

止水用アクリル樹脂注入材の一番の特徴は「極めて低粘度で流動性が高い」点で、ウレタン系注入材よりも細いひび割れや毛細管状の空隙まで入り込めることです。
この低粘度性により、漏水を伴う微細クラック内部を連続的に充填しやすく、結果としてコンクリート躯体とポリマーゲルが一体化し、長期的な止水性が得られます。
アクリル樹脂系は接着性と「ひび割れ追従性」に優れており、躯体側で若干の変位や目地開きが生じても、ゲル状の樹脂が伸びながら止水機能を維持しやすい構造になっています。sttg+1
一方でウレタン系注入材は膨張力や即効性に優れますが、硬化物が比較的硬くなりやすく、長期的な繰り返し変形に対する追従性や、微細クラックへの浸透性ではアクリル系が有利とされるケースが多いです。fukutoku-group+1
また、水性エマルジョンタイプのアクリル樹脂注入材は「無毒・不燃」で特定化学物質も含まない製品もあり、閉鎖空間のトンネルや地下ピットで作業者の安全性と環境負荷の低減を両立しやすい点も意外と大きなメリットです。
参考)三生化工株式会社 – コンクリート建造物、建築物…
火気厳禁エリアや換気条件が厳しい場所では、溶剤型の注入材を避けて水性アクリル系を選定すると、施工計画の自由度が上がり、元請け・管理側の安全書類の整理もしやすくなります。
止水用アクリル樹脂注入材は、トンネル覆工、地下道、地下街、共同溝、地下ピットなどの「コンクリート構造物の打継ぎ目地・ひび割れ・エキスパンションジョイント」からの漏水対策に広く用いられています。
特に高速道路トンネルや鉄道トンネルでは、覆工コンクリートの継ぎ目や誘発目地からのにじみ出しやポタポタ漏水に対して、アクリル樹脂を高圧注入して止水と躯体保全を同時に図る工法が、設計要領等に適合した技術として採用されています。
STTG工法やバンデフレキシンシステムのように、アクリル樹脂系の主材と吸水性硬化促進剤を2液混合して用いるシステムでは、多量の漏水や水圧がかかった状態でも確実に止水できるよう、注入圧と重合時間を現場条件に合わせて調整できることが大きな特徴です。tdsnet+2
地下ピットやよう壁、浄化槽施設、汚水タンク、水処理施設など、常に湿潤状態で水圧を受け続ける構造物でも、親水性高弾性樹脂が水を吸収して膨張し、空隙を埋めることで漏水路を遮断し、長期間の止水を実現します。flexin+1
意外な適用例としては、美術館など意匠性の高い地下構造物や、免震ピット周りの漏水対策があります。
仕上げ面を壊さず裏側から漏水経路を塞ぎたい場合や、免震装置や設備が密集して防水層の全面改修が難しい場所などで、アクリル樹脂注入材による「芯からの止水」が有効な手段となっています。fukutoku-group+1
止水用アクリル樹脂注入材の施工は、基本的に「漏水経路の診断 → 削孔位置の計画 → 注入孔削孔 → 専用プラグ設置 → 注入 → プラグ撤去・仕上げ」という流れで組み立てられます。
エア駆動のピストン式ポンプや高圧注入機を使い、0〜50MPa程度の注入圧を漏水状況や躯体条件に合わせて調整しながら、微細な空隙の隅々までアクリル樹脂を行き渡らせるのがポイントです。
アクリル樹脂注入材の大きな武器が「重合硬化時間を数秒〜数分の範囲でコントロールできる」点です。mono.ipros+1
例えば、勢いの強い漏水には硬化を早めて一気に塞ぎ、にじみ出し程度の広い範囲の漏水には、硬化を遅らせて浸透時間を確保するなど、現場条件に応じて可使時間とゲル化タイミングを調整できます。flexin+1
また、一部システムでは「-10℃〜+40℃」といった広い温度範囲で施工可能なものもあり、冬期のトンネル工事や高温多湿環境でも硬化挙動を安定させやすいよう設計されています。mono.ipros+1
この温度依存性の少なさは、夜間・早朝の気温変動が大きい高速道路トンネル補修や、冷たい地下水が流入するトンネルで、施工時間帯による品質ばらつきを抑える上で見逃せないポイントです。catalog.express-highway+1
現場で意外と効いてくるのが「注入順序と圧力管理」です。
・まず漏水量の少ない箇所から先に押さえて水圧を分散させる
・主経路を塞いだ後、枝分かれした細かいクラックを低圧でなじませるように充填する
といった打順を組むことで、樹脂のショートパスを減らし、残留空隙を最小化できます。tdsnet+1
アクリル樹脂系の止水注入材は、硬化後に「親水性高弾性樹脂」として機能し、湿潤下で水を吸収して膨張することで止水性能を維持する設計になっている製品が多くあります。
この膨張・収縮の繰り返しに耐える伸び性能と付着強度により、躯体の微小な変位や地震による目地開き、温度変化に伴うひび割れの再開にも追従しやすく、長期耐久性に優れた止水工法として位置付けられています。
トンネルや地下構造物の設計要領でも、アクリル樹脂注入材を用いた工法が「長期間安定した止水性能を発揮する技術」として適合製品に位置付けられており、短期間で再漏水が発生する従来工法の課題を補う役割を担っています。catalog.express-highway+1
アルカリ性の強いコンクリート内部で長期に使用されるため、樹脂配合や硬化促進剤の選定はアルカリ環境下での耐久性を前提として設計されており、反応後のポリマーはアルカリ骨材反応や塩化物環境とも共存できるよう配慮されています。erewhon+1
安全性の面では、水性エマルジョンタイプで「無毒・無引火性・特定化学物質不使用」と明記された止水注入材もあり、作業者の健康リスクや防火規制への適合が求められる現場で採用しやすくなっています。
特に地下街や地下駅など多数の利用者がいる環境では、施工中の臭気・VOC・火気の扱いが問題となるため、低臭・水性のアクリル樹脂注入材を採用することで、夜間作業でも近隣苦情や安全管理上の負荷を軽減できます。catalog.express-highway+1
止水用アクリル樹脂注入材は、トンネルやインフラ分野のイメージが強い一方で、建築分野の実務者が「建物側のディテール改善」と組み合わせることで、より効果的な漏水対策パッケージを組めるのが実は大きな強みです。
例えば、地下外壁の打継ぎからのにじみ漏水に対してアクリル樹脂注入材で一次止水を行い、その後内側に二次排水層や水切りディテールを追加することで、躯体内部に残る水圧を逃がし、長期的な仕上げ材の負担を減らす設計が可能になります。
改修案件では、「既存防水層を全面撤去せず、漏水経路だけをピンポイントで塞ぎたい」という要望が多く、ここでアクリル樹脂注入材の低粘度性と浸透性が活きてきます。ipros+1
既存仕上げを極力壊さず、裏側からひび割れ内部を閉塞してから、最小限の表面補修と仕上げやり替えで済ませる、という“点でなく線で止める”考え方を導入すると、工期・仮設・騒音の面で施主メリットが大きくなります。ipros+1
さらに、建築従事者なら「止水」と「劣化抑制」をセットで設計できる点も見逃せません。
・鉄筋腐食やアルカリ骨材反応の進行が疑われる部位では、止水注入と同時に中性化・塩害対策をどう組み合わせるか
・躯体の今後の変位を見越し、どこまでアクリル樹脂注入材で追従させ、どこからは目地・スリット・伸縮構造で逃がすか
といった視点を加えると、「単なる止水工事」から「構造物の余寿命を伸ばす改修提案」にまで踏み込めます。sttg+2
現場で意外と効果があるのが、「漏水診断の精度を上げるための事前観察と記録」です。
注入前に
・漏水の色(水の濁り・鉄錆色)
・季節や降雨との相関
・日内変動(時間帯ごとの増減)
を簡単に記録しておくだけで、注入箇所の優先順位や、必要な注入材の粘度・硬化時間の設定をより合理的に決められます。tdsnet+1
この「診断+止水+ディテール改善」を一体で提案できるのは、建築従事者ならではの強みであり、インフラ系止水工事業者との差別化ポイントにもなり得ます。catalog.express-highway+1
トンネル用の止水注入技術とアクリル樹脂注入材の概要(アクリル系材料の特徴と止水注入の考え方の参考)
止水注入工法についての解説 | 松竹工業(トンネル・橋梁 剥落防止工事専門)
アクリル樹脂系高圧注入止水システム「バンデフレキシン」の工法・性能・硬化時間調整の詳細(2液アクリル樹脂系注入材の具体例)
アクリル樹脂系高圧注入止水システム『バンデフレキシン』
伸び・付着強度に優れた石油樹脂・アクリル樹脂系材料を使ったSTTG工法の技術情報(長期耐久性・地下構造物への適用の参考)
STTG工法 | 福徳技研株式会社 技術情報
水ガラス系止水注入材の主成分は、ケイ酸ナトリウムを主とする水ガラス溶液と、反応性をもつ硬化剤(酸性塩や金属塩など)で構成される無機系薬液注入材である。
両者を混合し地盤中やコンクリート内部に注入すると、pHの変化やイオン交換反応によりケイ酸が脱水縮合し、三次元網目構造をもつゲル体や硬質シリカ骨格を形成して止水・空隙充填が行われる。
水ガラス系は「ゲルタイム」と呼ばれる反応開始から固化までの時間を調整しやすく、現場条件に合わせて秒~数十分オーダーまで設計が可能な点が大きな特徴である。
参考)https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001726130.pdf
短いゲルタイムは多量漏水部の直近止水に有利だが浸透性が落ちるため、微細クラックや透水性地盤への広がりを重視する場合は、やや長めのゲルタイムと低圧・長時間注入の組合せが有効になる。
参考)https://irid.or.jp/cw/public/591.pdf
水ガラス系注入材は、砂質地盤への浸透性や止水性、長期耐久性に優れた溶液型材料として福島第一原子力発電所構内の地盤止水工法にも適用された実績があり、高い信頼性を持つ材料系として位置付けられている。
この実績からも、薬液の選定と施工管理を適切に行えば、厳しい環境下でも止水性能と構造物周辺の地下水制御を両立できることが示されている。
水ガラス系の反応は温度や水質(地下水の硬度・塩分濃度など)の影響を受けるため、室内配合試験や現場パイロット注入でゲルタイムと強度発現を事前検証しておくことが、安全側の設計・施工には欠かせない。
特に低温時には反応遅延、高温時には急硬化による配管内閉塞リスクが増すため、季節・時間帯を考慮した配合と施工計画が求められる。
この部分で参照されている資料は、薬液注入工全般の基礎と水ガラス系注入材の反応特性について詳しく解説している。
水ガラス系止水注入材は、地下トンネル、地下ピット、擁壁、ボックスカルバートなど、地下水に曝される鉄道・道路・河川関連構造物の漏水対策として広く用いられている。
構造物内部からの止水注入により、微細なひび割れやコールドジョイント、背面地盤の透水経路まで薬液を行き渡らせることで、漏水経路そのものを消失させるアプローチが取られる。
止水注入工法の一般的な手順としては、鉄筋位置の探査、注入孔の削孔、誘導パイプの挿入、ホース・ノズル内の空気抜き、止水材の注入、硬化状況の確認という流れで進行する。
参考)止水注入工法についての解説
注入孔径はおおむねφ10mm程度、深さは躯体厚の2分の1を目安とし、鉄筋損傷を避ける削孔計画が止水性能と構造安全性の両面で重要となる。
使用する止水材を水ガラス系とするか、ウレタン系・アクリル系などの有機系とするかは、漏水量、クラック幅、必要な変形追従性、環境条件に応じて選定される。tdsnet+1
水ガラス系は無機系として耐火性や環境負荷の面で優位なケースが多く、連続した空隙の多い砂質地盤やコンクリートと地盤の界面など、比較的広がりを求められる場面に適している。irid+1
トンネルなど大断面構造物では、事前に漏水状況を区分し、多量漏水部と滲み出し部で注入材種や配合、注入圧を切り分けると、過剰な薬液消費を抑えつつ確実な止水が期待できる。sttg+1
STTG工法など、高圧注入を前提とした止水技術と組み合わせることで、水ガラス系単独では対応が難しい大規模漏水にも柔軟に対応することが可能になる。fukutoku-group+2
このセクションの内容は、止水注入工法の全体像と適用構造物の典型について整理する際に参考になる。
「止水注入工法についての解説」(トンネル・橋梁 剥落防止工事専門)
水ガラス系止水注入材は無機系であり、燃焼時に有毒ガスを発生しないことから、火災リスクや揮発性有機化合物(VOC)の観点では有機系注入材よりも環境負荷が小さいとされる。
一方で、古くは「水に弱く長期的に流失しやすい」といったイメージを持たれていたが、近年は溶液型水ガラス系材料の配合改良により、止水性と長期耐久性が大きく向上している。
福島第一原子力発電所構内で用いられた水ガラス系注入材は、砂地盤への浸透性、止水性、長期耐久性が評価され、放射性物質の拡散抑制を目的とした地盤止水として採用された。
このような高信頼性を要求される現場での実績は、地下構造物の維持管理においても、水ガラス系を長期的な止水対策の一候補とみなす根拠となっている。
ただし、地下水流が極めて強い箇所や、風化が進行した岩盤の亀裂群などでは、ゲル化前の薬液が流亡してしまい、所要の止水層が形成されないリスクがある。
このような場面では、先行して速硬性材料による一次止水を行ったうえで、水ガラス系による二次注入で漏水の周辺地盤を改良し、長期安定性を確保する二段階施工が有効となる。tdsnet+1
環境面では、未反応のアルカリ成分が地下水に流出しないよう、注入材の反応完結性を高める配合設計と、過注入の抑制、排水の中和処理などが求められる。
薬液注入工の設計指針やガイドラインを参照し、pH管理や排水処理計画まで含めた工事計画書を作成することで、周辺環境への影響を最小限に抑えることが可能である。
この部分では、長期耐久性や環境影響に関する公的な整理が参考になる。
国際廃炉研究開発機構「溶液型水ガラス系注入材による地盤止水」検討資料
STTG工法は、石油樹脂・アクリル樹脂系の主材と吸水性ウレタンプレポリマーを含む硬化促進剤を組み合わせ、多量漏水でも長期的な止水効果を発揮する止水注入工法である。
「伸び」と「付着強度」に優れ、地盤沈下や温度変化による目地クラックの開閉に追従できるため、繰り返し変形が予想される目地・継ぎ目の補修に適している。
一方、水ガラス系止水注入材は無機系であり、微細ひび割れや砂質地盤への浸透性に優れ、比較的低粘度で広範囲に広がりやすい性質を持つ。mlit+1
そのため、広がりを重視した「面」の止水・地盤改良には水ガラス系、「線」や「点」を狙った高変形追従型の止水にはSTTG工法など有機系を組み合わせるハイブリッド設計が現実的な選択となる。tdsnet+2
施工計画上は、漏水量とクラック幅、構造物の稼働条件(列車荷重や交通荷重の有無)、将来的な変形可能性を整理し、次のような使い分けが考えられる。sttg+2
・多量漏水+変位追従性が必須:STTG工法を主材としつつ、背面地盤の透水経路には水ガラス系を併用する。
・滲み出し程度の漏水+広範囲の空隙充填:水ガラス系の単独または他の無機系注入材との組合せで面的改良を図る。syochiku+1
水ガラス系と有機系を組み合わせることで、止水性能だけでなく、長期耐久性や維持管理コストの最適化も図ることができる。sttg+2
特に大規模地下構造物では、一つの材料・工法で全てを賄おうとせず、部位別に最適な組み合わせを設計することが、高い信頼性とコストコントロールを両立する鍵となる。sttg+1
工法の比較と使い分けの考え方については、STTG工法協会の技術情報が参考になる。
現場レベルでは、水ガラス系止水注入材の性能を引き出すうえで「水の管理」が最も重要なポイントの一つになる。
薬液と湧水の接触でゲル化が進むため、一見すると漏水が多いほど有利にも思えるが、実際には流速が速すぎるとゲル化前に薬液が流されてしまい、止水どころか余計に地下水の流れを変えてしまうリスクもある。
このため、強い漏水個所では先行して一時的な導水や排水ポンプによる水量コントロールを行い、流速を落としたうえで水ガラス系注入に切り替える段取りが有効となる。
また、注入順序を工夫し、出口側から入口側へ「追い込む」イメージで注入ブロックを設定すると、薬液が効率的に広がり、漏水経路を断ち切りやすくなる。tdsnet+1
意外な落とし穴として、注入圧の設定ミスによる「新たなクラックの発生」や「漏水の別ルートへの逃げ」が挙げられる。
高圧注入は一見頼もしいが、躯体や目地の弱点をこじ開けてしまう場合があり、既存クラックの幅や分布を踏まえた段階的な加圧管理と、注入状況のこまめな記録が不可欠である。
もう一つのポイントは、止水完了後のモニタリングである。
注入直後に漏水が止まっていても、地下水位の季節変動や列車振動・交通荷重により、数ヶ月~数年スパンで再び微小漏水が現れるケースは少なくないため、観測孔や点検口を活用した定期点検の計画を設計段階で組み込んでおくと安心だ。sttg+1
さらに、将来の追注入を見据えて、注入孔位置や配合条件、注入量、圧力履歴を図面とデジタルデータの両方で残すことは、意外と軽視されがちながら大きな価値を持つ。
数年後に別チームが補修を担当する場合でも、過去の履歴があれば水ガラス系止水注入材の再適用や他工法との最適な組み合わせを短時間で検討でき、結果としてトラブルの未然防止とコスト削減につながる。tdsnet+1