

停電が起きると、標準的な電動式制御弁はその開度のまま止まり、自動で閉まるとは限りません。
電動式制御弁とは、電動モーターの回転力を減速機構を介してバルブの開閉動作に変換し、配管内を流れる流体(冷水・温水・蒸気・空気など)を自動的または遠隔で制御する機器のことです。建築設備の世界では、空調システムや給排水設備、熱源システムなど、あらゆる場面でこの電動式制御弁が中心的な役割を担っています。
手動弁との最大の違いは「自動化」と「遠隔操作」が可能な点です。制御盤やBAS(ビルオートメーションシステム)、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)と連動させることで、温度センサーや流量センサーの信号に応じて弁の開度を自動調節できます。これが、近年の建築設備における省エネ・省人化の実現を支えている仕組みです。
構造面では、大きく分けて4つのパーツで構成されています。
- 弁本体(バルブ本体):ボール弁・バタフライ弁・グローブ弁・ゲート弁など
- モーター部:電力を回転力に変換する
- 減速機構:回転を低速・高トルクに変換してバルブへ伝える
- 制御ユニット:開度制御・位置フィードバック・アラーム出力などを管理する
つまり「モーターで動くバルブ」が基本です。
電動式制御弁と混同されがちなものに「電磁弁(ソレノイドバルブ)」があります。電磁弁はソレノイドの電磁力で直接弁体を動かすため、動作が非常に速い反面、小口径・全開/全閉の単純制御が主な用途です。一方で電動式制御弁はモーターを使う関係上、開閉に数秒〜数十秒かかりますが、その「ゆっくりした動き」がウォーターハンマー(水撃)を防ぐという利点でもあります。大口径配管で精密な流量制御が必要な建築設備には、電動式制御弁の方が適している場面がほとんどです。
電動式制御弁が多用される主な建築設備の場面は以下のとおりです。
- ファンコイルユニット廻りの冷温水制御(電動二方弁)
- 空調機コイル廻りの温水・冷水流量制御(電動三方弁)
- 熱源設備の流量バランス調整
- 蒸気・給湯ラインの圧力・流量制御
- 排水・給水システムの自動開閉
建築設備の現場で活躍する機器ということですね。
▶ 一般社団法人 日本バルブ工業会「自動弁の世界」:自動弁の分類(他力式・自力式)や電動弁・電磁弁の基本的な違いについて詳しく解説されています。
電動式制御弁はバルブ本体の形式によって特性が大きく異なります。建築設備の設計・施工に関わる方は、少なくともボール弁・バタフライ弁・グローブ弁(玉形弁)・ゲート弁の4種類の特徴を押さえておくことが重要です。用途に合わない形式を選ぶと、将来の弁座摩耗や制御精度不足、さらにはコイルへの過流量などのトラブルに直結します。
🔵 電動ボール弁
球状の弁体を90度回転させて開閉する方式です。開閉時間は5〜10秒程度と短く、気密性が高くシンプルな構造のため、メンテナンス性にも優れています。ON/OFF制御はもちろん、流量制御用途にも使われます。耐久性が高く水・油・空気・ガスなど幅広い流体に対応できる汎用性の高さが最大の魅力です。
ただし、注意すべき点があります。部分開度での長時間使用は弁座(シート部分)の損耗を招きやすく、流量調整が主な目的ならば「調整用設計品」と明示されたものを選ぶ必要があります。一般的なON/OFF用ボール弁を比例制御に転用すると、数ヶ月でシートが傷み、漏れが生じることがあります。
🟤 電動バタフライ弁
円盤状のディスクを軸回転させる構造で、大口径配管に最適です。開閉時間は10〜40秒程度。軽量でコストも比較的抑えやすく、冷却水・空気・蒸気・スラリーなど幅広い流体に使われます。同口径のゲート弁に比べ、設置スペースが大幅に小さくなる点も現場では歓迎されます。
弱点はシール性がやや劣る点です。完全遮断が必須な用途には不向きで、高速開閉時にはディスクにかかる水撃を抑えるため、開閉速度の設定に工夫が必要です。
🟢 電動グローブ弁(玉形弁)
弁体を上下させて流路断面積を変化させることで、精密な流量制御を実現します。開閉時間は20〜40秒程度。蒸気・薬液・温水など細かな制御が求められるラインに多用され、PID制御などの高度な自動制御システムへの組み込みがしやすい特性を持っています。
建築設備の空調機コイル廻りで比例制御弁として使われるのは、このグローブ弁形式が多いです。弁特性(等比率特性・直線特性)を流量特性に合わせて選ぶことが重要で、これを誤ると設定温度への収束が不安定になります。
⚫ 電動ゲート弁
弁体(ゲート)を上下させて流路を遮断する方式で、全開・全閉用途に使われます。開閉時間は30〜60秒程度と遅めですが、全開時の圧力損失が極めて小さく、大口径・高圧の送水設備で信頼性が高いです。
絶対に避けるべき使い方が1つあります。ゲート弁を部分開度で調整弁として使うことです。これは弁座の摩耗・振動・損傷の原因になります。ゲート弁は「全開か全閉か」の用途に限定するのが原則です。
以下の表で4種類を比較すると、用途ごとの使い分けが分かりやすくなります。
| 種類 | 得意な用途 | 開閉時間の目安 | 流量制御の精度 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ボール弁 | ON/OFF・汎用 | 5〜10秒 | △(調整用除く) | 部分開度の長時間使用は不可 |
| バタフライ弁 | 大口径・省スペース | 10〜40秒 | ○ | 完全遮断用途には不向き |
| グローブ弁 | 精密流量制御 | 20〜40秒 | ◎ | 弁特性の選定を誤ると制御不安定 |
| ゲート弁 | 大口径・全開全閉 | 30〜60秒 | ✕ | 中間開度での使用は厳禁 |
用途に合った弁形式を選ぶのが基本です。
▶ 「徹底解説:電動弁の種類と選び方ガイド」:駆動方式・バルブ形式の双方から電動弁の選定方法を詳しく解説しています。各形式のメリット・注意点も網羅されています。
電動式制御弁を現場で扱ううえで、必ず理解しておきたいのが「ON/OFF制御」と「比例制御」の違いです。この2つを取り違えると、選定した弁が設備の制御方式と合わず、せっかく設置した機器が本来の性能を発揮できないという事態が起きます。これは実際の建築設備現場でも起こりうるミスです。
ON/OFF制御(二位置制御)とは、弁を「全開(100%)」か「全閉(0%)」のどちらかで動かす制御方式です。室内温度が設定値を超えたら冷水弁を全開にし、設定値を下回ったら全閉にする、というシンプルな動作です。制御の仕組みが単純なため、初期コストが安く、電動ボール弁などとの組み合わせで幅広く使われています。
ただし欠点があります。ON/OFF制御は操作量が「0%か100%か」の二択しかないため、温度がオーバーシュートしやすく、ハンチング(設定値付近で繰り返し動作する現象)が起きやすいです。室内温度が細かく上下し、快適性が損なわれる原因になります。
比例制御(アナログ制御)とは、室内温度と設定値の差(偏差)に比例させて弁の開度を0〜100%の範囲で連続的に調整する方式です。グローブ弁など精密な流量制御が得意なバルブ形式との組み合わせで使われます。制御信号は一般的に4〜20mAのアナログ電流信号、または0〜10VのDC電圧信号が用いられます。
ON/OFF制御に比べてハンチングが少なく、温度が安定しやすいのが最大のメリットです。これはいいことですね。一方で制御盤の設計や配線が複雑になり、初期コストも高くなります。
建築設備での一般的な使い分けの目安は以下のとおりです。
- ファンコイルユニット廻り(電動二方弁):室温に応じたON/OFF制御が多い
- 空調機コイル廻り(電動三方弁・電動二方弁):比例制御で細かく流量を調節する
- 蒸気・熱交換器の温度制御:比例制御(またはPID制御)が標準
比例制御弁には「等比率特性(イコールパーセンテージ)」と「直線特性」の2種類の弁特性があります。空調コイル廻りでは、実際の流量と熱量の関係が直線的でないため、等比率特性の弁を選ぶと全体の制御特性がより安定しやすくなります。直線特性の弁を誤って選んだ場合、低開度域での感度が過大になり、制御が荒れる原因になります。
等比率特性が条件です、と覚えておけばOKです。
▶ 日本アスコ株式会社「第9話:比例制御と制御方式について」:ON/OFF制御と比例制御の違い・比例制御弁の仕組みを分かりやすく解説しています。現場での使い分け理解に役立ちます。
電動式制御弁の選定と施工は、「口径が合えばとりあえず動く」という世界ではありません。口径・必要トルク・制御信号の種類・設置環境という4つの要素を正しく合わせないと、設備運転後にトラブルが起きてからでは対応コストが大きくなります。この段落では、現場で見落とされがちなポイントをまとめます。
① 口径の選定:流量係数(Cv値)で考える
口径をそのまま配管サイズに合わせてしまうのは、よくある選定ミスの一つです。電動式制御弁の場合、重要なのは配管径よりも「必要な流量を確保できるか」という観点から求まる流量係数(Cv値)です。Cv値とは、差圧1PSI(約0.07MPa)のときに1分間に流れる水量(ガロン)で定義される値で、弁の「通しやすさ」の指標です。
Cv値が小さすぎると必要流量が取れず、大きすぎると制御が粗くなります。特に比例制御弁は、制御に使う開度範囲(通常20〜80%程度)でCv値が適切に変化するよう、弁特性と口径の両方を計算のうえ選定することが求められます。
② アクチュエータのトルク:余裕を持って選ぶ
アクチュエータの駆動トルクが不足すると、弁が全開・全閉まで動き切らなかったり、高差圧がかかる状況で動作不良が起きたりします。選定の際は「必要最低トルク」ではなく、設計差圧の1.5〜2倍程度の余裕を持ったトルク仕様を選ぶのが原則です。
一方で、トルクが過大なアクチュエータを取り付けると、弁体・弁座・シャフトに過負荷がかかり、弁本体側の損傷を招く可能性があります。トルクの上限・下限、どちらの誤りも問題です。
③ 制御信号の確認:4〜20mA・0〜10V・接点信号の違い
電動式制御弁のアクチュエータには、制御盤や計装システムから信号が入力されます。主な信号の種類は「接点信号(ON/OFF二位置制御用)」「4〜20mAアナログ信号(比例制御用)」「0〜10VDCアナログ信号(比例制御用)」の3種類です。設計図面の仕様と機器仕様の信号形式が一致しているかを施工前に必ず確認してください。信号の不一致は、現場配線が完了してから発覚するケースもあり、その場合は制御盤の改造や機器交換が必要になります。これは痛いですね。
④ 設置環境:屋外・高温・結露への対応
屋外設置や高温・多湿な機械室に電動式制御弁を取り付ける場合、アクチュエータの保護等級(IP等級)に注意が必要です。IP65以上(防塵・防水性)のアクチュエータを選ぶことが基本です。また、寒冷地や冷却設備周辺では、アクチュエータ内部の結露対策として「スペースヒーター内蔵型」の製品を選ぶと、電装部の腐食・故障リスクを大幅に抑えられます。KITZのEXシリーズなどでは、スペースヒーターを常時通電状態にしておく必要がある点も設計段階で考慮が必要です。
▶ KITZ「電動式自動弁 よくある質問」:停電時の動作・スペースヒーターの必要性・アクチュエータの寿命など、現場で実際に役立つ技術的なQ&Aがまとめられています。
建築設備の現場では、「停電になったら電動弁は自動で閉まる」と思っている方が少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。標準的な電動式制御弁は、停電時にその時点の開度(中間開度の場合もある)でそのまま停止します。つまり、空調機の冷水弁が半開のままフリーズしたり、熱源ラインに意図しない流量が流れ続けたりする状態になり得ます。
この問題を解決するのが「スプリングリターン式」のアクチュエータです。スプリングリターン式とは、通電中はモーターの力でバルブを動かし、電源が失われると内蔵スプリングのバネ力によって自動的に全閉(または全開)状態に戻る仕組みです。これが「フェールセーフ機能」と呼ばれるものです。
アズビル社のACTIVAL(アクティバル)シリーズのように、スプリングリターン機能付きの電動二方弁は、停電時に弁を確実に閉じることでフェールセーフが要求される用途に使われています。建築設備の中でも、次のような場面ではスプリングリターン式の採用を検討する必要があります。
- 停電時に冷温水の供給を自動停止させたい冷暖房系統
- 蒸気配管で停電時に蒸気供給を遮断したい系統
- 消火設備・スプリンクラー系統に接続された弁
- 薬液・危険物を扱う配管の緊急遮断用途
一方で、「停電時に開状態を維持したい」という用途もあります。例えば冷却水系統の循環ラインでは、停電時に弁が閉まると冷却水が循環できず、熱源機器の過熱につながるケースがあります。この場合は「停電時全開タイプ」のスプリングリターンや、KITZなどのメーカーに特注仕様として対応を依頼する形になります。
スプリングリターン式かどうかは機種によって異なります。設計段階で「停電時にどの状態が安全か」をフェールセーフの観点から検討し、仕様書に明記しておくことが、施工後のトラブルを防ぐうえで欠かせない一手です。
また、電動式制御弁を停電時に全開全閉させようとする場合、従来は電動制御弁に加えて電磁弁やスプリングリターン式の緊急遮断弁を組み合わせて設置する必要がありました。しかし近年は、一つのアクチュエータにスプリングリターン機能と比例制御機能を統合した製品も普及しており、機器点数の削減とスペース効率の向上に貢献しています。停電時の仕様を確認してから選ぶのが原則です。
▶ アズビル株式会社「電動弁 ACTIVAL」:スプリングリターン機能を含む電動弁の製品情報。停電時遮断機能を持つ製品の仕様・用途例が掲載されています。
電動式制御弁は「設置すれば長期間メンテナンス不要」と考えがちですが、それは誤りです。アクチュエータには耐久試験上の作動回数があり、適切なメンテナンスを怠ると予期せぬタイミングで動作不良が生じます。設備の信頼性を維持するには、電動式制御弁の寿命基準と定期点検の内容を理解しておく必要があります。
アクチュエータの作動回数と設計推奨使用期間
KITZの技術資料によると、電動式自動弁のアクチュエータは社内試験で10万回、バルブ本体は1万回の耐久試験を実施しています。またアズビル社の電動二方ボール弁では、設計推奨使用期間を10年としています(寿命部品の交換などの定められた保守が適切に行われた場合)。
「10年問題なかったから大丈夫」というわけではありません。推奨使用期間はあくまでも「定期保守を前提とした目安」です。使用頻度・流体の温度や腐食性・設置環境によって寿命は大きく変わります。
定期点検で確認すべき項目
電動式制御弁の定期点検では、以下の項目を確認します。
- モーターの動作音・異常振動の有無
- 弁の全開・全閉動作確認(リミットスイッチの正常動作含む)
- 弁座のシール性能(漏れ・内部リークの有無)
- パッキン・シール材の劣化確認
- 電装部(制御ユニット・端子台・配線)の腐食・絶縁確認
- スペースヒーターの通電確認(屋外・湿潤環境設置の場合)
高温流体を扱うグローブ弁では、パッキン部の劣化が早いため点検サイクルを短めに設定する必要があります。
交換部品の入手性も選定基準に含める
実は、これはあまり語られない視点です。電動式制御弁を選定する際には、「将来、補修部品が入手できるか」という観点も重要です。特に海外メーカーの安価な製品を採用した場合、数年後に後継機種が廃番になり、部品供給が途絶えるリスクがあります。廃盤になったアクチュエータの後継品への交換では、配線変更・追加工事が必要になるケースもあり(KITZのEK/ELシリーズ→EXシリーズの移行がその例)、トータルコストが予想以上に膨らむ可能性があります。
長期的な維持管理コストまで含めた選定が、建築設備においては大切な判断軸になります。つまり「安い製品が安い」とは限らないということですね。
設備の竣工後にメンテナンス計画を立てる際は、電動式制御弁のメーカー推奨点検サイクル・補修部品の保有年数・後継機種情報を仕様書や設計図書に記録しておくと、将来の維持管理担当者にとって大きな助けになります。
▶ 一般社団法人 日本バルブ工業会「自動調節弁のメンテナンス」(PDF):弁本体・アクチュエータそれぞれのメンテナンス上の考え方と点検項目が体系的にまとめられています。
▶ FOLS Valve「電動バルブシステムのメンテナンス方法」:ロックアウト/タグアウト手順も含む、電動バルブの保守作業における安全管理と実践的な点検手順が解説されています。