

下地処理を省くと、ゴムライニングは数ヶ月で剥がれて設備が腐食します。
ゴムライニング管とは、鉄やステンレスなどの金属配管の内面(または外面)にゴムシートを接着し、腐食・摩耗・化学薬品から母材を保護する加工を施した配管のことです。金属単体では耐えられない酸・アルカリ・スラリー(固体粒子混じりの液体)などを流す環境で特に力を発揮します。
建築業の現場では、化学プラント向けの配管工事や水処理設備、薬液タンクの周辺配管として採用されることが多く、「高価な耐食性合金を使わなくても済む」コスト合理性が選ばれる最大の理由です。本体は安価な炭素鋼を使い、内面にゴムライニングを施せば、同等以上の防食性能を大幅に低コストで実現できます。これは経済的なメリットが大きいですね。
ゴムライニングが工業的に利用され始めたのは1920年代の欧州と言われており(出典:王子ゴム化成株式会社)、100年以上にわたって改良が続いてきた歴史ある技術です。現代では接着剤やゴム配合の進化により耐久性が飛躍的に向上していますが、ゴムシートを貼り付ける作業は依然として職人の手作業に頼る部分が大きく、施工者の技量が品質を左右します。
ゴムライニング管には大きく分けて「防食目的」と「耐摩耗目的」の2つの用途があります。
| 目的 | 主な適用箇所 | 代表的なゴム素材 |
|------|------------|----------------|
| 🔬 防食 | 酸・アルカリ系薬液配管、タンク接続管 | 天然硬質ゴム、ブチルゴム |
| ⚙️ 耐摩耗 | スラリー輸送管、砂・鉱石搬送管 | 天然軟質ゴム、ウレタンゴム |
| 🌡️ 耐熱 | 高温ダクト、蒸気配管周辺 | シリコーンゴム |
| ⚡ 電気絶縁 | 電食防止が必要な配管 | EPDM、ブチルゴム |
「防食と耐摩耗を両立させたい」という場合、硬質ゴムと軟質ゴムを組み合わせるハイブリッド仕様も存在します。外側(腐食因子にさらされる面)を硬質ゴムで覆い、衝撃を受ける内側を軟質ゴムにするという構成で、設計の自由度が高い点もゴムライニングの強みです。
建築業従事者が覚えておくべき原則は1つだけです。「どんな液体・物質を流すか」を最初に確定させてから素材を選ぶことが原則です。
参考:ゴムライニング技術の概要と用途について詳しくまとめられています。
素材選びは設備の寿命を直接左右します。代表的な6種類の特徴を整理しましょう。それぞれ得意な環境と苦手な環境がはっきり異なるため、「なんとなく天然ゴムにしておく」という選び方は避けるべきです。
① 天然ゴム(NR)は耐摩耗性と機械的強度が高く、砂・鉱石・スラリーを流す配管に最適です。しかし構造上、二重結合を多く持つため耐候性・耐油性・耐オゾン性に劣ります。屋外配管や油性液体の輸送には適しません。軟質タイプは耐摩耗性が特に優れ、硬質タイプ(エボナイト)は濃硫酸など強酸への防食に用いられます。
② ブチルゴム(IIR)はガス透過性が極めて低く(天然ゴムの約10分の1)、耐薬品性・耐熱性・耐候性のバランスに優れています。塩酸・硫酸・フッ化水素酸などの酸環境や、蒸気配管まわりにも対応できます。ただし油に対する耐性が低い点が唯一の弱点です。
③ EPDM(エチレン・プロピレンゴム)は耐候性・耐オゾン性・耐熱老化性が6種類の中で最も優れており、屋外や紫外線にさらされる環境に向いています。電気絶縁性も高く、電食防止が必要な配管への採用例も多い素材です。一方、耐油性は非常に低いため、油類・有機溶剤が流れる配管には使えません。
④ クロロプレンゴム(CR)は耐油性・耐薬品性・耐候性をバランスよく持ち、「オールラウンダー」と呼ばれることもあります。機械的強度も高く、汎用的な産業配管に広く採用されています。特定の用途に突出した性能はないものの、環境条件が明確でない現場では最初の選択肢に入ります。
⑤ ニトリルゴム(NBR)は耐油性に特化したゴムで、オイルホースや燃料系配管のライニングに多用されます。耐薬品性も良好ですが、耐候性・耐オゾン性は低め。屋内の油配管専用と考えるとわかりやすいです。
⑥ シリコーンゴム(Q)は耐熱性と耐寒性の両方が突出しており、使用温度範囲はおよそ-60℃〜230℃に達します。食品・医療分野でも承認されている素材で、内容物の汚染リスクが最小限です。価格は他素材に比べて高くなりますが、特殊環境では代替が難しい素材です。
これが素材選定の基本です。
| ゴム種類 | 耐酸 | 耐油 | 耐候 | 耐摩耗 | 耐熱 |
|---------|-----|-----|-----|------|-----|
| 🌿 天然ゴム(NR) | ◎(硬質) | ✕ | △ | ◎ | △ |
| 🟡 ブチルゴム(IIR) | ◎ | ✕ | ◯ | △ | ◯ |
| 🔵 EPDM | △ | ✕ | ◎ | △ | ◎ |
| 🟢 クロロプレン(CR) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
| 🔴 ニトリル(NBR) | ◯ | ◎ | △ | ◯ | △ |
| ⚪ シリコーン(Q) | △ | △ | ◎ | △ | ◎ |
ゴムの耐薬品性に関する詳細な比較表(各薬品濃度・温度別)は以下が参考になります。
施工の良否はほぼ下地処理で決まります。この事実は現場経験者ほど実感しているはずです。どれほど高品質なゴムシートを選んでも、母材の表面に油脂・錆・黒皮が残っていれば接着剤が機能せず、数ヶ月以内に剥離が始まります。
日本ゴム工業会(JRMA)が定めるゴムライニングの施工手順は以下の6ステップです(出典:ゴムライニングハンドブック)。
ステップ1:表面前処理(サンドブラスト・グリッドブラスト)
母材表面の錆・黒皮・油分をグリッドブラストまたはサンドブラストで完全除去します。仕上げグレードはISO規格「Sa 2½以上」が標準とされており、表面粗さが粗くなることで接着剤のアンカー効果(食いつき)が生まれます。「Sa 2½」とは、表面に残る汚染物が1%未満という厳しい基準で、目視では「鋼材本来の灰白色が見えるほど清潔な状態」が目安です。
ステップ2:接着剤塗布
前処理が終わったら時間を置かずに接着剤の1回目塗布を行います。時間が経つと表面が酸化して密着力が落ちるためです。使用する接着剤は母材の材質・ゴム材質・使用環境の組み合わせで決定し、規定の回数(通常2〜3回)を重ね塗りします。
ステップ3:シート成形・裁断
所定の厚さ・幅にカレンダー加工されたゴムシートを、配管の形状・寸法に合わせて裁断します。標準的な膜厚は3〜6mmですが、摩耗や化学的損傷が激しい環境では6mm以上とすることもあります。
ステップ4:生ゴムシート貼付
ハンドローラーを使って均等に圧着します。最大のポイントは「空気を完全に抜くこと」で、ゴムシートと母材の間に空気が残ると加硫後に膨れ(ブリスター)が生じ、それが剥離の起点になります。狭い管内部での作業は特に熟練技術が必要です。
ステップ5:加硫
貼り付け完了後、製品を加硫缶(オートクレーブ)に入れ、飽和蒸気で直接加熱します。この工程でゴムに硫黄の架橋構造が形成され、プラスチックのような柔軟性を持つ弾性体へと変化します。現地施工で加硫缶を使えない場合は、加硫促進剤を使った「自然加硫(常温加硫)」で対応することもありますが、接着強度は蒸気加硫に比べて劣ります。
ステップ6:品質検査
加硫後に以下の5項目を検査します。
- 🔍 ピンホール検査:電気絶縁性を利用し、高周波・直流式テスターでゴムの微細な孔(ピンホール)を検出
- 👁️ 外観検査:亀裂・膨れ・異物混入の目視確認
- 💪 ゴム硬度検査:デュロメーターで指定硬度との誤差を確認
- 📏 膜厚検査:膜厚が設計値の+20%〜-10%の範囲内にあるかを確認
- 🔨 打診検査:コインなどで叩き、浮きや剥離箇所を音で判定
ピンホール検査が必須です。ピンホールが1箇所でも残っていると、腐食性液体がゴム層を突き抜けて母材と反応し、内側から錆が進行するため、外部から発見が遅れるという最悪のパターンになります。
参考:JRMAが定める施工手順の公式ハンドブックは以下で確認できます。
ゴムライニング管は正しく施工すれば長期間安定して使えますが、定期点検を怠ると静かに劣化が進みます。劣化に気づかず使い続けると、タンクや配管の底板が腐食して液漏れに至った事例も記録されています(出典:危険物保安技術協会)。
主な劣化モードを以下に整理します。
- 🔴 ブリスター(膨れ):ゴム層の内側に液体や気体が侵入して膨らむ状態。下地処理不良や接着剤の塗り不足が原因。
- 🟠 ピンホール・クラック:小さな孔や亀裂。製造時の欠陥のほか、経年劣化・熱サイクルによる収縮膨張でも発生。
- 🟡 剥離(デラミネーション):ゴム層が母材から剥がれる状態。静電気や真空圧(縦配管で液抜き時に密閉状態になった場合)でも発生することがあります。
- 🔵 摩耗減肉:スラリー配管では流体中の固体粒子がゴム面を削り、膜厚が基準値を下回る。
定期点検のタイミングは一般的に「年1回以上」が推奨されており、点検項目は打診検査・外観検査・ピンホール検査の3つです。厳しいですが、早期発見が修繕コストを最小化します。
補修か全面交換かの判断は「劣化面積と損傷深さ」で決まります。
| 劣化状況 | 推奨対応 |
|---------|---------|
| 小面積のピンホール・クラック(直径30mm以下) | 🔧 部分補修(専用補修ゴムを当て加硫) |
| 広範囲の膨れ・剥離(面積の10%超) | 🔄 全面再ライニング |
| 母材(鉄板)まで腐食が進んでいる | 🆕 配管・缶体の更新 |
部分補修の標準的な手順は「①傷んだ部分を切除→②表面をサンダーで粗面化→③未加硫ゴムシートを貼付→④長時間加熱加硫」です。現地補修では常温加硫を使うことも多いですが、接着力が本施工より劣るため、応急処置として位置づけ、次の定期修繕で本格的な再ライニングを行うことが推奨されます。
コスト感として、マンション排水管のライニング工事(更生工事)では1戸あたり30〜40万円程度が目安とされており、工業用の大型タンク・配管では規模に応じてさらに費用が増加します。補修対応の先延ばしは、全面交換という大きな出費につながりやすいため、点検コストを惜しまないことが長期的に合理的な判断です。
見落とされがちなリスクがあります。ゴムライニング管を施工・解体・洗浄する現場では、一般の金属配管とは異なる「静電気・火気リスク」が潜んでいます。
ゴムおよびフッ素樹脂などのライニング材は電気を通さない絶縁性素材です。そのため、可燃性液体や粉体を流した場合に静電気が局所に溜まりやすく、着火源になるリスクがあります。化学プラントでは配管ライニング材の静電気が起因した爆発・火災事故が繰り返し発生しています(出典:半田化学プラント安全研究所)。
建築業従事者が特に注意すべきシチュエーションは次の3つです。
① 高圧ジェット洗浄時:洗浄水の水しぶきでも静電気は発生します。グラスライニング機器のジェット洗浄中に、ライニングに付着していたポリマー由来の可燃性ガスに引火・爆発した事故例があります。洗浄前に内部の可燃性ガスの有無をガス検知器で確認することが必須です。
② ゴムライニング管の火気解体時:解体作業で金属部分を切断・溶断する際、内部にゴムライニングがあることを知らずに作業し、着火して火災になった事例が複数記録されています。施工図面や設備台帳で「ライニング有無」を必ず事前確認してから作業開始してください。
③ 酸系タンク・配管の補修時:ライニングが一部剥離してタンクの鉄板と酸が接触すると、鉄と酸の反応で水素ガスが発生します。この水素に気づかず火気作業を開始し、爆発した事故も報告されています。ライニング補修前は必ずガス検知を実施してから着手することが原則です。
JRMA(日本ゴムライニングメーカー連絡会)の現地施工安全基準(JRMA-L-8207)では、ゴムライニング施工中の火気使用禁止と作業員への火気管理の徹底が明記されています。
つまり、ゴムライニング管が「不燃」だと思っている現場は危険です。ゴム自体は可燃性素材であり、施工・補修・解体のどの段階でも火気と静電気の管理を怠ると重大事故につながることを、現場管理者は必ず周知してください。
現地施工の安全基準の詳細は以下のPDFで確認できます。
日本ゴム工業会「ゴムライニングの現地施工における作業安全基準(JRMA-L-8207)」
ゴムライニング管の品質は「どの業者に頼むか」で大きく変わります。施工の良否は加工後の外観だけでは判断しにくいため、発注段階でのチェックが重要です。
① 使用材料を自社配合しているか
ゴムシートの配合設計・練加工から自社で行っている業者は、品質のブレが少なく、特殊な環境条件にも柔軟に対応できます。材料を外部調達するだけの業者は、品質の根拠を第三者に依存していることになります。
② JRMA規格への準拠を明示しているか
日本ゴムライニングメーカー連絡会(JRMA)が定める製作基準(JRMA-L-6901)・検査基準(JRMA-L-8303)への準拠を確認してください。これが品質の最低ラインです。検査記録(ピンホール検査・膜厚検査の測定値)を書面で提出してもらうことも依頼時の条件として明記しましょう。
③ 現地施工に対応しているか
配管が大きい・移設が困難・築年数が経った設備の補修など、現地での施工が必要なケースは少なくありません。工場施工と現地施工の両方に対応できる業者を選ぶことで、対応の選択肢が広がります。
④ 耐薬品性試験データを持っているか
「この薬品をこの濃度・温度で使いたい」という条件を提示したとき、実測データや試験実績をもとに素材を推薦できる業者を選ぶことが望ましいです。データなしで「おそらく大丈夫」と回答する業者は避けましょう。
⑤ アフターサービス・補修対応体制があるか
施工後のピンホール再検査や定期点検、緊急補修への対応体制があるかを確認することが重要です。ゴムライニング管は施工後のメンテナンスが品質維持に直結するため、「売り切り」ではなく長期的な関係を築ける業者を選ぶことが設備の長寿命化につながります。
メンテナンスまで含めて信頼できる業者を選ぶことが条件です。
参考:ゴムライニングメーカーの施工実績・対応事例を確認するうえで参考になります。
株式会社JRC ゴム事業部「タンク・配管等のゴムライニング」

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