パイプスペース寸法一覧と設計基準要件

パイプスペース寸法一覧と設計基準要件

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パイプスペース寸法設計基準

パイプスペース寸法設計のポイント
📏
基本寸法基準

内寸300mm最小、推奨400-500mm確保で将来対応可能

⚖️
法的要件

建築基準法施行令第129条の配管貫通基準遵守

🔧
メンテナンス性

点検口設置と十分な作業スペース確保が必須

パイプスペース基本寸法と配管間隔一覧

パイプスペースの寸法設計において、最も基本となるのが平成12年版「建築設備計画基準・同要領」に記載された標準最小寸法です。この基準によると、壁から200mmの間隔を確保し、前方点検用の場合は600mm、その他の場合は200mmのスペースが必要とされています。

 

配管径別の標準間隔寸法:

  • φ50mm以下:200mm間隔
  • φ51-150mm:300mm間隔
  • φ151-300mm:400mm間隔

実際の施工現場では、これらの基準値よりもコンパクトな設計が求められることが多く、330mm × 180mmといったサイズでの施工例も見られます。しかし、メンテナンス性や将来の配管追加を考慮すると、内寸300mmを最小目安とし、400-500mmの確保が推奨されています。

 

実用的な配管配置例(配管芯々距離):

  • 壁−150mm−給水−150mm−ガス−180mm−汚水−300mm−通気−300mm−排水−200mm−壁
  • 総内々寸法:1280mm(保温材厚25mm考慮)

この配置は給水50A、ガス50A、汚水100A、排水80A、通気100Aの配管を想定した実践的な寸法例です。接合方法や管種によって必要寸法は変動するため、塩ビ管のMD接合とSGPのネジ接合では異なる継手外形を考慮する必要があります。

 

パイプスペース設計時の法的基準要件

建築基準法施行令第129条の2の5では、パイプスペースを含む配管設備の防火区画貫通に関する重要な規定が定められています。3階以上の共同住宅では、ガス配管設備について国土交通大臣が定める安全基準への適合が義務付けられています。

 

防火区画貫通時の法的要件:

  • 貫通部分から両側1m以内を不燃材料で構造
  • 管の外径が国土交通大臣定める数値未満であること
  • 通常火災による火熱に20分〜1時間耐える認定品使用

ただし、一時間準耐火構造と特定防火設備により区画されたパイプスペース内部については、これらの規定は適用されません。この例外規定を活用することで、パイプスペース内での配管施工の自由度を高めることができます。

 

地階を除く3階以上の建築物、地階に居室を有する建築物、延べ面積3000㎡超の建築物では、換気・暖房・冷房設備の風道を不燃材料で造ることが義務付けられています。これによりパイプスペース内でのダクト配管も法的制約を受けるため、設計段階での十分な検討が必要です。

 

設計時の確認ポイント:

  • 建物用途・規模による適用法令の確認
  • 防火区画との関係性
  • 管材質・外径による規制の有無
  • 認定品の採用要否

パイプスペース配管種別と必要寸法

パイプスペースに収納する配管の種別によって、必要寸法は大きく変動します。特に保温材の厚みや接合方法の違いが寸法設計に与える影響は無視できません。

 

給水配管の寸法要件:

  • SGP50A:継手外形69mm(コア入り継手)
  • 保温厚25mm(VLP)考慮
  • 壁からの離隔距離:150mm以上

排水・通気配管の寸法要件:

  • DVLP100A:継手外形151mm(MD継手)
  • DVLP80A:継手外形124mm(MD継手)
  • 保温厚25mm(結露防止)
  • 排水主管から通気枝管取出し:300mm間隔確保

ガス配管の寸法要件:

  • SGP50A:継手外形69mm
  • 可燃性ガス用耐火被覆の考慮
  • 他配管との安全離隔距離確保

2階トイレ設置時の汚水配管では、詰まり防止の観点から便器直下への配置が理想的です。しかし、メンテナンス性や騒音対策を考慮し、脱衣室など水回り近傍への配置変更も検討されます。この場合、横引き配管距離の増加により詰まりリスクが高まるため、配管勾配や管径の十分な検討が必要です。

 

配管種別ごとの推奨間隔:

  • 給水管相互間:100-150mm
  • 給水・排水管間:200mm以上
  • ガス・給水管間:200mm以上
  • 排水・通気管間:300mm以上(枝管接続部)

パイプスペース位置選定と騒音対策

パイプスペースの位置選定は、騒音問題と密接に関連しています。特にマンションなどの集合住宅では、上階からの排水音が下階居住者への騒音となるケースが頻発しており、適切な遮音対策が求められています。

 

騒音発生メカニズム:

  • 排水管内の水流音
  • 配管振動の構造体伝播
  • 管継手部での乱流音
  • 空気混入による水撃音

寝室近くへのパイプスペース配置は避けるべきですが、やむを得ない場合は遮音仕様の強化が必要です。天井・床コンクリートの配管貫通部への緩衝材充填や、パイプスペース囲い壁への遮音対策実施が効果的です。

 

効果的な騒音対策:

  • 厚み石膏ボードの採用(12.5mm以上)
  • 防音材の壁内充填
  • 配管貫通部の緩衝材処理
  • 排水管の防音被覆施工

外壁際への配置も検討されますが、寒冷地では凍結リスクがあるため屋内配置が原則です。一条工務店の事例では、凍結防止の観点から屋外配置が不可とされており、室内での適切な位置選定が重要となっています。

 

パイプスペースから発生する騒音レベルは、配管材質によっても大きく変動します。塩ビ管は樹脂特性により騒音レベルが高く、鋳鉄管や防音型配管の採用により騒音を大幅に軽減できます。

 

建築設備計画基準における配管サイズ計算式「X=400N1+300N2+200N3」では、鋳鉄管本数N1、65-100A管本数N2、50A以下管本数N3から必要寸法を算出できます。しかし、この計算式は機械的な数値算出に留まるため、実際の施工性や騒音対策を含めた総合的な検討が不可欠です。

 

パイプスペース将来拡張性考慮設計

パイプスペース設計において見落とされがちなのが、将来の設備変更や増設に対する拡張性です。住宅の長寿命化が進む中、30-50年後の設備更新時における配管追加や配管径変更への対応能力が、建物価値に大きく影響します。

 

将来変更が予想される設備:

  • 給湯配管の追加(エコキュート、エネファーム等)
  • 情報通信配線の増設(光ファイバー、5G対応等)
  • 換気ダクトの大径化(高性能換気システム導入)
  • 消火設備配管の追加(スプリンクラー等)

特に15cmダクトを通す1種換気システムでは、既存パイプスペースへの後付けが困難な場合が多く、設計段階での十分な余裕確保が重要です。将来的な設備性能向上により、ダクト径が20cm以上に大型化する可能性も考慮すべきでしょう。

 

拡張性を考慮した設計手法:

  • 基本必要寸法の1.5倍確保
  • 予備配管ルートの確保
  • 点検口の大型化
  • 分岐スペースの事前確保

メンテナンス性の観点では、内壁埋込み型パイプスペースの場合、修理時にクロスや石膏ボードの除去が必要となります。しかし、常時開閉可能な構造は不要で、必要時に内装材を取り外し可能な構造で十分とされています。

 

マンションでは専有部分と共用部分にまたがるパイプスペースも多く、将来の修繕時における工事調整の複雑化が予想されます。設計段階でのメンテナンス計画策定や、管理規約での修繕責任分界点の明確化が重要です。

 

結露対策も将来性を左右する重要要素です。パイプスペース内の湿度管理や通気改善により、配管の長寿命化と建物構造体の保護を図ることができます。適切な防湿対策と定期点検体制の確立により、30年後も安定した設備機能を維持可能となります。

 

建築設備フォーラムでの設計実務者向け情報交換
https://www.setsubi-forum.jp/cgi-bin/c-board/data/design/log/tree_345.htm
パイプスペースの結露対策と通気改善技術
https://www.tokyo-suido.net/maishion/chisiki24.html