

オゾン処理設備の近くで工事をすると、損害賠償請求が数千万円規模になることがあります。
浄水場のオゾン処理とは、オゾン(O₃)の強力な酸化力を利用して、水中の有機物・異臭味・微量汚染物質を分解・除去する高度浄水処理技術のことです。日本では1970年代後半から導入が始まり、現在では東京都や大阪市をはじめとする大都市圏の主要浄水場でほぼ標準的に採用されています。
仕組みとしては、まず原水(河川水や湖沼水)を沈殿・ろ過した後、オゾン発生装置で生成したオゾンガスを水中に溶け込ませます。このオゾン接触槽の中で、カビ臭の原因物質であるジェオスミンや2-MIBといった物質が分解されます。これが基本です。
その後、活性炭ろ過と組み合わせることで、オゾン処理だけでは分解しきれなかった微量有機物をさらに除去します。この「オゾン+生物活性炭」のセットを「高度浄水処理」と呼びます。東京都の金町浄水場・三園浄水場などが代表例で、日量約150万㎥以上の処理能力を持っています。
従来の塩素消毒だけの処理(通常浄水)と比べると、異臭味除去効果は格段に高くなります。意外ですね。塩素処理では除去できなかった農薬成分の一部やトリハロメタン前駆物質も、オゾン処理によって大幅に低減できることが確認されています。
建築業従事者にとって重要なのは、このオゾン処理設備が非常に精密・デリケートな設備であるという点です。オゾン発生装置は高電圧(約10~20kV)の放電を使って大気中の酸素からオゾンを生成しており、振動・粉塵・電磁波の影響を受けやすい機器が多数存在します。つまり、近接工事は慎重さが条件です。
浄水場のオゾン処理エリアには、大きく分けて「オゾン発生棟」「オゾン接触池」「排オゾン処理設備」「活性炭ろ過池」の4つのゾーンが存在します。建築工事が絡む可能性があるのは、主にこれらの設備の増設・改修・隣接する構造物の建設です。
オゾン発生棟は、高圧電気設備・冷却設備・制御盤が密集した建屋です。この建屋の周辺で重機を使った掘削・杭打ち工事を行う場合、振動が精密機器に悪影響を与えることがあります。特に、油圧ハンマーによる杭打ちは地盤振動が半径50m以上に及ぶこともあり、事前の振動影響評価が必要とされる場合があります。
オゾン接触池は、コンクリート製の密閉型水槽が多く、漏水や亀裂に非常に敏感です。隣接地での地下工事・山留め工事では、地盤変形によってこの接触池に微細なひび割れが生じるリスクがあります。ひび割れ1mmでもオゾン漏えいの原因になり得ます。これは見落としがちなポイントです。
排オゾン処理設備(排オゾン分解装置)は、使用後の余剰オゾンを無害化する設備です。この設備が正常に動作しなくなると、オゾンガスが大気中に漏れ出します。オゾン濃度が0.1ppmを超えると労働安全衛生法上の管理基準を超え、作業員の健康被害につながります。健康リスクは無視できません。
活性炭ろ過池は、浄水場の中でも比較的大きな面積(東京都の例では1池あたり約200㎡以上)を占める設備です。この上部スラブの改修工事や隣接建屋の増築工事では、荷重変化や施工時の振動が活性炭層の均一性を乱すことがあります。活性炭層が乱れると、ろ過効率が一時的に低下するリスクがあります。
参考情報として、厚生労働省が発行する「水道施設設計指針」には、オゾン処理設備の設計基準や安全管理に関する記述があり、建築工事との取り合いを検討する際の基礎資料として活用できます。
厚生労働省 水道行政ページ:水道施設の設計・管理に関する基準・指針類が参照できます(オゾン処理設備の設計要件確認に有用)
浄水場は水道法第39条・第40条に基づき、都道府県や市町村が管理・運営する重要インフラです。この施設に近接した建築工事を行う場合、単純な近隣挨拶では不十分で、水道事業者との事前協議が義務的に求められるケースがほとんどです。事前協議は必須です。
具体的な手続きの流れとしては、まず工事計画の段階で施設を管理する水道事業者(市町村水道局・都道府県企業局など)に「近接工事協議申請書」を提出します。東京都の場合、東京都水道局が定める「水道施設近接工事等の取扱いに関する要綱」に基づき、浄水場敷地境界から原則50m以内の工事については事前協議が必要とされています。
協議では、①工事概要(工法・工期・使用重機)、②振動・騒音の影響評価、③地盤変形の影響解析、④工事中のモニタリング計画、⑤万一の緊急時対応フローの5項目を提出することが一般的です。この資料作成に、測量や地盤調査の費用を含めると数十万円の費用がかかることも珍しくありません。痛いですね。
法的根拠として押さえておくべき法令は複数あります。水道法のほか、「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」「工業用水道事業法」、そして各自治体が定める水道事業条例や規程類です。これらに違反した場合、工事の即時中止命令や原状回復費用の全額負担を求められることがあります。
さらに、オゾン処理設備が稼働中に設備を損傷させた場合の損害賠償額は非常に高額になりえます。オゾン発生装置1台の価格は中規模施設でも2,000万円以上が相場であり、設備の停止によって生じた代替処理コストや断水補償費用が加わると、総額が数千万円規模になるケースもあります。
事前協議の対象外になるかどうかを確認するためには、各水道事業者のウェブサイトに掲載されている「水道施設近接工事取扱い要綱」を確認するのが最も確実な方法です。国土交通省の「インフラ近接工事に関するガイドライン」も参考になります。
東京都水道局 浄水施設ページ:東京都内の浄水場の概要・設備情報・近接工事手続きの参考情報が掲載されています
建築工事の現場では、電気・ガス・通信などのインフラとの競合は意識されますが、オゾン処理関連のリスクは見落とされやすいのが実態です。ここでは、現場経験豊富な施工管理者でも意外と知らない3つのリスクを整理します。
リスク①:残留オゾンによる作業員の健康被害
浄水場敷地内または隣接エリアで作業する場合、排オゾン分解装置のトラブルや設備の老朽化によって微量のオゾンが漏えいしているケースがあります。オゾンは無色ですが特有の刺激臭があり、0.1ppm以上で喉・目・気管支への刺激が生じます。長時間の暴露では肺水腫のリスクもあります。労働安全衛生規則では、オゾンは特定化学物質(第2類物質)に準じた管理が求められる場面もあります。
この場合の対策として、作業前にオゾン濃度計(ポータブル型の相場は3万~10万円程度)で周辺空気を測定し、記録を残しておくことが推奨されます。これは使えそうです。
リスク②:地下埋設管の誤認によるオゾン関連配管の損傷
浄水場周辺には、給水管・排水管のほかに「オゾン供給配管」「液体酸素配管」「冷却水配管」など、一般の建築工事現場では見慣れない埋設管が通っていることがあります。これらはカラー識別や標識が不十分なケースもあり、掘削工事中に誤って損傷させてしまうリスクがあります。
液体酸素配管を損傷させた場合、周囲の酸素濃度が急上昇し、爆発・火災の危険性が著しく高まります。事前に施設管理者から最新の埋設管図面を入手することが不可欠です。図面の入手が条件です。
リスク③:工事粉塵によるオゾン発生装置の性能低下
オゾン発生装置の放電管(誘電体管)は、微細な粉塵が内部に侵入すると放電特性が変化し、オゾン生成効率が落ちます。コンクリートのはつり工事や土工事で発生するセメント粉・土埃は、装置の換気口から侵入することがあります。装置側の防塵対策は施設管理者が行うべきですが、工事側も防塵シートの設置・散水による粉塵抑制などの協力義務を求められるケースがあります。
公益社団法人 日本水道協会:水道施設の設計・維持管理・安全基準に関する情報が掲載されており、浄水処理設備の技術基準確認に有用です
ここまでリスクの話が中心でしたが、視点を変えると、浄水場のオゾン処理設備は建築業界にとって大きなビジネスチャンスでもあります。これは見逃せない観点です。
日本の浄水場でオゾン処理設備が本格的に導入されたのは1980年代から1990年代が中心であり、現在これらの設備は「更新適齢期」を迎えています。国土交通省と厚生労働省が共同で推進する「水道施設更新・耐震化計画」では、2030年までに老朽化した浄水場設備の約60%を更新する目標が示されています。つまり、大規模な更新工事の発注が今後10年間で集中する見通しです。
設備更新工事の内容は多岐にわたります。オゾン発生棟の建屋そのものの建替え・改修、接触池のコンクリート構造物の補修・ライニング工事、電気設備更新に伴う受変電設備の改修、排オゾン処理装置の交換に伴う設備基礎工事、そして既存設備を稼働させながら新設設備を並列して建設する「稼働中施設への増設工事」などが代表的です。
稼働中施設への増設工事は技術的難易度が高い分、元請け・下請け問わず専門性を示しやすい領域です。振動制御・粉塵対策・工事時間の制約(夜間禁止など)など、通常の建築工事とは異なるマネジメントが求められるため、施工実績があれば競争優位になります。実績が強みになります。
受注のきっかけをつかむためには、各都道府県の水道事業者が公表している「水道ビジョン」や「施設更新計画」を定期的にチェックし、入札情報に先行してアクセスするのが有効です。国の「入札情報サービス(NJSS)」や自治体の電子入札システムで「浄水場」「オゾン」「高度浄水」などのキーワードで検索すると、関連工事の発注情報を効率よく収集できます。
また、設備メーカー(三菱電機・荏原製作所・栗田工業など、オゾン発生装置を製造・納入している企業)との協力関係を構築しておくことも重要です。設備メーカーはエンジニアリング設計を担いますが、建築・土木工事の施工は外部に発注するケースがほとんどであり、協力会社として登録することで安定した受注につながります。メーカーとの連携が近道です。
一方、注意点として、浄水場の工事には「飲料水の安全確保」という観点から、工事業者に対して非常に高い品質・環境管理が求められます。ISOの品質・環境マネジメントシステム(ISO9001・ISO14001)の認証取得が入札参加要件になっているケースも多く、未取得の場合は参加資格を得られないことがあります。認証は参加の前提です。
国土交通省 水道施設の老朽化対策・更新に関するページ:浄水場設備の更新動向・補助制度・事例が掲載されており、受注機会の調査に活用できます

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