

応用地質株式会社は1957年5月2日に設立された、日本を代表する地質調査会社です。東京都千代田区神田美土代町に本社を置き、東証プライム市場に上場している業界最大手企業として知られています。資本金は161億7,460万円、連結売上高は740億円に達し、建設コンサルタント業界においても上位に位置する企業規模を誇ります。
参考)https://www.oyo.co.jp/corporate-profile/company-overview/
同社は「地球科学に基づく技術により、人と自然の調和を図り、持続可能な社会の実現をめざす」という経営理念のもと、68年以上の歴史を持つ企業です。連結従業員数は2,733名(単体1,279名)を擁し、国内12社、海外9社のグループ企業を通じて130カ国以上で事業を展開しています。
参考)https://www.oyo.co.jp/corporate-profile/data/
応用地質の創業は、1951年に北海道大学の助手だった深田淳夫氏が、ダム建設予定地の地質調査で作成した地質図や地質断面図が、ダムサイトや原石山の位置決定に非常に有用であることが判明したことがきっかけです。これが「地質分野」と「土木工学分野」の境界領域を開拓する契機となり、「地質工学の創造」を旗印に株式会社応用地質調査事務所が誕生しました。1985年には現在の応用地質株式会社に社名を変更し、1988年に株式店頭公開、1991年に東証二部上場、1995年に東証一部上場を果たし、現在は東証プライム市場に区分されています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%9C%E7%94%A8%E5%9C%B0%E8%B3%AA
応用地質の会社概要公式ページ - 詳細な企業情報と事業所一覧が確認できます
応用地質グループの事業は「防災・インフラ」「環境・エネルギー」「国際」という3つのセグメントで展開されています。これらの事業を通じて、スマートな社会インフラの整備、自然災害の被害軽減とレジリエントなまちづくり、脱炭素社会と持続可能な循環型社会の形成、豊かな自然共生社会の実現に貢献しています。
参考)https://www.oyo.co.jp/business-field/
同社は建設コンサルタント、地質調査会社、環境コンサルタント、計測機器メーカー、防災コンサルタントなど、様々な顔を持つ企業です。共通するのは、いずれも地球科学に関わる技術で社会課題に対応したソリューションを提供することであり、これを総称して「地球に関わる総合コンサルタント」と呼んでいます。
参考)https://www.oyo.co.jp/corporate-profile/earth-consultant/
具体的な事業内容としては、道路・都市計画や土木構造物および建築構造物などの建設にともなう地盤の調査から設計・施工監理にいたるまでの一連の技術業務を提供しています。また、地すべり、崖崩れ、地震災害、風水害等の調査、自然災害リスクの調査・解析・予測・診断・評価から対策工にいたる技術業務も手がけています。さらに、環境保全・環境リスクの調査、解析、予測、診断、評価から対策工にいたる技術業務、地盤・環境・災害情報等の収集、加工、販売、各種の測定用機器・セキュリティ機器・ソフトウェア、システムの開発、製造、販売、リース、レンタルまで、幅広い事業を展開しています。
参考)https://www.epoc.gr.jp/kaiin/196.html
建設コンサルタントとしての仕事は、地域のまちづくりに関わる課題を解決するため、インフラ整備の計画や構造物の設計、施工管理、維持管理のための点検などを行政のパートナーとして行うことです。地質調査では、インフラ整備のための計画や設計に必要な地質・地盤情報を現地調査等によって調べ、当該地に相応しい設計の条件や建設上のリスクを導き出し、建設中の予期せぬ事故や手戻り、竣工後のインフラの変状などが起こらないよう、発注者へ対策工法などを適切にコンサルティングします。
応用地質の仕事内容の詳細解説 - 建設コンサルタントと地質調査の具体的な業務フローが理解できます
建設業従事者にとって応用地質の調査技術は、プロジェクトの成否を左右する重要な要素となります。同社は公共インフラ関連事業において、建設工事以外のほとんどの部分でサービスを提供しており、現場での地質の検討結果や設計図書などが収められた報告書をメインの成果物として納品しています。
建設プロセスにおいて、応用地質は計画段階から維持管理段階まで一貫して関わることができる体制を持っています。具体的には、基本構想・基本計画の段階から、予備・詳細設計、施工時の技術支援、そして完成後の維持管理・点検まで、建設工事を除くほぼ全てのプロセスに対応しています。これにより、建設会社は応用地質の成果(設計図等)をもとに、確実性の高い建設工事を請け負うことができます。
特に注目すべきは、BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling)への取り組みです。BIM/CIMとは、建築・土木事業における調査・設計、施工、維持管理の各段階で3次元モデルを共有し、連携・発展させることで、非効率や事故発生のリスクを低減させる手法です。応用地質は地質や地盤の3次元モデル化において、不可視である地質や地盤のモデル化に伴う不確実性を適切に表現する技術を持ち、建設生産システムの生産性向上に貢献しています。
参考)https://www.oyo.co.jp/services/solution/disaster-prevention-and-infrastructure/construct-urban/bim-cim/
また、地中探査技術も建設業界での活用価値が高い分野です。2024年には日立、NTTインフラネット、アイレック技建と共同で、地中レーダーなどで得られる地下埋設物の調査データ活用市場の拡大に関する覚書を締結しました。これにより、無電柱化事業などの道路掘削工事において、地下埋設インフラの整備事業がより効率的に進められるようになり、事業期間の短縮とコスト削減が可能となります。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000074.000047274.html
防災分野における応用地質の貢献は、建設業の安全性向上に直結しています。同社は地質学、地球物理学、土質力学、土木工学、水理学、環境工学、生態学など、地球科学全般についての幅広い知識と豊富な経験を持つ専門技術者集団として、地盤や地下水の性質、自然現象や災害現象の実態や特性を調べ、事業や社会への影響を予測・評価し、最適な提案をしています。
参考)https://www.bosai-jp.org/ja/member/detail/40
特に斜面、盛土などで発生する土砂災害や地盤の変状に対する調査、設計を得意としており、国の防災計画関連や自治体の防災計画関連業務を数多く手がけています。国が公表する広域の地震動予測や津波の解析は、非常に高度な地盤モデル化技術とコンピュータ処理技術が求められ、応用地質が日本で最も優位を誇る分野となっています。
計測機器分野では、頻発化・激甚化する土砂災害に対応すべく開発された多点設置型防災IoTセンサー「クリノポール」が注目されています。この製品は斜面崩壊の兆候を0.001°の高分解能でリアルタイムに検知し、自治体による早期の住民避難対応をサポートします。エッジコンピューティング、LPWA、IoT/クラウドを採用することで、運用コストと人的負担を抑制しながら、多点・面的・広範囲・リアルタイム監視が可能となっています。
参考)https://www.oyo.co.jp/services/products-list/geological-survey/clinopole/
さらに、大容量バッテリーでおよそ5年間稼働可能であり、電池交換等のメンテナンスを大幅に軽減できる点も、建設現場における長期的な安全管理に有用です。高崎河川国道事務所との協働では、法面や構造物の変状を遠隔把握する技術として、リアルタイムで自動計測し計測したデータを遠隔で確認・比較できるシステムが評価されています。
参考)https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000899373.pdf
応用地質の防災ソリューション - 日本防災プラットフォームでの取り組み紹介
近年、応用地質が力を入れているのが洋上風力発電事業支援サービスです。日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しており、その実行計画として再生可能エネルギーを最大限導入するとし、中でも切り札として挙げているのが洋上風力発電です。
参考)https://www.oyo.co.jp/services/solution/environment-and-energy/renewable-energy/offshore-wind-power/
洋上風力発電では、海底に設置する風車の基礎設計や発電所のレイアウトデザインを検討するため、建設海域の海底地盤調査を行う必要があります。応用地質は今後急速な拡大が予想されている洋上風力発電市場にむけて、効率的な海底地盤調査のための独自技術の開発や市場ニーズに対応するためのアライアンス形成などを積極的に進めています。
同社が開発した「洋上CPT-Vs」(NETIS登録番号:KTK-210016-A)は、洋上の海底地盤について、地盤の強度、液状化判定、圧密評価、地盤のせん断波速度等の情報を効率的に取得することができる調査技術です。従来手法では大規模な調査船を用いる必要があり、非常に高価かつ適用できる水深に制限がありましたが、この新技術は小型の作業台船(SEP)で作業が可能であるため、水深の浅い場所でも適用でき、大幅なコスト削減と省力化、周辺環境への影響抑制が期待できると評価されています。
参考)https://www.oyo.co.jp/corporate-profile/research-and-development/offshore-wind-farming/
2025年1月には、JOGMECが公募した洋上風力発電の導入促進に向けた浮体式海底地盤調査実施者に採択されるなど、この分野での実績を着実に積み重ねています。また、洋上風力発電を含む海洋・港湾分野での受注拡大を狙い、海洋調査会社の買収にも力を入れており、2023年夏には日本ジタン(北九州市)を買収するなど、積極的な事業展開を図っています。
参考)https://www.oyo.co.jp/news-article/922749dfba41eb787ae57e71aa5c211beaba18ea/
環境・エネルギー事業セグメントでは、環境モニタリング、土壌・地下水汚染対策、アスベスト対策、社会環境・自然環境分野の調査・コンサルティングなど、幅広いサービスを提供しています。これらの技術は建設業における環境配慮や法令遵守の観点から、ますます重要性が高まっています。
参考)https://kitaishihon.com/company/9755/business
応用地質の国際事業は、欧米・アジアを中心に多数の企業を展開し、各国の経済・社会発展に貢献しています。2025年6月にはシンガポール支店を開設し、開所式を行いました。シンガポールでは現在、空港や港湾の拡張工事、高速道路や地下鉄の整備など、大規模な都市改造プロジェクトが進められており、特に国土が狭いため、より深い場所、複雑な地質構造の中での建設工事が必要となり、建設事業の難易度が非常に高くなっています。
参考)https://www.oyo.co.jp/news-article/d92034585a9f58a115d4786dde02fc3495bd2acb/
シンガポールの建設事業に関わる政府系機関も日本の技術に対する関心が高く、応用地質はこれらのニーズに応えるため、国内で培ってきた高度な地盤調査技術とそれに基づいたリスク評価技術を積極的に展開しています。また、シンガポール支店はグローバル人材育成の拠点とすることも目指しており、同社の国際展開戦略の重要な拠点となっています。
技術革新の取り組みでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進しています。経験値の高低による評価や判断のブレ、地盤リスクの見逃しなどの危険性を低減するとともに、専門家以外の人たちにも地盤の新たな利活用の機会を提供することを目指しています。この取り組みが評価され、2022年には「DX銘柄2022」に選定されました。
参考)https://www.oyo.co.jp/corporate-profile/dx-initiatives/
研究開発部門では、マーケット戦略に基づいた新技術の研究に日々取り組んでおり、社会課題に対応したソリューションを提供していくため、そのベースとなる新技術の開発を進めています。また、異業種とのオープンイノベーションを主軸にしたサービスの開発と、そのための新技術の研究開発も行っており、外部リソースを積極的に活用することで、社会のレジリエンスおよび持続可能性の向上に貢献し続けています。
参考)https://www.oyo.co.jp/corporate-profile/research-and-development/
全事業所でISO 9001(品質マネジメントシステム)、ISO 14001(環境マネジメントシステム)、ISO 27001(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を取得しており、高品質なサービス提供と環境配慮、情報セキュリティの確保に努めています。
応用地質の研究開発情報 - 最新の技術開発動向と技術年報が閲覧できます
山地の地形工学