

濃い色を選んでも遮熱効果は同色の一般塗料より高いが、COOLレベル1では日射反射率が50%未満まで落ちる。
アレスダイナミックTOP遮熱は、関西ペイント株式会社が発売する「水性反応硬化形ハルスハイリッチシリコン樹脂系外壁用高日射反射率塗料」です。分類上はシリコン樹脂系に属しますが、ラジカル制御機能の搭載によって耐候性はフッ素塗料に迫るグレードとなっています。
製品の荷姿は15kgと4kgの2サイズで展開されており、標準色は28色(つや有り・5分つや・3分つや)から選択可能です。公式の希望小売価格は69,300円/15kg(税込)と設定されており、平米単価に換算すると実勢で2,500〜3,000円程度が目安になります。
耐用年数は13〜15年程度が目安です。30年スパンで考えると、耐用年数10年の一般シリコン塗料では3回塗装が必要なところ、本品なら2回で済む計算になります。初期費用は上がるものの、長期的なメンテナンスコストを抑えたい現場には合理的な選択肢といえます。
適用下地は窯業系サイディングボード・コンクリート・モルタル・ALC・各種旧塗膜です。ただし、屋根への適用は不可とメーカーが明示しています。外壁専用製品という点は、施工業者として最初に確認しておく必要があります。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| 樹脂系 | 水性反応硬化形ハルスハイリッチシリコン樹脂 |
| 荷姿 | 15kg・4kg |
| 艶 | つや有り / 5分つや / 3分つや |
| 標準色数 | 28色 |
| 耐用年数目安 | 13〜15年 |
| 希望小売価格 | 69,300円/15kg(税込) |
| 適用下地 | 窯業系サイディング・コンクリート・モルタル・ALC・各種旧塗膜 |
| 屋根適用 | ❌ 不可 |
参考:関西ペイント公式カタログ(アレスダイナミックTOP遮熱)
アレスダイナミックTOP遮熱 公式製品カタログ(関西ペイント)
本製品の最大の特徴は、「遮熱」と「耐候」の2つの機能軸を同時に実現している点にあります。
🔷 ダイナミックIRブロック技術(遮熱)の仕組み
赤外線を反射する特殊顔料を上塗に配合し、さらに下塗である「アレスダイナミックシーラーアクア白」が上塗を透過した赤外線を反射する二段構え設計になっています。上塗だけではなく下塗との組み合わせで初めてフルスペックの遮熱性能を発揮するシステムです。これが重要なポイントで、下塗に同社指定品以外を使うと遮熱性能が本来の数値を下回る可能性があります。
実際の遮熱性能の効果として、ハロゲンランプ照射試験では一般外壁用塗料と比べて表面温度が11.4℃低減(塗色KP-75R)、濃色のKP-376Rでは最大21℃の低減効果が確認されています。真夏のコンクリート壁面が60〜70℃に達することを考えると、21℃の低下はかなりインパクトのある数値です。これは冷房負荷の軽減にも直結し、省エネ面でも訴求できる要素となります。
🔷 ラジカル制御技術(耐候)の4層構造
「高性能シリコンレジン」「UVトラップ」「ラジカルバリヤコート」「HALSラジカルキャッチャー」の4段階で塗膜劣化の原因となるラジカルの発生を防ぎます。それだけ条件が揃っています。促進耐候性試験では、3,000時間照射後の光沢保持率が従来フッ素塗料レベルに匹敵するデータが出ています。
🔷 超低汚染機能と防カビ・防藻
汚れが付着すると遮熱効果が低下するという弱点を、超低汚染機能でカバーしています。時間が経って汚れが積もると遮熱塗料の赤外線反射率が下がりますが、塗膜の緻密な構造が汚れを弾くことで遮熱性能を長期間維持します。防カビ・防藻剤も配合しており、中塗・上塗の塗膜全体で生物付着を抑制します。
これら4つの機能が統合されているのが基本です。遮熱だけ、耐候だけではなく、複合機能が一製品に凝縮されている点が建築現場での採用理由として多くあげられています。
参考:コーティングメディアによる製品リリース解説
遮熱+断熱工法、住宅市場向けに発売 猛暑・酷暑に高い説得力(コーティングメディア)
遮熱塗料を選んでも「どの色を使うか」で効果は大きく変わります。これは知らずにいると後で後悔する部分です。
アレスダイナミックTOP遮熱には、独自の「COOLレベル」表示があります。1〜5の5段階で、レベル5が日射反射率80%以上、レベル1は50%未満となっています。
| COOLレベル | 日射反射率の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| レベル5 ⭐⭐⭐⭐⭐ | 80%以上 | 白系・淡色。最高水準の遮熱効果 |
| レベル4 ⭐⭐⭐⭐ | 70〜80% | 薄いベージュ・ライトグレー系 |
| レベル3 ⭐⭐⭐ | 60〜70% | 中程度の明度。ベージュ・クリーム |
| レベル2 ⭐⭐ | 50〜60% | くすみカラー・中彩色 |
| レベル1 ⭐ | 50%未満 | 濃色・ダークカラー。遮熱効果は相対的に低い |
同じ色同士で比較すれば一般塗料よりも高い遮熱性を持つのが本製品の強みです。ただし「遮熱塗料を選んだから安心」と考えて濃色を選んでしまうと、遮熱効果が半分以下になる場合があります。
施主から「遮熱重視でとにかく効果を出したい」という要望がある場合は、COOLレベル3以上の色域を提案することが現場のセオリーといえます。
また、濃彩色(原色に近いカラー)を選択した場合は材料費が割高になることも知っておく必要があります。標準の28色以外から鮮やかな赤・黄・青・緑系を選ぶと、あらかじめ同系の共色で下塗りが必要になるケースもあります。つまり工程と材料費が増加します。提案時の見積もりにこの点を含めておかないと、後でトラブルになるリスクがあります。
さらに見落としやすいのが、遮熱塗料の中塗が「白色」固定になっている点です。特に断熱遮熱工法「アレスダイナミックECO断熱遮熱工法」では、中塗の「アレスダイナミックECO断熱」は白色のみとなります。上塗の塗付量が少ないと白色中塗りが透けて仕上がり不良になるため、透けやかすれなく塗付量を確保することが施工精度のカギです。
現場で迷わないために、標準塗装仕様を正確に把握しておくことが重要です。
【標準工程(外壁単独遮熱仕様)】
【断熱遮熱工法(ECO断熱遮熱工法)の場合】
施工ポイントとして注意が必要なのは下記の点です。
気温5℃以下・湿度80%以上での施工は中止が基本です。また、乾燥後の養生テープは塗膜を傷めないよう、乾燥前に剥がすのが原則です。乾燥後に剥がす場合はカッターでカットしてからにしましょう。
下地の表面含水率はpH10以下・含水率10%以下(ケット科学社製CH-2で測定)を確認してから塗装します。水洗直後はこの数値を超えていることが多いため、測定確認のうえ着工する流れが必要です。
アレスダイナミックTOP遮熱単独でも十分な遮熱性能を持ちますが、2024年10月に発売された「アレスダイナミックECO断熱遮熱工法」との組み合わせで、さらに一段階上の断熱・遮熱効果が期待できます。
この工法の核心が「トリプルブロック技術」です。
遮熱単体工法よりも高い省エネ効果が得られる点が、近年の猛暑・酷暑対策への訴求力になっています。
さらに注目すべき機能があります。ECO断熱遮熱工法は壁内結露の軽減にも寄与します。外断熱機能が働くことで躯体の木材が水分から守られ、断熱材のズリ落ち・腐朽・カビ・シロアリなどのリスク低減につながるとされています。これは施主への提案における「見えない価値」として伝えやすい部分です。
製品構成として、中塗のアレスダイナミックECO断熱は10kg入りで希望小売価格19,250円(税込)。白色1色展開です。上塗はアレスダイナミックTOP遮熱の標準28色から選択します。ECO断熱工法の場合、中塗に多孔質ローラーを使用する点が通常工法との違いです。通常のローラーでは断熱材が均一に広がらないため、専用ローラーの準備が必要です。
近年、省エネ建築への関心が高まる中、この工法は塗装店の差別化メニューとして展開しやすいポジションにあります。また、ラジカル制御技術が4層構造で塗膜劣化を防ぐため、高い遮熱・断熱効果を長期にわたって維持できる点も現場の評価を集める理由の一つです。
参考:関西ペイント公式 外壁用多機能形断熱遮熱システムカタログ
アレスダイナミックECO断熱遮熱工法 製品カタログ(関西ペイント)
遮熱性能や耐候性の高さが注目されがちですが、施工業者として最も重要なのはトラブルを起こさない知識です。
❌ 本品が適用できない箇所(絶対厳守)
これが条件です。特に屋根に誤用するケースが最も多いトラブル事例として報告されています。アレスダイナミックシリーズには屋根専用の「アレスダイナミックルーフ遮熱」が別途存在するため、屋根と外壁それぞれで製品を使い分ける必要があります。
⚠️ 高断熱型外壁への塗り替えリスク
軽量モルタル・ALC・高断熱型窯業系サイディング・発泡ウレタン使用建材など「高断熱型外壁」への塗り替えで、旧塗膜が溶剤系アクリルトップである場合、蓄熱や水の影響によって塗膜のふくれが発生するケースがあります。この場合は「マルチタイルコンクリートプライマーEPO」を塗装して対応する必要があります。
旧塗膜が何であるかを施工前に必ず確認する、というのが鉄則です。
⚠️ 旧塗膜に光沢が残っている場合
光沢が残り劣化していない旧塗膜はそのまま塗装すると付着不良・塗り重ねちぢみが発生することがあります。目荒らし等の処理を必ず行いましょう。特に無機系・光触媒・フッ素・シリコン樹脂で処理された窯業系サイディングに塗装する場合は、下塗に「アレスダイナミックシーラーマイルド」を使用したうえで事前に付着性を確認する手順が推奨されています。
⚠️ 施工後間もない降雨対応
施工中・施工後間もなく降雨が発生した場合は、シート養生で塗装面に直接雨がかからないように保護します。乾燥不十分な状態で雨がかかると、白化・つや引け・はがれ・ふくれが発生するリスクがあります。塗膜が白くなってしまうと施主クレームに直結するため、天候の急変への備えは事前に計画しておく必要があります。
参考:外壁塗装の塗料選びと費用相場を解説した専門記事