玉掛とは|クレーン作業の資格と安全対策

玉掛とは|クレーン作業の資格と安全対策

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玉掛とは|クレーン作業の基本

📋 この記事でわかること
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玉掛作業の定義

クレーンフックへの荷の掛け外し作業と必要な専門知識

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資格取得の方法

技能講習と特別教育の違い、受講手順を詳しく解説

⚠️
安全対策の実践

事故事例から学ぶ危険予知と正しい作業手順

玉掛とはクレーンのフックに荷を掛ける作業

 

 

 

玉掛とは、工場や建設現場などでクレーンを使用して重い荷物を運搬する際に、ワイヤロープなどの吊具をクレーンのフックに掛けたり外したりする作業のことです。この作業は単なる補助作業ではなく、荷の形状や重量、バランスを正確に把握し、安全に吊り上げるための専門技能が求められます。玉掛け作業を一歩間違えると、吊り上げた荷が落下して作業員が大けがをしたり、場合によっては死亡事故につながる危険性があるため、法律で資格取得が義務付けられています。
参考)https://1145.jp/monozukuri/column/articles/2391/

玉掛け作業の基本的な流れは、まずクレーンに吊るす荷にロープやスリングなどを安全に掛けることから始まります。次にクレーンのフックに荷を掛けるためにクレーンを呼び、バランス良くクレーンのフックの中心に荷を吊り下げます。しっかりと安全が確認できたらクレーンを持ち上げるように合図をし、30cmほど持ち上げたところで再度確認します。この地切りと呼ばれる手順により、高い位置からのつり荷の落下を防ぐことができます。
参考)https://www.witc.co.jp/blog/blog-20220131/

玉掛け作業では、クレーンオペレーターとの柔軟なコミュニケーションも求められます。安全でスムーズな作業にはクレーンの特徴などの把握もしておかなければならず、作業者には高い専門知識と技術が必要とされています。
参考)https://www.cic-ct.co.jp/column/tamakake-column/tamakake-column-column05/

玉掛の資格は2種類|技能講習と特別教育の違い

玉掛け作業に従事するための資格は2種類あり、吊り上げ荷重によって必要な資格が異なります。1つは制限荷重が1トン未満の玉掛け作業ができるようになる「玉掛けの業務に係る特別教育」で、もう1つが制限荷重1トン以上も含め、すべての玉掛け作業に従事できるようになる「玉掛け技能講習」です。日本の現場では1トン以上のクレーンが使用されることがほとんどですので、玉掛け免許とは一般的に「玉掛け技能講習修了」を意味しています。
参考)https://www.cic-ct.co.jp/column/tamakake-column/tamakake-column-column01/

玉掛け特別教育は、最大つり上げ荷重1トン未満のクレーン、移動式クレーンまたはデリックの玉掛け業務に従事する際に必要な資格で、10時間ほどの履修で修了することができます。一方、玉掛け技能講習は国家資格であり、つり上げ荷重1トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリック、揚貨装置による玉掛作業に従事することができるようになります。
参考)https://job-haken.com/column/column-11162/

これらの講習の受講は義務化されており、すべての作業員が自身の作業に対応する資格を取得しなければなりません。また、この講習の義務は作業員ではなく、事業者にも適用されます。事業者は玉掛け作業に従事する従業員に対し、適切な講習を受講させなければならず、無資格者に玉掛け作業をさせることは法令違反となります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/03_roofing3_crane_jp.pdf

玉掛作業に使用する吊り具の種類と特徴

玉掛け作業に使用する吊り具には、主にワイヤロープスリング、繊維スリング、チェーンスリングの3種類があります。それぞれ柔軟性や耐久性、耐熱性などの特性が異なるため、作業内容や荷物の特性に応じて適切な吊り具を選定する必要があります。玉掛け作業に使用できるワイヤロープは、エンドレスまたは両端にフック、シャックル、リングまたはアイを備えたものでなければなりません。
参考)https://www.moetama.biz/knowledge/application/wirerope/entry-192.html

ワイヤロープスリングは、ワイヤーを撚り合わせて作られたストランドを複数本より合わせて作ったロープで、引張強度が高い点が特徴です。素材はステンレスやスチールでできており、柔軟性に富み、耐衝撃性、耐摩耗性にも優れています。玉掛用ワイヤロープの端末加工には、アイスプライス(編み込み)加工と圧縮止め(ロック)加工の2種類があります。
参考)https://www.monotaro.com/note/productinfo/wire_rope/

ワイヤロープの種別とはロープの切断荷重のクラス別のことで、JIS規格で「種」という用語を用い、E・G・A・Bの4種があります。ロープ径は、吊るす物の重量や吊り方によって適切なサイズが変わってくるため、用途に応じて選ぶ必要があります。なお、玉掛ワイヤーロープと台付ワイヤーロープは見た目が非常に似ていますが、加工方法や法的な規定などが違うことから、台付ワイヤーロープは玉掛け作業には使用できないので注意が必要です。
参考)https://dougu-ya.com/apps/note/2020/11/08/%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%97%E3%81%AE%E7%A8%AE%E5%88%A5%E3%83%BB%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%83%BB%E7%94%A8%E9%80%94/

玉掛作業の安全対策|吊り角度と荷重管理の基本

玉掛けの安全対策では吊り角度・荷重・重心管理が必須となります。基本原則として、吊り角度は90°以内、推奨は60°以下が安全基準です。角度が広がるほど、ワイヤー1本にかかる荷重が急激に増え、強度限界を超えやすくなります。具体的には、60°であれば荷重の約15%増ですが、90°を超えると倍近くの力が加わります。
参考)https://tebiki.jp/genba/useful/slinging-safety-measures/

玉掛索1本にかかる荷重の計算式は「玉掛索1本にかかる荷重 = 吊り荷の荷重 × 張力増加係数 ÷ 玉掛索の本数」となります。吊り角度と張力増加の関係は表にまとめられており、この表の数字から使用荷重を求めることが可能です。例えば、吊り角度が60度の場合、張力増加係数は1.16となります。
参考)https://www.taiyoseiki.co.jp/blog/6276/
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4本4点吊りの場合は均等に荷重がかかり難いため、3本3点吊りを想定して計算する必要があります。ただし、4本が均等に負荷するような場合には4本4点吊りで計算しても差し支えありません。吊り角度はスリングの長さや吊り点の間隔で調整できるため、荷の形状に応じて適した角度を選定することが重要です。角度管理を怠ると、ワイヤーロープの切断や荷の転倒につながる危険があります。
参考)https://www.moetama.biz/knowledge/application/wirerope/entry-213.html

玉掛作業で避けるべき5つの厳禁行為

玉掛け作業には、労働安全衛生法などの関連法令に基づき厳しく禁止されている5つの厳禁行為があります。第一に、摩耗・損傷したスリングの使用は、クレーン等安全規則第218条「不適格な玉掛け用具の使用禁止」に違反し、重大な事故原因となるため、使用前に必ず点検し、損傷が認められた場合は直ちに使用禁止とし、新しいスリングと交換する必要があります。第二に、荷重を超えた吊り具の使用は、クレーン等安全規則第63条「定格荷重等の制限」に違反し、破断や事故の原因となります。
参考)https://kenki-kyosyu.com/4204/

第三に、スリングのねじれや重なりによる使用は強度が低下し、吊り前にスリングの状態を確認し、ねじれや重なりがあれば必ず直してから使用する必要があります。第四に、不適切な吊り角度(30度以下や90度以上)は吊り具に過剰な負荷がかかり、労働安全衛生法第20条に基づく「安全管理義務」違反となるため、吊り角度は60度以内とし、最大でも90度以下を標準とする必要があります。第五に、荷のエッジに直接スリングを掛けることは摩耗や切断の危険があり、エッジガードや保護材を使用してスリングの損傷を防止する必要があります。​
「慣れているから大丈夫」「これくらいなら問題ない」という油断が、重大な事故を引き起こす引き金になることがあります。特に、繰り返し行うことの多い吊り作業では、無意識のうちに「ついやってしまう」危険な行為が発生しがちです。​

玉掛作業の事故事例から学ぶ安全管理

玉掛け作業の事故で最も多いものは、吊り荷の落下事故です。ある事故事例では、鋼管表面が雨で濡れワイヤーロープとの摩擦力が低下し、2点つりの玉掛け位置が重心から離れていたため、つり上げ時に鋼管が傾斜しロープから滑り落ちた結果、被災者は右足首複雑骨折により約3ヶ月入院しました。この事故は、荷物表面状態確認と滑り止め措置、重心位置を考慮した玉掛け位置設定、天候条件を考慮した作業計画があれば防げたものでした。
参考)https://www.cic-ct.co.jp/column/tamakake-column/tamakake-column-column07/

別の事例では、重量約1.5トンの機械部品をロッキングフック付きワイヤロープで玉掛けし天井クレーンで吊り上げ中、高さ約4mで突然フックから荷が外れ、真下の作業者上に落下し、被災者は胸部圧迫により死亡しました。原因は、ロッキングフックの安全装置(ラッチ)が正常作動せず、定期点検で異常発見も修理が先送りされていたこと、作業者はフックの向きや荷の掛け方の適切な知識がなく不安定な状態で玉掛けしていたことでした。​
ある事故では、使用ワイヤロープに多数の素線切れがあり安全荷重を大幅に下回る状態で、点検記録が不十分で交換時期が適切に管理されず、H鋼の重心位置を正確に把握できていなかったことが原因でした。玉掛け作業の事故には、人的・設備・管理・作業方法といった多面的な要因が関係しており、玉掛け用具の定期点検と不良品の即座使用停止、正しい使用方法教育、作業前用具点検徹底、吊り荷直下立ち入り禁止徹底が重要です。​
不動産・建設現場における玉掛け作業の安全性向上には、日々の確認と正しい知識の徹底が不可欠です。​
玉掛け作業の資格取得方法と受講手順について詳しい情報が掲載されています
厚生労働省が発行するクレーン作業・玉掛け作業の安全ガイドライン(PDF)
玉掛け作業の5つのNG行為と安全の基本について実践的な解説があります

 

 

 

 


玉掛け作業者安全必携-技能講習・特別教育用テキスト 第2版