

ドレン抜き配管を「とりあえず下に向ければOK」と思っていると、施工後クレームで1日つぶれます。
ドレン抜き配管とは、空調機や冷凍機、エアハンドリングユニット(AHU)などの機器が運転中に発生する結露水(ドレン水)を、安全かつ確実に排水するための配管のことです。室内機の熱交換器表面には、冷媒と空気の温度差によって結露が常に発生しており、その水を放置すると機器内部の腐食・カビの発生・天井への漏水事故に直結します。
設置が必要な主な場所としては、天井カセット型・天井吊り型エアコンの排水口、ファンコイルユニット(FCU)の排水口、冷凍・冷蔵ショーケース下部、外気処理ユニット(OAユニット)のドレンパンなどが挙げられます。これらはいずれも、機器が稼働するたびに継続的にドレン水が発生する箇所です。
現場では「少しくらい傾いていても水は流れる」と判断されることがありますが、これが誤りのもとです。正確な勾配管理が、後のトラブルを防ぐ唯一の手段と言えます。
ドレン配管の材質には、主に塩化ビニル管(VP管・VU管)が使われます。耐熱性が求められる場合はHT管(耐熱塩ビ管)が選ばれ、蒸気ドレン配管には鋼管が用いられます。用途に応じた材質選定が条件です。
ドレン配管の勾配について、「1/100勾配を確保すれば問題ない」と認識している職人も少なくありませんが、実際には設置環境と配管長によって求められる勾配が変わります。これは意外ですね。
一般的な空調ドレン配管における推奨勾配は、1/100〜1/50です。配管長が短く、かつ排水量が少ない場合は1/100でも機能しますが、配管長が5mを超えるような横引き区間では、1/50以上の勾配を確保することが推奨されています。国土交通省の「建築設備設計基準」でも、横引き排水管の最小勾配についての目安が示されており、現場での設計根拠として活用できます。
勾配の取り方には現場でいくつかの落とし穴があります。天井内の吊り配管では、吊りボルトのピッチが広すぎると配管がたわんで「逆勾配」が発生します。逆勾配が生じると、ドレン水が排水されず配管内に滞留し、機器側に逆流するリスクが生まれます。吊りボルトのピッチは1,500mm以内を目安にするのが基本です。
また、施工後に躯体の沈降や地震動によって勾配がずれるケースもあります。竣工後1〜2年以内に「水が垂れてくる」というクレームが入った場合、このたわみが原因であることが多いです。竣工検査だけでなく、定期点検時に勾配の再確認を行うことが、トラブル防止につながります。
勾配確認には水平器だけでなく、デジタルレベル(傾斜計)を使うと精度が上がります。0.01°単位で測定できる機器もあり、1/100勾配(約0.57°)の確認が現場で確実に行えます。これは使えそうです。
ドレン配管が詰まる原因は、大きく分けて「スライム(バイオフィルム)」「ホコリ・砂塵の堆積」「施工不良による水の滞留」の3種類です。この中で現場から最も多く報告されるのがスライムによる詰まりで、冷却水や結露水に含まれる有機物を栄養源として、配管内壁にゼリー状の膜が形成されます。
スライムが詰まりを引き起こすまでの期間は、環境にもよりますが施工後1〜3年が目安とされています。空調稼働が多い夏季(6〜9月)に詰まりが集中する傾向があり、この時期に集中してクレームが発生する現場は少なくありません。
清掃口(掃除口)の設置は、詰まり対応のコストを大きく左右します。設置位置の原則は「曲がり部分の直近」と「横引き管が長くなる箇所」です。具体的には、エルボやチーズの手前1m以内に清掃口を設けることが推奨されており、これがない場合は詰まり除去のために天井ボードをはつる必要が生じ、1件あたり3〜5万円程度の補修費用が発生することもあります。痛いですね。
清掃口のサイズは、配管径と一致または1サイズ上のものを選ぶのが原則です。VP20の配管であれば、清掃口もVP20用を用意してください。サイズが合わない清掃口は水密性が確保できず、逆に漏水の起点になることがあります。
詰まり防止の観点から、現場での実績が多い方法として「防藻剤タブレット」をドレンパン内に設置する方法があります。タブレット1個で約3〜6ヶ月の効果が持続するとされており、メンテナンスの手間を大幅に削減できます。これは詰まりリスクが高い現場での追加提案として活用しやすい選択肢です。
ドレン水の排水先については、現場ではあまり深く考えられないことが多いです。しかし実際には、排水先の選定を誤ると建築基準法や下水道法に抵触するリスクがあります。これが原則です。
ドレン水の排水先として認められている主なルートは、「雑排水管への接続」「雨水排水管への接続(自治体によって条件が異なる)」「間接排水(排水口空間を設けた上での排水)」の3つです。直接大気中に放流したり、地面に垂れ流しにする施工は、近隣クレームや法令違反につながります。
特に注意が必要なのは間接排水の扱いです。食品工場や医療施設では、配管を直接排水管に接続することが禁じられており、必ず排水口空間(最小25mm以上)を確保した間接排水とする必要があります。この規定は「建築基準法施行令第129条の2の5」および各自治体の排水設備設計基準に基づくものです。施工時に直接接続してしまうと、保健所の立入検査で指摘を受け、手直し費用と営業停止のリスクが生じます。
雨水管への接続可否は自治体ごとに異なります。合流式下水道の地域では雨水管と汚水管が一体なので接続可能なケースがありますが、分流式の地域では汚水をドレン水として雨水管に流すことが禁じられている場合があります。施工前に必ず管轄の下水道局または市区町村の建築担当窓口に確認することが重要です。
排水先の誤接続は見た目ではわかりません。竣工後に問題が発覚するケースがほとんどで、発見が遅れるほど是正費用が膨らみます。確認は1回で終わらせることが条件です。
現場でよく聞かれる議論のひとつが「ドレン配管にPトラップは必要か?」という問題です。「ニオイが来ないし、Pトラップなんて入れなくていい」という意見が現場では根強いですが、これは条件次第で大きなミスになります。
Pトラップが必要なケースとして最も重要なのは、排水管内が負圧になる可能性がある場合です。高層ビルや地下設備など、排水立て管に接続されるドレン配管では、排水流速によって管内が一時的に負圧状態になります。このとき封水のないドレン配管からは、排水管内のガス(硫化水素などの有毒ガスを含む場合もある)が室内に逆流するリスクがあります。
一方でPトラップを誤って設置すると問題が起きるケースもあります。ドレン水の排水量が少ない機器(例:小型ファンコイルユニット)にPトラップを設けた場合、封水が蒸発してトラップ切れが起こり、結果的に無設置と同じ状態になります。つまり設置すればよいわけではないということですね。
この問題の対策として、「ディープシールトラップ」や「補給水機能付きトラップ」の使用が有効です。補給水機能付きトラップは、封水が一定量以下になると自動的に補水する機構を持っており、稼働が少ない季節でもトラップ切れを防げます。機器の稼働頻度と設置環境を確認した上で、トラップの種類を選定することが重要なポイントです。
また、空調用ドレン配管特有のルールとして、機器メーカーの施工説明書でPトラップの設置位置や封水深さの指定がある場合があります。これを無視した施工は、メーカー保証の対象外になることがあるため、必ず施工前に取扱説明書・施工要領書を確認してください。これが大切な原則です。
ダイキン工業:空調機器 施工・設計技術資料(ドレン配管関連)
現場での確認手順をシンプルにまとめると、①機器仕様書でトラップ要否を確認、②排水先の管内圧力条件を確認、③稼働頻度から封水維持の可否を判断、という3ステップです。この流れを守れば、Pトラップ問題での手戻りはほぼなくなります。現場の判断に任せず、設計段階で明示しておくことが最善策といえます。