強熱減量とセメントの風化・JIS規格・試験方法の完全解説

強熱減量とセメントの風化・JIS規格・試験方法の完全解説

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強熱減量とセメントの関係を正しく理解して品質トラブルを防ぐ

強熱減量が3%を超えたセメントを使うと、コンクリートの圧縮強度が25%以上落ちる場合があります。


この記事でわかること
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強熱減量とは何か

セメントを高温加熱したときの質量減少率で、新鮮度・風化度の目安となる重要な化学指標です。

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JIS規格値と改正ポイント

普通ポルトランドセメントの規格値は「5.0%以下」ですが、カーボンニュートラル対応で「7.0%以下」への改正が進んでいます。

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現場での品質管理のポイント

2か月以上保管したセメントは強熱減量を確認すべきとされており、見落とすと強度不足・配合ミスにつながります。


強熱減量とは何か:セメントの新鮮度を測る指標


建築・土木の現場でセメントを扱う際、「強熱減量(ig.loss / Ignition Loss)」という言葉を一度は耳にしたことがあるはずです。これはセメントを高温で加熱したとき、揮発してしまう成分の合計量を質量比で示した値のことを指します。


具体的には、950±25℃(普通ポルトランドセメントの場合)でセメントを加熱すると、水分・炭酸分などの揮発成分が失われます。加熱前後の質量の差を百分率で表したものが、強熱減量です。数式で書くと次のとおりです。


$$\text{強熱減量(ig.loss)} = \frac{m - m'}{m} \times 100$$


ここで $$m$$ は強熱前の試料質量、$$m'$$ は強熱後の試料質量を示します。


揮発する成分の大半は水(H₂O)と炭酸分(CO₂)です。セメントが空気中の水分や二酸化炭素を吸収していると、その分だけ加熱時の蒸発量が増え、強熱減量の数値が大きくなります。そのため、この値はセメントの「新鮮さ」を示す指標として広く使われています。


強熱減量は新鮮度の目安です。


空気中の湿気や炭酸ガスをセメントが吸収する現象は「風化」と呼ばれます。風化が進むほど強熱減量の値は大きくなる一方、比重は下がり、凝結時間は遅延し、最終的には強度も低下します。


なお、強熱減量は「ig.loss」という略称や、かつては「灼熱減量」とも呼ばれていました。日本工業規格(現・日本産業規格)の変遷においても、この試験の加熱温度が何度も見直されてきており、2009年のJIS改正では強熱温度が975±25℃から950±25℃に変更されています。


セメントの種類によって加熱温度が異なる点も重要です。高炉セメントおよび高炉スラグの場合は700±50℃と、普通ポルトランドセメントより低い温度で測定します。これは高炉スラグ中に含まれる硫化物が高温で酸化されると、逆に質量が増加する方向に誤差が出てしまうためです。セメントの種類を間違えて測定温度を設定しないよう、注意が必要です。


住友大阪セメント:強熱減量をはじめとするセメントコンクリート用語の解説ページ


強熱減量のJIS規格値:セメントの種類ごとの上限一覧

JIS(日本産業規格)では、セメントの種類ごとに強熱減量の上限値を定めています。現行規格(JIS R 5210ほか)をまとめると次のとおりです。








































セメントの種類 強熱減量の規格値
普通ポルトランドセメント 5.0%以下
早強ポルトランドセメント 5.0%以下
中庸熱ポルトランドセメント 3.0%以下
低熱ポルトランドセメント 3.0%以下
硫酸塩ポルトランドセメント 3.0%以下
高炉セメントA・B・C種 5.0%以下
シリカセメントA種 5.0%以下
フライアッシュセメントA種 5.0%以下


これは、現行のJIS R 5210(2019年版)に基づく値です。歴史的に見ると、普通ポルトランドセメントの強熱減量規格は段階的に見直されてきました。2009年11月の改正では3.0%以下から5.0%以下へと大きく引き上げられています。


中庸熱・低熱・耐硫酸塩は3.0%以下が原則です。


この引き上げの背景には、セメント製造時に廃棄物・副産物(建設発生土、下水汚泥、焼却灰など)を原燃料として大量に使用するようになったことがあります。セメント1トンあたりの廃棄物使用量は、1990年代の約227kgから2019年には473kgにまで増加しており、こうした多様な原燃料の使用が強熱減量の値に影響を与えるため、規格値が現実に合わせて改定されてきた経緯があります。


さらに近年注目すべき動きとして、2024年に向けてセメント協会がカーボンニュートラル対応のJIS改正を推進している点があります。普通ポルトランドセメントの少量混合成分(石灰石など)を現行の5%以下から10%以下に引き上げる方向で検討が進み、それにともない強熱減量規格値を「5.0%以下」から「7.0%以下」に改正することが提案されています。石灰石を増量すると、加熱時に炭酸カルシウム(CaCO₃)が分解してCO₂を放出するため、強熱減量の数値が上がるからです。


これは単なる品質緩和ではなく、「年間最大100万トンのCO₂削減」を目指す環境政策と直結した改正です。現場の施工者としても、今後購入するセメントの品質成績表の数値が変わってくる可能性を念頭に置いておく必要があります。


セメント協会:カーボンニュートラル実現に向けた技術対応とJIS化への取組み(普通ポルトランドセメントの強熱減量上限値改正の詳細が記載)


強熱減量が示すセメントの風化とコンクリート強度への影響

強熱減量の値が大きいほど、セメントの風化が進んでいるとみなせます。では、実際にどの程度の数値になったら「危険」と判断すべきなのでしょうか。


コンクリート主任技士の参考書などでは、「強熱減量が3%以上となれば相当風化していると判断してよい」と明記されています。これは普通ポルトランドセメントの旧規格値(3.0%以下)とも一致しており、現場での実務上の判断基準として今も参照されています。


3%を超えたら相当な風化が疑われます。


さらに、風化と強度低下の関係について、東京工業大学(当時)の研究では次のような数値が示されています。



  • 強熱減量が3%:抗折力が約25%低下

  • 強熱減量が4%:抗折力が約35%低下

  • 強熱減量が5%:抗折力が約45%低下

  • 袋詰め屋内6か月保管後:耐圧力で約30%の強度低下


圧縮強度(耐圧力)の低下率は抗折力よりさらに大きくなる傾向があります。一般的な普通コンクリートの設計基準強度が24N/mm²程度であることを踏まえると、強度が30%落ちれば約17N/mm²まで低下する計算になります。これは構造物の設計前提を大きく損なう数値です。


風化したセメントの外観はどう変わるのかというと、軽微な段階では見た目に変化がなく、触ってみて初めてわかる「固形物(塊)」が生じます。塊が手で簡単にほぐれる程度であれば使用可能とされていますが、硬く固まってしまったものは使用できません。見た目だけで判断するのは危険です。


セメントが風化する主な原因は次の2つです。



  • 空気中の水分(湿気)を吸収することで水和反応が始まり、ゆっくりと固化が進む

  • 空気中の二酸化炭素(CO₂)と反応して炭酸カルシウムが生成される(炭酸化反応)


この2つの反応がともに強熱減量の増加につながります。お菓子の粉が湿気で固まるイメージに近く、セメントサイロのような密閉容器での保管が最も効果的な防止策となります。


日本建築学会の鉄筋コンクリート工事標準仕様書(JASS 5)の解説には、「購入後2か月以上経過したものについては、強熱減量等の品質を確認することが望ましい」と記述されています。現場では賞味期限のような明確な期限表示がないセメントについて、この基準を意識しておくことが大切です。


スミセ建材株式会社:セメントの強熱減量・全アルカリ・塩化物イオン等のJIS規格とその意味をわかりやすく解説


強熱減量試験の方法と計算手順:現場担当者が押さえるべき実務知識

強熱減量試験は、JIS R 5202(セメントの化学分析方法)に規定されています。試験は電気マッフル炉を使って行い、高温加熱・冷却・質量測定という流れを恒量が得られるまで繰り返します。基本的な手順は次のとおりです。



  1. あらかじめ空焼きしたるつぼの風袋(空質量)を測定する

  2. 試料(乾燥セメント)をるつぼに入れて質量を測定する

  3. 電気マッフル炉(950±25℃)で15分間加熱する

  4. デシケータ中で室温まで放冷した後、質量を測定する

  5. 加熱→冷却→測定を繰り返し、前後の質量差が0.0005g未満になったら「恒量」と判断する


計算式は以下のとおりです。


$$\text{強熱減量(\%)} = \frac{m - m'}{m} \times 100$$


$$m$$:強熱前の試料質量(g)、$$m'$$:強熱後の試料質量(g)


恒量が基本です。


高炉セメントおよび高炉スラグの試験では、同じ950±25℃で測定するものの、加熱の前後でSO₃(三酸化硫黄)含有率を別途測定し、硫化物が酸化された分の増量補正を行うという特殊な手順が加わります。これを怠ると実際より低い強熱減量が算出されてしまう点に注意が必要です。


試験の許容差(繰り返し試験の誤差上限)はJIS R 5202に規定されており、2回の試験結果の差が許容差より大きい場合はさらに1回追加試験を行い、最も近い2つの結果の平均を採用するルールになっています。


現場や工場での品質管理を目的とした場合は、1回の試験でも可とされています。ただし、官公庁工事での材料確認試験など、正式な証明が必要な場面では繰り返し試験が求められることがほとんどです。どのような目的で試験を実施するかを事前に確認しておくことをおすすめします。


なお、強熱減量は石こう(二水石膏)の脱水による質量減量も数値に含まれます。そのため、石こうを多く含むセメントほど強熱減量が高めに出る傾向があります。また、各種混合材(高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材)の種類によっても、見かけ上強熱減量が増す場合があることがJIS規格の解説でも注記されています。単純に「値が大きい=品質が悪い」と判断するのではなく、セメントの種類や混合材の影響を踏まえた総合的な判断が重要です。


JIS R 5202(セメントの化学分析方法):強熱減量の定量方法・計算式・許容差の規定が記載された公式規格ページ


フライアッシュと強熱減量:混和材使用時に見落としやすいポイント

コンクリートの混和材として広く使われるフライアッシュ(石炭火力発電所の副産物)にも、強熱減量の規格が定められています。ただし、その「意味」はセメントの強熱減量とは異なる点に注意が必要です。


フライアッシュの強熱減量は、主に「未燃炭素量」を示す指標です。石炭が十分に燃焼しきれなかった場合、フライアッシュ中に未燃炭素が残留します。この未燃炭素が多いと、コンクリートに使用した際にAE剤(気泡連行剤)を炭素が吸着してしまい、空気量のコントロールが難しくなります。その結果、凍結融解抵抗性が低下するなど、耐久性に直接影響が出ます。


JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)では、Ⅰ種とⅡ種の強熱減量を5.0%以下と規定しています。フライアッシュの測定は950〜1000℃の高温で行い、その質量減少率から強熱減量を求めます。


フライアッシュの強熱減量はAE剤吸着のリスク指標です。


セメントの強熱減量が「風化・炭酸化」の指標であるのに対し、フライアッシュの強熱減量は「燃焼度・未燃炭素量」の指標という違いを明確に理解しておく必要があります。現場では同じ「強熱減量」という言葉が使われていても、対象材料によって意味合いが異なります。


膨張材(JIS A 6202)についても同様に強熱減量の上限が規定されており、3.0%以下とされています。膨張材が風化すると付着水分が増加し、膨張性能が低下する傾向があるため、こちらもセメントと同様の理由で管理が必要です。乾燥収縮や温度ひび割れ対策として膨張材を使用する際は、品質成績表での強熱減量の確認を欠かさないようにしましょう。


フライアッシュの品質確認試験(JIS A 6201):フライアッシュの強熱減量測定方法と未燃炭素との関係を詳解したPDF資料


また、フライアッシュを使用したコンクリートのAE空気量管理の難しさを補うために、「加熱改質フライアッシュ(CfFA)」と呼ばれる製品も開発されています。これは未燃炭素を事前に燃焼処理することで強熱減量を低減させたフライアッシュで、Ⅰ種・Ⅱ種以上の品質安定性が期待できます。使用するフライアッシュの品質ロットにばらつきを感じている場合は、加熱改質品の選択も検討に値します。


【独自視点】強熱減量とカーボンニュートラル:規格値の「緩和」が現場品質管理を変える理由

現場の多くの技術者は「強熱減量規格値の改正=品質が多少落ちても仕方ない」と受け取りがちですが、実際はそれほど単純ではありません。規格値の緩和が現場品質管理の「判断基準の見直し」を求めているという点に、改めて目を向ける必要があります。


セメント協会が進めるJIS改正の核心は、普通ポルトランドセメントの少量混合成分(主として石灰石)を最大10%まで増量することで、クリンカ比率を約5%削減し、CO₂排出量を年間最大100万トン削減するという環境目標です。石灰石(炭酸カルシウム:CaCO₃)は加熱すると確実にCO₂を放出するため、混合量が増えれば強熱減量は数値として上がります。この結果、従来は「風化の進んだセメント」として問題になっていたような強熱減量7%近傍の数値が、将来的には規格内の正常品として流通する可能性があります。


これは知っておくと大きな違いがあります。


具体的にどう管理を変えるべきかというと、重要なのは「強熱減量の数値を単独で評価しない」という視点です。新しい規格のセメントでは、混合成分の種類・比率、試験体の圧縮強度、凝結時間など複数の品質成績表を総合的に確認した上で受け入れ判断をすることが不可欠になります。



  • 品質成績表に記載されたセメントの少量混合成分の割合(石灰石量)を確認する

  • 強熱減量の数値が高い場合は、「石灰石増量によるものか」「風化によるものか」を凝結試験や圧縮強度値で判断する

  • 長期保管セメントの場合は、製造ロット日付と強熱減量の両方から総合評価する


また、普通ポルトランドセメント1トンを製造する際のCO₂排出量は約770kgとされています。同じセメント1トンで比較すると、高炉セメントB種は約440kgとなっており、環境負荷の観点では混合セメントの活用も選択肢の一つです。発注者や設計者との協議の場でセメント種類の変更提案ができると、現場レベルでのCO₂削減にも貢献できます。


強熱減量という一つの数値が、これほど多くの情報をはらんでいるということを現場技術者として理解しておくことは、品質管理の精度を上げるだけでなく、設計・発注者との技術的対話を深める力にもつながります。JIS規格の改正動向は、単なる数値の変化ではなく業界全体の方向性を示すものです。セメント協会の最新の公開資料を定期的に確認することをお勧めします。


セメント協会:カーボンニュートラルに向けた技術対応と標準化への取組み(2024年10月公開)。少量混合成分10%化とCO₂削減効果の詳細が記載






関西機器製作所 電気炉 KC-28-A 1.5kW【セメント試験 化学分析方法】【JIS R 5202】【試験用 試験器 試験機 測量機器】