防火シャッターの設置基準と防火区画の種類について

防火シャッターの設置基準と防火区画の種類について

記事内に広告を含む場合があります。

防火シャッターの設置基準について

防火シャッターの基本知識
🔥
法的根拠

建築基準法および消防法に基づいて設置が義務付けられています

🏢
主な設置場所

外壁の開口部と建築物内部の防火区画の開口部

🛡️
目的

火災の拡大を防ぎ、避難経路の安全を確保すること

防火シャッターが設置される主な場所と法的根拠

防火シャッターは、建築基準法消防法に基づいて設置が義務付けられています。主に以下の2つの場所に設置が必要となります。

 

  1. 外壁の開口部で延焼のおそれのある部分
    • 建築基準法第2条第9号の2ロによる規定
    • 隣地境界線または道路中心線から、1階では3m以下、2階以上では5m以下の距離にある部分
  2. 建築物内部の防火区画の開口部

外壁開口部に設置する防火シャッターには、両面20分の遮炎性能もしくは片面20分の準遮炎性能が求められます。これらの規定は、建物が耐火建築物もしくは準耐火建築物で延焼のおそれのある開口部に設置する場合、または防火地域もしくは準防火地域において延焼のおそれがある開口部に設置する場合に適用されます。

 

なお、防火設備以外の一般重量シャッターなどは、特に建築基準法での規制はありません。建築物の安全性を確保するためには、適切な防火シャッターの選定と設置が不可欠です。

 

面積区画における防火シャッターの設置基準

面積区画とは、火災の規模を限定することを目的に定められた防火区画です。一定の床面積ごとに区画することで、火災が発生した場合の被害を最小限に抑える役割を果たします。

 

面積区画の特徴と設置基準:

  • 面積区画の最大床面積は、建築物の構造、規模、階数によって決定されます
  • 11階以上の階は「高層区画」として扱われ、外部からの消火活動等が困難なため、防火区画の面積が小さくなります
  • 主な設置場所:事務室内、工場作業場内、物販店舗の売り場内など
  • 耐火建築物または準耐火建築物において一定面積ごとに区画が必要

面積区画の開口部には、遮炎性能のある「屋内用防火シャッター」、「耐火クロス製防火/防煙スクリーン」または「防煙シャッター」などの設置が求められます。面積区画は財産保護の観点から重要であり、延焼拡大を防ぐための基本的な防火対策となります。

 

特に事業所や商業施設などでは、広い空間を効率的に使用しながらも、火災時の安全性を確保するために、適切な面積区画と防火シャッターの設置が不可欠です。設置する防火シャッターの選定には、空間の特性や用途に合わせた適切な判断が必要となります。

 

竪穴区画と異種用途区画の防火シャッター要件

竪穴区画異種用途区画は、防火シャッターの設置が必要な重要な防火区画です。これらの区画では、単なる遮炎性能だけでなく、遮煙性能も求められる点が特徴的です。

 

竪穴区画の特徴と設置要件:

  • 階段や吹抜け、エレベーター、エスカレーターなどの竪穴を区画するもの
  • 竪穴は煙突効果により火煙の伝播経路になりやすいため、区画が必要
  • 主に地階または3階以上の階に居室を有する建築物で必要
  • 連続した縦方向空間の区画が目的
  • メゾネットの住戸、吹き抜け部分、直通階段出入り口、エレベーターやエスカレーターの昇降路などに設置

異種用途区画の特徴と設置要件:

  • 1つの建物に複数の用途が混在する場合に設けられる防火区画
  • 使われ方や管理の異なる用途が同一建築物内に混在する場合に必要
  • 特殊建築物用途と別用途との境界を区画
  • 例:劇場用途と百貨店用途、ホテル用途と映画館用途の境界

これら両区画の開口部に設ける防火設備には遮煙性能が必要です。具体的には、「防煙シャッター」もしくは「耐火クロス製防火/防煙スクリーン」が対象となります。

 

竪穴区画は避難者の安全確保を目的とし、異種用途区画は火災の拡大防止と煙の拡大を防ぎ避難者の安全確保を目的としています。どちらも火災時の人命保護において極めて重要な役割を果たします。

 

防火シャッターの性能基準と遮炎・遮煙性能

防火シャッターには、設置場所や防火区画の種類に応じて、異なる性能基準が求められます。特に重要なのが「遮炎性能」と「遮煙性能」です。

 

遮炎性能による分類:

  1. 特定防火設備
    • 加熱開始後60分間、屋内側・屋外側の両面に火炎を出さないこと
    • 主に面積区画や一部の高層区画、異種用途区画の開口部に設置
  2. 防火設備
    • 加熱開始後20分間、屋内側・屋外側の両面に火炎を出さないこと
    • 比較的リスクの低い区画に設置される

防火シャッターに求められるその他の性能:

  • 遮煙性能:火災時の煙の拡散を防ぐ性能(竪穴区画と異種用途区画で必要)
  • 耐風圧性能:外壁開口部に設置する場合は必須条件(設置環境による必要強度の確認が不可欠)
  • 遮音性能:気密材を付加するなどして遮音性能を高めたもの
  • 開閉繰返し性能:一般の管理用シャッターでは1万回程度

防火設備には、国土交通大臣が構造方法を示した告示に適合する「例示仕様」と、国土交通大臣の認定を受けたものの2種類があります。外壁用防火シャッターや屋内用防火シャッター、防煙シャッターは一般的に例示仕様となりますが、開口幅が5mを超える防煙シャッターは大臣認定の対象となります。

 

耐火クロス製防火/防煙スクリーンは例示仕様に該当しないため、防火区画で使用するには大臣認定(EA、CAT、CAS)を取得する必要があります。適切な性能を持つ防火シャッターを選定することが、建物の防火安全性を確保する上で非常に重要です。

 

防火シャッター設置後の点検義務と危害防止装置

防火シャッターは設置後も定期的な点検が義務付けられています。特に「特定建築物」の「防火設備」については、建築基準法によって検査報告が義務化されています。適切な点検・メンテナンスにより、火災時に確実に機能することが保証されます。

 

危害防止装置の重要性:
2005年12月の建築基準法改正により、防火シャッターには危害防止装置の設置が義務付けられました。これは、防火区画に設置される防火シャッターが火災時に熱や煙を感知して自動で閉鎖する際の挟まれ事故を防止するための装置です。

 

危害防止装置の主な役割は以下の通りです。

  • 火災時に煙や熱を感知した際の安全確保
  • シャッター閉鎖時の挟まれ事故防止
  • 避難経路の安全性確保

この装置は建築基準法施行令第112条19に基づいて設置が必要となります。近年では無線式避難時停止装置など、より安全性の高い製品も開発されています。

 

定期点検のポイント:

  • 作動状況の確認
  • 危害防止装置の動作確認
  • 防火シャッターの開閉状態チェック
  • 駆動部分の摩耗や損傷の有無
  • 連動制御器の機能確認

防火シャッターは火災時の重要な防火設備であるため、日常的なメンテナンスも欠かせません。点検記録を適切に保管し、不具合があれば速やかに専門業者による修理を行うことが重要です。

 

防火シャッターの設置だけでなく、その後の維持管理についても法的責任を理解し、適切に対応することが建物管理者の重要な責務です。定期的な訓練を通じて、火災時の対応手順を施設利用者に周知させることも推奨されます。

 

防火シャッターの種類と適材適所の選定基準

建築物の特性や用途に応じて、最適な防火シャッターを選定することが重要です。設置場所や求められる性能によって選択すべきシャッターの種類が異なります。

 

主な防火シャッターの種類:

  1. 外壁用防火シャッター
    • 外壁開口部に設置
    • 延焼防止が主な目的
    • 遮炎性能が求められる
  2. 屋内用防火シャッター
    • 建物内部の防火区画に設置
    • 面積区画での使用に適している
    • 遮炎性能が必要
  3. 防煙シャッター
    • 竪穴区画や異種用途区画に設置
    • 遮炎性能と遮煙性能を兼ね備える
    • 避難経路の安全確保に重要
  4. 耐火クロス製防火/防煙スクリーン
    • 軽量で設置の自由度が高い
    • デザイン性を重視する空間にも対応
    • 大臣認定が必要
  5. グリルシャッター/パネルシャッター
    • 特定の用途に応じて選択
    • 管理用途と防火性能を兼ねる場合もある

防火シャッターを選定する際は、建築物の用途、設置場所の特性、法的要件、デザイン性、コスト、メンテナンス性などを総合的に考慮する必要があります。特に複合用途施設では、各区画の特性に応じた最適な防火設備の選定が求められます。

 

また、将来的な法改正や技術革新も視野に入れ、更新や改修がしやすいシステムを選ぶことも長期的には重要です。防火シャッターは単なる法的要件を満たすための設備ではなく、人命と財産を守るための重要な安全装置であることを常に意識した選定が求められます。

 

適切な防火シャッターの選定と設置は、建築物の安全性を大きく左右します。専門家との綿密な協議を通じて、最適な防火対策を講じることが建築従事者の責務といえるでしょう。