

グリットブラストは「下地処理には高コスト」と思われているが、実はサンドブラストより廃棄物コストが1/50以下に抑えられる。
グリットブラストとは、「グリット(grit)」と呼ばれる鋭角な形状をしたスチール製の鉄粒を、高圧の空気または遠心力を使って対象物の表面に高速で投射する表面処理工法です。この工法によって、金属やコンクリートの表面に付着したサビ・旧塗膜・黒皮・溶接スケールなどを物理的に除去し、同時に表面に細かな凸凹(アンカーパターン)を形成します。
「グリット」という研削材の形状が、この工法の本質を決定づけています。丸い鋼球(ショット)とは異なり、グリットはガラスを砕いたような多角形の鋭角形状をしており、まるでサンドペーパーで激しく削るような切削力が生まれます。たとえるなら、ショットブラストが「丸いハンマーで叩く」感覚に対し、グリットブラストは「鋭いノミで削り取る」感覚に近い違いがあります。
グリットの素材としては、高炭素鋳鋼製(スチールグリット)が主流で、その硬度は非常に高く繰り返しの投射に耐えられます。これは珪砂(サンドブラストで使う砂)が一度の投射で砕けてしまうのとは対照的です。つまり金属系という点が、コスト・廃棄物の両面で大きなアドバンテージになります。
ブラスト加工は大きく「エアーブラスト方式」と「遠心力方式(インペラ方式)」に分かれます。グリットブラストは主にエアーブラスト方式で用いられ、作業者がノズルを操作しながら手動で施工するスタイルが一般的です。このため、橋梁の箱桁内部や複雑な形状の大型製缶品にも柔軟に対応できる点が、現場では高く評価されています。
参考:グリットブラスト加工の特徴と用途について詳しく解説されています。
ブラスト加工には主に「ショットブラスト」「サンドブラスト」「グリットブラスト」の3種類があり、使用する研削材の違いによって加工特性が大きく異なります。それぞれを正確に理解しておくことは、建築・鉄骨・橋梁工事の下地処理を選定するうえで非常に重要です。
ショットブラストは細かな鋼球(スチールショット)を投射するため、表面を「均一に叩いて整える」イメージに近い処理です。塗膜の密着性は十分に得られますが、グリットほどの深い表面粗さは形成されません。表面粗さはRa 5〜8μm程度が一般的で、溶射ではなく通常塗装の下地処理として広く活用されています。
サンドブラストは珪砂(ケイシャ)などの非金属系研削材を使用します。研削材が安価で軽量なため扱いやすい反面、一度投射すると砕けて再利用できません。産業廃棄物となる研削材の量が膨大になることが最大のデメリットです。また、珪砂に含まれる遊離シリカがじん肺(珪肺)を引き起こすリスクがあるとして、現在はISOの規格対象外となり、国内外で使用禁止・制限の方向に進んでいます。これは覚えておきたい重要な点ですね。
グリットブラストの表面粗さはRa 8〜13μm、最大高さRzで60〜150μmに達します。ショットブラストより深く鋭い凸凹が形成されるため、溶射被膜や重防食塗装など、特に高い密着力が必要な場合の下地処理として最適です。一方で、研削力が非常に強いため、薄板や軟質金属(アルミ、銅)、ステンレスには適しておらず、素材選定を誤ると変形や「もらい錆」の原因になります。
| 種類 | 研削材 | 表面粗さ目安 | 再利用 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ショットブラスト | 鋼球(スチールショット) | Ra 5〜8μm | ✅ 可能 | 塗装下地・バリ取り |
| サンドブラスト | 珪砂・フェロニッケルスラグ | Ra 3〜8μm | ❌ 困難 | 補修塗装・ステンレス加工 |
| グリットブラスト | 鋭角鋼粒(スチールグリット) | Ra 8〜13μm | ✅ 可能 | 重防食下地・溶射前処理 |
参考:ショットブラスト・サンドブラスト・グリットブラストの特徴の比較について。
建築・土木・橋梁工事の現場で「ケレン作業」という言葉はよく耳にするはずです。ケレンとは塗装の前処理として鋼材表面を清浄化・粗面化する工程のことで、1種〜4種に分類されます。グリットブラストは、この中でも最高グレードにあたる「1種ケレン」の主要な施工方法として位置づけられています。
1種ケレンとは、ISO規格でいうSa2.5(ニアホワイトメタル)〜Sa3(ホワイトメタル)相当の清浄度を目指す処理です。具体的には、鋼材表面のサビ・旧塗膜・黒皮(ミルスケール)をほぼ完全に除去した状態を指します。電動工具(グラインダー等)で行う2種ケレンや手工具による3種ケレンでは到底達成できない、ブラスト工法だからこそ実現できる品質です。
1種ケレンが重要視される理由は、「アンカーパターン」の形成にあります。グリットが激しく表面を削ることで生まれる無数の微細な凸凹は、アンカーパターンと呼ばれます。このパターンの深さが塗料の密着面積を大幅に拡大し、機械的なかみ合わせ(アンカー効果)によって塗膜の密着力を飛躍的に高めます。単純に「きれいにする」だけでなく、塗膜が長期間剥がれない構造を表面に刻み込む作業です。これが基本です。
重防食塗装系の橋梁塗装では、グリットブラスト(1種ケレン)によって適切なアンカーパターンが形成された場合、腐食性の高い環境でも塗膜の設計寿命が約30年に達するとされています(九州大学工学研究院の研究)。一方、下地処理が不十分なまま塗装をすると、数年で塗膜が浮き上がり、再塗装コストが余計にかかるという損失が生まれます。正しいケレングレードの選択が、長期的なコスト削減に直結するということですね。
参考:素地調整グレードとブラスト処理の規格についての公式情報。
グリットブラストが実際にどのような現場・用途で使われているのか、具体的に押さえておきましょう。建設業に関わる方であれば、この工法が適用される局面を現場で必ず目にするはずです。
最もよく知られた用途が、橋梁の塗装前下地処理です。鋼橋は長期間、雨水・塩分・排気ガスにさらされ、表面に激しい錆や古い塗膜が堆積します。塗装を長持ちさせるためには、旧塗膜と錆を完全に除去したうえで適切なアンカーパターンを形成することが不可欠で、グリットブラストが標準的な施工方法として採用されています。国土交通省の橋梁塗装マニュアルでも、塗替え時の素地調整にグリットブラストが明記されています。
次に多い用途が、鉄骨構造物・大型製缶品の製作時の下地処理です。工場内でグリットブラストルーム(幅6m×奥行き10m程度の大型ルームが一般的)を使って施工します。鉄骨梁・柱・タンク・圧力容器・橋梁部材などの黒皮除去と塗装下地処理に使われます。黒皮はそのままにしておくと、塗料が密着しにくく、塗膜の下から腐食が進行する原因になります。黒皮除去は必須です。
また、金属溶射(亜鉛・アルミニウム溶射)の前処理としても、グリットブラストは欠かせません。溶射は塗装と比べて被膜の鋼材への密着力が構造的に弱いため、必ずブラスト処理による下地調整が必要です。この場合は特に深いアンカーパターン(Rz 60μm以上)が求められることも多く、グリットブラストの高い研削力が生きる場面です。
さらに、海洋構造物・港湾施設・ガスタンク・電力プラントなど、過酷な腐食環境に設置される大型構造物においても、長期耐久性を確保するための重防食塗装の下地として広く活用されています。これらは一般的な屋外構造物よりもはるかに厳しい基準が設けられており、グリットブラストによる1種ケレンが仕様上の必須条件となっているケースがほとんどです。
グリットブラストは非常に強力な工法ですが、使用する素材や状況によっては深刻なトラブルを引き起こすリスクがあります。建築現場での損失やクレームを防ぐために、必ず事前に確認しておくべきポイントがあります。
最も注意すべきが「もらい錆」のリスクです。グリットブラストで使用するスチールグリットは鉄製のため、加工時に微細な鉄粉が対象物の表面に埋め込まれます。これが通常の鉄鋼材であれば問題ありませんが、ステンレスや亜鉛メッキ材、アルミニウムなど非鉄金属に対してグリットブラストを施すと、表面に残留した鉄粉が発錆(もらい錆)を起こし、素材本来の耐食性が失われてしまいます。意外ですね。ステンレス・アルミへのブラスト処理が必要な場合は、鉄分を含まない非金属研削材(アルミナ、フェロニッケルスラグなど)を使用するサンドブラストを選択するのが原則です。
薄板加工物への適用にも要注意です。グリットの研削力は非常に強く、板厚が薄い製品(目安として3mm以下程度)に施工すると、歪み(反り)が生じやすくなります。ブラスト加工全般に言えることですが、グリットブラストはその中でも特に圧力が高いため、薄板が含まれる加工物は事前に専門業者へ相談するのが賢明です。歪んだ鉄骨は補正作業が発生し、追加コストにつながります。
施工後の「フラッシュラスト(再発錆)」も見落とせないリスクです。グリットブラストで素地が清浄化された鋼材は、表面が活性化して非常に錆びやすい状態になります。特に湿度が高い季節や環境では、施工後数時間でうっすらと赤さびが発生することがあります(フラッシュラスト)。このため、ブラスト施工後はできる限り速やかに下塗り塗料を塗布することが求められます。施工から塗装開始まで4〜8時間以内が目安とされることが多く、翌日以降に持ち越すのは避けるのが原則です。工程管理が条件です。
参考:ブラスト処理後の錆の影響と対処方法の詳しい解説。
グリットブラストは施工費が高い、というのが建設業界での一般的な認識です。確かに、単純な施工単価はサンドブラストや手工具ケレンよりも高くなる場合があります。しかし「産業廃棄物処理コスト」まで含めてトータルで比較すると、グリットブラストが圧倒的に有利なケースが存在します。これはあまり知られていない事実です。
その鍵となるのが「循環式ブラスト工法」です。従来のサンドブラスト(珪砂・スラグ系研削材を使用)は、研削材が一度の投射で砕けてしまうため、使い捨て廃棄になります。1,000㎡の施工では約41トンもの産業廃棄物(研削材カス+塗膜カス)が発生するとされています。東京ドームのグラウンドに換算すると想像しにくいですが、41トンというのは10トントラック4台分以上の量です。これを全量産廃処理すれば、処理費用だけで相当なコストになります。
一方、循環式グリットブラスト工法ではスチールグリット(金属系)を回収・選別して繰り返し使うため、産業廃棄物として発生するのは塗膜カスのみです。この量は1,000㎡当たり約1トン程度に留まり、従来工法の約1/40〜1/50まで削減されます(循環式ブラスト工法の研究データより)。産廃処理費用、運搬費用、CO₂排出量のすべてが大幅に減ります。これは使えそうです。
特に橋梁補修工事のように施工面積が広い現場では、産廃処理費の差額が数百万円規模になることも珍しくありません。また、近年のSDGs・環境規制の強化を背景に、公共工事の入札においても「産業廃棄物削減への取り組み」が評価指標に加わりつつあります。単なるコスト削減を超え、環境配慮の観点からも循環式グリットブラストは今後の標準工法になりえる技術として注目されています。
施工を外注する際は、業者選定の段階で「循環式(金属系グリット)対応か否か」を確認する一手間を加えるだけで、プロジェクト全体の産廃コストを大きく変えられます。見積もりを取る前に確認する、それだけで大丈夫です。
参考:循環式エコクリーンブラスト工法による産業廃棄物削減効果の詳細データ。
スチールグリットによる循環式ブラスト工法|国土技術開発賞(JICE)

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