

ショア硬度を比較する前に、金属の反発式ショア硬さと、ゴム・樹脂のデュロメータ硬さを区別しましょう。同じA型・同じ測定条件ならA60はA20より硬い値ですが、材料選定には硬度以外の性能と使用条件の確認も必要です。

「ショア硬度」「ショア硬さ試験」「ショア硬度計」には、金属用の反発式と、ゴム・樹脂用のデュロメータがあるため、まず対象材料と試験方法を確認します。金属のショア硬さ(HS、JIS Z 2246)は、ダイヤモンドを先端に備えたハンマーを落とし、反発高さから評価します。衝突前後の速度比を使うリーブ硬さとは別の方法です。
ゴム・樹脂のショアA・Dは、押針の押込み深さを0~100の目盛で示します。同じA型かつ同じ測定条件なら、A60はA20より硬い値です。「ショアA70」はA型での指示値70を意味し、金属のHS70やD70とは比較できません。また、旧ゴム硬度にも「Hs」という表記があるため、記号だけで金属用と決めず、材質・試験規格・硬度計の型式を照合してください。
測定では、平らな試料を用い、温度、厚み、押付け方向、読取り時間をそろえて型式と一緒に記録します。必要な厚さと積層の可否は規格・型式・材料で確認し、「一律6.4mm以上」「薄ければ必ず重ねる」とは扱いません。1/4インチ=6.35mmは単位換算であり、共通の最小厚さではありません。
Oリング、シーリング材、防振材も、用途名から硬度を固定せず、製品仕様のスケールと測定条件を確認します。
測定原理の出典:ダコタ・ジャパン「硬さ試験の種類と測定原理」、JFEテクノリサーチ「硬さ試験」。ゴム関連資料:https://cp.misumi.jp/tech/tech24.html。
スケールは押針形状とばね荷重特性が異なります。A・Dの2種類でも数値を直接比較せず、CについてはASTMのタイプCとAsker Cを区別してください。
| スケール・掲載型式 | 押針の仕様 | ばね荷重の掲載値 | 対象の例 |
|---|---|---|---|
| タイプA・アスカーA型 | 35°円錐台、突出2.50mm | 0目盛:0.55N/100目盛:8.05N | 一般ゴム |
| タイプD・アスカーDL型 | 30°円錐、先端R0.1mm、突出2.50mm | 0目盛:0N/100目盛:44.5N | 硬質ゴム・プラスチック |
| ASTM D 2240タイプC・Rex資料 | 35°円錐台 | 採用型式の荷重特性を確認 | 中硬質のゴム・樹脂 |
| Asker C・アスカーC型 | 直径5.08mmの半球、突出2.54mm | 0目盛:0.539N/100目盛:8.379N | 軟質ゴム・スポンジ・発泡体 |
| タイプOO・Rex資料 | 球状 | 採用型式の荷重特性を確認 | フォーム・スポンジ・ゲル |
ばね荷重は押込みに応じて変わり、100目盛の値が測定中ずっと作用するわけではありません。測定台が硬度計を試料へ押し付ける荷重とも別です。高分子計器はA型の20~90を有効な測定範囲の目安とし、90以上ではD型、20以下ではAsker C型またはE型を案内しています。これを「D20未満なら必ずAへ戻す」という全メーカー共通ルールにはしません。
ゴムのJIS K 6253-3、プラスチックのJIS K 7215、ISO 48-4、ASTM D 2240などは、対象材料と採用する試験方法を確認します。塩ビという材料名だけで型式を決めず、ASTMとJISの条件をすべて同一とも扱わないでください。
型式仕様の出典:高分子計器「A型」「DL型」「C型」、Rex Gauge技術資料。関連ガイド:https://www.siliconeab.com/jp/solutions/shore-hardness-guide.html。
下表はミスミの特性表に掲載されたグレードの例です。数値を連続した材料全体の硬度範囲と読まず、購入する製品の品番・配合・仕様を確認してください。
| 掲載材料・製品群 | 掲載グレードのショアA値 | 読み方 |
|---|---|---|
| ニトリルゴム | 70、50 | 掲載された2グレード |
| クロロプレンゴム | 65 | 掲載グレードの値 |
| エチレンゴム | 65 | 出典の材料名称に対応 |
| ブチルゴム | 65 | 掲載グレードの値 |
| ふっ素ゴム | 80、60 | 掲載された2グレード |
| シリコンゴム | 50、50 | 異なる2グレードが同じ硬度 |
| 高強度シリコンゴム | 57 | 掲載グレードの値 |
| ウレタンゴム | 95、90、70、50、30 | 掲載された標準製品群 |
| 超低硬度ウレタン | 15 | 掲載製品の値 |
| 低反発ウレタン | 70 | 掲載製品の値 |
| 天然ゴム | 採用製品の仕様を確認 | この出典表には掲載なし |
ニトリルゴムなども、硬度から耐油性や耐候性を推定せず、接触流体と使用環境に対応する製品仕様を確認します。エチレンプロピレン系の名称に含まれるプロピレンの関連解説も、個別ゴム製品の性能表とは別の情報です。
ガスケットや免震用材料は、硬度だけで用途適合を判断できません。寒冷地などの使用条件も具体的な温度で照合し、最高使用温度、連続使用温度、耐寒性を別項目として確認してください。シリコーンならすべて同じ温度範囲で安定する、という意味ではありません。
掲載グレードの出典:ミスミ「各種ゴムの特性と特長」https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td05/a0110.html。
次の表は、シリコロイの金属用硬度換算資料から抜粋した参考値です。ゴム・樹脂のショアA・Dとの換算表ではなく、材料の受入測定や保証値の代わりにもなりません。
| 金属のショア硬さHS | ビッカース硬さHV | ロックウェル硬さHRC |
|---|---|---|
| 97 | 940 | 68.0 |
| 81 | 700 | 60.1 |
| 66 | 500 | 49.1 |
| 42 | 300 | 29.8 |
機械部品や金属製部材、鋼材の比較では、材質、熱処理、試験方法と条件を確認してください。同じ数値でもHS・HV・HRCでは意味が異なります。仕様が特定の試験方法を指定している場合は、その方法で評価します。
AとDについても、すべての材料に使える換算式は設けません。別スケールの値が必要なら、対象材料を適した型式・条件で測定してください。
金属用換算表の出典:https://www.silicolloy.co.jp/lookup_table/hardness_conversion_table/。
硬度を指定する前に、使用圧力、相手面の状態、温度、圧縮率、圧縮永久ひずみ、接触流体への適合を製品設計と照合します。「高圧ならA80」「低圧ならA60」「粗面なら低硬度と高圧縮率」と一律に決めないでください。
| 確認項目 | 製品仕様・設計図書で照合する内容 |
|---|---|
| 測定条件 | スケール、型式、温度、厚み、読取り時間、硬度の許容範囲 |
| 使用温度・流体 | 連続使用と短時間使用の条件、流体の種類・濃度 |
| 圧力・相手面 | 設計圧力、接触面の仕上げ、接合部の形状 |
| 圧縮・長期性能 | 指定圧縮率、永久ひずみの試験条件、変形・繰返し条件 |
| 保管・使用期限 | メーカー指定の期限、保管条件、製造日・ロット |
JIS規格の試験方法と、製品の硬度公差は分けて確認します。ミスミ資料の「記載値に対して±5」は同資料の掲載製品に関する目安条件で、JIS K 6253が全ゴムに一律±5を認めるという説明ではありません。ゴム硬度の比較では配合と測定条件も記録します。
フランジ接合部などのシールも、硬度だけで使用可否を決めず、ガスケットと接合部の仕様を確認してください。温度による変化や永久ひずみの進行を固定倍率で示さず、製品データを参照します。使用期限も製造後6か月を共通上限とはせず、メーカーの指定を確認します。
シール設計に関する関連資料:富士ゴム化成https://www.fujigom.co.jp/manufacturing/20251128-5512/。
同じA70でも、材質・配合が異なれば同じ性能とは限りません。硬度に加え、耐油・耐薬品性、耐候性、温度条件、圧縮永久ひずみ、引張り特性などを、採用製品の物性表で確認します。比較するときは試験方法と条件をそろえてください。
ミスミ資料のウレタン比較は、エーテル系の掲載グレードA95・A90と、エステル系の掲載グレードA70・A50・A30の対比です。この資料では耐加水分解性や引張強度などの違いが示されていますが、化学系全体の硬度範囲や「水まわりなら必ずエーテル系」という用途決定ルールにはしません。実際に使うグレードの仕様と環境を照合してください。
また、旧資料の「Hs」や「硬度70」を、現在のA70と無条件に同一視しないでください。試験規格、硬度計の型式、読取り時間を確認してから比較します。硬度一覧は候補を整理する入口であり、製品の使用条件や性能確認を省略するための表ではありません。
旧JIS硬度を含む表記方法の参考資料:パッキンランド「ゴムの硬さ・規格と表記方法」https://www.packing.co.jp/SIRYOU/gomukoudo1.htm。