておらず、簡易計算方法である「壁量規定」が設けられています。しかし、この壁量規定は過去の大地震が起こるたびに改訂されており、基準をギリギリクリアする建物の安全性には限界があることが指摘されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001184898.pdf

先進的な住宅事業者は、木造2階建てについても全棟構造計算を実施し、建築基準法を上回る検証を行っています。構造計算では、建物自体の重さ・積雪などの重さ・人や家具などの重さといった、建物にかかるすべての荷重と、柱や梁一本一本にかかる負荷を計算し、十分に耐えうる寸法や接合方法を厳密に設計します。
参考)https://woodcore.jp/topics/1/

構造計算と基礎設計は連動して行われ、地震時に基礎が受ける水平力や垂直力を正確に計算し、それに基づいて補強を設計します。中大規模木造では、木材の軽さを活かして基礎への負担を最小限に抑えた設計が可能で、鉄骨造に比べてコストダウンを実現できるメリットがあります。
参考)https://woodcore.jp/topics/1212/

構造安定における基礎工事の役割

基礎工事は、建物を支え、地震や台風などの外力から守る建物の土台となる重要な部分です。基礎とは、建築物に作用する荷重および外力を安全に地盤に伝えるために設けられる、コンクリート部分などの下部構造の総称を指します。基礎工事がしっかりとしていなければ、建物が傾いたり沈下を起こしたりするなど、建物の安全性や寿命に大きな影響を及ぼします。
参考)https://watahan-prestwood.jp/column/wooden_foundation/index.php

木造建築における基礎の種類は、主に「布基礎」と「ベタ基礎」の2種類があります。布基礎は建物の壁の下のみに連続して設置した基礎が支える仕組みで、外圧を柱で受け止め基礎に伝える工法に採用されることが多くあります。一方、ベタ基礎は建物の外周や柱の下だけでなく、底部全体を鉄筋コンクリートで支え、家の荷重を底板全体で受け止めることで建物を支えるため、負荷が分散して安定性に優れています。
参考)https://www.archimoda.jp/blog/5377

ベタ基礎では、耐圧盤コンクリートが150mm以上の厚みで施工され、不同沈下を抑制する効果があります。外圧を「壁=面」で受け止めて基礎に伝える工法には、ベタ基礎が採用されているケースが多いとされています。基礎設計では、地盤条件への適応が重要で、地盤の強度や特性に応じて基礎の種類や設計を最適化します。
参考)https://www.h-l-c.net/column/977/

基礎工事の流れは、測量・地盤調査・水盛遣り方から始まり、根切り・掘削、基礎砕石敷き、捨てコンクリート、基礎配筋・型枠設置、基礎コンクリート打設・養生、型枠外し・仕上という工程で進められます。特に地盤調査は法律で義務付けられており、地耐力を調べることが建築基準法で求められています。​

構造安定を確保する耐力壁の配置

耐力壁とは、建物の構造において非常に重要な要素で、上部からの荷重を基礎に伝える役割と、地震などの横方向の力に対して耐える役割を担っています。木造軸組工法では、柱や梁といった木材の「軸」で構造体を構成し、筋交いなどの入った耐力壁を家全体にバランスよく配置することで耐震性を確保します。
参考)https://limswork.jp/tairyokuhekinoyakuwari/

この耐力壁は、地震の揺れなど水平力(横から加えられる力)に対して抵抗する壁として機能し、建物の4隅を耐力壁で固め、壁量が面によって偏らないようにすることが重要です。1階と2階のコーナー部は耐力壁の位置を揃えて上から見てL字型に設けるのが望ましく、柱の位置も上下揃っているほうが良いとされています。
参考)https://jscakansai.com/kenkyukai_koshukai/data/kenkyukai/2008-teireikenkyukai/080523-6.pdf

筋交いは柱と柱の間に斜めに入れることで、柱が揺れなどによってゆがまないように抵抗します。2箇所の筋交いは取り付ける方向を逆にして、力の方向のバランスをとる配置が推奨されています。木造軸組工法では、木材同士を組み合わせた上で、その接合部を補強金物で止め、地震の揺れなどで金物が外れ接合部がバラバラになることを防止しています。​
あまり知られていない点として、耐力壁における開口の取り扱いは構造計算上非常に重要で、開口部の位置や大きさによって壁の耐力が大きく変化します。大きな風圧に対しても耐力壁は強い抵抗力を提供し、高層ビルなどでは風圧対策としても重要な役割を果たしています。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/dictionary/wordlist/print/?n=760

構造安定の評価方法と不動産実務

構造安定の評価には、主に「一般診断法」と「精密診断法」の2つの方法があります。木造住宅の耐震診断では、「木造住宅の耐震診断と補強方法」(財団法人日本建築防災協会)が広く利用されており、「誰でもできるわが家の耐震診断」、「一般診断法」、「精密診断法」の3つの方法が存在します。
参考)https://www.matec-conferences.org/articles/matecconf/pdf/2019/25/matecconf_icancee2019_01015.pdf

一般診断法および精密診断法では、木造住宅が大地震の揺れに対して倒壊するかしないかを上部構造評点の結果より判断し、建物が必要な耐震性能を満たすには上部構造評点が1.0以上である必要があります。上部構造評点1.0以上であれば耐震性を確保しているという判定になり、1.0未満の場合は耐震補強等が必要という判定となります。
参考)https://pirenoconsumer.ykkap.co.jp/earthquake-prevention/

既存木造住宅の上部構造評点1.0、1.25、1.5は、品確法における耐震等級1、2、3レベルに相当することが注目されます。劣化の程度については、所有者等によって外観目視にて調査を行い、その結果を点数化して評価することにより、上部構造評点算定時の劣化低減係数を求めることとなっています。
参考)https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/kizon/10.html

不動産評価において、建築後一定年数が経過している建物の場合、耐震性の点から留意すべき事項があります。耐震性に劣る建物は、性能不足等の機能的な面から建物価値が減価される可能性があり、1981年以前の旧耐震基準の建物は特に注意が必要です。固定資産税評価においても、家屋の構造や種類などによって経年減点補正率が区分されており、最大で80%相当が損耗したものとして評価額を圧縮することが可能です。
参考)https://www.e-a-site.com/knowledge/rules/seismic_standards/

不動産従事者は、構造計算書の有無や耐震診断の実施状況を確認することで、物件の真の安全性を評価する必要があります。特に中古住宅の建物評価においては、原価方式・比較方式・収益方式の三方式を併用し、構造安定の状況を総合的に判断することが重要となります。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001011873.pdf

参考リンク(構造計算の実施方法と評価基準について詳しい情報)。
国土交通省:第2節 評価の方法の基準(性能表示事項別)
参考リンク(耐震診断の判定基準と上部構造評点の解説)。
国土交通省:新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法

 

 

 

 


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