接合法とは|建築業の種類や強度の基礎知識

接合法とは|建築業の種類や強度の基礎知識

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接合法とは|建築における接合の基礎

接合法の基本概要
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接合法の定義

建築部材同士をつなぎ合わせる技術で、構造全体の強度と安全性を決定する

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主な種類

機械的接合法、冶金的接合法、接着剤接合法の3つに大別される

重要性

接合部の破壊は建物崩壊につながるため、母材以上の注意が必要

接合法とは、建築物を構成する柱や梁などの部材同士をつなぎ合わせる技術の総称です。部材は工場で製作されトラックで運搬されるため、大きさに制限があり、建築現場での接合作業が必要不可欠です。接合部は構造耐力上主要な部分であり、接合部が壊れると建物の崩壊に直結するため、基となる部材(母材)よりも重要な役割を担っています。
参考)http://kentiku-kouzou.jp/koukouzou-setugoubu.html

建築業界では、接合法の選択が建築物の強度や安全性、施工効率に大きく影響します。適切な接合法を選定するためには、各接合法の利点と欠点を熟知し、「どの接合法を選択するか」「どの接合法を組み合わせると効果的か」を考えることが非常に重要です。建築基準法施行令第67条では、構造耐力上主要な部分である鋼材の接合について、高力ボルト接合、溶接接合、リベット接合などの方法が規定されています。
参考)https://hardlock.co.jp/wp-content/uploads/pdf/stds-certification/QuotedFromArticle67JoiningOfTheBuildingStandardAcEnforcementOrdinance.pdf

接合部は同じ素材同士だけでなく、異なる部材をつなぎ合わせた場合も「接合部」と呼びます。溶接してつなぎ合わせた部分は「溶接接合部」、柱と梁をつなぎ合わせた部分は「柱梁接合部」として区別されます。建築物には必ず接合部が存在するため、耐震性を確保するために適正な構造設計が求められ、強度に問題がある場合は接合部にピンなどで補強する必要が生じます。
参考)https://media.suke-dachi.jp/glossary/general/joint-5/

接合法の種類と分類方法

 

接合法は接合原理の違いによって、機械的接合法、冶金的接合法(材料的接合)、接着剤接合法(化学的接合)の3種類に大別されます。機械的接合法は、ボルトやリベットなどの締結部品を利用して部材を接合する方法です。この方法は結合部分の強度が高く、ボルトを緩めれば分解できるため、メンテナンスや修理が容易という利点があります。
参考)https://www.monotaro.com/note/readingseries/yousetsukiso/0101/

冶金的接合法は、溶接やろう付けなど金属材料の持つ特性を利用して接合する方法で、融解や圧力を用いて材料同士を一体化させます。溶接接合では繋ぎ目が強固になるという特徴があり、工場で管理された環境下で行う工場溶接は高品質な接合部を安定して作れます。接着剤接合法は、各種接着剤を利用して部材を接合する方法で、熱影響を受けず異種材料の接合が容易です。
参考)https://kenmaga.com/blog/288537.html

建築基準法施行令では、炭素鋼の接合方法として高力ボルト接合、溶接接合、リベット接合が規定されており、ステンレス鋼の場合はこれらに加えてボルト接合も認められています。現在の建築現場では、施工効率や品質管理のしやすさから高力ボルト接合が広く普及しており、工場溶接と組み合わせて使用されることが一般的です。
参考)https://www.various-kozo.com/%E3%80%90%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E6%A7%8B%E9%80%A0%E8%A8%AD%E8%A8%88%E3%80%91%E9%89%84%E9%AA%A8%E9%80%A0%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E3%82%92%E7%9F%A5%E3%82%8B-10/

接合法における強度と耐震性能

接合部の強度は、建築物全体の耐震性能を左右する重要な要素です。特に鉄筋コンクリート造の柱梁接合部では、大地震時に建物が大きく変形する際、接合部がその変形に耐えられる必要があります。柱や梁が塑性化して地震エネルギーを吸収している間に、接合部が脆く壊れてしまう事態を防ぐため、詳細な検討が求められます。
参考)https://www.various-kozo.com/%E3%80%90%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E6%A7%8B%E9%80%A0%E8%A8%AD%E8%A8%88%E3%80%91rc%E6%9F%B1%E6%A2%81%E6%8E%A5%E5%90%88%E9%83%A8%E3%81%8Cng%E3%81%AB%EF%BC%81%E8%83%8C/

接合部のせん断耐力は、コンクリート強度、接合部のサイズ、接合部の形状(十字形、T字形、L字形)、直交方向の梁の有無、柱の軸力などの要因によって決まります。一般的に十字形が最も有利で、L字形が最も不利になります。接合部内の帯筋量を増やしても耐力そのものは上昇しませんが、帯筋には万が一せん断ひび割れが生じた後も急激な耐力低下を抑制する拘束効果があり、靭性を確保するために最低限の配筋が必要です。​
鉄骨造では、剛接合という柱と梁が一体化するように溶接して接合する方法が用いられ、地震などの外力が加えられても接合部が変形しにくいという特徴があります。剛接合で構築された建物は耐震性が高く保たれ、水平荷重にも耐えられるため台風の揺れにも対応できます。ただし柱や梁には曲げモーメントが発生するため、部材が大きくなるというデメリットもあります。
参考)https://www.sekoukyujin-yumeshin.com/learn/22100/

接合法の選定基準と実務での注意点

建築現場で適切な接合法を選定するには、接合する部材の材質、構造物の用途、施工環境、コスト、メンテナンス性などを総合的に考慮する必要があります。機械的接合法は熱影響がなく材料が変質しないため、異種材料の接合が容易で分解・修理が可能という利点があります。一方、溶接接合は接合部が強固で外観も美しく仕上がりますが、熟練した技術が必要で施工環境の影響を受けやすいという欠点があります。
参考)https://www.kinzoku.co.jp/media/techinfo/welding-quality

木造建築では、建築基準法で筋かいの端部における仕口の接合方法が厳密に規定されており、筋かいの種類に応じて適切な接合方法を選択する必要があります。柱の柱脚および柱頭の仕口についても、軸組の種類と柱の配置に応じた接合方法が定められており、日本住宅・木材技術センターが認定する「Zマーク」や「Dマーク」などの認定を受けた製品を選ぶことが推奨されています。
参考)https://www.kana-e.co.jp/choose.html

溶接品質の管理では、外観品質(ビードの形状、スパッタの有無)、寸法精度(設計寸法とのズレ、熱変形)、機械的特性(引張強度、疲労強度)、溶接条件(電流・電圧・速度)、材料の適合性などの項目を的確にチェックすることが重要です。これらの管理項目は溶接前の工程設計、実際の施工中、施工後の検査工程でそれぞれ確認・管理されます。高力ボルト接合では、ボルトの締付けトルクの管理や戻り止めの措置が品質管理の鍵となります。
参考)https://hardlock.co.jp/wp-content/uploads/2022/09/QuotedFromArticle67JoiningOfTheBuildingStandardAcEnforcementOrdinance-R.pdf

接合法における最新技術と将来展望

建築業界では、接合技術の進化が続いています。かつて鉄骨造の接合で主流だったリベット接合は、真っ赤に熱したリベットをハンマーで叩いて固定する方法で、熟練の技術を要し施工時の騒音が大きいという課題がありました。東京タワーの建設でもこのリベット接合が使われましたが、1950年代にアメリカで開発された高力ボルトが日本に導入され、1970年代に設計基準が整備されると、施工効率や品質管理のしやすさから急速に普及しました。​
現在では、摩擦スタッド接合など新しい固相接合法も研究されており、ばらつきが少なく高い信頼性を有する継手を容易に作製できる技術として注目されています。この方法は固相状態で部材同士が接合されるため、溶接方向の影響を受けにくく、自動車の安全重要部品の製造にも利用されています。接合時の方向性に依存せず、かつ高い信頼性を有するスタッド継手を容易に作製できる接合手法として期待されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/qjjws/36/2/36_135/_article/-char/ja/

建築構造物が大型化する際には、部材の強度や剛性を高めるために鋼材の厚板化・高張力化が行われますが、これは溶接時の低温割れ感受性を増大させ、溶接施工管理を難しくする問題につながります。このため、溶接材料に起因する溶接金属の拡散性水素量を低減することで熱管理の緩和を図る研究が進められており、大型構造物の溶接施工管理策として重要視されています。接合技術の進化は、より強く、より効率的な建築物の実現に貢献し続けています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/qjjws/35/2/35_102/_article/-char/ja/

接合法の品質保証と認定制度の活用

建築金物、特に構造耐力上重要な金物については、品質を保証するための様々な認定制度が整備されています。Zマーク金物は、公益財団法人日本住宅・木材技術センターが定めた接合金物規格をクリアし、安定的に供給できると評価され製造の承認を受けたもので、製品にはZマークが表示されています。建設省告示第1460号に対応した金物として最も一般的に使用されています。
参考)https://www.nakaoss.com/onlineshop/features/architectural-hardware-types-and-selection-guide/

Dマーク金物(同等認定金物)は、日本住宅・木材技術センターで性能試験を行い、Zマークと同等の品質と性能であると認定された接合金物です。Sマーク金物は、公的評価機関によって品質や性能を確認され、日本住宅・木材技術センターにより評価・認定されたもので、特殊な用途や高度な性能が求められる場合に使用されます。建築基準法では、JIS規格適合品のかわりにメーカー毎に国土交通大臣の一般認定を得たものが使えることになっています。
参考)https://nikkenren.com/kenchiku/sekou/steel_frame_Qamp;A/pdf/b-all_2022.pdf

接合部の検査では、住宅の性能評価として柱梁接合部の引張耐力、筋かい先端部の仕口の引張試験、ラーメン構法の接合部試験などが実施されます。耐震診断では各壁の強さに対し、接合部仕様の低減係数を反映させ、強い壁ほど適切な接合部でなければ強さを低く評価するという考え方が採用されています。これらの品質管理システムにより、建築物の安全性と信頼性が確保されています。
参考)https://www.kusano-koumu.co.jp/%E8%AA%B0%E3%81%A7%E3%82%82%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B%E5%BB%BA%E7%AF%89%E5%9F%BA%E6%BA%96%E6%B3%95%E3%80%8C%E6%8E%A5%E5%90%88%E9%83%A8%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8/

参考リンク:建築基準法施行令第67条の接合に関する詳細な規定
建築基準法施行令第六十七条(接合)よりからの引用
参考リンク:接合部の基本的な意味と建築物における役割
接合部とは?1分でわかる意味、建築物の接合部の種類、応力
参考リンク:溶接を含む接合方法の種類と特徴の比較
1-1 接合方法の種類について - 溶接の基礎講座
参考リンク:剛接合の特徴とラーメン構造での活用方法
剛接合の特徴や種類を解説
参考リンク:建築金物の認定制度と選定基準の詳細
【徹底解説】建築金物の種類と選び方|安全な建物を支える接合

木質構造接合部設計事例集