吹付け耐火材の種類と施工・検査の基礎知識

吹付け耐火材の種類と施工・検査の基礎知識

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吹付け耐火材の種類と施工・検査・法規制の要点

厚みさえ足りていれば、かさ比重が低くても耐火構造として認められると思っていませんか?それは誤りで、基準を満たさないと竣工検査で是正を求められ、補修コストが数十万円規模に膨れ上がることがあります。


📋 この記事の3つのポイント
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吹付け耐火材の種類と厚み基準

ロックウール・耐火塗料・成形板など工法ごとに必要な厚みと認定番号が異なる。1時間耐火なら梁・柱ともに25mm以上、かさ比重0.28以上が最低条件。

⚠️
施工前の段取りミスが補修コストを生む

先行ピースの未設置や天井吊ボルトの配置漏れが、吹付け後の剥がし・補修作業を招く。計画段階での他工事との取り合い確認が必須。

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アスベスト法改正と調査義務の最新動向

2023年10月以降、解体・改修工事では有資格者によるアスベスト事前調査が義務化。耐火被覆材が調査対象になるケースも多く、手続きを怠ると罰則リスクがある。


吹付け耐火材とは何か:鉄骨を火災から守る仕組み


鉄骨は木材より燃えにくいと思われがちですが、実際には熱に対して非常に脆弱な素材です。温度が300〜500℃に達すると強度が約半減し、火災時に発生する900〜1,000℃の熱環境では、鉄骨造の建物全体が倒壊する危険性があります。つまり「鉄だから安心」という認識そのものが、現場における大きな落とし穴になります。


吹付け耐火材とは、こうした熱に弱い鉄骨を断熱性の高い素材で覆い、火災発生時に構造体が一定時間以上耐えられるようにするための被覆材です。建築基準法では、特殊建築物・防火地域・準防火地域に建てる建物について「耐火構造」または「準耐火構造」であることが義務づけられており、鉄骨造建物はこの基準を満たすために耐火被覆が必要となります。


耐火性能には建築基準法上、3つの技術的基準が定められています。①火害による損傷を生じさせない「火損傷性」、②壁・床の非加熱面温度上昇を防ぐ「遮断性」、③屋外への延焼を防ぐ「遮炎性」です。これら3つすべてを一定時間保つことが求められます。


つまり、耐火被覆が「必要な部材」です。


なお、耐火被覆を施すことで耐火構造となるのは鉄骨造に限られます。木造建物は同じように吹付け処理を行っても耐火構造とは認められず、別途の対応が必要になる点も押さえておきましょう。


参考:建築施工管理ナビ「耐火被覆(たいかひふく)とは?必要性や4つの代表的な工法まで解説」
https://sekokan-navi.jp/magazine/68074


吹付け耐火材の種類と認定番号・厚み基準の一覧

吹付け耐火材には複数の工法があり、それぞれ国土交通大臣の認定を受けた「認定番号」と「必要厚み」「かさ比重」が定められています。単に厚みを確保するだけでなく、認定仕様に従った材料・施工方法であることが前提条件です。これが基本です。


現場で最も広く使われているのが吹付けロックウール工法です。ロックウール粒状綿を主原料とし、セメントを硬化材として専用機械で吹付けます。不燃認定番号はNM-8601で、ロックウール工業会会員10社の連名による個別認定(性能規定)を取得しています。




























































部位 耐火時間 かさ比重 必要厚さ 認定番号(例)
1時間 0.28以上 25mm FP060BM-9408
2時間 0.28以上 45mm FP120BM-9411
3時間 0.28以上 60mm FP180BM-9414
1時間 0.28以上 25mm FP060CN-9460
2時間 0.28以上 45mm FP120CN-9463
3時間 0.28以上 65mm FP180CN-9466
外壁・床・屋根 各種 0.30以上 10〜30mm FP030RF-9324など


ここで見落とされがちな点があります。梁・柱は「かさ比重0.28以上」ですが、外壁・床・屋根では「0.30以上」と基準が高くなります。同じ材料を使っていても、部位によって求められる密度が違うのです。


吹付けロックウール以外の工法も理解しておくことが、工事監理上の判断に直結します。


- 巻付け工法:シート状ロックウールをピンで固定する。粉塵が少なく養生負担が小さいが、複雑形状への対応は吹付けより劣る。


- 成形板張り工法(ケイ酸カルシウム板):表面が平滑で仕上げ材としてもそのまま使える。加工・ペイントも可能。


- 耐火塗料工法(膨張型):火災時に塗膜が20〜30倍に発泡して断熱層を形成。薄膜(数mm〜10mm程度)で1時間耐火が可能で、意匠性が求められるエントランスなどに適す。コスト目安は12,000〜18,000円/㎡と割高。


コスト比較の参考として、吹付けロックウールは5,000〜8,000円/㎡、耐火板は7,000〜10,000円/㎡程度とされています。これは使えそうです。


参考:ロックウール工業会「吹付けロックウール耐火被覆材 製品紹介・認定番号一覧」
https://www.rwa.gr.jp/seihin/fukitsuke/fukitsuke.html


吹付け耐火材の施工手順と段取りで必ず確認すべき取り合い

吹付け耐火材の施工で問題になりやすいのは、施工そのものではなく「施工前の段取り」です。他工事との取り合い計画が不十分なまま吹付けを進めると、後から耐火被覆を剥がして補修する手戻りが発生し、コストと工期の両方に響きます。


確認必須の取り合い4項目 🔍


- ① 防火区画の間仕切り壁との取り合い:耐火壁が鉄骨梁下まで届く場合、「先行ピース(軽量鉄骨ランナーの受け材)」を鉄骨製作段階で取り付けておく必要があります。これを怠ると、壁施工時に耐火被覆を剥がして先行ピースを後付けし、補修するという無駄な工程が発生します。


- ② 天井吊ボルトの配置(周辺部から150mm以内ルール):吊ボルトの設置基準「周辺部から150mm以内」を守れない箇所が生じないか、吹付け前に全数確認が必要です。後付けになると剥がし・補修が必要です。


- ③ 外壁との工程順序と合成耐火被覆:外壁(ALCパネルなど)を先行する場合、吹付けで梁を巻き込めない箇所が生じます。その場合は「合成耐火被覆」、すなわち認定を受けた外壁材と耐火被覆材の組み合わせによって耐火性能を確保する方法を事前に確認・採用する必要があります。


- ④ 養生計画:サッシ・天井裏配線・吊ボルトへの飛散養生を、元請け・下請けどちらが担当するか事前に明確にしておく必要があります。


施工手順は概ね以下の流れになります。


| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1 | 材料・機材搬入(スラリーミキサー、ポンプ、吹付機) |
| 2 | 養生(飛散防止・仕上物の保護) |
| 3 | 吹付け(ロックウール+セメントスラリーをノズルで混合吹付け) |
| 4 | コテ均し(表面を平滑に仕上げる) |
| 5 | 厚さ確認(確認ピンで設計厚を検査) |
| 6 | 吹付け困難箇所の補修材施工(梁上フランジなど) |
| 7 | かさ比重検査(切取りサンプルを乾燥・計量して算出) |


手順そのものはシンプルです。ただ、重要なポイントは「梁上端フランジなど吹付けにくい部位がきちんと施工されているか」と「かさ比重が基準を満たしているか」の2点です。この2点が施工管理上の最重要確認事項だと考えておけばOKです。


なお、かさ比重の検査方法は、切り取ったサンプルを100〜110℃の乾燥機で恒量になるまで乾燥させてから重量を計測し、体積で割って算出します。厚みのチェックだけで満足してしまい、かさ比重の検査を省略しているケースは現場でも見受けられますが、それは認定仕様への不適合リスクを放置することになります。


参考:耐火被覆工業協同組合「かさ比重測定の方法」
https://taika-a.com/service/inspection/


参考:施工手順と取り合い計画の詳細(現場管理者向け)
https://llcreativell.com/2021/11/18/耐火被覆・吹付ロックウール施工前の注意点


吹付け耐火材に含まれるアスベスト問題と2023年以降の法的義務

日本では1956年頃から1975年頃まで、鉄骨の耐火被覆を目的として吹付けアスベスト(石綿)が広く使われていました。その後、吹付けロックウールへの移行が進みましたが、吹付けロックウールにも旧来品にはアスベストが混入しているものがあり、昭和55年頃まで使用例が確認されています。つまり、1980年以前に竣工した建物の耐火被覆には、かなりの確率でアスベストが潜んでいる可能性があるということです。


アスベストは発がん性物質で、特に中皮腫・肺がんとの関連が確認されています。2006年9月以降、日本では0.1重量%超のアスベスト含有建材の製造・使用が全面禁止となっています。


問題は「解体・改修時の扱い」です。


2022年4月に大気汚染防止法が改正され、一定規模以上の解体・改修工事では事前調査の結果を行政に報告することが義務化されました。さらに2023年10月1日以降は、「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が事前調査・検体採取・分析を行うことも義務化されています。厳しいところですね。


具体的な報告義務の対象は以下のとおりです。


- 🏗️ 解体面積 80㎡以上 の建物解体工事
- 🔧 請負金額 100万円以上(税込) の改修工事
- 📋 報告書は工事開始の 14日前まで に提出、3年間保存が必要


吹付け耐火被覆材は大気汚染防止法上の「特定建築材料」に該当し、除去・封じ込め・囲い込み作業は「届出対象特定工事」として扱われます。調査を怠ったり無資格者が調査を行った場合、罰則(罰金刑)の対象となるため、リノベーションや改修工事の前には必ず確認が必要です。


旧建物の改修を担当する施工管理者にとって、「この建物の竣工年はいつか」「耐火被覆はいつ施工されたか」を確認することが、石綿リスクを判断する最初のステップです。設計図書が残っていない場合でも、ビジュアル(白〜グレーがかった粉状の表面)や採取分析で確認することができます。


参考:アスベスト法改正の概要と報告義務の詳細(環境省リーフレット)
https://www.env.go.jp/air/air/post_48/20210909leaflet.pdf


参考:アスベスト含有耐火被覆材の見分け方と調査方法
https://olbee-kankyo.com/2024/10/741/


経年劣化・剥落リスクと吹付け耐火材のリニューアル工法

吹付けロックウールは50年以上の実績を持つ信頼性の高い材料ですが、経年によって付着力が低下し、剥落・脱落が生じるケースがあります。特にRC面への吹付けで専用接着剤を事前に塗布していない施工では、剥がれやすい傾向が確認されています。


施工から数十年が経過した建物では、目視では問題なく見えても、内部の付着強度が低下していることがあります。表面が汚れていないように見えても危ない、という状況です。


剥落が発生すると建物の耐火性能が低下するだけでなく、天井裏から塗材の破片が落下して設備機器を損傷させたり、作業員への危険をもたらす可能性もあります。


耐火被覆のリニューアルには主に以下の方法が用いられています。


- 再吹付け補修:不足箇所に補修材を吹付け、かさ比重・厚みを再確保する
- けい酸カルシウム成形板による再被覆:剥離・脱落した梁・柱に成形板を巻き付けて再施工する工法。日本インシュレーション(旧JIC)などが開発した認定工法が存在する
- 耐火塗料への切り替え:既存の吹付け被覆を撤去したうえで、膨張型耐火塗料(SKタイカコートなど)を採用するケース


ただし、リニューアル工法の選定には注意が必要です。元の耐火被覆と新しい被覆材の組み合わせが、認定仕様として承認されているかどうかを確認する必要があります。認定外の組み合わせは「合成耐火被覆」として認められない場合があるからです。これが条件です。


建物の年齢が30年を超えてきたタイミングで、耐火被覆の付着強度試験と目視診断を計画的に実施することが、建物オーナーへの提案・管理上の責任を果たすうえでも重要な視点といえます。


参考:耐火被覆のリニューアル工法について(JIC)
https://www.jic-bestork.co.jp/news/press-release/1733/


吹付け耐火材の選定と現場管理で知っておくべき独自視点:「火災保険区分」への影響

吹付け耐火材に関して現場で意識されにくいのが、「建物の火災保険料区分」への直接的な影響です。多くの施工管理者は耐火被覆を「法令遵守のための処置」として捉えていますが、実際には建物オーナーの保険コストにも直結する要素です。


火災保険の住宅物件では、耐火建築物か否かによって「M構造(マンション構造)→T構造(耐火被覆構造)→H構造(非耐火)」と3段階に分類され、H構造はT構造に比べて保険料が大幅に高くなります。一般物件では「1級(耐火被覆鉄骨造を含む)→2級→3級」と分類されます。


鉄骨造建物が「1級物件」として保険料を抑えるためには、建築基準法に適合した耐火被覆が施されていることの証明が求められます。つまり、認定仕様に従った厚みとかさ比重を確保した施工記録・検査記録が残っていることが、保険上も価値を持つわけです。


これは現場の施工管理者にとって有益な視点です。竣工時の検査記録(厚み測定記録・かさ比重検査報告書)は「建物の資産価値・保険コスト」にも関わる書類として、確実に作成・保管することが求められます。


また、建物の耐火性能が保険料に影響することを理解しているオーナーは少数派です。設計・施工段階で「この仕様で施工すると火災保険が○級に該当します」と説明できる施工管理者は、オーナーから高い信頼を得られます。知っていると得する知識です。



  • ✅ 施工完了後は厚み測定記録表かさ比重検査報告書を必ず作成・保管する

  • ✅ 住宅物件:耐火建築物(T構造)と非耐火(H構造)では保険料が数倍異なるケースも

  • ✅ 一般物件:耐火被覆鉄骨造が1級に該当し、最も保険料が安い区分になる

  • ✅ 保険区分の証明にはJIO・損保会社への構造確認申請が必要な場合がある


さらに踏み込んだ知識として、耐火被覆の施工管理担当者向け講習会がロックウール工業会によって5年に一度開催されており、次回は2027年度に開催予定です。施工品質の均質化と最新の認定情報のアップデートという意味で、担当者は受講を検討する価値があります。


参考:耐火被覆の構造区分と火災保険の関係について
https://sekokan-navi.jp/magazine/68074


参考:ロックウール工業会「施工管理担当者講習会情報」
https://www.rwa.gr.jp/seihin/fukitsuke/fukitsuke.html




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