塩化ビニール管規格とJIS種類・サイズ・用途選定

塩化ビニール管規格とJIS種類・サイズ・用途選定

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塩化ビニール管規格の種類

塩化ビニール管の主要規格
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JIS K 6741(一般用)

VP管・VU管・VM管・HIVP管が該当し、呼び径13~600mmまで規定される一般流体輸送配管用規格

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JIS K 6742(水道用)

水道用硬質ポリ塩化ビニル管として呼び径13~150mmまでのVP管・HIVP管を規定

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JIS K 6776(耐熱用)

給湯用の耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管として呼び径13~50mmまでのHT管を規定

塩化ビニール管規格のJIS分類体系

塩化ビニール管規格は、JIS(日本産業規格)により体系的に分類されており、主要な規格としてJIS K 6741、JIS K 6742、JIS K 6776が存在します。
参考)JIS・JWWA・JIWA・JSWAS規格

JIS K 6741は硬質ポリ塩化ビニル管の一般用規格として、呼び径13~600mmという広範囲をカバーし、VP管HIVP管・VM管・VU管を定義しています。 この規格は建築設備における給水、排水、通気など多様な用途に対応する基本規格として位置づけられます。
参考)塩ビ管, 塩ビパイプ(VP,VU,VM,HIVP)の規格、サ…

JIS K 6742は水道用硬質ポリ塩化ビニル管の専用規格として、呼び径13~150mmのVP管とHIVP管を規定しており、飲料水輸送という重要な役割を担う配管に特化した品質基準を設けています。 水道用規格では、衛生面や耐圧性能に関してより厳格な基準が適用されます。
参考)塩ビ管(塩ビパイプ)|積水化学工業−エスロンタイムズ

JIS K 6776は耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管として、給湯配管に使用されるHT管を呼び径13~50mmの範囲で規定しており、通常の塩ビ管よりも高温環境での使用を想定した特殊規格となっています。
参考)塩ビパイプ

塩化ビニール管規格におけるVP管とVU管の違い

VP管とVU管は同じJIS K 6741規格内で定義されながらも、肉厚と用途が明確に異なる管種として位置づけられています。
参考)塩ビ管の耐用年数はどれくらい?|耐用年数は使用場所で異なる

VP管は肉厚が厚い硬質ポリ塩化ビニル管で、耐圧性能が0~1.0MPaと高く、給水や薬液圧送など圧力がかかる用途に適しています。 例えば呼び径50mmのVP管では外径60mm、厚さ4.1mm、近似内径51mmという寸法となり、参考重量は1.122kg/mです。
参考)VP管とVU管の違いは何ですか。

VU管はVP管と比較して肉薄の硬質ポリ塩化ビニル管で、耐圧性能は0~0.6MPaとVP管より低く、排水・通気など無圧用途に使用されます。 同じ呼び径50mmのVU管では外径60mmは同一ながら厚さ1.8mm、近似内径56mmとなり、参考重量は0.521kg/mとVP管の半分以下の軽量性を実現しています。
参考)塩ビパイプの規格教えます

同一呼び径であればVP管とVU管の外径は共通規格となるため、継手選定の際には管種の違いに注意が必要です。 しかし肉厚の差により内径と重量が大きく異なるため、流量計算や施工性に影響を与えます。
参考)塩ビ管(塩ビパイプ)種類・特徴・用途・規格まとめ|金属加工総…

塩化ビニール管規格のサイズと呼び径の対応関係

塩化ビニール管規格では「呼び径」という概念が用いられますが、これは管の太さを表す呼称であり、実際の外径や内径とは異なる点に注意が必要です。​
呼び径とは配管系統を統一的に表現するための基準値であり、実際の外径は呼び径より大きな数値となります。 例えば呼び径40mmのVP管では外径48mm、厚さ4mm、近似内径40.8mmとなり、呼び径はほぼ内径に近い値として設定されています。
参考)各種配管口径とその呼び方について VP(一般用硬質塩化ビニル…

VP管とHIVP管は同一の寸法規格を持ち、呼び径13~300mmまで展開されています。 一方VU管は呼び径40~600mmの範囲で規定され、小口径帯には対応していません。​
定尺長さは基本的に4,000mm(4m)が標準となっており、長さの許容差は±10mmと規定されています。 一部の呼び径では5,000mm(5m)の定尺も製造されており、施工現場の効率化に寄与しています。
参考)https://chububika.co.jp/wp-content/uploads/2023/10/enkapipe.pdf

外径の許容差や厚さの最小寸法もJIS規格で厳密に定められており、品質の均一性が確保されています。 これにより異なるメーカーの製品でも互換性が保たれ、現場での混用が可能となっています。​

塩化ビニール管規格の耐圧性能と使用温度範囲

塩化ビニール管規格では管種ごとに耐圧性能と使用温度範囲が明確に定められており、設計段階での適切な管種選定が求められます。​
VP管の耐圧力は0~1.0MPaで使用温度は60℃まで、VM管は0~0.8MPaで60℃まで、VU管は0~0.6MPaで60℃までと規定されています。 耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管であるHIVP管は耐圧力0~1.0MPaながら使用温度は50℃までとVP管より低く設定されています。​
耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(HT管)は給湯配管専用として開発され、一般的な塩ビ管よりも高温での使用に対応しています。 クボタケミックスでは呼び径150mmまでのHTVP管を提供しており、JIS規格の範囲を超えた製品展開を行っています。​
重要な注意点として、管内圧力が高い状態では記載の耐熱温度よりも低い温度での使用に制限される場合があります。 圧力と温度の相関関係を考慮した設計が必要となり、高温高圧の条件下では別素材の配管材料の検討も求められます。​

塩化ビニール管規格における特殊用途管の種類

一般的なVP管・VU管以外にも、特定用途に特化した塩化ビニール管規格が存在し、建築現場の多様なニーズに対応しています。​
下水道用硬質塩化ビニル管はJSWAS K-1として呼び径75~600mmの範囲で規定され、直管と異形管の両方が標準化されています。 下水道推進工法用としてJSWAS K-6が呼び径150~450mmで規定され、SUSカラー付やスパイラル継手付直管も含まれます。​
リサイクル硬質ポリ塩化ビニル三層管(RS-VU管)はJIS K 9797として呼び径100、150、200、300mmで規定され、下水道用取付管や敷地内排水管に使用されます。 これは環境配慮型の製品として注目されており、廃材の有効活用を実現しています。​
リサイクル硬質ポリ塩化ビニル発泡三層管(RF-VP管)はJIS K 9798として呼び径40~150mmで規定され、屋内の無圧排水管に適用されます。 発泡層を含む三層構造により軽量化と断熱性の向上を実現しています。​
工業用水道用受口付硬質塩化ビニル管はJIWA8として呼び径200、250、300mmで規定され、大口径の工業用水輸送に特化した規格となっています。 水道用ゴム輪形硬質ポリ塩化ビニル管(RR管)はJWWA K129として呼び径50、75、100、150mmで規定され、地震対策として可とう性を持たせた接合方式を採用しています。​
塩化ビニル管・継手協会のJIS規格一覧
塩化ビニール管に関連するJIS、JWWA、JIWA、JSWASの各規格が網羅的に掲載されており、規格番号・規格名称・呼び径範囲・用途・備考が一覧表で確認できます。

 

硬質ポリ塩化ビニル管の詳細規格表
VP、VM、VU、HIVPの各管種について、配管サイズ、寸法、厚さ、単位質量、耐熱温度、使用温度、耐圧、使用圧力が詳細に記載された技術資料です。

 

塩化ビニール管規格の継手種類と接合方法

塩化ビニール管規格では管本体だけでなく、継手の規格も体系的に整備されており、用途に応じた適切な接合方法の選択が重要です。
参考)塩ビ管継手|積水化学工業−エスロンタイムズ

水道用のVP管を接続する継手は「TS継手」と呼ばれ、接着剤による接合方式(TS接合)を採用しています。 TS継手は差し込み接着接合法により、接着剤が塩化ビニル溶剤として機能し、管と継手の接合面を溶解膨潤させて一体化させる仕組みです。
参考)硬質ポリ塩化ビニル管:差込み接着接合法(TS接合法) 【通販…

排水用のVP管を接続する継手は「DV継手」、排水用のVU管を接続する継手は「DV-VU継手」と名付けられています。 DV接合は主に排水ラインに使用され、水圧が加わると抜ける特性を持つため、圧力配管には使用できません。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0370.html

ゴム輪で接続する方式の継手は「RR継手」と呼ばれ、地震などの振動に対する可とう性を持つ接合方式として水道配管に採用されています。 ゴム輪接合法(RR接合法)では、受口内のゴム輪溝にゴム輪を装着し、専用の滑剤を使用して管を差し込みます。
参考)硬質ポリ塩化ビニル管:ゴム輪接合法(RR接合法) 【通販モノ…

耐衝撃性硬質塩化ビニル管用の「HITS継手」や「Hi-TS継手」は、通常のTS継手よりも接着強度と耐衝撃性が高く、水圧のかかる配管ラインに適しています。 JIS K 6743として水道用硬質ポリ塩化ビニル管継手が呼び径13~150mmで規定されています。​
継手の形状には、ソケット(直線接続用)、エルボ(90度・45度の角度変換用)、チーズまたはY字(分岐用)、キャップ(管端閉塞用)などの基本形状があり、配管レイアウトに応じて使い分けます。
参考)https://www.haikanbuhin.com/top/item/asp/cate.asp?s_cate4=40006

塩化ビニール管規格における施工上の重要注意事項

塩化ビニール管規格に準拠した配管であっても、施工方法が不適切であれば本来の性能を発揮できず、重大な事故につながる可能性があります。
参考)施工上の注意|水道用エスロンHI-TS継手|エスロン製品-施…

塩ビ管の生曲げは絶対に禁止されており、曲げ配管を行う場合は必ず継手(エルボやベンド)を使用する必要があります。 生曲げを行うと歪みが残り、破損事故の原因となるためです。
参考)https://www.sekisui-qa.com/pdf/05331catalog.pdf

施工現場での管の加熱加工も厳禁とされており、管が焦げたり焼けたりして強度が著しく低下します。 また塩ビ管はノッチ効果が大きく、亀裂や切り欠きがあると強度が低下するため、塩ビ管や継手に直接ネジを切る行為も禁止されています。​
接着接合時には接着剤中の溶媒が完全に蒸発するまで管路内の換気を十分に行う必要があります。 接合後に管路を密閉状態にすると、ソルベントクラッキングという現象により残存溶媒蒸気によって塩ビ管に小さな亀裂が発生する恐れがあります。 特に冬期配管では溶媒が蒸発しにくいため注意が必要です。​
通水試験や耐圧試験を行う場合には必ず水圧で実施し、空気圧試験は絶対に行ってはいけません。 空気圧試験では継手から抜けて管が飛んだり、破損した場合に破片が飛散して重大な怪我をする恐れがあります。​
寒冷地での埋設管は最大凍結深度よりさらに20cm深く施工し、露出部分には保温材を巻き付ける凍結防止対策が必須です。 配管が凍結すると管や継手が破損する場合があります。​
管の切断時には専用の工具を使用し、欠けや割れ、変形が生じないように注意が必要です。 面取り作業はゴム輪接合の場合に特に重要で、管厚の1/2程度(約15度)の面取りを行う必要があります。​
積水化学工業の施工上の注意事項
水道用エスロンHI-TS継手の施工に関する詳細な注意事項が掲載されており、通水試験、適切な工具の使用、接着接合時の注意、凍結防止などの重要ポイントが解説されています。

 

塩化ビニール管規格の耐用年数とメンテナンス計画

塩化ビニール管規格品の耐用年数は設置環境や使用条件により大きく変動するため、適切なメンテナンス計画の策定が長期的な設備維持に不可欠です。
参考)配管の耐用年数ってどのくらい? 劣化する前に配管リフォームを…

硬質ポリ塩化ビニル管の一般的な耐用年数は30~40年とされており、金属管と比較しても十分な長寿命を実現しています。 ただしPVC管(塩ビ管)は紫外線や極端な温度変化に弱いため、屋外での使用や直射日光が当たる場所では劣化が早まる可能性があります。
参考)配管工事の耐用年数とメンテナンスの必要性

塩ビ管の耐用年数は使用場所によって異なり、屋内の給水配管や排水配管として使用される場合は比較的長期間の使用が可能です。 一方、屋外での露出配管や高温環境での使用では定期的な点検と早期の更新が推奨されます。​
メンテナンス計画では、設置後10年程度を目安に最初の詳細点検を実施し、接続部からの漏水、管表面の変色や劣化、支持金具の緩みなどを確認することが重要です。配管系統全体の更新時期を見据えた長期修繕計画を策定し、予算の平準化を図ることも建築設備管理の重要な要素となります。

 

塩ビ管は紫外線対策として、屋外露出部分には適切な塗装や保護カバーの設置が効果的です。 水性ファインウレタンU100(日本ペイント)、アレスアクアレタン(関西ペイント)、ビューウレタン(大日本塗料)などの塗料が推奨されています。​
定期的な目視点検に加えて、漏水検知システムの導入や圧力変動のモニタリングを行うことで、早期の異常検知と予防保全が可能となります。特に重要設備への供給配管や高層建築物の立て管では、計画的な更新と予備配管の設置も検討すべきです。

 

塩化ビニール管規格品の最適用途選定基準

塩化ビニール管規格には多様な管種が存在するため、建築用途や流体特性に応じた最適な選定基準の理解が設計品質を左右します。
参考)塩ビ管の代表格「VP管」と「VU管」何が違う?プロ目線で解説…

圧力配管として給水管やポンプラインなど内部に水圧がかかる用途では、耐圧性能1.0MPaを持つVP管またはHIVP管の選定が基本となります。 HIVP管は耐衝撃性に優れており、凍結の恐れがある場所や振動が予想される場所での使用に適しています。​
無圧配管として排水管や通気管など圧力がかからない用途では、軽量で施工性に優れるVU管が経済的な選択となります。 ただし埋設配管として外部からの土圧がかかる場合は、肉厚のあるVP管の使用も検討すべきです。​
給湯配管では通常の塩ビ管では対応できないため、耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(HT管)を使用する必要があります。 HT管は呼び径13~50mmまでの範囲で規格化されており、給湯温度や配管経路を考慮した設計が求められます。​
下水道配管や大口径の排水配管では、JSWAS規格に準拠した下水道用硬質塩化ビニル管の使用が適切であり、呼び径75~600mmまでの広範な選択肢があります。 推進工法による埋設では専用のJSWAS K-6規格品を使用します。​
環境配慮型の建築物ではリサイクル硬質ポリ塩化ビニル三層管(RS-VU管)やリサイクル硬質ポリ塩化ビニル発泡三層管(RF-VP管)の採用により、廃材削減と循環型社会への貢献が可能となります。​
設計段階では流体の種類、温度、圧力、流量、配管経路、設置環境、メンテナンス性、コストなどを総合的に評価し、最適な管種と呼び径を選定することが重要です。特に薬品輸送や特殊流体の場合は、流体との適合性を製造メーカーに確認する必要があります。

 

クボタケミックスの塩ビパイプ製品情報
硬質ポリ塩化ビニル管の各種規格と寸法表が掲載されており、水道用VP、水道用HI・VP、耐熱性HTVP、一般用VP、VUなどの詳細仕様が確認できます。