混和材料の種類と特性を解説|コンクリート性能向上の選定方法

混和材料の種類と特性を解説|コンクリート性能向上の選定方法

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混和材料の種類

📋 混和材料の主要カテゴリー
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ポゾラン反応系

フライアッシュ、シリカフューム、火山灰などがセメントの水和物と反応して強度を向上させます

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化学混和剤系

AE剤、減水剤、高性能AE減水剤などがコンクリートの流動性や施工性を改善します

特殊機能系

膨張材、防水材、繊維補強材など特定の性能を付加する混和材料です

混和材料とは、コンクリートの性能を向上させるために使用する補助的な材料の総称です。主成分である水、セメント、砂、砂利に加えて混入することで、強度・耐久性・施工性などを改善できます。混和材料は使用量によって「混和材」と「混和剤」に分類され、一般的に使用量が多いものを混和材、少量使用するものを混和剤と呼びます。
参考)公益社団法人 日本コンクリート工学会

混和材料は大きく分けて3つのカテゴリーに分類されます。第一にポゾラン作用を持つ材料で、フライアッシュ、シリカフューム、火山灰、珪酸白土などが該当します。第二に化学混和剤で、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などがあります。第三に特殊機能を持つ材料で、膨張材、防水材、繊維補強材などが含まれます。
参考)公益社団法人 日本コンクリート工学会

混和材料のポゾラン系の種類と特徴

ポゾラン系混和材は、セメントの水和反応で生成される水酸化カルシウムと反応して新たな水和物を生成する材料です。代表的なフライアッシュは、石炭火力発電所で微粉炭を燃焼する際に生じる球状の灰分を電気集塵器で捕集した副産物です。フライアッシュを混和することで、コンクリートの流動性が向上し、長期強度が増加します。
参考)Q3:フライアッシュコンクリートの特長は?|一般財団法人カー…

高炉スラグ微粉末は製鉄工程で排出される副産物で、潜在水硬性を持つ混和材です。セメントに含まれる水酸化カルシウムに反応して硬化する性質があり、コンクリートの強度を高めます。ポルトランドセメントに置換することで混和材として使用され、耐久性向上にも寄与します。
参考)「混和材(こんわざい)」とは何か?|誰でもわかるリノベ用語集…

シリカフュームは金属シリコンやフェロシリコンの製造過程で生じる超微粒子粉末で、平均粒径は0.1μm程度とセメント粒子の約1/100の大きさです。主成分は非晶質二酸化ケイ素(SiO2)が90%以上を占め、ポゾラン反応とフィラー効果により圧縮強度と水密性が大幅に向上します。ただし流動性が低下するため、高性能減水剤との併用が不可欠です。
参考)1-4. コンクリート技士試験 過去問 シリカフュームの特徴…

日本コンクリート工学会 - 混和材の分類と特徴についての詳細解説

混和材料の化学混和剤の種類と効果

化学混和剤は液体の薬剤で、界面活性剤の一種として水によく溶ける性質を持っています。JIS A 6204では、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、硬化促進剤の7種類が規定されています。化学混和剤は、コンクリート1立方メートルあたり数kg程度を練混ぜ水に添加して使用します。
参考)公益社団法人 日本コンクリート工学会

AE剤は、独立した微細な空気泡を連行することで、コンクリートのワーカビリティーや耐凍害性を改善する混和剤です。空気連行により単位水量を減らすことが可能となり、空気連行による強度低下と減水による強度向上の効果がほぼ相殺されます。減水剤はセメント粒子に分散作用を及ぼし、コンクリートに必要な単位水量を減少させる効果を持ちます。
参考)https://www.con-pro.net/readings/konwa/doc0003.html

高性能AE減水剤は、AE剤と高性能減水剤の機能を併せ持つ化学混和剤です。界面活性剤としてセメント粒子を高い分散力で分散させることで、汎用品のAE減水剤に比べて高い減水率を得られます。主成分は、ポリカルボン酸系、ナフタリン系、アミノスルホン酸系、メラミン系の4種類に分類され、流動性の高い高強度コンクリートや高流動コンクリートの製造に適しています。​

混和剤の種類 主な機能 使用目的 添加量の目安
AE剤 空気連行 耐凍害性向上、ワーカビリティー改善 セメント質量の0.01〜0.05%
減水剤 セメント分散 単位水量低減、強度向上 セメント質量の0.2〜0.5%
高性能AE減水剤 空気連行+高減水 高流動化、高強度化 セメント質量の0.5〜3.0%
流動化剤 スランプ増大 施工性向上 セメント質量の0.5〜2.0%

日本コンクリート工学会 - 高性能AE減水剤の詳細な技術解説

混和材料の膨張材と防水材の種類

膨張材は、コンクリートの乾燥収縮や硬化収縮によるひび割れを低減するための混和材です。水和反応によってエトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)を生成し、コンクリートに膨張作用を与えます。JIS A 6202では、コンクリート用膨張材の規格が定められており、硬化過程で膨張を起こさせることでひび割れ抑制効果を発揮します。
参考)コンクリート構成材料における「混和材料」について|のうぎょう…

膨張材を使用したコンクリートは、収縮ひび割れの発生を大幅に抑制できるため、耐久性の向上に寄与します。エトリンガイトの生成により、コンクリート内部に圧縮応力が導入され、乾燥収縮や温度変化による引張応力を相殺する効果があります。特に、ひび割れが構造物の性能に大きく影響する水密性を要求される構造物で有効です。

 

防水材は、コンクリートに防水効果を与える混和材料です。コンクリートの空隙を充填したり、表面に撥水性を付与することで、水の浸透を防ぎます。防水材には、セメント系、ポリマー系、シリコーン系などがあり、用途や要求性能に応じて使い分けられます。地下構造物、水槽、浴室など、水密性が求められる箇所で広く使用されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj/52/5/52_373/_pdf

混和材料の繊維補強材の種類と性能

繊維補強材は、コンクリートに繊維を混入することで、引張強度、曲げ強度、靭性を向上させる混和材料です。セメント・コンクリート用の補強繊維は、一般的に引張弾性係数と引張強度が高いことが望ましいとされています。繊維の種類には、鋼繊維、合成繊維(ビニロン、ポリプロピレンなど)、ガラス繊維炭素繊維などがあります。
参考)コンクリートの混和材の種類について解説 混和剤との違いとは

鋼繊維を混入したコンクリートは、繊維の混入率の増加につれて終局時の引張応力が増加することが確認されています。高強度繊維を用いたコンクリートは、終局時において最も高い引張応力を示し、ひび割れ発生後も高い荷重保持能力を発揮します。繊維自体の引張強度と混入率は、ひび割れ発生時の引張応力への影響は少ないものの、コンクリートの終局時の引張応力に大きく影響します。
参考)https://data.jci-net.or.jp/data_pdf/30/030-01-1029.pdf

繊維補強コンクリートの最新技術では、圧縮強度180N/mm²、引張強度8.8N/mm²、ひび割れ発生強度8.0N/mm²以上を発揮する常温硬化型の超高強度繊維補強コンクリートが開発されています。繊維を混入することにより、コンクリートが繊維に拘束され、乾燥収縮が低減される効果もあり、耐久性の向上も期待できます。
参考)https://www.cbr.mlit.go.jp/kisya/2021/01/1337.pdf

💡 意外な効果:繊維補強材は引張強度の向上だけでなく、乾燥収縮の低減にも寄与します。繊維混入により材齢180日での収縮量が約600μから480μへと約20%低減され、ひび割れリスクが大幅に減少します。​

混和材料の選定基準と規格による種類

混和材料の選定には、JIS規格に基づく品質基準が重要な判断材料となります。レディーミクストコンクリートで使用できる混和材料は、JIS A 6201(フライアッシュ)、JIS A 6202(膨張材)、JIS A 6204(化学混和剤)、JIS A 6205(防せい剤)、JIS A 6206(高炉スラグ微粉末)、JIS A 6207(シリカフューム)に適合するものが規定されています。
参考)JISA5308:2019 レディーミクストコンクリート

化学混和剤の品質規格では、コンクリートのスランプ、空気量、凝結時間、圧縮強度などの性能基準が定められています。例えば、高性能AE減水剤を用いたコンクリートの単位水量は、練上がり時のスランプが18±1cmとなる量とし、空気量は基準コンクリートの空気量を超えてはならないと規定されています。化学混和剤の使用量は、1立方メートルあたりの量を製造会社の推奨量を参考にして決めます。
参考)JISA6204:2011 コンクリート用化学混和剤

混和材料の使用にあたっては、コンクリートおよび鋼材に有害な影響を及ぼさず、所定の性能を確保できることが必須条件です。砕石粉(石灰石微粉末)をJIS A 5041に適合するものとして混和材料に用いる場合は、骨材に表A.1に規定する区分Aを使用する必要があります。規格以外の混和材料を使用する際には、事前に試験を行い、品質と性能を確認することが求められます。​

JIS規格 混和材料の種類 主な品質項目 適用コンクリート
JIS A 6201 フライアッシュ SiO2含有量、強熱減量、密度 一般構造物、ダム
JIS A 6202 膨張材 膨張率、圧縮強度比 ひび割れ抑制が必要な構造物
JIS A 6204 化学混和剤 減水率、凝結時間、圧縮強度比 全般
JIS A 6206 高炉スラグ微粉末 ブレーン比表面積、活性度指数 高耐久性コンクリート
JIS A 6207 シリカフューム SiO2含有量、比表面積 超高強度コンクリート

JIS A 6204 コンクリート用化学混和剤 - 化学混和剤の詳細な品質規格
🔧 施工現場での注意点:混和材料は防湿的なサイロまたは倉庫等に品種別に区分して貯蔵し、入荷の順に使用することが土木工事材料の基本原則です。品質管理の観点から、異なる種類の混和材料を混同しないよう、明確な表示と管理が求められます。
参考)https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000671092.pdf