保温材(ケイ酸カルシウム)の特性と施工・法規制の要点

保温材(ケイ酸カルシウム)の特性と施工・法規制の要点

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保温材(ケイ酸カルシウム)の基礎から施工・法規制まで

見た目は問題なくても、保温材が濡れているだけで配管が腐食し、修繕費が数百万円に膨らんだ事例があります。


📋 この記事のポイント3つ
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耐熱1000℃・高強度の最強保温材

ケイ酸カルシウム保温材はJIS 1号品で最高使用温度1000℃。比強度が高く、プラント・建築現場で最も広く使われる代表格です。

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吸水すると断熱性能が激減するリスク

含水率が上がるにつれ熱伝導率が直線的に上昇。保温効果が大幅に低下し、配管外面腐食(CUI)にもつながります。

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アスベスト調査を怠ると最大50万円の罰金

2022年4月以降、解体・改修前の事前調査が義務化。旧来のケイ酸カルシウム保温材には石綿含有品が多く残存しています。


保温材(ケイ酸カルシウム)の種類とJIS規格の基礎知識


ケイ酸カルシウム保温材は、ケイ酸質と石灰質を高温・高圧のオートクレーブ(水熱反応)で合成した「ケイ酸カルシウム水和物」を主成分とし、補強繊維を加えて成形した無機多孔質保温材です。JIS A 9510(無機多孔質保温材)に規定されており、大きく1号品と2号品の2種類に分かれています。


両者の最大の違いは使用できる温度域です。1号品はゾノトライト系の結晶質で構成され、最高使用温度1000℃以下に対応します。2号品はトバモライト系の結晶質で、最高使用温度650℃以下が目安です。一般的な建築配管保温には2号品が多く使われ、石油化学・電力・ガスプラントの高温配管には1号品が採用されます。


製品形状としては「保温筒」と「保温板」の2種類が主流です。保温筒は円筒形で配管にそのまま被せて使い、保温板は平板状で大きな面積や複雑な形状に加工して使用します。


| 種別 | 結晶系 | 最高使用温度 | 主な用途 |
|------|--------|------------|---------|
| 1号品 | ゾノトライト系 | 1000℃以下 | 石油化学・電力・ガスプラント高温配管 |
| 2号品 | トバモライト系 | 650℃以下 | 建築配管・一般プラント設備 |


ケイ酸カルシウム保温材の熱伝導率は200℃で0.056 W/(m·K)程度(JIS 1号品の例)。これが基本です。同温度帯のロックウール保温材などと比較しても遜色なく、むしろ比強度(密度当たりの圧縮強さ)が非常に高いことが大きな特長です。外装板金の上から点検員が乗っても変形しにくく、繊維系保温材より物理的な損傷を受けにくい点が、プラント現場で圧倒的に支持されている理由です。


施工現場での形状加工には一般的な木工用鋸や電動カッターが使えます。ただし切断時に粉じんが発生するため、防じんマスク(DS2規格以上推奨)の着用と現場の養生が必要です。


参考:JIS A 9510 無機多孔質保温材の規格詳細(日本規格協会)


JISA9510:2016 無機多孔質保温材|日本規格協会


保温材(ケイ酸カルシウム)が吸水すると断熱性能が激減する理由

ケイ酸カルシウム保温材が現場で持つ最大のリスクが吸水による断熱性能の低下です。これは意外と見落とされがちなポイントです。


ケイ酸カルシウム保温材は多孔質構造(内部に多数の空隙をもつ構造)のため、水が浸入すると容易に吸水します。保温材内部の空隙が「熱を伝えにくい空気」から「熱を伝えやすい水」に置き換わることで、熱伝導率が急激に上昇します。ニチアス株式会社の技術データによれば、含水率と熱伝導率の関係はほぼ直線的で、含水率が増えるほど熱伝導率が上昇し断熱性能が大幅に下がることが確認されています。


吸水による影響はそれだけではありません。結果は深刻です。水分を含んだ状態が続くと、保温材が直接接触している配管・機器の金属面に腐食が生じやすくなります。この現象を「保温材下配管外面腐食(CUI:Corrosion Under Insulation)」と呼びます。


CUIの怖い点は、外側から見てもわからないことです。保温材の外装板金が正常に見えても、内部の保温材がすでに吸水し、配管外面が腐食している事例は業界で多数報告されています。大気中での腐食と比較して腐食速度が約10倍になるケースもあります。


特に注意が必要なのが、ステンレス配管に旧来のケイ酸カルシウム保温材を使用している現場です。保温材に浸入した水分が中の塩素成分を溶出させ、ステンレス製機器の溶接部に応力腐食割れ(SCC)を引き起こした事例も報告されています。300シリーズ(SUS304・SUS316など)のオーステナイト系ステンレス配管では特にリスクが高まります。


CUI対策の基本は3つです。


- 輸送・保管・施工中に十分な防水対策を行う(雨天施工の回避、ブルーシート養生など)
- 外装板金の切欠き部分・繋ぎ目は必ずシーリング材で防水処理する
- 定期的に外装板の点検を実施し、変形・錆・開口がないか確認する


なお、はっ水処理されたケイ酸カルシウム保温材を使う現場も増えています。これは使えそうです。ただし、はっ水処理に使われる薬剤は約200~250℃で分解するため、それ以上の温度域では防水効果が期待できなくなる点を知っておく必要があります。


参考:プラント設備における保温保冷材の種類・特徴・CUI事例(ニチアス技術時報)


プラント設備における保温保冷材の種類と特徴|ニチアス技術時報 2023


保温材(ケイ酸カルシウム)施工時の選定ミスが引き起こすトラブル事例

保温材の選定で最も重要な判断軸は「使用温度範囲」です。これが条件です。使用温度に合わない材料を選ぶと、変形・融解・発火・脱落といった重大なトラブルに直結します。


実際に起きたトラブルとして、以下の事例が専門文献で報告されています。


- 事例①:低温機器に保冷材としてポリスチレンフォームを施工したが、その機器が定期的に高温スチーム洗浄を行う機器だとわかっておらず、スチーム通水時に保温材が溶融した
- 事例②:振動の大きい高温配管にロックウール保温材を施工したところ、運転中の振動で保温材が粉砕され、点検時には保温材がほぼ消失していた


これらの事例が示すのは、単に「高温に強い素材」を選ぶだけでは不十分だということです。使用条件(温度・振動・洗浄有無など)を事前に設計者・発注者と確認し合ってから材料を選定することが、施工ミスを防ぐ唯一の方法です。


ケイ酸カルシウム保温材の優位点である「高い比強度」は、ロックウールや高温断熱ウールでは対応しにくい振動環境においても有効です。ただし、ケイ酸カルシウム保温材自体にも弱点があります。厳しいところですね。


柔軟性が低いため、エルボ継手の曲がり部分)やバルブ周りなど複雑な形状箇所では加工が必要になります。ロックウールやグラスウールのような繊維系保温材は柔軟に曲げて施工できますが、ケイ酸カルシウムは硬質成形品なので現場でカットして合わせる手間がかかります。施工性が劣る箇所ではあらかじめ成形品の「エルボカバー」を手配するか、テーパー加工をするなど計画的な対応が求められます。


また、高温になると収縮して保温材間に隙間が生じる可能性もあります。収縮による隙間は「熱橋(ヒートブリッジ)」と呼ばれる熱の通り道になり、保温効果が局所的に落ちる原因となります。継ぎ目部分には余裕を持たせた施工計画が重要です。


参考:プラント保温工事における保温材の種類・選定・施工上の注意点


プラント保温工事では保温材の選択が重要!種類と特徴を紹介|誉工業


保温材(ケイ酸カルシウム)とアスベスト:法規制と解体時の義務を正しく理解する

建築業従事者にとって見落としが許されない問題がアスベスト(石綿)との関係です。旧来のケイ酸カルシウム保温材には、強度向上のために石綿が補強繊維として使われていた時代があります。


石綿含有けい酸カルシウム保温材の製造期間は1951年~1980年ごろまで(旧JIS A 9510)が主流ですが、同名の建材でも製品によって含有年代は異なります。大切なのは「年代だけで判断しない」ことです。


現行法大気汚染防止法石綿障害予防規則)では、2022年4月以降、一定規模以上の解体・改修工事においてはアスベスト含有の有無に関する事前調査が義務化されています。さらに2023年10月以降は、有資格者(建築物石綿含有建材調査者など)による調査が義務化されました。


この事前調査を怠った場合、または虚偽の報告をした場合のペナルティは以下のとおりです。


| 違反の内容 | 罰則 |
|-----------|------|
| 事前調査の未実施・虚偽報告(大気汚染防止法) | 30万円以下の罰金 |
| アスベスト除去措置義務違反(大気汚染防止法) | 3か月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
| 調査未実施で作業(石綿障害予防規則) | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 |


「うちの現場に残っている保温材は古いからたぶん大丈夫」という思い込みで作業を進めることが、最も危険な対応です。アスベスト含有かどうかは目視では判断できないため、分析機関への依頼が必要です。


石綿含有ケイ酸カルシウム保温材はレベル2建材に分類されます。レベル2とは、飛散性は低いが除去作業時に石綿繊維が発生する可能性がある建材を指します。除去作業には原則として湿潤化・隔離養生・全面形呼吸用保護具(粒子捕集効率99.9%以上)の使用が求められます。適切な保護措置なしに作業を進めることは、作業者の健康被害に加え、法的責任も生じます。


なお、現在市販されているケイ酸カルシウム保温材は無石綿品が標準であり、アスベストは一切含まれていません。問題になるのはあくまで既存建物・既存設備に残存する旧来品です。


参考:アスベスト関連の法改正内容・罰則の詳細(CIC日本建設情報センター)


アスベストに関する法律とは?規制内容から罰則まで徹底解説|CIC


保温材(ケイ酸カルシウム)の独自視点:省エネ規制強化で注目される「保温厚の見直し」

近年、温室ガス削減対策として省エネルギーの重要性が高まる中、プラント・建築設備における保温施工の見直しが業界全体で進んでいます。これは意外と知られていないポイントです。


保温材の厚みは従来、「火傷防止基準(表面温度60℃以下)」や「結露防止」を主目的に設計されることが多かったですが、近年は省エネ性能(熱エネルギー損失の最小化)の観点から厚みを再計算し直す現場が増えています。


たとえば、ケイ酸カルシウム保温材(1号品-15密度、熱伝導率λ=0.0407+1.28×10⁻⁴×θ)と、最新の高性能断熱材(エアロジェルブランケット等)を比較した試算では、保温厚を半分にしても同等の保温性能が得られるケースがあります。これは施工スペースが限られる現場や、配管本数が密集する箇所でのメリットが大きいです。


また、エアロジェルブランケット(パイロジェル XTE など)は150℃での熱伝導率がケイ酸カルシウム保温材の約1/2です。保温材厚みが1/2で済む計算になり、旭化成建材のネオマフォームと比較した試算例では年間約62,000kWhの削減が見込まれる事例も報告されています。


とはいえ、コストの観点では話が変わります。エアロジェル系は材料コストがケイ酸カルシウム保温材より大幅に高く、長期コストとのバランス検討が必要です。


現場での実践的なアドバイスとしては、既存配管の保温材を定期点検する際に、保温材の厚みと現在の使用温度・省エネ基準を照らし合わせて再評価するという視点を持つことを勧めます。古い施工仕様のままでは、省エネ法の特定事業者基準を満たせないケースも今後増えてくることが予測されます。


保温材の設計見直しを検討する際は、JIS A 9501(保温保冷工事施工標準)に基づいた伝熱計算を行い、使用温度・配管径・許容表面温度から必要厚みを算出することが原則です。計算ツールは一般社団法人日本保温保冷工業協会が「熱絶縁施工ハンドブック(2021年度版)」として提供しており、業界標準の参考資料として活用できます。


参考:配管保温材の種類・選定・省エネ観点からの解説(プラントエンジニア+)


まずはここから!配管保温材の種類と特徴|プラントエンジニア+




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