

3面接着で施工すると、シーリングが数年で破断してクレームの原因になります。
建築現場で「ウェットシール」と「ドライシール」という言葉を耳にすることがあります。この2つは明確に異なる工法であり、用途によって使い分けることが基本です。
ウェットシール(Wet Seal)とは、液状または半固体状のシーリング材(シリコーン系・変成シリコーン系・ポリサルファイド系など)を目地や隙間に充填して、硬化後に弾性体として機能させる工法です。対してドライシール(Dry Seal)は、ガスケット・ゴムパッキン・AT材など「定形シーリング材」と呼ばれる成型済み製品を機械的にはめ込む工法です。つまり、施工後に液体が固まるかどうかが最大の違いです。
ウェットシール方式は、現場での充填が可能なため複雑な形状の目地や部材間の隙間にも対応できる柔軟性があります。一方、ドライシール方式は工場で精度高く製造されたガスケット類を使用するため、工場加工品との組み合わせや改装サッシなど規格化された部材に向いています。実際、LIXILの改装用サッシ「PRO-SE・RF」シリーズでは、ドライシール工法(水密ゴム・気密ゴム使用)とウェットシール工法(シーリング材使用)の2種類が設定されています。
現場の実態としては、カーテンウォールや一般サッシまわりのジョイント処理にウェットシールが多用されます。これは不規則な現場寸法への追従性が高いためです。
一方でウェットシールは、使用するシーリング材の種類を誤ったり、施工手順を省略したりすると、想定よりはるかに早く劣化する点に注意が必要です。シーリング材の適切な耐用年数は10年程度とされていますが、施工品質が低い場合は5年以内に剥離やひび割れが生じることもあります。どちらの工法を選ぶかは設計仕様書・特記仕様書を確認し、指定工法に従うのが原則です。
| 項目 | ウェットシール | ドライシール |
|---|---|---|
| 材料形態 | 液状・ペースト状 | 成型済みガスケット |
| 主な用途 | サッシ廻り・カーテンウォールジョイント | 改装サッシ・規格化された目地 |
| 耐用年数 | 約10年(材料・施工品質による) | 材料・設置条件による |
| 施工の柔軟性 | 高い(複雑な形状に対応可能) | やや低い(規格部材向き) |
ウェットシールの品質を決定づけるのは、「どのシーリング材を使うか」です。シーリング材は主成分によって性質が大きく異なり、使用場所を間違えると早期劣化やトラブルを招きます。
建築現場で最も多く使われるのは変成シリコーン系(MS)です。耐候性・止水性が高く、周辺への汚染が少なく、上から塗装が可能という特性を持ちます。サッシまわりの外部シールには基本的にMS-2(2成分形)が採用されます。温度差によるムーブメントにも追従できる柔軟性があり、外部目地に非常に向いています。
シリコーン系(SR)はすべてのシーリング材の中で最も耐候性・耐水性が高く、ガラス廻りの施工に適しています。ただし、シリコーンオイルが周囲を汚染しやすく、上から塗装ができないという重大な欠点があります。外部で使用するとシリコーンオイルが外壁面を汚染し、雨筋状の黒ずみが出る原因になるため、外壁目地への使用は避けるのが鉄則です。これは現場でよく起きるミスです。
ポリサルファイド系(PS)は打ち継ぎ性が非常に高く、先打ちシールとして工場施工される場合に多用されます。後打ちが変成シリコーンであっても接着できるため、サッシ工場での水切シール先打ちに向いています。
1成分形は湿気と反応して硬化するため、カートリッジのまま使えて便利です。一方2成分形は基材と硬化剤を混合して使うため、専用のコーキングガンや撹拌機が必要ですが、気候変化に関わらず安定して硬化し、経年での痩せが少なく耐久性が高い傾向があります。一般に1回の充填量が30m以上になる場合は2成分形の方がコスト的に有利です。
シーリング材の選定に迷ったときは、メーカーの「プライマー選定表」と「適材適所一覧表」を確認するのが確実です。被着体(コンクリート・サッシ・ガラス・金属など)との組み合わせにより、最適なシーリング材とプライマーが変わります。
🔗 サッシのシーリング材の種類と選定ポイント(窓の教科書)
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正しい施工手順を踏まないウェットシールは、どれだけ高品質な材料を使っても早期にトラブルを起こします。手順の意味を理解して施工することが、長期品質の確保につながります。
① 清掃・下地処理
シーリング材は接着性が命です。被着面に油分・水分・ほこり・旧シーリング材の残留物などがあると、プライマーを塗っても接着不良を起こします。清掃は徹底が基本です。
② 養生テープ(マスキングテープ)の貼り付け
シーリング材がはみ出さないように目地の両側に沿って養生テープを貼ります。養生テープは仕上げ後、シーリング材が硬化する前に除去するのが正解です。硬化後に剥がすと仕上げ面が荒れる原因になります。
③ バックアップ材またはボンドブレーカーの設置
これが品質を左右する最重要ポイントの一つです。目地が深い場合はバックアップ材(ポリエチレンフォームまたはゴムスポンジ製)を挿入して充填深さを調整します。目地が浅い場合は目地底にボンドブレーカー(厚さ0.06〜0.15mm程度の非接着性テープ)を貼ります。どちらの目的も「2面接着」の確保です。
シーリング材が目地の両側面だけに接着している状態が2面接着で、これにより目地に動き(ムーブメント)が生じてもシーリング材が伸縮追従できます。底面にまで接着した3面接着の状態になると追従性が著しく低下し、数年以内に破断・ひび割れが生じます。
④ プライマーの塗布
被着体に合わせた専用プライマーを、ハケなどで均一に塗布します。プライマーの乾燥時間を守らずにシーリング材を充填すると密着不良の原因になります。乾燥時間はメーカー仕様書を確認するのが確実です。また、プライマーを塗布してからシーリング材を充填するまでの時間(可使時間)も製品ごとに規定があるため、時間内に施工することが必要です。
⑤ シーリング材の充填
コーキングガンのノズルを目地底に当て、ゆっくりかつ連続して充填します。充填量が少ないと後退接着(シーリング材が目地内部へ引き込まれる現象)が起き、薄い箇所から破断します。目地幅が10〜15mmの場合、充填深さは8〜10mm程度が標準です。
⑥ ヘラ仕上げ
充填後はすぐにヘラで押さえながら表面を均一に仕上げます。このとき気泡が入らないよう丁寧に押し込むことが重要です。
⑦ 養生テープの除去
仕上げ直後、シーリング材が硬化する前に養生テープを外側に向けて引き剥がします。
現場での施工ミスとして最も多いのが「3面接着」と「打ち増し」の誤用です。どちらも一見問題なさそうに見えますが、実態は長期品質に深刻なダメージを与えます。
3面接着がNGな理由
サイディング外壁やカーテンウォールパネルは、温度変化・地震・風圧などによって常に微細な動き(ムーブメント)が生じています。目地に充填されたシーリング材が両側面と底面の3面に接着している状態(3面接着)では、このムーブメントに追従できません。たとえばシーリング材に伸縮率100%の製品を使っても、3面接着では実際に発揮できる伸縮率が大幅に制限されます。結果として、ひび割れや破断が著しく早まります。3面接着は早期破断の主因です。
対策は、バックアップ材またはボンドブレーカーを正しく設置することです。これにより目地底面への接着を防ぎ、2面接着の状態を確保できます。
打ち増しの落とし穴
既存のシーリング材が劣化している場合、上からシーリング材を追加する「打ち増し(増し打ち)」という方法があります。費用相場は1mあたり約500〜900円と、打ち替え(約900〜1,200円/m)より安価です。
しかし、縦目地(ワーキングジョイント)の打ち増しは基本NGとされています。なぜなら、劣化して弾力性を失った旧シーリング材の上に新しいシーリング材を重ねても、旧材が動きに追従できないため新材も一緒に破断するリスクがあるからです。また、旧材がすでに剥離している箇所では新材の接着面積が不十分になります。
打ち増しが許容されるのは、サッシ廻りなど動きが比較的小さいノンワーキングジョイントで、かつ既存シーリング材の状態が良好な場合に限られます。動きのある縦目地や、劣化が進んだ箇所では打ち替えを選ぶのが鉄則です。
参考として、建物全体の打ち替え費用は、一般的な戸建て(30〜40坪程度)で足場代を含めると33〜45万円程度かかります。コスト面だけで打ち増しを選ぶと、数年後に再工事が必要になり、結果的に余計なコストがかかる可能性があります。痛い判断になりますね。
ウェットシールの品質は、施工後の養生条件にも大きく左右されます。この点は現場で見落とされやすいポイントです。
シリコーン系シーリング材は、施工直後(表面硬化が進んでいない状態)に水や雨に濡れると「白濁」や「密着不良」を起こします。表面硬化にかかる時間は気温・湿度によって異なりますが、23℃・湿度50%の条件下では30分〜1時間程度で表面が硬化し始めます。逆に低温・低湿度の条件では硬化が著しく遅くなります。気温5℃以下ではシーリング材の施工自体を避けるのが原則です。
また、施工当日の気象条件も重要です。降雨・降雪・強風時は施工を避けることが基本とされています。被着面に水分が残っていると、プライマーの効果が著しく低下し接着不良を起こします。雨天後は被着面が十分に乾燥したことを確認してから施工に入ることが必要です。
硬化後の品質確認として「テンションチェック」があります。これは充填後に指などでシーリング材を軽く引っ張り、適切に硬化・接着しているかを確認する方法です。剥離や引き裂けが生じる場合は接着不良の可能性があり、打ち替えを検討します。
さらに見落とされやすい点として、プライマー塗布後の「オープンタイム(可使時間)」があります。プライマーは塗布後に完全乾燥してからシーリング材を充填する必要がありますが、乾燥しすぎた場合(時間を置きすぎた場合)もプライマーの接着効果が低下します。使用するプライマーのデータシートに記載された可使時間を厳守することが、品質確保の条件です。
施工環境のチェックポイントをまとめます。
- 🌡️ 気温:5℃以上・40℃以下が基本(メーカー規定による)
- 💧 湿度:湿度が極端に高い(85%超)場合は避けることが望ましい
- 🌧️ 天候:降雨・降雪・強風時は施工不可
- ⏱️ プライマー乾燥:塗布後の可使時間を守る
- 🔍 被着面状態:油分・水分・旧材の残留物がないことを確認
養生条件の管理は地味な作業ですが、シーリング材の長期品質を左右します。これは必須の確認事項です。
🔗 シーリング工事における品質管理の基準(日本シーリング材工業会)
https://www.sealant.gr.jp/
ウェットシールは「一度施工すればずっと大丈夫」ではありません。実際には定期的なメンテナンスが不可欠であり、これを怠ると雨漏りや建物の構造損傷につながります。
シーリング材の標準的な耐用年数は約10年とされています。ただし、これは適切な材料選定・施工・養生が行われた場合の話です。南西向きの外壁面など紫外線や熱にさらされやすい箇所は、これより短いサイクルでの点検が必要です。目安として、3〜5年ごとの目視点検を建物オーナーに提案すると、施工者としての信頼性が上がります。
劣化のサインは「5つのブリッジ」として覚えると便利です。①ひび割れ(クラック)、②剥離(被着体からの浮き上がり)、③ブリード現象(シーリング材表面がべたつき周辺が黒ずむ)、④肉痩せ(シーリング材が縮んで薄くなる)、⑤変色(白濁・黄変)です。このうちひとつでも確認できれば、補修のタイミングを検討します。
ここで独自の視点として取り上げたいのが「シーリング管理士の活用」です。シーリング材の施工には国家資格「シーリング防水施工技能士」がありますが、それとは別に「シーリング管理士」という民間資格が存在します。材料・設計・施工の幅広い知識を持ち、現場での指導や品質管理を担う立場の専門家です。大規模改修工事の仕様書作成や施工管理において、シーリング管理士が関与することで施工品質のばらつきを防ぎ、結果として改修周期の延長・コスト削減につながるケースがあります。
また、ウェットシールの耐久性向上策として近年注目されているのが「高耐久シーリング材」の採用です。従来の標準的なシーリング材に比べ、耐侯性区分「9030」や「10030」(JIS A 5758に基づく高い変形追従性能を持つ区分)の製品を使用することで、理論上の耐用年数を20〜30年まで延ばせる製品も登場しています。初期コストはやや高くなりますが、改修工事の頻度が下がり、長期的なライフサイクルコスト削減につながる可能性があります。結論はコストの最適化です。
施工業者として長期的な信頼を積み上げるには、材料の選択から施工・アフターフォローまでのトータルな品質管理の提案ができることが重要です。ウェットシールは「見えにくい部位」だからこそ、品質差が施工者の評価に直結します。
🔗 シーリング材の耐久性区分と選定基準(日本シーリング材工業会 技術資料)
https://www.sealant.gr.jp/