GHSラベル一覧で学ぶ絵表示と表示義務の基本

GHSラベル一覧で学ぶ絵表示と表示義務の基本

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GHSラベル一覧と絵表示・表示義務を正しく理解する

GHSラベルを「なんとなく貼ってあるもの」だと思っているなら、重大な法的リスクを抱えたまま現場を動かしていることになります。


この記事でわかること
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GHSラベルの絵表示一覧と意味

9種類の絵表示(ピクトグラム)それぞれが示す危険性の種類と、建築現場でよく目にする化学品との対応関係を解説します。

⚖️
法的な表示義務と罰則

労働安全衛生法に基づくGHSラベルの表示義務、違反した場合の罰則(最大50万円以下の罰金)について具体的に説明します。

🔧
建築現場での実践的な活用方法

ラベルの読み方・SDS(安全データシート)との連携・小分け容器への対応など、現場担当者が今日から使える実務知識を紹介します。


GHSラベルとは何か:建築現場における位置づけと法的根拠


GHSとは「Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)」の略称です。国連が主導して策定した国際基準であり、化学品の危険性・有害性を世界共通の方法で分類・表示することを目的としています。


日本では労働安全衛生法第57条および第57条の2、ならびに化学品審査規制法(化審法)・毒物及び劇物取締法によって、一定の化学品にはGHSに対応したラベル表示とSDS(安全データシート)の交付が義務付けられています。これは義務です。


建築現場では接着剤シーリング材・防水材・塗料・洗浄剤有機溶剤など、数多くの化学品を日常的に取り扱います。これらの多くがGHSラベルの表示対象に該当しており、作業員が正しくラベルを読めるかどうかは、健康被害の予防だけでなく法令遵守にも直結します。


GHSラベルが義務化されたのは2012年前後(労働安全衛生法の改正施行は2016年に段階的に完了)であり、それ以前の「独自表示」だけでは現在は対応不十分となる場合があります。つまり古いラベル様式のままでは不十分です。


GHSラベルには以下の6つの必須記載事項があります。


  • 🔴 絵表示(ピクトグラム):危険性・有害性の種類を視覚的に示す、赤枠付きのひし形マーク
  • ⚠️ 注意喚起語:「危険」または「警告」のいずれか(危険度合いによって異なる)
  • 📋 危険有害性情報(Hステートメント):具体的にどのような危険があるかを示す文章
  • 🛡️ 注意書き(Pステートメント):安全な取り扱い・保管・廃棄の方法
  • 🏢 供給者の情報製造業者または販売業者の名称と連絡先
  • 🧪 製品識別子:化学品の名称または識別コード


この6項目がすべて揃っていることが、適正なGHSラベルの最低条件となります。1項目でも欠けていれば、法令違反となる可能性があります。


厚生労働省「化学物質のラベル表示・SDS制度」公式ページ(義務対象物質・法的根拠の確認に有用)


GHSラベル絵表示一覧:9種類のピクトグラムの意味と建築現場での該当品

GHSピクトグラムは現在9種類が定められており、それぞれ赤いひし形の枠の中に黒いシンボルが描かれています。白黒印刷での代替が認められる場合もありますが、原則として赤枠での表示が求められます。これが基本です。


以下に9種類のピクトグラムとその意味、建築現場でよく該当する製品例を示します。


ピクトグラム名称 シンボルの特徴 示す危険有害性 建築現場での該当品例
🔥 炎 燃えている炎のマーク 引火性液体・可燃性固体・自然発火性物質など ラッカーシンナー、有機溶剤系接着剤、ウレタン系塗料
🔥 円上の炎 円の上に炎が乗ったマーク 酸化性液体・酸化性固体(他の物質の燃焼を促進) 酸化性の洗浄剤、一部の硬化剤
💣 爆弾(爆発) 爆発するボムのマーク 火薬類・自己反応性物質・有機過酸化物 一部の発泡剤、有機過酸化物系硬化剤
🔵 ガスボンベ 圧力容器(ボンベ)のマーク 高圧ガス(可燃性・不燃性・毒性を含む) LPGボンベ、エアゾール缶、窒素ガスボンベ
⚠️ 腐食 手や金属が溶けているマーク 皮膚腐食性・眼に対する重篤な損傷・金属腐食性 コンクリート洗浄用酸性剤、アルカリ系脱脂洗浄剤、錆取り剤
☠️ ドクロ(頭蓋骨) 頭蓋骨と交差した骨のマーク 急性毒性(経口・経皮・吸入)で高危険度のもの 一部の有機溶剤(高濃度)、農薬系殺虫剤
❗ 感嘆符 「!」マーク 急性毒性(低危険度)・皮膚刺激性・眼刺激性・感作性など 一般的な有機溶剤系製品、塗料薄め液、シーリング材
🌿 環境 木と魚のマーク 水生環境有害性(短期・長期) 防腐剤、一部の洗浄剤、溶剤系防水材
🫁 健康有害性 人体の胸部に×が入ったマーク(感嘆符より重篤) 発がん性・生殖毒性・特定標的臓器毒性・呼吸器感作性など 石綿(アスベスト)含有建材の粉じん、シリカ含有品、有機溶剤


複数のピクトグラムが貼られている製品は、それだけ複合的なリスクを持っています。意外ですね。現場で使う一液型ウレタン防水材などは「炎」「感嘆符」「健康有害性」の3種類のピクトグラムが同時に表示されていることもあり、単純に「燃えやすいから気をつける」だけでは不十分です。


「健康有害性」ピクトグラムが表示された製品は、特定化学物質障害予防規則(特化則)や有機溶剤中毒予防規則(有機則)の対象となる場合があり、呼吸用保護具の着用や作業環境測定が法的に求められるケースがあります。これは見落とせません。


中央労働災害防止協会(JAISH)GHS関連情報ページ(ピクトグラム詳細・分類基準の参照に有用)


GHSラベルの表示義務と罰則:建築業者が知っておくべき法的リスク

GHSラベルの表示義務は「努力目標」ではありません。労働安全衛生法第57条に基づく義務であり、違反した場合は同法第119条により6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が規定されています。罰金刑で終わるとは限りません。


表示義務の対象となる化学品は、労働安全衛生法施行令第18条および別表第9に規定された「名称等を表示すべき危険物・有害物」(2023年改正により対象が大幅拡大し、約2,900物質から数百物質単位で追加)です。


2023年の労働安全衛生規則改正では、これまで任意だった物質を含む多くの化学品について、表示・通知の義務対象が段階的に拡大されています。2024年4月以降、新たに約234物質が追加対象となりました。つまり「以前は対象外だった製品」がいつの間にか義務対象になっているケースが生まれています。


建築業者が特に注意すべき義務のポイントは以下のとおりです。


  • 📦 小分け容器への再ラベリング義務:元のドラム缶や一斗缶から小さな容器に移し替えた場合でも、GHSラベルを貼り直す義務がある。現場でよく見られる「ラベルなしのペットボトル小分け」は明確な違反。
  • 🚫 ラベルの除去・汚損の禁止:作業中にラベルが剥がれたままにしておくことは違反。使用中の容器でも読める状態を保つ義務がある。
  • 📋 SDS(安全データシート)との整合性:ラベルの内容はSDSと矛盾してはならない。古いSDS・古いラベルを混在して使用することも問題となる。
  • 🏗️ 元請けによる管理責任:下請け業者が持ち込む化学品についても、元請けが安全管理の責任を持つ場合がある(安衛法第29条)。


「小分けにしたらラベルを貼り直さなくていい」と思っている現場担当者は少なくありません。しかし実態は逆で、小分けするたびに義務が発生します。これが盲点です。


現場で受け取る製品のラベルが日本語でない場合(並行輸入品・外国製品など)も注意が必要です。日本の法令では、日本語でのラベル記載が義務であり、外国語ラベルのみでは法令上の義務を満たしません。


経済産業省「GHSに基づく化学品の分類・表示」(化審法・安衛法の義務対象物質リスト確認に有用)


GHSラベルの注意喚起語「危険」と「警告」の違いと判断基準

GHSラベルには必ず「危険」か「警告」のどちらかが記載されています。この2語の違いを「なんとなく危なそうなほうが危険」と感じている方が多いですが、実は分類上の明確な基準があります。判断基準が決まっているということですね。


GHSでは、危険有害性の各区分(カテゴリー)に対して、注意喚起語が次のように割り当てられています。


  • 🔴 「危険」(Danger):より重篤・より高い危険度の区分(通常は区分1または区分2)に該当する場合に使用
  • 🟡 「警告」(Warning):相対的に危険度が低い区分(通常は区分3または区分4)に該当する場合に使用


たとえば引火性液体について言えば、引火点が23℃未満かつ初留点が35℃以下の物質(区分1)には「危険」が使われ、引火点が60℃超73℃以下(区分4)には「警告」が使われます。同じ「燃えやすい液体」でも危険度は大きく異なります。


建築現場で多用されるラッカーシンナーや酢酸エチル系接着剤は区分1または区分2に該当するものが多く、「危険」の注意喚起語が付いています。これらは引火点が0℃を下回るものも存在し、冬場でも引火リスクがゼロにはなりません。厳しいところですね。


「警告」と書いてあるからといって油断は禁物です。「警告」の製品でも長期的な健康有害性(生殖毒性・発がん性)が別のピクトグラムで示されている場合があります。注意喚起語は「今すぐの危険度」の指標であり、慢性的リスクを含む総合的な安全性とは別物です。


実務上、ラベルを確認する際は注意喚起語だけを見るのではなく、Hステートメント(危険有害性情報)と合わせて確認することが重要です。たとえば「H350:発がんのおそれがある」「H360:生殖能または胎児への悪影響のおそれがある」といったHステートメントは、たとえ注意喚起語が「警告」であっても非常に重大なリスクを示しています。


Hステートメントの番号一覧はSDSの第2項(危険有害性の要約)または厚生労働省の公開資料で確認できます。現場の安全担当者はこの番号に慣れ親しんでおくことが、リスク評価の精度を高めることにつながります。


建築現場でのGHSラベル管理:小分け・混合物・外国製品への対応と実務的注意点

現場レベルで最も対応が遅れがちなのが、小分け容器・混合して使用する製品・外国製品のラベル管理です。これが現場の盲点です。


①小分け容器へのラベリング


塗料・接着剤・シーリング材を一斗缶からバケツや小型容器に移し替えるのは、建築現場の日常業務です。しかしこの「小分け」の瞬間に、元の容器と同等の内容を記載したGHSラベルを新しい容器に貼る義務が発生します。


ラベルを手書きで作成する場合も、①製品名、②絵表示、③注意喚起語、④危険有害性情報、⑤注意書き、⑥供給者情報の6項目を満たす必要があります。「製品名だけ書いたメモ用紙」は法的には不十分です。不十分ということですね。


実用的な対策として、よく使う製品については事前にラベルを印刷しておくか、製品メーカーからラベルデータ(PDFや画像)を取り寄せておく方法があります。厚生労働省の職場のあんぜんサイトでは、ラベル・SDS作成支援ツールも提供されています。


②混合物のラベル対応


2種類以上の化学品を現場で混合して使用する場合(たとえば2液型ウレタン防水材の主剤と硬化剤を混合する場合)、混合後の製品についても危険有害性を評価したラベルが必要になります。


混合物の危険有害性は、各成分の情報を基に「加成性の計算」や「最も重篤な区分を採用する」ルールで評価されます。現場ではこの評価をメーカーが製品として行ったものを使用することが一般的です。したがって、指定された2液を正しい比率・手順で混合して使用することが、ラベルの情報通りの安全性を担保する前提条件となります。


指定比率を大幅に外れた混合は、未反応成分の残留による健康被害リスクを高め、ラベル記載の安全性前提を崩します。これは見落とせないポイントです。


③外国製品・並行輸入品への対応


近年、建築資材の一部にアジア製・欧州製の製品が流通しています。これらに添付されたラベルが英語・中国語など外国語のみの場合、日本の安衛法上の義務を満たしていません。


この場合、輸入業者・販売業者が日本語ラベルを作成・添付する義務を負います。元請けとしては、仕入れ先から日本語ラベルとSDS(日本語版)を受け取れるかを確認することが実務上の必須チェック項目です。


厚生労働省「職場のあんぜんサイト」ラベル・SDS関連ページ(実務用ラベル作成支援・義務対象確認に有用)


建築現場担当者が見落としがちなGHSラベルの独自視点:リスクアセスメントとの連携が現場を変える

GHSラベルは「貼ってあれば完了」ではありません。2016年の労働安全衛生法改正により、化学品を取り扱う事業者にはリスクアセスメントの実施が義務化されました。そしてそのリスクアセスメントの出発点となるのが、GHSラベルとSDSの情報です。


つまりGHSラベルは「リスクアセスメントのインプット情報」です。ラベルを貼るだけで完結する話ではなく、そこから「どのような危険があるか(ハザード)」「どれだけ曝露するか(リスク)」「どう管理するか(対策)」というサイクルの起点になります。


建築業界では、リスクアセスメントが書類上だけで形骸化しているケースが少なくないという指摘が、労働基準監督署の調査でも繰り返し出ています。現場の実態に合わせた実質的なリスクアセスメントを行うためには、担当者がGHSラベルの内容を正確に読解できることが前提となります。


実務上の流れとしては次のステップが基本です。


  • 📌 ステップ1:使用製品のGHSラベルとSDSを入手・確認する(新規製品導入時は必ず実施)
  • 📌 ステップ2:Hステートメントをもとに危険有害性の種類・程度を整理する
  • 📌 ステップ3:作業場所・使用量・換気状況・作業時間などの曝露条件を評価する
  • 📌 ステップ4:Pステートメント(注意書き)をもとに保護具・換気・保管方法などの対策を決定する
  • 📌 ステップ5:作業者へのラベル内容の周知・教育を行う


このサイクルを回すためのツールとして、厚生労働省が提供する「CREATE-SIMPLE」(化学物質のリスクアセスメントツール)が無料で利用できます。これは使えそうです。SDSの情報を入力するだけでリスクレベルの判定と対策の提案が得られるため、専門知識が少ない担当者でも活用しやすい設計になっています。


また、GHSラベルの内容を作業者全員が理解できるよう、現場内に「GHS絵表示一覧ポスター」を掲示することも有効な手段です。JISハンドブックや中央労働災害防止協会(JISHA)が無料配布しているポスターデータを活用すれば、追加コストをほぼかけずに視覚的な周知が可能です。


ラベルを「義務として貼る」から「現場安全の情報源として活用する」へ意識が変わると、労働災害の発生件数にも実際の変化が出てきます。厚生労働省の統計では、化学物質による労働災害の約6割が「ラベル・SDSの情報が活用されていなかった」ことを要因の一つとして含んでいるとされています。情報は使ってこそ価値があります。


厚生労働省「CREATE-SIMPLE」化学物質リスクアセスメント支援ツール(無料・実務使用可能・GHSラベル情報の入力に対応)




GHSラベル ステッカー (10mm) (ヒト)