
建築現場で使用される六角ナットは、JIS B 1181:2014規格により明確に分類されています。以下の表は、最も使用頻度の高いサイズの寸法をまとめたものです。
主要サイズの寸法表
ねじの呼び | 面幅(s)mm | 1種・2種高さ(m)mm | 3種高さ(m)mm | 接触面径(dw)mm | 最大幅(e)mm |
---|---|---|---|---|---|
M6 | 10 | 5.0 | 3.6 | 9.8 | 11.5 |
M8 | 13 | 6.5 | 5.0 | 12.5 | 15.0 |
M10 | 17 | 8.0 | 6.0 | 16.5 | 19.6 |
M12 | 19 | 10 | 7.0 | 18.0 | 21.9 |
M16 | 24 | 13 | 10 | 23 | 27.7 |
M20 | 30 | 16 | 12 | 29 | 34.6 |
M24 | 36 | 19 | 14 | 34 | 41.6 |
この表で注目すべき点は、3種ナットの高さが1種・2種の約75%程度に設定されていることです。これは「8割ナット」「6割ナット」という呼び方の由来でもあり、M10の場合、1種・2種は8mm、3種は6mmという具合に、呼び径に対する高さの割合で名称が決まっています。
建築現場では、特にM12からM20のサイズが頻繁に使用されるため、これらのサイズの寸法は正確に把握しておく必要があります。また、面幅(s)はレンチサイズと直結するため、工具選定の際も重要な指標となります。
許容差の重要性
JIS規格では、各寸法に対して許容差が設定されており、例えばM12の面幅19mmに対しては0〜-0.8mmの許容差があります。この許容差は製造上の品質管理に関わる重要な要素で、建築現場では互換性確保の観点から無視できません。
六角ナットの種類選択は、建築現場での用途と要求される性能により決定されます。各種類の特徴を理解することで、適切な選定が可能になります。
1種ナットの特徴と用途
2種ナットの特徴と用途
3種ナットの特徴と用途
建築現場では、特に2種ナットが推奨される理由として、メンテナンス性の観点があります。建築物は数十年の使用期間中に点検や部分的な改修が必要になることが多く、その際にナットの取り外しが必要になる場合があります。1種ナットは一度締めると取り外しが困難になる可能性があるため、恒久的な接合部以外では避けるべきです。
2014年のJIS B 1181規格改訂により、六角ナットの規格体系が大きく変更されました。この変更は国際標準化(ISO規格準拠)を目的としており、建築現場での調達や設計に重要な影響を与えています。
本体規格品(新JIS規格)の特徴
附属書品(旧JIS規格)の現状
建築現場での実務的な注意点
現在の建築現場では、新旧規格品が混在している状況があります。特に以下の点に注意が必要です。
この規格変更により、建築業界では段階的な移行期間を設けており、既存プロジェクトでは旧規格品の使用も認められていますが、新規プロジェクトでは新規格品の採用が強く推奨されています。
JIS規格検索サイトでの詳細確認
JIS検索 - 日本産業標準調査会
建築現場における六角ナットの選定は、単に寸法だけでなく、施工性、維持管理性、コストなどの総合的な判断が求められます25。実際の現場経験に基づいた使い分けの指針を以下にまとめます。
構造種別による使い分け
🏢 鉄骨造建築物
🏠 木造建築物
🏗️ RC造建築物
施工段階による選定基準
建築現場では施工段階により、求められる特性が異なります。
材質と表面処理による選定
建築現場では、ナットの材質と表面処理も重要な選定要素です。
工具との適合性確認
現場での作業効率を左右する工具との適合性も、ナット選定の重要な要素です。面幅寸法と工具サイズの対応表を常に確認し、現場で使用している工具セットに合わせた選定を行うことで、施工効率が大幅に向上します。
また、電動工具使用時の面幅摩耗を考慮し、精密な作業が要求される部位では手締め用の高品質なナットを選定することも重要です。
建築設計においてナット寸法表を正しく読み取り、適切に活用するためには、各寸法項目の意味と相互関係を理解することが不可欠です。設計者が見落としがちな重要なポイントを含めて解説します。
寸法記号の正確な理解
JIS規格の寸法表には、以下の主要記号が使用されています。
許容差の実務的な意味
許容差は製造上の品質管理指標ですが、設計上は以下の点で重要です。
📐 最小寸法での設計: 構造計算では最小寸法を使用して安全側の設計を行う
🔧 工具選定: 面幅の最小寸法に対応する工具を準備する必要がある
📏 クリアランス: 隣接部材との最小距離は最大寸法で検討する
設計時の見落としやすいポイント
建築設計でナット寸法を検討する際、以下の点が見落とされがちです。
🔍 回転半径の確保: ナット締結時に必要な工具の回転半径を考慮した配置計画
📊 荷重分散: 座面径(dw)による実際の面圧応力の確認
⚡ 熱膨張: 金属系建築物では温度変化によるナット寸法変化の考慮
CAD図面での正確な表現方法
建築CAD図面でナットを表現する際は、以下の寸法を正確に反映する必要があります。
材料拾い出しでの注意点
建築現場への材料供給において、寸法表の読み取りミスは重大な施工遅延を招きます。特に以下の点に注意が必要です。
✅ 規格の明確化: 新JIS(スタイル1・2)か旧JIS(1種・2種・3種)かの明記
📋 表面処理の指定: 生地、めっき、ステンレスなどの材質指定
🔢 数量の正確性: ボルト本数とナット個数の整合性確認
これらの留意点を踏まえた寸法表の活用により、設計品質の向上と現場でのトラブル防止が実現できます。建築業界では、図面の正確性が施工品質に直結するため、ナット寸法表の正しい理解と適用は極めて重要な技術要素となっています。