温度計(バイメタル式)の仕組みと現場での正しい選び方

温度計(バイメタル式)の仕組みと現場での正しい選び方

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温度計(バイメタル式)の仕組みと現場での正しい選び方

挿入長が50mm以下だと、正確な温度より最大数℃以上も低く表示されて現場判断がズレます。


この記事でわかること
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バイメタル式の仕組みと原理

2種類の金属板の熱膨張差を利用した構造を図解ベースで解説。現場で「なぜ動くのか」が腑に落ちます。

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精度等級・誤差の正しい読み方

JIS規格に基づく精度等級(1.0級・1.5級・2.0級)の違いと、現場で起きやすい誤差の原因を具体的な数字で紹介。

🛠️
取付け・選定・メンテナンスのポイント

保護管の挿入長、取付け方向、定期校正まで、施工後のトラブルを防ぐための実践的な知識をまとめて紹介。


温度計(バイメタル式)の仕組みと原理をわかりやすく解説


バイメタル式温度計は、熱膨張率(温度が上がると金属が膨らむ割合)が異なる2種類の金属板を貼り合わせた「バイメタル」を、らせん状(ヘリカル状)に巻いた構造を持つ温度計です。温度が上昇するとA金属はよく伸び、B金属はあまり伸びない。その差によってらせんが回転し、指針を動かして目盛板の温度を指し示します。


仕組み自体は非常にシンプルです。電源もデータ変換器も不要で、金属板の物理的な動きだけで温度を示せるため、建築・設備工事の現場で古くから使われてきました。電池切れやデジタル表示の誤作動とは無縁な点は、現場作業にとって大きな強みです。


実用温度範囲は約-50℃〜+500℃(JIS規格に準じた一般品の場合)とされており、建築設備で扱う空調配管・給排水配管・ボイラー周りの温度帯はほぼカバーできます。つまり建築設備分野との相性は良好です。


バイメタルに使われる金属の代表的な組み合わせは、熱膨張率が大きいマンガン系合金(マンガニン等)と、熱膨張率が小さいインバー合金(ニッケル鉄合金)です。この2枚をしっかり圧着することで、温度変化に対して安定した湾曲動作を繰り返せます。


ガラス温度計(水銀・アルコール式)と比較すると、バイメタル式は次の3点で建築現場に向いています。


比較項目 ガラス管式 バイメタル式
耐衝撃性 △(破損しやすい) ◎(金属製で頑丈)
視認性 △(細かい目盛りを近くで確認) ◎(大型文字盤で遠くから直読可)
有害物質 △(水銀式は取扱い注意) ◎(金属のみ・環境負荷が低い)


頑丈さが条件です。建築現場の振動・粉塵・水しぶきが飛び交う環境において、バイメタル式はガラス管式よりも圧倒的に実用的な選択肢といえます。


参考:バイメタル式温度計のメーカー製品情報と仕組みの解説
バイメタル式温度計 メーカー34社 | Metoree


温度計(バイメタル式)の精度等級と誤差の正しい読み方

バイメタル式温度計の精度は「フルスケールの百分率(% F.S.)」で表記されます。これは、温度計が測れる最大範囲(フルスケール)に対して何パーセントの誤差が生じるか、という考え方です。


たとえば、測定範囲が0〜100℃の温度計で精度等級2.0級(±2% F.S.)の場合、誤差は最大±2℃になります。測定範囲が0〜200℃の同等精度の製品であれば、最大誤差は±4℃まで広がります。これが原則です。


JIS規格(JIS Z 8707に準ずる工業会指針)では、精度等級は1.0級・1.5級・2.0級の3種類に分類されています。


精度等級 最大許容誤差 主な用途イメージ
1.0級 ±1.0% F.S. 管理精度が求められる設備・プラント
1.5級 ±1.5% F.S. 一般的な空調・給排水管理
2.0級 ±2.0% F.S. 大まかな温度確認が目的の現場用


建築現場でよく使われる測定範囲0〜100℃の標準品(2.0級)であれば、誤差は最大±2℃です。しかし測定範囲を0〜300℃に拡大すると同じ2.0級でも最大±6℃の誤差が生じる計算になります。意外ですね。


「測定範囲が広い=誤差も大きくなる」というこの特性を理解していないと、実際の温度を±数℃読み違えたまま設備の調整を続けるリスクがあります。空調設備の送水温度が5℃以上ずれると、冷暖房効率が設計値から大きく外れ、エネルギー損失や機器の過負荷につながることもあるため、精度等級の確認は重要です。


また、バイメタル式温度計の弱点として「応答速度がやや遅い」点があります。バイメタル自体に熱容量があるため、急激な温度変化に追いつくのに時間がかかります。温度変化が緩やかな配管系統の常時監視には向いていますが、急速に温度が変動するプロセスの瞬間値の把握には不向きです。これだけ覚えておけばOKです。


参考:温度センサの種類と精度・誤差の比較
【温度センサー】温度計の種類、測定原理、誤差を比較してみた | エネルギー管理士ブログ


温度計(バイメタル式)の取付け・保護管の挿入長に関する重要な注意点

バイメタル式温度計を現場に取り付ける際、最も見落とされやすいのが「保護管(感温部)の挿入長」です。感温部が配管内の流体にどれだけ接しているかによって、測定値の正確さが大きく変わります。


横河計器製作所の施工推奨基準では、感温部(保護管)は測定流体に対して「50mm〜100mm程度接することを推奨」しています。これは、感温部の挿入が不十分だと外部の周囲温度(配管外の空気温度)の影響を受けて、実際の流体温度より低い値が表示されるためです。


日本電気計測器工業会(JEMIMA)の試験データによると、外径3.2mmの温度センサを100℃の液槽で測定した場合、挿入長が50mm以下になると0.1℃以上の誤差が発生し、40mm以下では指示温度の低下がさらに顕著になることが確認されています。つまり、挿入が浅いほど「実際より低い温度」を示すということです。


建築設備の配管では、口径の小さい配管(40A以下など)に温度計を取り付ける場合、保護管が50mm確保できないケースがあります。この場合は、配管を斜めにカットして取付角度を工夫するか、配管径に合わせた短い保護管(フルイマースタイプ)を採用するのが現実的な対応です。口径が40A(外径約48mm)の場合、配管中央まで届く挿入長は約24mm程度しか確保できないため注意が必要です。


取付け方向についても重要なポイントがあります。


- 🔺 感温部が上向きになるような取付けは避ける(保護管内に気泡が溜まり熱伝達が阻害される)
- 🔺 強い振動がある配管への直接取付けは注意(バイメタルのゼンマイが変形し、精度が落ちる)
- ✅ 流体の流れに対して45°〜直角に取り付けるのが基本(感温部が流体にしっかり当たる)


振動が大きい配管では、防振型の保護管付き製品(サーモウェル使用型)を選ぶことで、感温部を保護しながら流体温度を正確に測定できます。サーモウェルとは、感温部を直接流体にさらさず、金属製の外管(ウェル)の中に挿入する構造のことです。配管内に液体が流れたままの状態でも温度計の交換ができるため、プラントや大型建築設備のメンテナンスコスト削減にも有効です。


参考:温度センサの挿入不足による誤差についての技術資料(JEMIMA)
温度センサの挿入不足による誤差(JEMIMA 温度計測委員会)


温度計(バイメタル式)の種類と建築設備に合った選び方

バイメタル式温度計には、取付け方式・ケース仕様・測定範囲などでいくつかの種類があります。建築設備の用途と設置環境に合わせて適切な機種を選ぶことが、長期的な精度維持とトラブル防止につながります。


まず取付け方式の違いから見てみましょう。主に「下部取出し型(ステム型)」と「裏面取出し型(バック型)」の2種類があります。配管上部から真上に挿入して目盛りを真正面に向けたい場合は裏面型、配管の側面から水平に差し込む場合はステム型が適しています。現場の配管レイアウトを先に確認してから型式を決めるのが鉄則です。


次にケース仕様(防水・防滴性能)です。屋内の空調配管に使う場合は一般型(ABS樹脂ケース)で十分ですが、屋外配管・機械室・ポンプ室など水気や湿気が多い環境には「防滴形(IP44相当)」または「防水形(IP65相当)」のステンレスケース製品を選ぶ必要があります。防水性の過不足がトラブルの原因になります。


測定範囲の選び方については、「使用温度域の1.2〜1.5倍程度のフルスケール」が一般的な目安です。たとえば給湯配管で最大60℃程度の流体を扱うなら、0〜100℃レンジの製品が適しています。0〜200℃の広いレンジの製品を60℃帯で使うと、前述のとおり誤差も大きくなり精度が下がります。これが条件です。


以下に建築設備分野の代表的な用途と推奨スペックをまとめます。


用途 推奨温度範囲 推奨ケース仕様
空調冷温水配管 -10〜50℃または0〜100℃ 屋内型・防滴形
給湯・給水配管 0〜100℃ 屋内型または防滴形
ボイラー蒸気配管 0〜200℃〜300℃ 防滴形・ステンレスケース
ダクト(空調)内気温測定 0〜50℃または-10〜50℃ 屋内型・ダクト挿入型


国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」においても、配管系統の温度計はガード付きL形温度計またはバイメタル式温度計が推奨仕様として明記されています。つまり公共工事ではバイメタル式が標準的な選択肢です。


製品選定の際は、モノタロウ・管材プロ・イシグロwebstationなどの建築設備資材専門通販サイトで、口径・挿入長・温度範囲を絞り込んで比較できます。「型番だけ同じで挿入長が違う」という選定ミスが現場でも起きやすいため、品番末尾の数字(挿入長を示すことが多い)も必ず確認しましょう。


参考:空調・配管用バイメタル式温度計の製品情報と選定基準
バイメタル式ダクト用温度計 | ネステック株式会社


温度計(バイメタル式)の定期校正と現場でのメンテナンス方法

バイメタル式温度計は「壊れにくく、手間がかからない」と思われがちですが、実際には経年使用とともに精度が劣化します。これは知っておかないと損する情報です。


バイメタルを構成する金属は、長期間の熱ストレスや振動にさらされると少しずつひずみが蓄積し、指示値が実際の温度からずれてくる現象(ゼロ点ずれ、スパンずれ)が生じます。エンペックス気象計のメーカー情報によれば、アナログ式(バイメタル式)の湿度・温度計の寿命は概ね「2〜5年」とされています。建築設備の現場で使われる工業用バイメタル式温度計も同様に、数年単位での定期確認が推奨されます。


校正(キャリブレーション)の基本手順は次のとおりです。


- 🧊 氷水法(0℃基準):砕いた氷と純水を混ぜた氷水(0℃の定点)に感温部を挿入し、指示値が0℃を示しているか確認する
- 🌡️ 沸騰水法(100℃基準):標準大気圧下での沸騰水(約100℃の定点)に感温部を入れ、指示値を確認する
- 📋 基準温度計との比較法:トレーサビリティが確保された校正済み温度計(白金測温抵抗体など)と比較して誤差を確認する


現場での簡易校正としては氷水法が最も手軽です。もし0℃の氷水に浸けたときに指示値が±2℃以上ずれているようであれば、製品の交換または専門機関への校正依頼を検討すべきタイミングです。


また、温度計の取外し・再取付け作業そのものも定期的に実施する必要があります。保護管のネジ部の腐食・固着、パッキンの劣化による流体漏れなどを防ぐには、年1回以上のネジ部点検と潤滑材(シールテープやネジシール剤)の確認が有効です。ネジ部の固着がひどい場合は無理に回すとネジ山がつぶれ、配管ごと交換が必要になる事態を招きます。これは避けたいですね。


定期校正の記録を残しておくことも重要です。公共建築工事の竣工後検査や維持管理報告書において、計器類の校正記録の提出を求められるケースが増えています。「いつ校正したか」「誤差はいくらだったか」を記録する習慣をつけておくと、後々の書類対応でもスムーズです。


校正業務を外部委託する場合は、JCSS(計量法トレーサビリティ制度)認定の校正機関を使うことで、測定値の国際的なトレーサビリティが担保されます。建築設備の品質管理記録に求められる水準を満たすには、JCSS認定機関の校正証明書の取得が最も確実です。


参考:温度計の種類ごとの特徴・選び方・精度について
温度計の種類と特徴|仕組み・精度・選び方など | 日計工業


温度計(バイメタル式)と他の温度センサを建築設備で使い分けるコツ【独自視点】

バイメタル式温度計は現場での目視確認には優れていますが、「記録が残らない」「遠隔での監視ができない」という特性があります。これは建築設備の維持管理において、見逃されがちな重要な課題です。


近年の建築設備では、BMS(ビルディング・マネジメント・システム)やFACP(火災警報制御盤)との連携が求められるケースが増えています。バイメタル式温度計は電気信号を出力しないため、単独では遠隔監視システムに組み込めません。そのため、「現場での目視確認用にバイメタル式を設置しつつ、制御・記録用に別途熱電対や白金測温抵抗体(Pt100)をセットで設置する」という二重設置の考え方が、実務では有効です。これは使えそうです。


バイメタル式・熱電対・白金測温抵抗体(Pt100)の特性比較は以下のとおりです。


センサ種別 精度 電源 遠隔監視 耐久性 コスト
バイメタル式 ±1〜2% F.S. 不要
熱電対(K型等) ±0.4〜1.5℃ 必要
白金測温抵抗体(Pt100) ±0.1〜0.3℃ 必要


この使い分けの考え方で実際にトラブルを防いだ例があります。空調冷温水系統において、バイメタル式温度計の指示値が「正常範囲内」に見えていたにもかかわらず、Pt100センサのデータロガー記録を見ると夜間に温度異常が繰り返し発生していたというケースです。バイメタル式は「その瞬間に現場にいる人が見たときの温度」しかわからないため、夜間無人の設備では見逃しやすいのです。


バイメタル式温度計の「アナログ指示の見やすさ・電源不要の信頼性」と、熱電対・Pt100の「高精度・遠隔監視・記録機能」を目的に応じて組み合わせることが、建築設備の温度管理の精度を高めます。結論は組み合わせが重要です。


具体的には、配管系統ごとに「バイメタル式で現場確認用の指示計を設置し、主要計測点には熱電対+データロガーを追加する」という構成が、コストと機能のバランスが取れた現実的な設計です。データロガーは1台あたり1〜3万円程度からのラインナップがあり(例:T&D社「おんどとり」シリーズ等)、長期記録・アラート通知も可能なため、建築設備の維持管理レベルを大きく向上させることができます。


参考:温度センサの種類・原理・特長の比較(基本編)
温度センサの種類とその特長【基本編】2025年版 | はかり商店




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