

サイディング目地に3面接着すると、5〜7年で14〜24万円の修繕費が発生します。
建築シーリング工事では、目地を「動くか・動かないか」という観点で大きく2種類に分類します。それがワーキングジョイントとノンワーキングジョイントです。この2つの区別こそが、シーリング施工の正否を決める最初の判断ポイントになります。
ワーキングジョイントとは、温度・湿度の変化や地震・風圧などによって、目地幅が大きく変動する(ムーブメントが大きい)目地を指します。一般社団法人日本シーリング材工業会をはじめ、業界標準仕様書であるJASS8においても「ムーブメントが比較的大きい目地」と定義されています。具体的には、窯業系サイディングの縦目地・横目地、ALCパネルの目地、金属カーテンウォールの目地、ガラス回り・建具回りの目地などが代表例です。
一方、ノンワーキングジョイントとは、ムーブメントがほとんど生じないか、非常に小さい目地を指します。鉄筋コンクリート造のひび割れ誘発目地、打ち継ぎ目地、タイル・石材の伸縮調整目地などが該当します。これらは構造上、被着体の変形がほとんど想定されないため、目地底にも接着させる3面接着が有効です。
つまり「目地が動くか動かないか」が基本です。
この分類を現場で正しく判断するためには、建材の種類や構造形式を事前に把握しておくことが欠かせません。たとえば同じ「窓まわり」でも、木造・鉄骨造の建具枠回りはワーキングジョイント、鉄筋コンクリート造の建具枠回りはノンワーキングジョイントとなる場合があり、同じ箇所でも構造形式によって分類が変わる点に注意が必要です。
参考:JASS8(日本建築学会建築工事標準仕様書「防水工事」)に基づくシーリング目地設計の基本的考え方
シーリング目地の設計|ペンギン会ウェブサイト(ムーブメントの種類・目地設計の手順を詳解)
ワーキングジョイントとノンワーキングジョイントの一番根本的な違いは、ムーブメント(目地の動き幅)の大きさです。これを理解しないと、シーリング材の設計も接着方法も正しく選べません。
ムーブメントが発生する主な原因は以下の5種類に整理できます。
ワーキングジョイントはこれらのムーブメントが重なって発生します。たとえば窯業系サイディングの縦目地では、夏冬の温度差が40〜50℃になる地域で約1mm前後の伸縮が繰り返されることが実測データで確認されています。はがきの厚み(約0.2mm)の5枚分に相当する動きが毎年何百回と繰り返されるわけです。
ノンワーキングジョイントでは、こうした繰り返しのムーブメントがほとんどありません。結論はシンプルです。
動く目地か・動かない目地かが原則です。
この動きの大小を踏まえたうえで、次のステップとして「接着方法をどうするか」という判断に進むことになります。現場での目視確認だけでなく、設計図書の仕様や建材メーカーの施工要領書を参照して、対象目地がどちらに分類されるか確認する習慣をつけることが、施工不良を未然に防ぐ近道です。
参考:温度ムーブメントや層間変位の種類と算定方法について
シーリング目地の設計|ペンギン会ウェブサイト(ムーブメントの5種類の解説)
ムーブメントの大小という分類が決まったら、次は「シーリング材をどの面に接着させるか」という接着方法の選択です。これがワーキングジョイントとノンワーキングジョイントで最も重要な施工上の違いになります。
目地の断面を見ると、両側面(左右の外壁面)と底面の計3つの面があります。
ワーキングジョイントには必ず2面接着を選択します。目地が伸縮するとき、シーリング材は左右に引っ張られながら変形します。もし底面にも接着されていると、シーリング材の自由な伸縮が底面によって拘束されてしまいます。その結果、シーリング材に局部的な応力集中が起こり、ひび割れ・破断・剥離という不具合が生じやすくなります。これが3面接着がワーキングジョイントでNGとされる理由です。
ノンワーキングジョイントには3面接着が原則となります。目地の動きがほとんどないため、底面に接着してもシーリング材への余分な負荷になりません。逆に、底面まで接着することで防水性が高まり、雨水が目地底に侵入して「水みち」になるリスクを抑えられます。タイル目地・石材目地・コンクリート打ち継ぎ目地などではこの3面接着の防水性が活きてきます。
意外ですね。「しっかり接着させるほど良い」という感覚は、動く目地では逆効果になります。
築5〜7年程度でサイディング目地のシーリングにひび割れが多発しているケースでは、3面接着になっていた可能性が高く、2面接着への打ち替えが必要になります。コーキング打ち替えの費用相場は1mあたり900〜1,100円、バックアップ材等の追加費用は1mあたり500〜900円程度で、戸建て住宅1棟の場合、総額14〜24万円(足場代別途)が目安とされています。
参考:2面接着・3面接着の違い、費用相場と改修手順について
目地の3面接着ひび割れを解決!2面接着への改修手順と費用相場|ペイント官兵衛(費用相場・施工手順の詳細)
ワーキングジョイントとノンワーキングジョイントのどちらに該当するかを現場で素早く判断するために、代表的な箇所を整理しておきましょう。
ワーキングジョイントの代表箇所:
ノンワーキングジョイントの代表箇所:
ここで注意が必要なのは、「窓まわり=ノンワーキング」と思い込んでしまうケースです。実際には木造・鉄骨造の建具枠まわりはワーキングジョイントに分類されます。構造形式によって同じ「窓まわり」でも分類が変わる点は、施工前の確認で見落としがちなポイントです。
もう1点、見落とされやすいのが鉄骨造です。鉄骨は金属であるため、熱による伸縮が非常に大きい素材です。よって、鉄骨造の建具回り・外装パネルの目地は原則としてワーキングジョイントと考える必要があります。これが条件です。
現場で判断に迷った場合は、建材メーカーの施工要領書や、JASS8などの標準仕様書を確認するのが確実です。YKK APのWebサイトにはサッシ周辺のシーリング仕様に関する技術基準が公開されており、参考になります。
参考:サッシ周辺のシーリング材の種類・打継の目安・技術基準について
シーリング|技術基準・関連法規|YKK AP株式会社(シーリング材の種類・使用上の留意事項)
ワーキングジョイントに2面接着を確実に施工するためには、目地底にシーリング材が接着しないよう物理的に防ぐ部材が不可欠です。その部材がバックアップ材とボンドブレーカーの2種類です。どちらを選ぶかは、目地の深さで判断します。
バックアップ材は、発泡ポリエチレン製の棒状部材で、目地の奥に押し込んで使用します。シーリング材と接着しにくい素材でできており、弾力性があって適度な強度を持ちます。目地幅に合わせたサイズを選び、目地奥に押し込むことでシーリング材の充填深さを適切にコントロールします。目地幅10mmなら目地深さ10mm程度(はがきの横幅=100mm、その10分の1)が標準とされており、目地深さが10mmを超えるような深い目地でバックアップ材が有効です。これは使えそうです。
ボンドブレーカーは、見た目がセロハンテープに近い特殊テープで、目地底に貼り付けてシーリング材の接着を防ぎます。バックアップ材を挿入できないような浅い目地、例えば目地深さが5〜8mm程度しか確保できない箇所ではボンドブレーカーを選択します。
| 部材 | 材質 | 使用場面 | 役割 |
|---|---|---|---|
| バックアップ材 | 発泡ポリエチレン | 目地が深い場合(10mm超) | 目地深さの調整+3面接着の防止 |
| ボンドブレーカー | 特殊テープ(PE系) | 目地が浅い場合(10mm未満) | 目地底への接着防止 |