六角ナット寸法表一覧|建築現場で選ぶべき種類と規格

六角ナット寸法表一覧|建築現場で選ぶべき種類と規格

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六角ナット寸法表一覧

六角ナット寸法表の基本情報
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JIS規格による分類

1種・2種・3種の3つの基本種類と新規格のスタイル1・2

📏
主要寸法項目

面幅(s)、高さ(m)、接触面径などの設計に必要な寸法

🏗️
建築現場での実用性

用途に応じた適切な種類選択と施工時の注意点

六角ナット種類別寸法比較表

建築現場で使用される六角ナットは、JIS B 1181:2014規格により明確に分類されています。以下の表は、最も使用頻度の高いサイズの寸法をまとめたものです。

 

主要サイズの寸法表

ねじの呼び 面幅(s)mm 1種・2種高さ(m)mm 3種高さ(m)mm 接触面径(dw)mm 最大幅(e)mm
M6 10 5.0 3.6 9.8 11.5
M8 13 6.5 5.0 12.5 15.0
M10 17 8.0 6.0 16.5 19.6
M12 19 10 7.0 18.0 21.9
M16 24 13 10 23 27.7
M20 30 16 12 29 34.6
M24 36 19 14 34 41.6

この表で注目すべき点は、3種ナットの高さが1種・2種の約75%程度に設定されていることです。これは「8割ナット」「6割ナット」という呼び方の由来でもあり、M10の場合、1種・2種は8mm、3種は6mmという具合に、呼び径に対する高さの割合で名称が決まっています。

 

建築現場では、特にM12からM20のサイズが頻繁に使用されるため、これらのサイズの寸法は正確に把握しておく必要があります。また、面幅(s)はレンチサイズと直結するため、工具選定の際も重要な指標となります。

 

許容差の重要性
JIS規格では、各寸法に対して許容差が設定されており、例えばM12の面幅19mmに対しては0〜-0.8mmの許容差があります。この許容差は製造上の品質管理に関わる重要な要素で、建築現場では互換性確保の観点から無視できません。

 

六角ナット1種・2種・3種の選定基準

六角ナットの種類選択は、建築現場での用途と要求される性能により決定されます。各種類の特徴を理解することで、適切な選定が可能になります。

 

1種ナットの特徴と用途

  • 🔧 面取り構造: 片側(表面側)の外周と内側穴のみに面取り
  • 💪 強度特性: 座面が大きいため、最も大きな締付けトルクに対応可能
  • ⚠️ 使用上の注意: 締付け方向が存在するため、一度締めたら外すことを想定しない箇所に使用
  • 🏗️ 建築での用途: 基礎アンカーボルトや構造用接合部など、恒久的な締結部位

2種ナットの特徴と用途

  • 🔄 面取り構造: 両側面の外周と内穴に面取り
  • 🔧 使い勝手: 表裏がないため、施工時の向きを気にする必要がない
  • 🏗️ 建築での用途: 一般的な構造用接合、設備配管の接続部など最も汎用性が高い
  • 推奨理由: メンテナンス時の取り外しも容易で、建築現場では標準的な選択

3種ナットの特徴と用途

  • 📏 寸法特性: 2種と同じ面取り構造だが、高さが約75%と低い設計
  • 適用場面: 高さに制約がある箇所や、大きなトルクを必要としない部位
  • 🔩 ねじ噛み合い: 高さが低いため、ねじの噛み合い長さが短くなる
  • 🏗️ 建築での用途: 薄板構造の接合部、軽量鉄骨の小ボルト接合など

建築現場では、特に2種ナットが推奨される理由として、メンテナンス性の観点があります。建築物は数十年の使用期間中に点検や部分的な改修が必要になることが多く、その際にナットの取り外しが必要になる場合があります。1種ナットは一度締めると取り外しが困難になる可能性があるため、恒久的な接合部以外では避けるべきです。

 

六角ナット新旧JIS規格の違いと注意点

2014年のJIS B 1181規格改訂により、六角ナットの規格体系が大きく変更されました。この変更は国際標準化(ISO規格準拠)を目的としており、建築現場での調達や設計に重要な影響を与えています。

 

本体規格品(新JIS規格)の特徴

  • 📊 呼称: スタイル1、スタイル2として分類
  • 🌍 国際対応: ISO規格に完全準拠し、海外調達にも対応
  • 💪 強度向上: 同一強度区分での比較で、旧規格品より高強度
  • 📏 高さ変更: ねじ山のせん断破壊抵抗力向上のため、ナット高さが増加

附属書品(旧JIS規格)の現状

  • ⚠️ 廃止予定: 「将来廃止する」と明記されており、新規設計での使用は非推奨
  • 🔄 現行流通: M10、M12などの一部サイズで旧規格品が市場に残存
  • 📋 設計注意: 既存建築物の改修時は、旧規格との互換性確認が必要

建築現場での実務的な注意点
現在の建築現場では、新旧規格品が混在している状況があります。特に以下の点に注意が必要です。

  • サイズ確認の重要性: M10、M12サイズでは面幅が旧規格のものが流通している可能性があり、現場での工具選定時に確認が必要
  • 強度計算への影響: 構造計算書と実際の調達品の規格が異なる場合、許容応力度の見直しが必要になる可能性
  • 施工図面の明記: 設計図面では新規格品(スタイル1またはスタイル2)を明確に指定することが重要

この規格変更により、建築業界では段階的な移行期間を設けており、既存プロジェクトでは旧規格品の使用も認められていますが、新規プロジェクトでは新規格品の採用が強く推奨されています。

 

JIS規格検索サイトでの詳細確認
JIS検索 - 日本産業標準調査会

六角ナット建築現場での実用的な使い分け方法

建築現場における六角ナットの選定は、単に寸法だけでなく、施工性、維持管理性、コストなどの総合的な判断が求められます25。実際の現場経験に基づいた使い分けの指針を以下にまとめます。

 

構造種別による使い分け
🏢 鉄骨造建築物

  • 主要構造部: M16〜M24の2種ナット(高力ボルト接合用)
  • 二次部材: M12〜M16の2種または3種ナット
  • 軽微な接合: M6〜M10の2種ナット

🏠 木造建築物

  • 金物接合: M12〜M16の2種ナット(メンテナンス性重視)
  • アンカーボルト: M12〜M20の1種ナット(恒久的締結)

🏗️ RC造建築物

  • アンカーボルト: M16〜M24の1種ナット
  • 設備取付: M8〜M12の2種ナット

施工段階による選定基準
建築現場では施工段階により、求められる特性が異なります。

  • 仮設工事: 取り外しを前提とするため、必ず2種ナットを使用。特に足場のクランプボルトや型枠締結では、3種ナットも活用
  • 本設工事: 恒久的な接合部では1種ナット、将来的なメンテナンスを考慮する部位では2種ナットを選択
  • 設備工事: 配管支持金物など、定期的な点検が必要な箇所では2種ナット一択

材質と表面処理による選定
建築現場では、ナットの材質と表面処理も重要な選定要素です。

  • 生地品: 屋内の乾燥した環境での使用に適している
  • 溶融亜鉛めっき: 屋外や湿気の多い環境での長期使用に適している
  • ステンレス製: 化学的腐食環境や高い美観性が要求される箇所に使用

工具との適合性確認
現場での作業効率を左右する工具との適合性も、ナット選定の重要な要素です。面幅寸法と工具サイズの対応表を常に確認し、現場で使用している工具セットに合わせた選定を行うことで、施工効率が大幅に向上します。

 

また、電動工具使用時の面幅摩耗を考慮し、精密な作業が要求される部位では手締め用の高品質なナットを選定することも重要です。

 

六角ナット寸法表の読み方と設計時の留意点

建築設計においてナット寸法表を正しく読み取り、適切に活用するためには、各寸法項目の意味と相互関係を理解することが不可欠です。設計者が見落としがちな重要なポイントを含めて解説します。

 

寸法記号の正確な理解
JIS規格の寸法表には、以下の主要記号が使用されています。

  • s(面幅): レンチサイズと直結する最重要寸法。許容差は負の方向のみ
  • m(高さ): ナットの全高。1種・2種は同一、3種は約75%
  • e(外接円径): 六角形に外接する円の直径。配置計画時の必要寸法
  • dw(座面径): 実際の荷重伝達面積を決定する重要寸法

許容差の実務的な意味
許容差は製造上の品質管理指標ですが、設計上は以下の点で重要です。
📐 最小寸法での設計: 構造計算では最小寸法を使用して安全側の設計を行う
🔧 工具選定: 面幅の最小寸法に対応する工具を準備する必要がある
📏 クリアランス: 隣接部材との最小距離は最大寸法で検討する
設計時の見落としやすいポイント
建築設計でナット寸法を検討する際、以下の点が見落とされがちです。
🔍 回転半径の確保: ナット締結時に必要な工具の回転半径を考慮した配置計画
📊 荷重分散: 座面径(dw)による実際の面圧応力の確認
熱膨張: 金属系建築物では温度変化によるナット寸法変化の考慮
CAD図面での正確な表現方法
建築CAD図面でナットを表現する際は、以下の寸法を正確に反映する必要があります。

  • 平面図: 外接円径(e)を基準とした配置検討
  • 断面図: 高さ(m)による干渉チェック
  • 詳細図: 面幅(s)の明記と工具アクセス性の確認

材料拾い出しでの注意点
建築現場への材料供給において、寸法表の読み取りミスは重大な施工遅延を招きます。特に以下の点に注意が必要です。
規格の明確化: 新JIS(スタイル1・2)か旧JIS(1種・2種・3種)かの明記
📋 表面処理の指定: 生地、めっき、ステンレスなどの材質指定
🔢 数量の正確性: ボルト本数とナット個数の整合性確認
これらの留意点を踏まえた寸法表の活用により、設計品質の向上と現場でのトラブル防止が実現できます。建築業界では、図面の正確性が施工品質に直結するため、ナット寸法表の正しい理解と適用は極めて重要な技術要素となっています。